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豊田章男社長、「今までのトヨタのEVには興味がなかった。これから作るEVには興味がある」と質問に対して回答
2021年12月14日 21:57
- 2021年12月14日 発表
トヨタ自動車は12月14日、バッテリEV戦略に関する説明会を開催して16車種のBEV(バッテリ電気自動車)を公開。2030年までのBEVの生産台数を約200万台から約350万台に150万台引き上げ、2030年までの電池への投資も1.5兆円から2兆円へと5000億円増額。BEV関連の研究・設備投資で約4兆円、BEVを含む電動化投資は約8兆円になることを発表した。
詳細は関連記事でお届けしたとおりだが、質疑応答において豊田章男社長に鋭い質問が投げかけられた。質問をしたのは、モータージャーナリストで自動車研究家の山本シンヤ氏。山本氏は、「今回かなり具体的な話がたくさん発表されて僕ら驚いているんですけど、ただ僕がちょっと気になるのはまだ社長の本心が聞けてないなというところだと思ってます」と質問を切り出した。
山本氏は、「例えば水素とかハイブリッドの場合は割と思いであったり、気持ちっていうのもかなり本音としてあるようなところで発表されていると思うんですけど、EVはやってますよという、割とビジネスライクというかリアリティというかその辺のコメントが非常に多いような気がしてます。今回お聞きしたいのですが、社長にとってEVは好きなのか嫌いなのか、こういうところを社長として。答えにくいのであればモリゾウとしてでも構いませんので、お答えいただけるとうれしいです。すよろしくお願いします」と質問を続けた。
よく知られているように、豊田社長は世界トップレベルの規模を誇るトヨタ自動車の社長であり、日本の自動車業界をまとめあげる日本自動車工業会の会長でもある。でありつつも、モリゾウ選手として、一人のクルマ好きとして自らステアリングを握るジェントルマンドライバーである。その姿勢は日本のクルマ好きの共感を得ているほか、世界的にも評価され「2021 ワールド・カー・パーソン・オブ・ザ・イヤー」を受賞するほど。山本氏は豊田社長のほか、レース現場でのモリゾウ選手もよく取材しており、そうしたことから「社長にとってEVは好きなのか嫌いなのか?」と直球の質問を投げかけた。
豊田章男社長は、一瞬考えた後、バッテリEVに関しての自分の気持ちを語り始めた。
豊田章男社長の回答
素晴らしい質問ですね。あえて言うならね、あえて言うなら、今までのトヨタのEVには興味がなかった。そして、これから作るEVには興味があるというのが答えだと思います。
それはなぜか。私が最初に乗ったトヨタのEVはRAV4 EVですけど、あのときはまだ私自身クルマの運転なんか分かっていない時代でした。あのときの試乗感想なんて、どうしようもないと思います。
ある程度レベルアップしたのが86の電気自動車を仕立ててくれて、ここのメガウェブで初めて乗ったのが何年前か忘れましたけど。そのときの私のコメントは「電気自動車だね」って言ったんですよ。
私、電気自動車になりますと、すべて電気自動車になっちゃうんですね。そうなるとわれわれレクサス、トヨタというブランドメーカーでやっている中において、トヨタらしさ、レクサスらしさを追求しているメーカーが電気自動車になるとコモディティになってしまう。
これが山本シンヤさん言われるように、ちょっとビジネス的には応援するけど、モリゾウとしてどうなのよという本音を見抜かれたんじゃないかなと思ってます。
私はマスタードライバーをやってますけど、マスタードライバーでのトレーニングや技能習熟はずっとFR車でやってまいりました。
ところがFR車からですね、最近自ら出場するラリーやスーパー耐久、モータースポーツの場においてはFR車から自らの相棒を4WD車に変更して乗り始めてるんですね。
そこでこのマスタードライバーの感性がちょっと変わってきたところは、電気モーターの効率というものがガソリン車に比べてはるかに高いと思います。ある面、4WDのプラットフォームを1つ作れば、制御によってFRにもなれば4WDにもなる。そんな制御をもってすれば、モリゾウがどこのサーキットへ行っても、どこのラリー場に行っても結構安全に速く走れるんじゃないかなと。
かつですね、全日本ではノリさんが優勝されました(勝田範彦選手が4WDのGRヤリスでチャンピオンを獲得)。そして、サーキットの場ではルーキーレーシングのドライバーが活躍しているわけですが、そういうプロのドライバーの運転技能というのを織り込んで、より安全でよりファントゥドライブなクルマができるんじゃないのかなという期待値とともに、私のようなジェントルマンドライバーがドライであろうがウェットであろうが、サーキットであろうが山岳路であろうが雪道だろうが、いろんな道をより安全に速く走れるファントゥドライブなクルマが、このプラットフォームによって作れる可能性が出てきた。これが大きな変化点だと思います。
ただ制御だけで味付けしたところで、伸びたうどんに天ぷらを入れているようなもんなんですね。ですけど、この数十年TNGAはじめトヨタはベース骨格、足まわり、ボディ剛性など、本当にもっといいクルマを作ろうよという掛け声のもとに、本当に地道な改善を積み重ねてまいりました。
下山テストコースも作り上げ、よりクルマに厳しい条件でのクルマ作りが始まっております。そんな中で、そろそろですね、より安全な、そしてまた速く走れ、そしてよりファントゥドライブなクルマを作れるということで、これからのBEVも含めトヨタのクルマには期待をしてる。
大きくビジネスマターではなくて、ドライバーモリゾウとしてもそんなクルマあったら面白いなと。将来、自動運転になっても、「やっぱりクルマ屋が作る自動運転でちょっと違うよね」というところを織り込むためにも、BEVだって本気でやってますよ、FC・PHEVも本気でやってますよ、ハイブリッドだって本気ですよと。
何よりも音が出るガソリンくさいガソリン車だって、まだまだ本気ですよ。というようなところは、一切モリゾウとしてもトヨタの社長としても変化はございません。ただ、しつこいですけど、どの分野においても仲間とともに一生懸命やっています。
そしてお客さんに選んでいただけるものは、「笑顔になっていただきたい、商品を提供したい」と思っておりますので、それはやっぱり作り手が一生懸命気持ちを込めて作ったものを提供していく、それを選んでいただく。
そこは(お客さまの選択に関しては)われわれではどうしようもないですから、全方位でやらしていただいているということであります。
【お詫びと訂正】記事初出時、山本シンヤ氏の質問に誤字がありました。お詫びして訂正させていただきます。