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SUPER GT坂東代表定例会見、2022年の鈴鹿1000kmレース復活を模索も実現には課題

2021年9月12日 実施

SUPER GTをプロモートする株式会社GTアソシエイション代表取締役 坂東正明氏

 SUPER GT第5戦SUGOが9月11日~12日の2日間にわたり、スポーツランドSUGO(宮城県柴田郡村田町菅生)で開催されている。9月12日(日)13時30分からは決勝レースが行なわれ、2年ぶりの開催となるスポーツランドSUGOは大いに盛り上がっている。

 決勝レースに先立ちSUPER GTをプロモートする株式会社GTアソシエイション 代表取締役 坂東正明氏による定例会見が行なわれた。坂東代表は「鈴鹿での1000kmレースに関しては、従来やっていたSUZUKA 10Hは来年はやらないと聞いているので、真夏の鈴鹿での1000kmレースをどう想定していくかはこれから今後考えないといけないが、まだ決定はされていない」と述べ、レース主催者などは鈴鹿1000kmの復活を望んでいるが、GTAとしては可能性を探っており、チームなどの利害を調整した上で決定したいと述べた。

クールスーツが壊れたまま走り続けるなど、ドライバーが熱中症になる状況には規則で制限を

──冒頭に坂東代表から

坂東代表:2年ぶりにスポーツランドSUGOで開催できることがうれしい。お客さまに関しては最大5000人という制限の中で当日券もない状況下での開催となっている。

 鈴鹿での第3戦が終わった月曜日にPCR検査で陽性が1人、2人出た。このため今回は抗原検査を関係者全員に、レース72時間前となる金曜日に入場する段階で結果を示してもらう追加措置を行なっている。

 従来から行なっているPCR検査は2週間前にやっており、その段階で陽性であればドライバーや関係者の代役を立てるという意味で行なっている。今回行なった抗原検査は医療機関向けだったが最近では事業者にも販売されているというものでSUPER GTのドクターに頼んで仕入れて、各チームなどの健康管理者を通じて配布して、入場時にチェックすることにした。

 ここのサーキットは決して広くはないので、お客さまとの導線をきっちりと引っ張って、関係者は駐車場からシャトルバスとゴルフカートを移動してお客さまと接触をなくすようにしている。

 こうした取り組みはSUPER GTだけでなくモータースポーツ業界全体にとっても重要な取り組みだ。来年も「withコロナ」でやっていく状況が続くと考えられ、その中でイベントを続けて行く方策を探していかないといけない。

 そうした中であるが、今日のような晴れ晴れとした天気の中でレースができることをうれしく思っている。コースもピットも新しくなり、今後1コーナーよりのピットビルも改築に入っていると聞いている。スポーツランドSUGOさんにもがんばってっていただいている中、SUPER GTとしてよいレースをお客さまに提供していきたい。

SUPER GT広報:今回は、1700名がPCR検査を受けている。

──前回の鈴鹿のレースでは猛暑でドライバーも大変だった、クールスーツが壊れたまま走り続けたチームもあった。真夏になると同じような状況が起こるのではないか? 脱水症状を低減する対策などはあるか?

坂東代表:テクニカルな部分として、ドリンク、エアコン、クールスーツをきちんと確認してほしいということはチームに言っている。この間は無線もダメだったことで、ドライバーと連絡が取れずがんばってしまうという状況だった。それがドライバーとしての仕事であるので致し方ない面はあるが、クールスーツ、ドリンクがないときは、(ピットに)入れなければならないと、しなければいけない。今後はペナルティを出すなども考えていく必要があり、それを規則上でどうしていくかが今後の課題と言える。

 現状、マレーシアよりも日本の夏の方が暑いという状況になっており、鈴鹿でも(午後)2時にスタートしようが、3時にスタートしようが、0.5度しか温度が変わらないという状況で、スタート時刻で調整するのも難しい。レースのスタート時刻を早めに設定しているのは、各地に緊急事態宣言、まん延防止等重点措置などが出ている中で、関係者が現地に留まるのではなく、その日のうちに地元に戻れるようにと考えてのことだ。また、それがこの厳しい経済状況の中で経費の削減につながるとも考えている。

 ただ、チームの中には木曜日から準備に来ているところもあり、それだと滞在費の削減につながらない。今のように土曜日に練習走行、予選としているのは、金曜日に来て設営してということを意識してのスケジュールになっている。今後、暑さ対策も含めて、(スタート時刻をどうするか)はみんなの意見を聞きながらやっていきたい。

──それは、エアコンやクールスーツが壊れたままそのまま走り続けたり、チームによってはクールスーツの装備を外してしまうなども過去にあったが、そういうのが今後はダメということか?

坂東代表:それはアウトだ。みんな同じ条件でやるのだから、そういうことはあり得ないようにレギュレーションで決めて行く必要があるだろう。

SUZUKA 10Hに変わって鈴鹿1000kmレースの復活を模索も、実現には課題もある

──2022年のSUPR GT開催スケジュールが先ごろ発表された。坂東代表は見所も増える距離延長を会見で示唆していた。各レースの距離フォーマットなどはすでに決まっているのか? 5月の富士や8月の鈴鹿など、800kmや1000kmのレースの復活はあるのか?

坂東代表:それはまだ決まっていない。お客さまをどこまで入れられるのかを含めて決めていきたい。鈴鹿での1000kmレースに関しては、従来やっていたSUZUKA 10Hに関しては来年はやらないと聞いているので、真夏の鈴鹿での1000kmレースをどう想定していくかはこれから考えないといけない。

 距離数に関してはオーガナイザーの希望としてはそういう形があるのだと思うが、これから議論していこうと思っている。例えば仮に鈴鹿で1000kmをやる場合には、タイヤメーカーの対応、コスト、さらにはシーズンでエンジン2基までなどの制約なども検討していかないといけない。GT500は2基までという制限の中でやりくりをすればいいが、GT300に関しては使い切りなので、オーバーホールの時期なども考えないといけない。その辺りをよく健闘してから結論を出したい。

──抗原検査について直前にチェックしてNGになった場合は、入場できないという運用になるのか?

坂東氏:そのとおりだ。そうなった関係者は入場できない。この抗原検査は追加のチェックとして行なっている。すでに述べたとおり鈴鹿のレースから帰って来てから発熱してという関係者がいて、PCR検査をしたら陽性となった。つまり日曜日にサーキットにいたということで、クラスターの発生もあり得たということだ。

 今後もこれまで我々がやってきた関係者にPCR検査、お客さまとの導線を別けるという対策をベースにしてさらに追加で必要があれば、こうした措置を行なっていく。次戦はオートポリスだが、この抗原検査はオートポリスでも行なう。

 次戦のオートポリスは住所的には大分県で、現在のところ緊急事態宣言もまん延防止等重点措置も出ていない。このためオーガナイザーは大分県と話をして対策を行なおうとしている。しかし、現実的には多くの関係者がまん延防止等重点措置が出ている熊本県側に宿泊して通うことになる。そうしたことなどもいろいろ考えて、次戦では通常は1チーム40名のところを、30名という枠でやることにした。

 GTAとしては今後もプロモーター団体であることを意識して、自分達が作り上げてきた基本を大事にしながら、安心していけるようなイベント作りを目指していく。

──GTAの中でも体制変更があったときいているが、その影響は?

坂東氏:新しいことが始まり、新しいものが来るとギクシャクすることはあり、若干の体制変更があったことは事実だ。しかし、それは何かを作り上げるときに必要なことだ。

 常にGTAとしては新しいことに取り組んでおり、ここで実現したことがJRPやスーパー耐久など別のプロモーターにもよいと思われるなら真似してほしいと思っている。モータースポーツは国が関与するようなスポーツではないし、日本の中では大変だがプロスポーツとしてきちんと産業として作り上げ文化としなければならない。そうしたモータースポーツの核となるものを、きちんと作り上げたいと考えている。日本という島国の中で、インフラがどこに向かおうとしているのか、そういう模索をしながらやっていきたい。

 現在F1、WEC、WRCでもeFuelと呼ばれるバイオ燃料の導入が進められている。我々もそれを早くテストしていきたいと思うが、最初は輸入で始まるところになるので、1Lあたり1000円程度のコストがかかる。タイにフライアウェイで行く場合には2万5000Lを持って行っていたので、1レースあたりその程度がかかるということだ。

 将来的には国産で作れるようになるといいと考えているが、それには多大なコストがかかるので、自分たちだけで決めるというのは難しい。GTAとしてはGT500だけでなく、GT300も含めて使える環境技術を導入したいと考えており、早ければ2023年にはテストしたいと思っている。

 その後、2030年に向けて燃料電池やバッテリなどさまざまな選択肢の中から導入していきたいと考えている。

──コロナ禍で外国人選手が入国しにくくなっているなど、海外のモータースポーツと日本のモータースポーツの関わり方も変わってきている。GTAのそうした日本と世界のモータースポーツの関わりに関するビジョンを教えてほしい。

坂東代表:GT3の規定に関してはステファン・ラテル氏(SRO代表、SROはGT3の規格策定などを行なっている、GT300のGT3の性能調整はSROと協力)と常に密に連絡を取り合っているし、WECのGTカーがGTE規定からGT3への移行などに関しても注意深く見守っている。また、GT500に関しても、FIAの安全規定の中で行うなど、依然としてハードウェアとしては世界的な潮流の中で決めている。

 コロナ禍での入国制限に関しては日本特有の問題だ。14日間の隔離に関しては、スポーツ庁から出ているガイドラインでは(ホテルなど)ワンフロア貸し切りにするなどしなければ外には出さないとというもの。現状F1、WEC、WRCという世界戦はそうした基準をただすのが難しく掲載できていない。しかし、そうした基準をクリアすることができれば入れる可能性はある。

 あとはビザの問題をクリアすれば入れる可能性が出てきていると考えている。モータースポーツ議連や国などともお話しをさせていただきながら、前に進めていきたいと考えている。