ニュース
SUPER GT 坂東代表、カーボンニュートラルフューエル導入は日本の自動車メーカーとモータースポーツ産業の総力を挙げた取り組み
2021年11月7日 15:07
- 2021年11月7日 発表
SUPER GT第7戦もてぎが11月6日~7日の2日間にわたり、ツインリンクもてぎ(栃木県芳賀郡茂木町)で開催されている。11月7日にはSUPER GTのプロモーターであるGTアソシエイション 代表取締役 坂東正明氏による定例会見が行なわれた。
坂東代表は「カーボンニュートラルフューエルはガソリンに何かを添加する燃料でなく、植物やゴミなどから生成される合成燃料で、生成時の二酸化炭素が大きく削減できることが特徴だ。これは日本の自動車メーカーとモータースポーツ産業の総力をかけた取り組みだ」と述べ、カーボンニュートラルフューエルの導入は、日本の自動車メーカー(トヨタ、日産、ホンダ)とモータースポーツ産業(GTAや日本レースプロモーションなど)の総力を結集した世界的に見てもユニークな取り組みだと強調した。
富士スピードウェイの最終戦、パドックはこれまで同様の感染対策、最終戦では新たに自由席が販売される見通し
──それでは冒頭は坂東代表よりあいさつを
坂東代表:残り2戦となった。今回のレースではウェイトが半分になり、1年やってきた素の真価がここに出てくる。GT500は2連覇がかかっているところ(筆者注:1号車 STANLEY NSX-GTのこと)が強いと思う。これまで取りこぼすことがなくやってきており、チームやホンダも強いし2連覇を意識してきた素晴らしいチーム。ほかのチームはここを見習わないといけない。こうした強いチーム作りをみんながやって、さらにレベルを上げて面白いレースを見せてほしいと思う。
コロナ対策に関しては最終戦まで今の体制(パドックに入る関係者に関しては事前のPCR検査と、金曜日にゲートに入る段階での抗原検査)を継続していく。政府の政策としては11月からさまざまな解除が行なわれているが、海外ではイギリスで新規感染者が3.5万人とか起きているが、自分たちは自分たちを守る必要がある。イベントを継続する責任と義務をきちんと果たした上で、モノを申していきたい。
最終戦のお客さまの人数などは、サーキット側と話し合いながら決めて行きたい。こうした対策をこれまで7戦やってきて、経費費用もかかっている。自動車メーカーやタイヤメーカーにも協力してもらい、1600~1800名のPCR検査などをやってきた。それぞれにラベルをつけて送付して返送してもらって検査機関に出すということにはとてもマンパワーがかかっている。さらにゲートにも検温の担当をGTAのメンバーを貼り付けてやっている。
そうした中でも、(抗原検査など決められた手順を)ちゃんとやってこない関係者もいて、本来はそうした関係者はパスを抹消してもいいぐらいだと思っている。そうしないとこうした高い意識は維持できないからだ。われわれはモータースポーツの認知度を上げていくためにそれなりの対応をしていくと常々いってきている。そうしたことを実現するにはこうした取り組みをきちっとやっていくからこそ、権利を主張することができる。来年もウィズコロナという状況の中で、どのような対応をしていくか考えていきたいと思う。
──政府の緩和などもあるが、人数はふやせるのか?
坂東代表:第7戦に関しては1万席の通常の手順で販売されているチケットをお持ちのお客さまと、ワクチンの2度接種およびPCR検査を受けたお客さま向けに販売された1000席という形でやっている。これはスポーツ庁からのご依頼を頂き、そうしたお客さまを受け入れることがどのような影響があるのかということを見るためという側面がある。というのは、仮にスタンドにそうした1000人のお客さまがそのエリアに座っていただいても、例えばスタンド裏にご飯を食べに行く、ほかのエリアで観戦しに行くという形になると、証明書がないお客さまと合流することになる。そうなると陰性証明書の意味とは何かということになる。サッカーとかの場合にはスタジアムで区分けができるが、サーキットの場合は野外であり陰性証明書がある人だけが行くエリアというのは作れない。
スポーツ庁のご意向としては、そうなって陰性証明書があるお客さまとそうではないお客さまが交わったときにコロナになったりすることはあるのかということを検証してほしいということだと理解している。それをどのように管理していくのかということが問われているのだろう。
すでに述べたとおり、富士でもパドック内はPCR検査と抗原検査をしなければ入れないという形になる。スタンド側のお客さまの管理はサーキットが行なうことで、コントロールできる範囲内で立ってほしいとお願いしている。来年を見つめてやるとすれば、例えば、2F、3Fのラウンジに入っていただくゲストがスタンド側にいってもらうのはどうか、そしてその場合にどうなったかなどをハッキリわかるようにしないといけない。
チェック機能をただ緩やかにするだけではだらだらになってしまうので、われわれの体制がどこまでできるのかは検証していかないといけない。なお、富士の最終戦では(新しい緩和策として)自由席を販売することになると思う。
カーボンニュートラルフューエルは、日本の自動車メーカーとモータースポーツ業界の新しいチャレンジ
──カーボンニュートラルフューエルに関しては、前回のレース後にJRP(日本レースプロモーション、スーパーフォーミュラのプロモーター)から、GTAと一緒に取り組んで行くという発表があった。
坂東代表:JRPとはこれからも話をして一緒に取り組んで行くことになる。カーボンニュートラルフューエルに関しては、調達を共同で行なっていき、SFでも同じものを使っていく。すでにトヨタとホンダでベンチテストが終わり、これからは実車でテストをしていく計画だ。この供給などのコントロールはGTAが行なっていき、サーキットへの持ち込みなどもGTAとJRPが協力して行なっていく。現在はサプライヤーに関してのチェックを行なっている段階で、お互いに一緒のものを使いましょうという話をしている。
海外でもG1、WEC、BTCC、SROなどがそうしたE-Fuelの使用などをうたっているが、こうした燃料でももちろん燃やせば二酸化炭素は出るが、大事なことは生産段階での二酸化炭素を出さないようにしていくことだ。E10だと従来のガソリンにエタノール10%を足すものだという記載のある報道記事などもあったが、われわれはそうしたガソリンに何かを足すという考え方ではない。2023年に本当にこの方式でやるとなるとほかに選択肢はないと思う。
このため、コストに関してはとても高い。現状ではリッター1000円ぐらいになっており、そこに輸送コスト税金などを足す必要がある。われわれのレースではピットの級装置に200Lのガソリンを入れており、レース中に100Lを使う。その余った分も入れて300kmのレースだと1レースあたり2.5万リッターというのが、タイのレースでのデータを参考にした概算だ。それにテストを2回やる、8時間をやるということを考慮に入れると、年間で30万リッターぐらい用意しないといけない。
──E10やインディカーのE85などの方式がアメリカ、何パーセント。新たなガソリンというのは、E-FUELなのか?
坂東代表:前回の会見でも説明したとおり、E-Fuelの定義は難しく、何をもってE-Fuelと呼んでいいのか難しい。そこで、われわれはE-Fuelとは呼ばずにカーボンニュートラルフューエルと呼ぶようにした。われわれのカーボンニュートラルフューエルは人間が食べる穀物ではない植物由来と、ゴミ由来の燃料となる。そこの理解がなかなか進まない部分もあるが、日本を代表する自動車メーカー3社(トヨタ、日産、ホンダ)が協力して、この新しいカーボンニュートラルフューエルに取り組んで行こうということだ。実際メーカーには航空貨物で送ってもらうことにとんでもないコストを使って輸入してもらい、ゴムシールがどうなのか、点火系がどうなのかなどを調べている。ホンダはこのテストをやってオッケーだった、トヨタはこれをやってオッケーだったという情報を持ち合ってもらい、それを共有しながら話を前に進めている。
これは日本を代表する産業である自動車業界が取り組む新しい取り組みということだ。国や燃料業界が進めていることではなく、われわれ自動車産業とモータースポーツ業界が一体となって取り組んで行くという取り組みだ。現状は日本では生産できていないので、将来的には生産に関しても日本でできるようにしたい。
──まだ日本では作られていないということか?
坂東代表:そこまではまだ話が進んでいない。しかし、こうした取り組みが成功すれば、経産省や石油連盟など国や燃料業界からの注目度が高まっていくだろう。まずはわれわれがやってみてデータをとって、こうなりましたということをアピールしながらやっていきたい。このため、スペックとしてはJIS規格に近づけていけるようにやっていく、というのもGT500だけでなくGT300でも導入したいからだ。われわれ独自のカーボンニュートラルの取り組みということで、ほかの産業にも積極的にアピールしていけば、経産省も、石油連盟もみな動いてくれるようになるだろう。
これまでわれわれも光合成をやっていますということで、道志や三重の水を提供したりという取り組みを行なってきた。それぞれは小さな取り組みだが、そうした小さな取り組みが二酸化炭素削減につながり、カーボンニュートラルにつながっていくことが大事だ。自動車産業は日本の基幹産業であり、モータースポーツはその基幹産業にとっての販売促進のツールにならなければならない。そうなればマニュファクチャラーもモータースポーツがあってよかった、やってよかったということになっていくと思う。