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SUPER GT、トヨタ、ホンダ、日産と合意して2023年から「カーボンニュートラルフューエル」導入 坂東代表会見

2021年10月24日 発表

株式会社GTアソシエイション 代表取締役 坂東正明氏

 SUPER GTのプロモーターであるGTアソシエイション(以下GTA)は10月24日、第6戦オートポリスで定例会見を行ない、SUPER GTが導入を計画している「カーボンニュートラルフューエル」に関する説明を行なった。

 GTアソシエイション 代表取締役 坂東正明氏は「これまでE-Fuel、バイオ燃料などと呼んできた環境に配慮した燃料を、今後は『カーボンニュートラルフューエル』と呼んでいくことに決定し、SUPER GTでは2022年からテスト走行を開始し、2023年からレースで利用していく計画だ」と述べ、生成から消費の全段階でCO2排出がガソリンに比べて少ないエタノールをベースにした燃料の導入を明らかにした。2022年に試験的に導入し、2023年にはGT500の燃料として使っていく。

2023年のレースにはカーボンニュートラルフューエルを導入し、CO2排出の削減を目指す

坂東代表:今回2年ぶりにこのサーキットに戻れて、非常に恵まれた天候の中でレースができることをうれしく思う。直近には阿蘇山が噴火するなどもあったが影響はほとんどなく、このレースを迎えることができてよかった。今後もコロナ対策をきちんとやりながら、GTAとしての基盤作りにしっかり取り組んでいきたい。

 決して事なかれになるのではなく、自分たちがほかの人たちに対しても自負できるような対応策をやりながら、ツインリンクもてぎでの第7戦、そして富士での最終戦に取り組んでいきたい。

──以前より、導入を示唆してきたE-Fuelに関して大きな進展はあったか?

坂東代表:昨日(予選日)も3メーカー(トヨタ、ホンダ、日産)と話をして取り組んでいくことにした。これまで、E-Fuelという呼び方だったり、バイオ燃料だったりとさまざまな呼び方をしてきたが、その名前を使っていくことが妥当なのかどうかも含めていろいろ検討した結果「カーボンニュートラルフューエル」という名称でやっていこうということで合意をみた。

 すでにトヨタ、ホンダがそのカーボンニュートラルフューエルを利用してベンチテストをしており、点火系や出力などに関して補正範囲の中でできるだろうという感触を得ている。今後はさまざまなテストを続け、GT300でもきちっと利用できる状況を整え、外資メーカーにもこういう成分でやると通知してやっていく。

 エンジン内部のゴムなどに関しては見直しが必要だということは分かってきているが、2社のテストではそうした調整の範囲でなんとかなるということが見えている。

 来期に向けては、公式テストなどで実際にそのカーボンニュートラルフューエルを利用して走行していく。タイのレースに持って行く燃料は、300kmのレースで2万5000Lで、8レースで20万Lが必要になる。これにスーパーフォーミュラで5万Lを消費して、両シリーズトータルで25万Lの輸入と貯蔵が必要となる。今後業者の選定を行ない、来年の前半からテスト的に居れば、2023年には全車でやっていきたい。

 SUPER GTとしては単にエコにしましたというだけでなく、そうした環境に配慮した技術開発を、マニファクチャラーやタイヤメーカーにはお願いしている。例えば環境の配慮したエンジンとしては、長く使える燃費がよいものの開発をお願いしているし、タイヤも同様に1本で長く走れるタイヤの開発をお願いしている。

 そうしたことを実現するために、来年は現状の300kmから350kmへと距離を伸ばす。それにより持ち込みのドライタイヤの本数は今年と同じだが、距離は長くするので、より長く持つタイヤが必要になり、エンジンも今シーズンと同じシーズンで2基までという制限を維持する。

 距離を長くすることで、二酸化炭素の排出は一時的には増えるが、できるだけ早く、遅くとも2023年にカーボンニュートラルフューエルを導入することで、トータルでの二酸化炭素の排出は減ることになる。ただ、それはエンジンのマイレージ的に厳しい、あるいは消耗品がというのであれば土曜日の公式練習の走行を50km減らすなどの措置を取る計画だ。

 そうした措置を行なうには、SUPER GTのレースの面白さを増すためでもある。お客さまが見ていて楽しいレースにするために、こういう規則にするとピットがいろいろ作戦を考えて実行できるようになる。チームがさまざまに考えて取り組むことが可能になり、見ているファンにとってメリットは大きい。

──CO2の排出、エンジンのロングライフ、マイレージ、SDGsにつながる。2問目は各地でコロナの規制が緩和されている、全面撤廃も検討されている。サーキットへの働きかけなどはどうか?

坂東代表:ツインリンクもてぎでの第7戦に関しては、スタンドに1万人という当初の計画どおり。また、ピット・パドックと一般のお客さまが交わらないように導線を引いていくという取り組みはこれまでどおり行なっていくし、ピット・パドックでの関係者のPCR検査に関しても同様だ。

 ただ、スポーツ庁からはPCE検査を行なった観客にスタンド席などを用意して、そこにお客さまを入れることでどう反応するのか見てほしいというご依頼を受けており、実際に実証を行なう予定だ。そうしたお客さまをもてぎのパドックエリアに入れるかどうかは、もてぎ側とまだ話し合いをしていかないといけない。

 富士スピードウェイでの最終戦に関しては、今のところ関係者にはこれまでと同じ抗原検査、PCR検査を提出してもらう方向で動いている。ここのレースが終わるまでの間には、そうしたことにさまざまな結論を出し、どこをオープンにしていくのかを検討していく。

 われわれにとっては、これまでの独自対策の蓄積は非常に大きいと自負している部分がある。率直に言って、ほかのプロモーターの対策とは大きな差があると考えている。F1、WEC、WRCに関してスポーツ庁にもご協力をいただきがんばってきたが、なかなか難しい部分もある。

 実際、スーパー耐久で「オリンピックはできてモータースポーツではなぜ?」という発言があったと承知しているが、現状の2輪、4輪のイベントのオーガナイズを見ているとそうなってしまうのも致し方ないという側面も否定できない。モータースポーツは、業界をあげてそうした状況が改善されるように、権利を言う前に義務を果たしていかないといけないし、われわれもそれに向けて努力していきたい。

 富士でのステージに関してはまだ結論は出ていないが、しっかり線を引きながらやっていきたい。なお、もてぎの第7戦では自衛隊がフライバイしてくれる計画になっているほか、富士の最終戦ではレクサスさんにお願いして室屋義秀氏のデモ飛行を行なってもらう方向で調整中だ。なお、あくまで個人的な願望だがメインストレートにあるブリッジの下をくぐってもらえるとうれしいのだが……室屋氏本人はできると言っているのだが……。

──タイや、マレーシアなど海外のプロモーターとの話はどうなっているか?

坂東代表:感染状況が収まってきている日本に対して、それらの国ではまだそうした話をする段階にはない。また、こうした状況下で輸送のコストは2~3倍になっており、実際にレースをするとなるとプロモーターとその輸送費のコストをどうするのかという議論をしなければならないだろう。

 タイやマレーシアのレースに関しては来季はないことが確定しているが、2023年には感染状況次第ではあるがウインターレースとして1月~3月にかけて行ない、4月に岡山に帰ってきて開幕戦を迎えるという形で考えている。いきなりそういうと、チーム側も困ってしまうので、そういう計画ですよということをチームやマニファクチャラーなどに伝えているのが現状だ。

──25日にスーパーフォーミュラの大きな発表もあると聞いているが、ツーリングカーとフォーミュラなどが融合すれば、カーボンニュートラルフューエルのような取り組みは今後も増えていくか?

坂東代表:それはありえると思う。ツーリングカーとフォーミュラが融合すれば、海外に対して、日本でやってるモータースポーツがありますよ、ということを一緒にやっていけるし、その基盤になっていける。前向けに検討していきたい

未来のJAF-GT300はFIA GT3と同じような重量にして安全性の向上を目指す

──来年のカレンダー改訂版が出たが、5月の鈴鹿がニュルブルクリンク24時間レースとバッティングしていて、TGRやSTIなどのマニファクチャラーは困惑しているようだが、そこを調整する予定はあるか?

坂東代表:来年のカレンダーを調整したのは、日本国内で行なわれるビッグレースであるWECがSUPER GTの日程とバッティングしてしまったので、調整したということだ。JAFの方でもそれを望んでいるということもあり、こちらが動かざるを得ないという状況の中で調整を行なった。一部のマニファクチャラーの都合でそのレースの日程を変えるというのはどうか……と考えているが、もちろんお話し合いはしたいと思っている。

──JAF-GT300の将来についてのビジョンを教えてほしい。

坂東代表:これまでも申し上げているとおり、GT300に関してはFIA-GT3を中核にして、GTAとしてチームが作れるクルマとしてマザーシャシーやJAF-GT300の規定を考えてきた。そうした中でJAF-GT300に車両に関しては安全規定をどうするかを、これに準じてJAF-GTの車両を作ってもらう必要がある。今も谷田部でクラッシュテストを実行しており、重量が1200kgの車両に対して45kgを足してというテストをしている。

 それに対してGT3は1350kgになっており、それとの整合性をどうするのかという議論をしなければならない。ではJAF-GT規定でもそうしたテストをする必要があるのかなどをしっかり議論して、JAF-GTでもGT3に見合うような安全基準を作っていかなければいけない。

 今までJAFでやったことを否定するのではなく、それは時代時代に必要になる基準だから、今のGT3の基準に置き換えるなら、GT3はマニファクチャラーが責任をもってやることになっており、ではJAF-GTの中で日本のマニファクチャラーはどういう責任をもってJAFの規定を満たすのか、そこをきちんと議論していく必要がある。

 そうした安全はきちんと担保した上でモノ作りができるような体制を作っていかないといけない。これまでは軽いクルマを作ってぶっちぎってやろうというのはマザーシャシーなどの基本的な考え方だったが、今後はそうした新しい安全規定を満たした上で、クルマを作っていくとすると、次期マザーシャシーというのはGT3と同じぐらいの重さになってくる可能性が高い。

 そうしたことを満たさないと、GTAはホモロゲを出すことができないと考えている。それを実現した上で、もちろんコストの課題があれば共通パーツとして作るのもいいだろうし、いやそこは自前でやりたいというところは自分でやればいい。

 そうした責任をきちんと果たした上でやっていけば、チームが望むようなモノ作りができる。それをやってからチームに渡してあげれば、チームがこれまでどおりモノ作りができる環境を実現することができるようになる。

 そうしたことを実現していけば、GT3に十分対抗できるJAF-GTを今後も作り続けることが可能になるだろう。

──カーボンニュートラルフューエル、2022年は実戦で使うのか? それともテストだけか?

坂東代表:バイオが入ってくると二酸化炭素が発生する部分もあり、E-Fuelと呼ぶと、基本ベースは化石燃料ベースでE10、E15、E20などの呼び方もある。われわれが導入するカーボンニュートラルフューエルは、エタノールベースのバイオ燃料で、メーカーはゴミから作りますとうたっているものだ。

 来期の部分に関しては今月中に業者を決め、いくつかのテスト品が入ってきて、GT500のテストに入れていく、物流の問題だったりとか、うちが受け元になるけど、在庫をどうするのか、サーキットに送るのかなどは業者に委託していく。長く待ってるつもりはなくできるだけ早くやっていくつもりで、遅くとも2023年のレースから導入する。

──ツインリンクもてぎで、PCR検査で陰性の人を入場させる実証を行なうという話だが、それはワクチン2回接種者も含まれるのか?

坂東代表:スポーツ庁が言っているのは、PCR検査陰性とワクチン2回接種した人を対象に、すでにサッカーなどで実証している実験をモータースポーツでもやってみませんか?というものになる。

株式会社GTアソシエイション 代表取締役 坂東正明氏