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パナソニック、ドライバーモニタリング機能搭載のAR対応HUDなど「CES 2022」で車載関連製品を相次いで発表

2022年1月4日(現地時間) 開催

Panasonic Automotive Systems of AmericaのScott Kirchnerプレジデント

HUDに直接ARカメラを搭載し、ドライバーが見ている場所を追従

 パナソニックは1月4日(現地時間)、米ラスベガスで開催しているCES 2022の同社プレスカンファレンスにおいて、車載関連製品を相次いで発表した。2021年のCESで発表した車載用AR対応ヘッドアップディスプレイ(HUD)を進化させた「AR HUD 2.0」では、アイトラッキングシステムの導入によってドライバーに対して視覚的に安全性を示したり、障害物を警告したりといったことを実現。移動中にドライバーが首を傾けても視差補正やダイナミックオートフォーカスによって映像を鮮明に表示。個人認証や眠気検知などのドライバーモニタリング機能も搭載したという。

 Panasonic Automotive Systems of AmericaのScott Kirchnerプレジデントは、「AR HUDは、パナソニックの安全への取り組みを示すものである。現在の自動車のコクピットは、ジェット機のコクピットのように複数のスクリーンを使い、膨大な情報を伝えている。AR HUDによってその課題を解決し、より自然で直感的なものにし、認知に対する負荷を軽減し、より安全で快適な運転体験を生み出すことができる」と述べた。

 ここではPhiarの技術を採用。同社のGene Karshenboym CEOは、「AIを使ったナビゲーションによりクルマのまわり全体を感知し、現在地や次の曲がり角、周囲に何があるのかを把握することができる。通行止めや工事、交通状況など、リアルタイムで変化する地図情報も提供できる。また、AR HUD 2.0ではドライバーの視線を確認するために、HUDに直接ARカメラを搭載し、ドライバーが見ている場所に追従できるようにしたのが大きな進化」などとした。

「AR HUD 2.0」ではアイトラッキングシステムを導入
AR HUD 2.0による認識の様子

 パナソニックは、車内ソリューションの実現に向けて2018年からAmazonとの協業を進めてきたが、今回のCES 2022ではAmazon Alexaを通じて音声による充電スタンドの検索や、エンターテイメントへのアクセスなどが行なえるSkipGen in vehicle entertainmentをさらに進化。新たなTeachable AIによってインテリジェント性を高めている。例えば、車内でAmazon Alexaに「暑い」と話しかけるだけでこれまでの対話から学習し、車内の温度を5度下げたり、窓を開けたりするといった動作をドライバーの好みに合わせて行なう。

 Kirchnerプレジデントは、「いまや自動車は、オフィスに代わって自宅以外で最も長い時間を過ごす第2の空間となった。それに伴い、自動車にはより高い安全性や快適性、利便性に加え、エンターテイメント性も重視されている。新たな期待に対してAmazonとともに実現を図る」と語った。

SkipGen in vehicle entertainmentでは音声で駐車場を予約できる

 さらに、ESL STUDIO 3D Signature Editionを2022年の新型アキュラ MDX Type Sに搭載することも発表した。同製品は25個のスピーカーや2台のアンプ、1008Wのパワーを誇るスピーカーシステムであり、グラミー賞を受賞したプロデューサーであるElliot Scheiner氏とのパートナーシップによって実際のスタジオ品質のサウンドを運転席でも楽しめるようにしたものだ。

 新たなカーボンファイバースピーカーダイアフラムテクノロジーにより、完璧なバランスとユニークなスタジオサウンドを提供するほか、ハイライン・ウルトラスリムスピーカーを搭載し、より没入感のあるリスニング体験を提供。アコースティック・モーション・コントロールにより優れた透明性を提供し、新しいフロントとリアの3ウェイキャビンアーキテクチャーによってより優れたリスニング環境を作り出すことができると説明した。

ESL STUDIO 3D Signature Editionを2022年の新型アキュラ MDX Type Sに搭載することを発表

 また、Tropos Motorsとの協業によって車両管理・運行管理アプリケーション「One Connect」を進化。ドライバーの安全、貨物のセキュリティ、車両のメンテナンス、コストとエネルギーの利用を監視することができるようになるとしており、「オペレーターは車両を効率的に管理し、稼働時間を最大化することができ、所有コストの改善に貢献できる」とした。

車両管理・運行管理アプリケーション「One Connect」

 さらに交通管理システム「CIRRUS by Panasonic」では、コネクテッドカーデータプラットフォームとして、自動車と道路が接続することで安全で渋滞の少ない道路を実現し、毎年30億ガロンの燃料のCO2排出量を削減していることを示した。今回のCES 2022では、オンボードユニットを搭載した自動車と、ロードサイドユニットを搭載した交通システムを活用したシーンを紹介。ハードウェアだけでなく、ソフトウェアやクラウド分析、AI学習などを用いた統合ソリューションとして提案している。

交通管理システム「CIRRUS by Panasonic」

 2輪車ではTotem USAとの協業により、UL認証を取得した初の家庭向けeBike「Zen Rider」を米国市場に投入。ここにパナソニックのバッテリを採用しているという。Zen Riderは最大トルク75Nm、404Whのバッテリを搭載し、15マイル/hまでペダルを漕ぐことができる。「環境に配慮した交通手段として最適な自転車であり、とくに都市部に住んでいる人には適している」としたほか、「eBikeからeLSV(Electric Slow Speed Vehicle)まで、小型ながらパワーが求められる乗り物はEV革命の縁の下の力持ちであり、すでに救急分野や農業分野、ラストワンマイルの配送、建設分野など、幅広いシーンで活躍している」と語った。

eBike「Zen Rider」にパナソニックのバッテリを搭載

 こうした一連の車載関連製品を発表したPanasonic Automotive Systems of AmericaのKirchnerプレジデントは、「パナソニックは北米でトップ8、全世界でトップ15の自動車部品メーカーである。AmazonやGoogleなどとも協業し、5年前からはAndroid Automotiveの設計基準ハードウェアとしても採用されている。また、安全規格機関であるUL(アンダーライターズ・ラボラトリー)からISO 26262 FUNCTIONAL SAFETY ASIL D Lifecycle Process Certificationを、自動車業界のティア1サプライヤーとして初めて認定を受けた。今後もモビリティの進化を加速させ、ドライバーや同乗者、そして道路を行き交うすべての人にとってより安全で簡単、よりよい生活を実現するためのソリューションを創造していく」などと述べた。

新環境コンセプト「Panasonic GREEN IMPACT」発表

パナソニック株式会社の楠見雄規社長兼グループCEO

 一方、パナソニックの楠見雄規社長兼グループCEOは、新たな環境コンセプト「Panasonic GREEN IMPACT」を発表した。

 同社では、このコンセプトを通じて2030年までに全事業会社のCO2排出量を実質ゼロにするとともに、2050年に向けて利用されている商品からのCO2排出量を減少。企業や公共分野の顧客に対しても、省エネソリューションやクリーンエネルギー技術の提供により、バリューチェーン全体のCO2を減らす活動を推進することになる。

 パナソニックでは、事業活動において年間220万tのCO2を排出しているほか、同社商品を世界で毎日10億人以上が利用しており、その消費電力によるCO2排出量は工場からの排出量の約40倍に達し、バリューチェーン全体からのCO2排出量は約1億1000万tになるという。これは世界の電力消費の約1%に相当するという。

 楠見社長兼グループCEOは、創業者である松下幸之助氏が「企業は社会の公器でなくてはならない」と述べたことに触れながら、「いま、社会の公器としてなすべきことは、地球の気候変動に対して行動することや、より豊かな暮らしを子供たちに約束することである。パナソニックが競争力を磨き、顧客への貢献を強化するほど将来のカーボンニュートラルにも貢献できるようにしたい。環境に正面から向き合い挑戦していく」と述べた。

「Panasonic GREEN IMPACT」を発表した

 また、これを受けてPanasonic Energy of North AmericaのAllan Swanプレジデントは、「車載向けリチウムイオン電池への投資は、ネットゼロエミッションを達成するために不可欠なものと考えている」と述べ、テスラとの協業による米ネバダ州のギガファクトリーでの取り組みを紹介。「パナソニックは、年間20億個の車載用リチウムイオン電池を生産し、2021年には累計で50億個の生産を突破した。さらに、電気自動車の普及に伴って今後10年間で5倍の成長が見込まれている。現在は、1秒間に60個のバッテリを生産でき、それが1台の電気自動車に搭載される。この45分間の記者会見の間にも16万2000個のバッテリを生産できる」などと述べ、「より高い効率性と規模の経済を実現するために、パナソニックは何10億ドルもの投資を行なってきた」と語った。さらに、使用済みの車載用バッテリを、Redwood Materialsとの連携によって循環型サプライチェーンを実現。2022年末までに、電池のリサイクル材料から生産した銅を、電池生産に再び使用できるようにすることも発表した。

Panasonic Energy of North AmericaのAllan Swanプレジデント

 パナソニックでは、当初は現地会場でのプレスカンファレンスを予定していたが、新型コロナウイルスの感染拡大を受けてオンラインのみで開催。展示についても、オンラインを中心とした内容としている。

「A CHAMPION. FOR PROGRESS-世界を元気に。くらしを理想に」をテーマにしたオンライン展示ではモビリティ分野の展示も行なっており、EV用リチウムイオンバッテリやEV充電器制御システム、クラウド型バッテリーマネジメントシステム(UBMC)などを紹介。UBMCでは、電動モビリティなどに搭載されるさまざまなバッテリを遠隔から監視、運用するシステムに、電池知見を応用した独自のAI技術を活用。電欠防止などに貢献し、安心、最適な電池利用をサポートするという。