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SUPER GT坂東代表会見、「SUPER GTのカーボンニュートラルの取り組みは2024年にe-Fuelの導入から始めていく」
2021年5月4日 14:20
- 2021年5月4日 実施
日本最高峰のレースシリーズ“SUPER GT”の第2戦となる「2021 AUTOBACS SUPER GT Round2 たかのこのホテル FUJI GT 500km RACE」が、5月3日~5月4日の2日間に渡り、静岡県小山町の富士スピードウェイにおいて開催されている。5月4日は14時30分から500kmの決勝レースが行なわれ、午後6時前後にゴールを迎える予定になっているので、「J SPORTS」の放送(J SPORTS 4で14時から)やJ SPORTSオンデマンドによるストリーミング配信などで、ぜひ楽しんでいただきたい。
その決勝レースに先立ち、SUPER GTのプロモーターであるGTアソシエイション(以下GTA) 代表取締役 坂東正明氏による定例会見が行なわれた。この中で坂東氏は、GTAのカーボンニュートラルへの取り組みや、タイヤに関するレギュレーション、さらには2022年に予定しているレース距離の延長などに関するGTAの見解を説明した。また、坂東代表は「SUPER GTのカーボンニュートラルの取り組みは、GT300があることも考慮に入れ、GT500の車両規則が改定される2024年に合わせてe-Fuelの導入を検討していきたい」と述べ、2024年にe-Fuelと呼ばれるバイオマスのアルコール燃料とガソリンを混合した合成燃料の導入からスタートしていきたいという意向を明らかにした。
ここではその坂東代表の会見の模様をお伝えする。
SUPER GTのカーボンニュートラルの取り組みは2024年に予定しているGT500車両規則改定に合わせてe-Fuelの導入から
──それでは冒頭に代表から一言。
坂東代表:コロナ禍の制限がある中ではあるが、レースが開催できることを非常に嬉しく思っている。どのようにお客さまにお入りいただくかを制限の中で色々考えながらここに来た。今の環境の中では、必要な情報をできる範囲の中で広く伝えていただくことが大事だと考えている。報道の皆さまにもご協力いただきながら伝えいきたい。
──GTAとしての電動化、EVやカーボンニュートラルへの取り組みについて教えて欲しい。
坂東代表:トヨタ、日産、ホンダといった3メーカーともどのようにカーボンニュートラルを実現していくのかということについて考えている。まずは2024年に(筆者注:2024年にはGT500の車両規則の改定が予定されている)カーボンニュートラルについての取り組みを1つやりたいと考えている。その選択肢はEV化、燃料電池、e-Fuel(バイオマスのアルコールとガソリンを混合した合成燃料)などが考えられる。
欧州には欧州の、日本は日本としての国家の方針などもあると思うので、それにしたがって3つのマニファクチャラーが2024年から協力して進めて行くという考え方を持っている。例えば、EVに関しては、3つのメーカーそれぞれがやると非常にコストが高くなってしまう。そう考えるとEVを共通パーツとして扱えるようにしていくのが望ましいと考えている。燃料電池に関してはモリゾウさんが乗りながらテストを行なっていくことを既に発表している。
そういう環境の中で、この国のインフラが、EVなのか、燃料電池なのか、どの方向に整備していくのかが大事であり、その選択肢の開発をレースの中でやっていければと考えている。
ただ、SUPER GTに関してはGT300のことも考えないといけない。GT300にもカーボンニュートラルという方向性の中ではe-Fuelから入っていくのがいいのではないか。そして日本の方向性を考えながら、新車の開発に役立つようなバックボーンとなるレースにしていく必要がある。2024年には自分の考えの中ではe-Fuel、その後2027年に向けて考えていき、2030年にはカーボンニュートラルでできるようにと検討していきたい。
──スーパー耐久の富士24時間レースで、水素エンジンを搭載したレース車両がデビューすることが話題になっている。SUPER GTとして水素エンジン搭載車をどのように考えているか?
坂東代表:水素の利用に関しては、今から10年ほど前だったと思うが、水素タンクを設置して水素で走るバスを持ってきて、みなさんを乗せてコースを音なしで走る取り組みなどを行なっている。現在国産車の中では新しい「MIRAI(ミライ)」が発表され、水素の圧力が上がるど燃料タンクなどが新しくなっている。それにより(トヨタの水素エンジン搭載レーシングカーは)水素の直噴エンジンとなっていることが大きな特徴だ。こうした直噴は欧州でもBMWやボッシュなどが2~3年前からテストしている。それが実際の形としてスタートして、それが24時間レースに出てくるというのはすごいことだ。
ここがスタートになってどのように動いていくか、そこに注目している。繰り返しになるがそれを動かしたり、走らせたりすることはすごいことだ。環境ということを考えるとそれはとても重要だが、我々にはGT300もあり、それを考慮に入れるとまずスタートはe-Fuelがよいと考えている。
──第1戦を終えて、勝てなかったタイヤメーカーはタイヤを1セット追加できるというブリテンが今回のレースに向けて出されているが?
坂東代表:その規定は昔からある。昨年も、一昨年もそうなっており、今年から始まった規定ではない。本来は週末に6セットを持ち込むことが可能になっているが、開幕戦に勝利したブリヂストン以外は1セットを追加できる、そういう形になる。GT500でいえばブリヂストンとミシュランが強く、そこに頑張るヨコハマとダンロップという構図になっている。
6セットのうち、3セットずつをソフトとミディアムという形で持ち込むが、そのセットは金曜日にマーキングして予選のQ1、Q2で利用するタイヤを使い分けていく。予選後に抽選で選ばれた方を決勝レースのスタートで利用するが、それがソフトだったとすると、レースに選ぶタイヤをそれと同じにすることもできるし、+1セットがあれば後半にもう少し別の種類のタイヤという作戦が可能になるし、前半のタイヤを外してしまったとしても、+1セットあれば別の種類のタイヤをテストするそういう考え方も可能になる。
特に来季に関しては走行距離が長くなる。練習で2セット、Q1、Q2があると、どちらかがレースのタイヤになる。ソフトが持つならそれをそのまま使うが、ソフトが厳しいなら途中でミディアムに変えるというのが常道だろう。例えば、1/3をそれでいくと、約100kmと予選をソフトで、残りの200kmを……となるが、350kmになると1/3でピットインすると燃料が持たなくなる可能性もあるし、タイヤも半分ぐらいまでいけるタイヤにしないといけなくなる。それにより持ち込みタイヤの本数が同じなら相対的に削減になるし、燃費も伸ばさないといけない。そうすれば、マニファクチャラーは燃費をよくする必要があるし、タイヤメーカーはより長く走れるタイヤを造ってくる必要がでてくる。
──可能性が一番あるのは2024年にe-Fuelの導入というお話しだったが、米国で導入が進むE20などを考えているのか?
坂東代表:E10やE20などのe-Fuelを検討している。現在300kmレースでは1レースあたり2万5000リッターの燃料を必要としている。例えばタイ大会などではその量の燃料を船に乗せて運んでいる。GT500に関しては3つのマニファクチャラーで話あって決めればいいが、GT300のことを考えると、FIA-GT3などもあり、欧州側の事情なども考えるといきなりEVというのは難しい。オクタン価やE10、E20などをどのあたりにするかは経産省の許す部分でカーボンニュートラルを考えていかないといけない。
2022年にレース距離は50km増えるが、チケット料金は据え置きをオーガナイザーには強く希望と坂東代表
──FCY(フルコースイエロー)について、今回のレースから導入されると聞いている。なぜこのタイミングで導入になったのか教えて欲しい。
坂東代表:これまでシステム側の準備が整わなかったからだ。我々のシステムはMYLAPSのアンテナ、SBGのソフト、あとはルミランプスの順位表ということでやっているのだが、この組み合わせでやっているのは我々だけだ。グローバルに見ればF1で導入されているシステムが一般的だが、日本では電波の問題で利用することができない。このため、こういうチョイスになっている。
これまである程度の費用をかけて準備を行なってきた。富士に関しては2020年から準備をしてきたし、鈴鹿に関してもできるだろう。しかし、オートポリスやスポーツランドSUGO、岡山国際などに関しては電波状況なども確認したが、もう少しやらないと行けないという状況だ。
昨日のテストの状況を見ていると、そんなのムラも無く、セクターで電波の強いところ弱いところもあるし、遅延があったりすることもある。GPSで車速も拾える、拾えないなどもあったりする。中には遅いというドライバーもいるかもしれないが、今後いろいろと詰めていかないといけないと考えている。
大事なことはFCYを利用することで、できるだけ速く通常のレース状態に戻すということだ。それで何かが起きないのかと言えば、それは起きるだろう。普通に考えれば、事故が起きたらピットに入るということになるので、当然順位の変動はあると思う。今後クオリティを上げていくところではポストとの連動、オフィシャルの振るイエローフラッグとの連動、それをきちんとものにしていきたいと思っている。それはテストやりながら実戦で使うという格好になる。
──タイヤについては一部のチームからもう少し公平にならないのかという声もあがっているようだが……
坂東代表:SUPER GTは異種格闘技であり、ガチンコ勝負だ。それにBOP(バランス・オブ・パフォーマンス)をこれ以上入れるということは考えていない。GT500で言えば、ヨコハマ、ダンロップの勝ちは多く無いかもしれない。ダンロップが勝つのは10年に1度という言い方をされているが、そう言われながらも近年ダンロップがどんどんよくなっており、予選で前の方に来るようになっている。そうした努力を続けていくのが日本の産業であり会社である。そうした日本の会社がある以上、ワンメイクにするつもりはない。勝っているブリヂストンがいるからそれに追い付こうと必死に開発をしながらヨコハマもダンロップもやってきている。ミシュランだって、こうした状況の中でフランスから飛行機でタイヤを持ってくることがどれだけ大変なことか……。
レースである以上勝ち組、負け組あるが、日本の産業として日本のタイヤメーカーがある以上それを変えるつもりはない。GT300の中ではブリヂストンがヨコハマがと言われている所もあるが、ヨコハマが台数が多いからワンメイクにした方がいいということなら、ブリヂストンやダンロップは何だったのかということになる。そういう競争原理の中で、みな企業努力をしている。それをないがしろにするというのは私の中ではない。「もうできません、無理です」と言ってくるマニファクチャラーがいるならそれは別途検討するが、そこまではこのままやっていきたい。
──先ほど350kmにレース距離をというお話しが出たが、それは全レース350kmになるということか、それともレースによって変わってくるのか?
坂東代表:例えば300kmというレースに対して350kmという形を考えている。燃費や燃料タンクの大きさギリギリのところを選んだりとか、タイヤもその距離に合わせたタイヤ造りをしていただくという形になっていくと考えている。このため、現在500kmであればそれが560kmになるかもしれないという形を考えている。
──観客としてはレース距離が長くなるのは歓迎してよいと思うが、一方エントラントとするとコストの上昇があるのではないかと思うが、その点はどうお考えか?
坂東代表:コストに対する部分はタイヤの持ち込み本数は一緒で、燃料が少し多くなる程度で、ブレーキなどの消耗品もやや増えるが8戦やっても400km程度が増えるぐらいで、以前はどっかへいってテストをやっていたので、それがなくなっていることを考えれば、コストが大きく増えるということはないと考えているし、エントラントの皆さまにもその距離であれば納得していただけるのでは無いかと考えている。
──観客としては観戦チケットの値上げということが無ければ問題ないと思うが、その点はどうか?
坂東代表:そこはGTAが決める部分では無く、オーガナイザー(レースを主催している法人のこと、一般的にはサーキットの運営会社)が決めるので、声を大にしてオーガナイザーに言って欲しい。勝手にあげたりとか、さまざまな条件を変えたりとか、今はグリッドウォークが難しいとかあるが、やはりそのオーガナイザーの大小にも関わる部分だし、施設の所の設備投資もあるので分かるのだが、お客さまのことを第一に考えて欲しい。
例えば、今の状況では長い間お客さまは椅子に座ってレース見ていただく形になる。もし雨が降ってきたりすればとても大変だ。オーガナイザーにぜひご配慮いただきたいのは、そうしてお金を払って見ていただけるお客さまに対して、もっともっと設備投資も大事だし、来ていただいたお客さまがどうしたら楽しんで見ていただけるのか、もっともっとみんなで考えていく必要があると思う。そしてそれを発信していただければ、少しずつよくなっていくと思っている。
──最後に代表から一言
坂東代表:2年ぶりの500kmとなる。今後コロナ禍が収束に向かっていき、再び満席のお客さまの中でやれることを願っているが、苦しい中でも今の環境の中でしっかりと対策をしながらイベントを運営していきたい。鈴鹿へ向けて、三重の方がどんな状況になるか次第で変わってくると思うが、パドック内はこれまで同じようにPCR検査を行ない、何人たりとも陽性を出さないという形を目指してやっていく。限られた中だが、多くの人へ伝えていただけるように、報道の皆さまにもお願いしたい。