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SUPER GT第2戦富士で17号車 Astemo NSX-GTが優勝 ホンダ佐伯LPL「FCYの幸運に恵まれた」

2021年5月4日 開催

優勝した17号車 Astemo NSX-GT(塚越広大/ベルトラン・バゲット組、BS)

 SUPER GT第2戦 富士500kmレースは、予選では下位に沈んだホンダの2台(17号車 Astemo NSX-GT、1号車 STANLEY NSX-GT)が決勝レースでは挽回するレースを見せ、FCY(フルコースイエロー、コース全体に黄旗が出され、速度が80km/hに制限される)が出されたタイミングにドンピシャでピットに入っていた17号車 Astemo NSX-GT(塚越広大/ベルトラン・バゲット組、BS)が、追いすがるGR Supra勢を振り切って優勝した。

 レース終了後にはホンダのSUPER GT活動をリードする本田技術研究所HRD Sakura LPL チーフエンジニア 佐伯昌浩氏、シャシー開発をリードする同 SUPER GT 車両開発担当 徃西友宏氏によりオンライン会見が行なわれたので、その模様をお届けする。

決勝レースで4位に入った1号車 STANLEY NSX-GT(山本尚貴/武藤英紀/牧野任祐組、BS)

サクセスウェイトを搭載したGR Supraと搭載していないNSX-GTが対等に戦えているというのが現時点での戦力図

――それでは2人に、今回のレースを振り返った感想を。

佐伯氏:レースが終わったばかりですべての情報が上がってきている状況ではないが、ホンダとしてはまず今シーズンの1勝目が第2戦で獲得できたのはよかった。17号車はFCYのタイミングでピットに入っていたという幸運に恵まれた部分もあるが、最後、塚越選手がよく踏ん張ってくれたと思っている。また、レース全体を通してみると、各スティントで上がり下がりというのがあって、路面変化に対して選択したタイヤが機能したかどうかでアップダウンがあり、このカテゴリーの難しさを再認識した。

 今日のレースの前半はホンダ勢が持ち込んで選択していたタイヤが路面状況にマッチした。1号車、8号車、17号車いずれもしっかり順位を上げるレースができたのは、そのことを確認できたというかたちになっている。予選がダメでも追い上げるレースというのをしていくために、今回のレース結果をさらに解析して次回の鈴鹿も頑張りたい。

徃西氏:レースの勝利にはいろんな彩りがありますが、GR Supraに関しては岡山で上位だった車両が仕上がりがいいと考えられますが、サクセスウェイトが乗っている状態で、サクセスウェイトがほとんど乗っていない状態のNSX-GTがなんとかやり合えるというのが今の2台の実力差だとしっかり再認識させられたレースだった。取れるタイミングでこうやってポイントを取り合いながらシリーズを戦っていくが、戦闘力自体をなんとか上げていかないと、なかなか苦しいレースが続くだろうということを再認識したレースだった。

――以前も前のクルマに追い付くとピックアップが発生したり、空力的な課題があって厳しいが、単独で走ると本来の性能を発揮できるというお話をされていましたが、今回のレースもそうした傾向だったという理解でよいか?

佐伯氏:確かに、例えば前半のスティントなどを見ていると、なんとか集団から前に出ることができた車両は、しっかりとその前のグループに追い付いているため、タイヤも含めてペースがよいパッケージングになっているクルマで、前に出ることができればよいペースで走ることができたということは確認できている。ただ、タイヤが路面温度にうまくマッチするタイヤでなければ逆に蓋をするような形になってしまうが、なんとかブロックしてしのげるというのは開幕戦に似た傾向だと考えている。

――第2戦を終えて、GR Supra勢との勢力図はどうなっていると考えているか?

佐伯氏:当然トヨタ勢は熟成が進んでいる車両が上位に入賞しているので、去年からずっと言っているがわれわれはまだ負けている部分も多い。われわれはいつもチャレンジャーな気持ちでトヨタさんに挑んでいくという構図は変わっていない。この差を縮めることができるように努力していきたい。

――17号車と1号車は2回目のピットストップ後、40周ちょっとを周回していた。燃費の方はどうだったのか?

佐伯氏:特に問題は無かったが、FCYが出るとしてさらに余裕ができるような流れになっていた。それなりにプッシュし続けるとセーブしなければいけなくなっていたかもしれないが、それはデータが集まったところで確認しようと考えている。

――FCYも出たので、17号車もずっとプッシュができていたという理解でよいか?

佐伯氏:その通りだ。

次戦の鈴鹿サーキットでの第3戦では、昨年2レースしてデータもあるので昨年並みかそれ以上の戦いができるようにしていきたい

終盤トップを走行していながら黄旗追い越しのペナルティにより8位でゴールした8号車 ARTA NSX(野尻智紀/福住仁嶺組、BS)

――昨日の予選後の会見ではブリヂストンを履いたホンダ勢は3台ともにポールを狙えるポテンシャルがあった中で、悔しい結果に終わったというお話をされていた。8号車に関しては残念な結果に終わったが、優勝した17号車と4位に入った1号車はペースの速いところを見せた。これは狙い通りだったのか?

佐伯氏:そうだ。予選で前が取れなかったので(追い上げを狙っていた)。さすがに第1スティントであそこまで17号車と1号車が追い上げていけるとは思っていなかったが、単独で走ればGR Supraの方はウェイトを詰んでいるので、それなりにタイミングを見ながら徐々に順位を上げていくというレースができた。思っていたよりも戦闘力があったという言い方をするとそれは言い過ぎかもしれないが、ちゃんと順位を上げていくレースができたという意味では想定よりもいいレースができたというように感じている。

徃西氏:われわれがレース前に想定していたのは、サクセスウェイトが比較的もっと軽めのGR Supra勢とかが、ぶっちぎっていくというレースだった。実際のレースはFCYなどの影響もあったが、開幕戦で活躍してウェイトが重めのGR Supra勢が第2戦でも仕上がりよくてライバルで、本来もっと速いペースで走れそうなウェイトが軽めのGR Supra勢はレースラップがあまりよくないという、そこはレース前の想定とは違っていた。そういうことも影響して順位は相対的に上げられて、序盤は特に1号車の山本選手と牧野選手のペースがよく、オーバーテイクもしてくれていたので、そういうところはやっぱり混戦になって仕上がりの良し悪し、タイヤの合う合わないといった、少しでもそういう要素が加わればレースはできるということころは確認できた。

 基本的には去年と展開というか力量差はあまり変わっていないということが確認できた。その意味ではNSXの中で仕上がりのよいクルマを3台なり5台なり揃えなければいけないというのと、仕上がりのよいクルマ同士でレースをした時に勝ちきるもう一押しになる戦闘力というのを何かあげていかないといけない。混戦の中でなんとか「レースのあや」でシリーズを戦えているという状況は去年とあまり変わっていない。

――まだまだ先の話だが、最終戦もここ富士で行なわれる。コンディションも違う部分もあるとは思うが、今回のレースを終えて最終戦に向けての展望というか見えてきた部分はあるか?

佐伯氏:今の時点では(予想するのは)難しい。去年の最終戦もウェイト無しの状態だと、対GR Supraという部分では負けていて難しい部分があった。その意味でこのカテゴリーの新規定の車両を造ったなかで、クルマ全体のスピードで負けていると認識している。そのためドライバーにもかなり負担がかかっている部分はあるので、後半に向けてそういう所を1km/hでも2km/hでも常に前にいけるような開発をしていかないといけない。その意味で最終戦の富士もやはり厳しいレースになるのではないかと今は考えている。

徃西氏:ほとんど同じだが、昨年もそうだったが最終戦の最後に前を走っていたマシンがチャンピオンみたいな去年と同じ展開で、場所が富士だと考えると、今年もやはりしんどいなというところはある。

 最終戦なのでエンジンも2基目に切り替わっているので、何かそのあたりでは一発逆転をお願いしたいですね。(エンジン担当の佐伯氏から「こういう話をするときの大西さんの目が無茶苦茶怖くてにらみ付けるように見ている」とツッコミが入り)すごい笑顔だ(笑)。

 今回のレースでよかったなと感じているのは、富士では去年4回レースをやりシーズンオフのテストも2回ぐらいやったのだが、NSXを使っているチームの皆さまが、場数を何度も踏んでいるサーキットだとチャレンジしてくれて、最初のセッションでは調子がわるかったりしても決勝までには上手く合わせてきてくれている。富士が苦手というのは変わらないが、苦手の中でもどうやって帳尻を合わせて高いレベルにもっていくかという観点でいうと、富士は苦手というのは少しずつ減ってきている。

――今回のレースからはやや離れるが、今回初めて導入されたFCYについてはどう評価されているか?

佐伯氏:やること自体はよくなる方向だと評価している。ただ、ドライバーからはいろいろ言いたいことは上がってきているようだ。例えば機能面で上手く機能しない部分があったのかどうかなどに関してだが、例えば表示がしっかり出ていたのか、後ろのクルマが全然カウントダウンを確認できていなかったので危なかったなどそういう話もあり、今日何度もFCYができたのでGTAの方でしっかり検証してもらった次回以降は直していければいいと考えている。

 また、セーフティカーを入れる場合に比べると、損をする車両、得をする車両の差は減っていくと考えている。ホンダ陣営としては17号車がとても幸運だったのは間違いないが、以前のセーフティカーでレースがひっくり返るみたいな状況に比べると損得はかなり小さいと考えている。その意味で(細かな調整は必要だが)全体としてはやっていくべきだと考えている。

――次戦の鈴鹿に向けてどうか?

佐伯氏:まだ今日のレースが終わったばかりなのでどうなのかは今日のデータなども分析しないと分からない。しかし、鈴鹿は昨年2回レースをやっているので、今年の開幕戦岡山国際のように昨年のデータがないコースとは違う。その意味ではある程度データがそろっているサーキットではあるので、去年並以上の成績が出せるように、セッティングなどをまとめて持って行きたいと思っている。