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2022年の富士や鈴鹿は長距離レースが復活し、フィニッシュ時刻を決めた時間制になると坂東代表 「花火に合わせた時間設定をしていきたい」

2021年11月7日 発表

株式会社GTアソシエイション 代表取締役 坂東正明氏

 2021年のSUPER GT最終戦となる「2021 AUTOBACS SUPER GT Round8 FUJIMAKI GROUP FUJI GT 300km RACE」(以下、最終戦富士)が11月27日~28日の2日間にわたって富士スピードウェイ(静岡県駿東郡小山町)で開催されている。11月27日の予選日にSUPER GTのプロモーター「株式会社GTアソシエイション」(以下、GTA)による定例会見が行なわれた。

 その中で代表取締役 坂東正明氏は「来年(2022年)の鈴鹿と富士のレースは基本長距離レースとなり、終了時刻を決める時間レースになる」と述べ、富士スピードウェイで行なわれていた500kmレースや500マイルレースを復活させ、8月に予定されている鈴鹿サーキットのレースでも、1000kmレースのような長距離で行なう計画であることを明らかにした。ただし、レースは距離ではなく時間制で行い、例えば19時にチェッカーを迎えるなどの来場者の帰路にも配慮しレースになると説明した。

導入したFCYは当初の目的は実現し成功、さらなる改善を目指す

──それでは冒頭に坂東代表からあいさつを。

坂東代表:岡山の開幕戦で約束したとおり、全8戦を開催することができた。関係各位の協力のおかげであり心の底から感謝申し上げたい。決められた規則や感染症対策のガイドラインを守って8戦やってきた。パドックにいる関係者や報道関係の方には不自由が多く申し訳ないと思っているが、きちんと作り上げることができて全8戦開催することができたことをうれしく思っている。

 また、お客さまにも、決められた範囲の中で動いてもらったり、1つ飛びの指定席に座っていただいたり、パドックの中に入れないという状況の中でも入場料金を払ってきて来ていただいたことに心からお礼を申し上げたい。

 制約の中でサーキットに来ることができないお客さまのためにできるだけ映像コンテンツを提供していくなどの取り組みも少しは前に進んだと考えているが、やはり、お客さま、そしてファンのみなさまあってこそのモータースポーツなので、モータースポーツを支えていただいていることをうれしく思っている。

 今シーズンはさらなる付加価値を作り上げながらそうした基盤作りをしっかりやってきた。来季もさらにそれを進め、日本のモータースポーツをもっと盛り上げていきたい。来シーズンもウィズコロナの中でシーズンになる可能性が高いが、コロナ収束を願いながら最終戦をしっかりとやっていきたい。最終戦はちょっと寒く、タイヤも車も大変だと思うが、よいレースが期待できると思う。

──今シーズンからFCYが導入された。前回のツインリンクもてぎの第7戦ではGT300とGT500車両の接触なども起きていたが、サーキットごとに設備やオフィシャルなどが異なる中で難しさがあったと思う。どう評価しているか?

坂東代表:FCYは事故現場でオフィシャルが早くかつ安全に処理をするために導入した。言うまでもなくオフィシャルの安全は担保されなければならないし、同時にお客さまが楽しめるように、レースの流れを止めず、順位を変えることなく事故処理はできるだけ迅速に済ませる必要がある。

 そうしたレースを長く中断せずにレースを行なうという意味では、初年度からうまくいったと評価している。オフィシャルのクラブもサーキットによって違っていたりして、慣れなどには差があったが、そこは今後もシミュレーションなどをしっかりやりながら、GTAが派遣しているレースコントロールなどがしっかりやっていくことだと考えている。

 ツインリンクもてぎのレースで起きた「追突事故」に関しては、FCYのボードが出たときに発生したと理解している。そのFCYのボードが出たときには、すでに黄旗状態になっている。

 そこから3、2、1とカウントダウンしながらFCY状態へと移行していくのだが、FCYボードが出たときにはすでに黄旗状態になっているので、そこで追突が発生したのは追突した方がわるいとしか言いようがなく、白黒旗(警告のときに出されるフラッグのこと)だけ終わってしまったのはいかがなものかと、今後どうするかはよく検討してほしいと関係者に話をしている。

 黄旗が出ている状態で、「だろう運転」をして、前のクルマが減速している状態の中で、わずかに減速が遅れてぶつかりそうだからよけたら追突が起きたということだと思うが、いかなる状況であろうと黄旗が出ている状態で追突事故は発生してはならない。そこは追突した方にきちんとペナルティを出すべきだと話をした。ドライバーにしっかり注意してほしいとドライバーズミーティングで伝えてもらっており、今後は審査委員会に事後でもよいのでロガーの検証も含めてしっかり検証してほしいと伝えた。

──FCYのカウントダウンが鈴鹿のようにサーキットが大きなところでは聞きにくいなどの指摘もある。カウントダウンをもっとドライバーに分かりやすく伝える方法はあるのか?

坂東代表:FCYを宣言するボードは各ポストで出る。また、無線に対しても言うが、その無線は基本的にはレースディレクター(服部尚貴氏)からチームの監督に流す形になっている。現在それはドライバーには流れていないが、今後はそれをドライバーにも流すことを検討しており、MoSRA(モスラ、モータースポーツ無線協会、総務省からモータースポーツ用の無線周波数を割り当てられ、その運用を行なっている団体)とも話をしている。今後は、例えば監督とドライバーが話している無線に、レースディレクターが割り込めるようにしたりということなどの絵を描いてもらっている段階だ。そうした仕組みの中で、FCYの導入に関しても無線で流すようにしていきたい。

 鈴鹿サーキットのように大きなサーキットで無線がつながらないというのは、費用を掛けてアンテナを立てればいいだけの話だ。つながらないつながらないと随分前からずっと言われているのにできないのは、お金の分担の話や実際のところはみんながそんなに必要ないと思っているからではないか。本当に必要であるのであれば、鈴鹿サーキットとも話をさせてもらって作り上げていきたい。

富士や鈴鹿のレースは長距離レースが復活し、終了時刻を決めた時間制の長距離レースになる予定

──日産のGT-Rを利用したSUPER GTの参戦はこのレースでひとまず終わりを迎え、来年からは新しい車両での参戦がアナウンスされた。GT500の車両がこのタイミングで更新されることには、さまざまな課題もあったと思うが……。

坂東代表:昨年のコロナ禍という中で、開発を凍結したという項目がある。そして、2024年からは完全に新しい規定の車両でやるということもある。つまり、2023年までは凍結される項目と、22年、23年に関してはフリーで開発凍結を解除するという項目もある。それらに関しては関係するマニファクチャラーと話をしながらやっている。

 来年から日産が新しい車両を導入する上で、従来規定の中でスケーリング(GT500の車両はベース車両の形状をGT500車両のサイズに合うように伸縮して範囲内に収めている)は一緒にしなければいけないし、ホイールベースやトレッド、屋根の高さはこれまでの通り規則にそって作る必要がある。

 ただ、空力に関しては引っかかるモノもあるので、そこは3メーカーで話をしてもらって解決している。従来のDTMと一緒にクラス1規定をやっていた時にも、NSX(筆者注:クラス1規定ではFRのみとなっていたが、19年までのNSXは例外としてミッドシップが認められていた)のときも、DTMに参戦しているところも含めて6つのマニファクチャラーで話あって決めた。今回はトヨタ、日産、ホンダで話をしてもらい、結論を出してもらった。

 日産にとってもそうだが、われわれSUPER GTにとってもGT-Rは思い入れがあるクルマであり、GT-RがSUPER GTに出なくなるのは寂しいものがあるのは事実だ。今回、このレースでは新型車両は発表されないということで、われわれとしてはここで発表してほしかったところだが、新しい車両に関してはかっこよい車両であってほしいと思う。

──スーパーフォーミュラではデジタルメディアに関して新しい取り組みを始めている。DX(デジタルトランスフォーメーション)への取り組みなどの案があり、NEXT 50(ネクストゴー)として発表している。GTAではそうした取り組みは?

坂東代表:昨日もJRP(日本レースプロモーション、スーパーフォーミュラのプロモーター)にお越しいただき話をした。DXでどんなことをやっていきたいのか、共感できるモノがあるならコストがかかるものを1/2してやっていこうという話をしている。

 先方ではテレビだけでなく、Youtubeのようなデジタルプラットホームを検討しているようで、ファンがそうしたプラットホームに対して配信することで興味を持っていただけるなら、コンテンツを供給して満足度を上げていく必要はあると考えている。

 その対象は映像や音だけでなく、チームとドライバーの無線もありだと思うが、ただ、無線をライブで公開するには難しい側面もある。ドライバーはレース中非常に興奮した状態でドライブしており、無線での会話の中にはライブでお聞かせするには課題がある場合も少なくない。おそらくお客さまが面白いと言っていただくのはハプニングがあったときにチームとドライバーがしていた会話だと思うが、それも事後なら可能かもしれないが、ライブとなると課題があると思う。そうしたことをきちんと検討して、お客さまによりよく伝わるような方法を考えていかないといけない。

 F1やWECでもすべての無線を流しているのではなく、ある程度フィルターをかけたモノを流している。それ専用のスタッフを置くぐらいじゃないと難しいと思うし、さじ加減は難しい

 現在、J-SPORTSやテレビ東京などのテレビ放送で流している無線の音声は、それをチームやマニファクチャラーに放送前に確認してから出している。そこはきちんとフィルターを通した後の音声になっている。ではそのさじ加減がライブできるのかと言われれば、非常に難しいと思う。したがって、まずは映像の方から入っていき、無線はその後になると考えている。

──2022年は距離を伸ばすという話をされていましたが、その結論はでたのか? 従来は1000kmレースが行なわれていた時期に鈴鹿サーキットでのレースが予定されているが、そうしたロングディスタンスのレースについてはどうするのか?

坂東代表:願望と希望、そして決定を一度にいうと、「長くする」だ。

 ブレーキの問題などはあると思っているが、この間のツインリンクもてぎのレースでは300kmでやっているので、ショートコースの所は今年やった300kmのレースの部分、ただし、鈴鹿であったり、富士では500kmや500マイルというレース形態を基本的に考えている。

 ただ、距離ではなくゴールの時刻に合わせた時間レースにしていく計画だ。それに合わせて距離を計算していき、レースにする。WECと同じ距離というのは難しいかもしれないが、ブレーキが持つ距離から時間を考えていく。また、タイヤメーカーにも、持ちのいいタイヤを作ってほしいとお願いしている。

 で、やはりレース終わりには「花火が見たい」という要望も強いので、花火に合わせた時刻設定をしていきたい。こちらからサーキットに要望したいのは、もう少し派手な花火を行ってもらうことだ(笑)。昨日富士スピードウェイの関係者と話していたら、5年に一度の花火大会があるという話を聞いたし、ツインリンクもてぎでも1月2日に花火大会を行なっていると聞いている。

 レースの期間中だとクルマの上に落ちてきたり消防法の絡みもあるので実現は簡単ではないのだが、どうせ花火をやるなら派手にやってほしいというのがわれわれの要望だし、お客さまにとってもその方が楽しんでいただけるだろう。なので、時間制のレースにして、チェッカー受けて、花火がポンポンと上がるという仕組みが大事で、レースが延長になって帰るのが遅くなるよりもいいだろうと。

 今後のレースでは環境への対応が大事になる。この間のスーパー耐久でもヤマハだったり、カワサキだったりが自工会と話をしていることが話題になった。自工会の中にモータースポーツの連絡会などを作っていただいて話をしている。

 そこでモータースポーツがテストとしてサーキットで走らせる。ソフトの部分ではわれわれができるだけゴミを出さないようにレースを行なったり、モータースポーツを支えてくださっているファンのみなさんにもリサイクルを心がけていただく、そうしたことに留意しながら、2030年、2050年にも日本のモータースポーツが発展していけるようにしていきたい。

 ただし、SUPER GTがやっていく上で重要視していくのは「かっこよいクルマ」を走らせることだ。やはりお客さまに見ていただいて、かっこよくしてそれを見るためにサーキットに足を運んでいただけるクルマであるべきだと考えている。それが今の環境問題への対応で「許す、許されない」の議論になるなら作ればよい。われわれはそう考えている。

──現状では例えば水素燃焼エンジンのレーシングカーを走らせることはSUPER GTのレギュレーション上許されていないが、今後特認車両としてそうした車両の参戦を認める可能性はあるか?

坂東代表:ない、バチバチの勝負が先であって、SUPER GTとしてはそこを追求していきたい。デモランなどはありだが、それは(特例の車両は)スーパー耐久の方にお任せしたいと考えている。もちろんそうした(競争の)レギュレーションができるのであれば、そうした車両が参戦する可能性はあると思っている。

株式会社GTアソシエイション 代表取締役 坂東正明氏