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SUPER GT坂東代表会見、クラス1の知的財産権はGTAに譲渡されクラス1の名称廃止 Yahoo! JapanのスポナビアプリにSUPER GTタブ登場

株式会社GTアソシエイション 代表取締役 坂東正明氏

 日本で最も人気があるレースシリーズ「SUPER GT」の開幕戦「2021 AUTOBACS SUPER GT Round1たかのこのホテル OKAYAMA GT 300km RACE」が4月10日~11日の2日間にわたり岡山国際サーキットで開催されている。4月10日は公式練習・予選が行なわれ、11日に開催されている決勝レースに向けたグリッド順位が決定した。

 決勝レースに先立ち、SUPER GTのプロモーターであるGTアソシエイション代表取締役 坂東正明氏による定例会見が行なわれた。会見では、今シーズンから新しい規定に移行するDTMのプロモーターであるITRから、これまで「クラス1」の名称で呼ばれてきた、SUPER GTおよびDTMの共通規則の知的財産権がSUPER GTへと移行され、「クラス1」の名称は廃止されることなどが明らかにされた。

 また、新しいファン獲得のデジタルコンテンツ施策としてYahoo! JapanのスポーツナビアプリにSUPER GTのタブが登場しており、そこにSUPER GT関連のニュースや独自のインタビュー会見などの動画コンテンツなどが用意されていることなどが明らかにされた。

クラス1の知的財産権はGTAに譲渡され、クラス1の名称は廃止される

──では冒頭に代表から挨拶を。

坂東氏:ようやく開幕を迎えることができた、岡山では2年ぶりのレースとなる。大阪や兵庫で感染者数が増えるという状況の中でコロナ感染対策をやりながらという、きつい中での開幕となる。感染対策はきっちり行なっており、パドック内に入る観戦者は全員2844名+αのPCR検査を実施した上で実施している。サポートレースとなるPCCJの関係者も、岡山国際サーキット、VIPゲストなどの関係者もこれには入っている。お客さまに関してはPCR検査を行なってはいないので、パドックの中と外という仕切りをしっかりして導線を引いて対応するという形となる。

──GT500とのITRと共同でやってきたクラス1の現状について教えてほしい。

坂東氏:ご存じのとおり、ITR/DTMとの新しいカテゴリとして5月に開幕して始まっていく。クラス1というレギュレーション、知的財産権に関しては我々が譲渡してもらうという形でライセンス契約をした。メディア関係には両方で発表しようということで話し合いをもっている最中だ。知的財産権を譲渡という形でやっていく。

──日本がクラス1をになっていくということか?

坂東氏:クラス1を双方でやってきたが、今後はクラス1という呼び方は使っていかない。レギュレーションとしては一緒だし、サプライヤーもこれまでどおりだが、クラス1という呼び方をせず、SUPER GT/GT500レギュレーションなどの名称で呼んでいく。

──今回の岡山ではGT500では出力コントロール、GT300では重量という性能調整を行なっているが?

坂東氏:昨年の最終戦でGT500の速さを見て検討することにした。そこからシーズンオフの開発テストをやって空力なども昨年の最終戦よりも高い性能になっている。その速さを持って、ここ(岡山国際サーキット)のようなエスケープゾーンが少ないところを走らせるとことに対して安全性に課題があるのではないかと考えた。そこで出力を抑えようということで、マニファクチャラー3社の賛同も得て、メーカーテストやタイヤテストなどでも燃料リストリクターで制限することにした。通常は95kgだが、それを90kg/hにしている。実際はテストでは何台かを88kg/hにしてもらって、様々検討してみたが90kg/hを使うことに決めた。

  GT300に関しても同じ考え方だ。自分としては表と裏のストレートでのトップスピードを抑えられるように、リミッターを入れようかと思っていた。しかし、トルク重視のクルマだったり、車速重視のクルマだったりとクルマによって特徴が異なっているので、単にトップスピードを抑えただけでは意味がない車両もあることが分かり、性能調整委員会で話し合った結果ウエイトを乗せようということになった。当たったときのデータなども出してもらい、衝突したときのインパクトも車速が出ないので少なくすることができると判断した。その結果はコースレコードなどの結果は出なくなるが、安全性は上がると判断した。ただし、この措置は岡山だけのもので、次のレースの富士では元に戻すことを検討している。それ以降に関してはサクセスバラストが乗ってくるので、必要ないし、富士や鈴鹿などはエスケープゾーンで対処できると考えている。

──12月20日に、トッドから新たな燃料に関しての件、F1に関してはバイオフューエルを使うとなっているが、すでにバイオフューエルはエンジンメーカーに比べられて開発が進んでいる。IMSAでもE10やE20といったバイオ燃料の導入が進んでいる。SUPER GTにおけるカーボンニュートラルの取り組みは?

坂東氏:E10やE20に関しては昨年確認しており、国内の供給メーカーでもE10に関しては確実にできるというのが認識だ。しかし、燃料のコストに関しては現状課題があり、エントラントの負担にならないように検討していかないと行けない状態だ。

 カーボンニュートラルに関してどう考えていくかは、何もバイオ燃料だけではないと思う。例えば、(同じ燃料量で)より長い距離を走れる燃費のよいエンジンを走らせる、現在年間2基となっているエンジンを1基にするというのもありだし、燃料が少なくてすむように距離を短くするのも1つの考え方だろう。

 タイヤに関しても、ソフトではなく長い距離を走らせるタイヤを開発してもらえるようなレギュレーションにするのもありだろう。2024年の新規定に向けてはマニファクチャラーと話をしており、コストダウンと環境に配慮したレースにしていきたいと考えている。

 このような状況下のレースだが、来年に関しては距離を少し長くしていきたいと考えている。そうすることで、メーカー側も低燃費の方にふらざるを得なくなる、そんな状況にしていきたいと思っている。そうするとタイヤの方もロングランを重視しなければいけなくなり、必然的に予選で使うタイヤのどちらかをスタートタイヤで使わないといけないので、これまでのようにレースの3分の1でタイヤ交換に入るという作戦も通用しなくなり、よりロングを重視したタイヤ開発に移っていくことになるだろう。

 昨年の最終戦ではセーフティカーのGR Supraに、天ぷら油から作った燃料を利用した。天ぷらを食べないとできない燃料だが、テスト的な取り組みとしてやってみた。今後もそういう取り組みは検討していきたいが、チームの負担がなければ導入していきたい。ただし、短期的な視点ではなく、あくまで中長期的な視点で考えていきたい。石油連盟などとも話をしながら進めていきたいと思っている。

Yahoo! JapanのスポーツナビアプリにSUPER GTのタブができ、独自の動画コンテンツなども配信されている

──有観客での開幕戦。だが観客とパドックは完全に分離した形になっている。

坂東氏:モータースポーツ業界として、SUPER GTは国内レースの範になるような独自のロードマップ、ガイドラインを引いて昨年から感染対策に取り組んできた。今回やったPCR検査でも、昨年はパドックに入場していない関係者が感染していることが判明したが、この指針を今後もしっかりやっていくことが大事だと考えている。他のレースでは検温や問診だけだが、我々はきちっとしたガイドラインを引くことでやっていきたい。

 野球やサッカーなどは潤沢な資金があるのでもっと大規模なPCR検査を行なっているし、FIAでも国際レースは96時間前のPCR検査をというガイドラインは出しているが、我々はそこまで潤沢な資金がある訳ではないので、きちっとした自己管理をやって頂き、それを継続していかないといけないと考えている。

 次戦の富士に関しても同じような導線の引っ張り方になる見通しで、2F、3FのVIPルームにはチームのスポンサーなどのお客さまが入っていただく形になるが、そうしたVIPゲストはPCR検査を行なわない形になるので、VIPゲストはパドックには降りられないという形で引き続きやっていく。また、PCCJやFIA F4などの関係者は全員PCR検査を受ける形となる。

──外国籍選手や海外のレースに出ていた選手の入国について、ほかのスポーツでは14日を特例で短くするという事例もあるが、GTAからの関係機関への働きかけなどは行なっているか?

坂東氏:現状海外から入ってくる場合には2週間の隔離が必要だが、野球やサッカーなどではPCR検査を2回やるという前提で1週間に短くしてもらったりしている。その件に関して14日に自民党のモータースポーツ議連で会合があり、JRP、MFJとGTAで、海外からのドライバーやパーツのサプライヤーなどの関係者が入ってくるときに、我々独自の管理体制とPCR検査を2回受けるなどのお願いをしようと考えている。そうしたお願いをどこに提案するのかはまだ決まっていないが、スポーツ庁などに提出する形になると考えている。

──関係者のPCR検査に関しては今年すべてのレースで行なうのか?

坂東氏:少なくとも第3戦の鈴鹿戦までは続けて行きたい。コストの問題もそうだが、継続してやるためにはさまざまな課題があるし、議論がある。ただ、PCR検査を行なうことで、自己管理の状況はよくなっているので、5月末の第3戦までは続けて行く。

──SUPER GTのコンテンツのデジタル化について教えて欲しい

坂東氏:自分はアナログな人間で、アナログの中で14年やってきたけどこれが好きだ(笑)。だが、人に伝えるとなると、お客さま、映像などの方で自分には分からない進化が世の中にはあって、実際自分の携帯も間もなく使えなくなってしまう(筆者注:広報氏によれば坂東代表の携帯電話はいわゆるフィーチャーフォン=ガラケーで、フィーチャーフォンの回線である3Gは数年後に電波が停波される予定)。そのような状況下でデジタルコンテンツへの取り組みを強化している。

Yahoo! Japanのスポーツナビアプリ。コンテンツからSUPER GTを選んで表示できるようになっている

独自のドライバーインタビューなどの動画コンテンツ

 例えば、Yahoo! Japanのスポーツナビアプリを起動してもらうと、そこにモータースポーツ、F1と並んでSUPER GTというタブができている。すでに昨日の予選などの結果も掲載されており、予選までの状況を確認することができるようになっている。今後もフリーで見てもらえるコンテンツを増やし、充実させていきたい。また、ドライバーの会見もF1のような格好良い形で配信できるように工夫している。

 また、公式テストではオンボードのカメラを360度カメラにする実験を行なった。カメラを動かすと、ドライバーの表情が見ることができたり、サイドバイサイドになっている他車を見たりということが可能だ。まだ生放送で流すというのは難しいが、VRのヘッドセットを付けて見ることができるようにするなったりする。

 こうした取り組みを行なっているのは、これまでモータースポーツに興味がなかったようなお客さまにもSUPER GTに興味を持っていただきたいからだ。その上で、SUPER GTに興味を持っていただいて、現在の大事なコアなファンのみなさまがそうしているように、サーキットに来ていただきたい、そう考えているからだ。コストの問題もあるので何もかもは難しいが、よりお客さまに対してどのように伝えていくことができるか、フリーに使えるモノをより多くやっていきたい。