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パナソニック、コロナ禍における“自動車を第2の家にする”ソリューションなどを「CES 2021」でプレゼン
新開発のWi-FiカメラやV2X「CIRRUS by Panasonic」についても紹介
2021年1月12日 10:33
- 2021年1月11日(現地時間) 開催
パナソニックは、1月11日10時(米国東部時間)から「CES 2021」においてプレスカンファレンスを行ない、同社のオートモーティブ事業の取り組みなどについて説明した。毎年、米ラスベガスで開催されているCESだが、今年は完全オンラインで開催。パナソニックのプレスカンファレンスもオンラインで行なわれた。
自動車を「第2の家」に
米国でオートモーティブ事業を担当するパナソニック オートモーティブシステムズ アメリカのスコット・キルヒナー社長は、「パンデミックは私たちの生活に大きな影響を与えた。だが、パナソニックはイノベーションへの情熱があるからこそ、北米および世界において、自動車部品のトップサプライヤーの1社であり続けることができる。世界をより良い場所に、より安全な場所にするソリューションに焦点を当てることで、世界の自動車メーカーや新たな自動車メーカーに価値を提供することができる」と切り出し、「2020年は、一夜にして自動車の役割が変わった。自動車は第2の家となり、安全な避難場所の1つになった。A地点からB地点へ移動する手段としてだけでなく、経験を共有する場所になった。自動車の中で誕生日を祝ったり、自動車の中から映画を鑑賞できるドライブインシアターが復活し、大規模な美術展や、政治的な集会も自動車の中から参加できるようになった。だからこそパナソニックは、自動車を第2の家にすることに力を注いでいる」などと述べた。
カナダのトロントでは、自動車に乗ったままゴッホの絵を鑑賞できる美術展や、プロジェクションアニメーションを使って、アート作品を自動車の中から安全に鑑賞できるイベントなどに、パナソニックのプロジェクターが利用されていることも紹介した。
パナソニックが自動車を「第2の家」とする上で、キーテクノロジーと位置付けているのが「SPYDRプラットフォーム」だ。SPYDRは、車内のさまざまなディスプレイや、新たなヘッドアップディスプレイなどを制御するコクピットドメインコントローラーであり、毎年、CESの会場においてその進化を紹介してきた。
キルヒナー社長は、「単一のコンピューティングプラットフォームによって、車両のインテリア全体を1つの体験としてデザインすることが容易にでき、快適性と安全性を両立できる」とし、「SPYDRプラットフォームにはAndroid 11を採用し、OpenSynergyのハイパーバイザーを統合。最大11台のディスプレイを個別に稼働させたり、共有する形でコンテンツを表示させたりできる。座席ごとに音楽を再生したり、キャビン全体を使用したシアター体験も可能になる」とした。
また、ELS STUDIOやFender、Klipschと提携し、サウンドソリューションを提供していることも紹介。「素晴らしいサウンドシステムがなければ、家やクルマは退屈なものになる。だからこそ、パナソニックはオーディオのトップブランドやタレントと協力して、車内で忘れられないサウンド体験を提供している。ELSにより、スタジオのサウンドを再現し、Fenderによりライブコンサートの生の感動を追体験できる。Klipschによって、高効率で歪みのないパフォーマンスサウンドに浸ることができる。人それぞれにぴったりのサウンドソリューションを用意している」と述べた。
また、「KlipschとDolbyの協力により、KlipschのプレミアムオーディオシステムとSPYDRプラットフォームに、Dolby Atmos Musicを追加することができた。より多くのアーティストや音楽ストリーミングサービスが利用できる。車内での音楽体験が没入感のあるものになる」とした。
続けてキルヒナー社長は、「没入感がある体験を自宅からクルマに持ち込むことは、非常にエキサイティングなことである。パナソニックは、この体験をより安全なものにするための技術革新にも同時に取り組んでいる」と切り出した。
ここでは新車所有者の61%がADASの機能のうち、少なくとも1つの機能によって事故回避ができたという調査結果を示しながら、「しかし、都市部では多くのドライバーが、ドライバー支援システムをオフにしているのが実態である。それは、都市部の道路のように混雑した環境では、ドイラバー支援システムが提供する情報を理解するのが難しいためだ。そこでパナソニックでは、次世代のAR HUD(ヘッドアップディスプレイ)を開発し、情報を伝えるのではなく、見せることができるようにした」と述べた。
具体的にはフロントガラスにグラフィカルに情報を表示し、ドライバーに直感的に情報を提供することができるとしており、「ドライバーの眼は、フロントガラスとその先にある道路に集中することができる。これは、パナソニック独自のPRIZMプロセスを用いて開発したものであり、ユーザー中心のインターフェースと移動に関するあらゆるシーンを考慮して、AIがどのような状況でも重要な情報を検出し、優先順位をつけて表示することができる」という。
ここでは、パナソニックが長年培ってきた画像生成技術と光学系技術に加えて、Envisicsとの連携によって、高解像度レーザーホログラフィー技術を活用。Phiarとの協力により、空間AIとARナビゲーションを活用できるようにしており、「次世代の車載体験が可能になる」と位置付けた。
新開発のWi-Fiカメラも
また、新開発のWi-Fiカメラも発表。後方の視界を確認したり、車線変更時の死角を解消するために有効とのことで、「Wi-FiカメラはIP68の耐久性と耐水性を備え、パナソニックのIVIプラットフォームとシームレスに統合された自動車に最適化したビデオカメラになる。キャンピングカーやボート、あらゆる種類のトレーラーを牽引する場合にも後方の視界を確保でき、大切な荷物から目を離さないといった用途にも利用できる」と説明した。
さらに、V2X(Vehicle to Everything)である「CIRRUS by Panasonic」についても紹介。CIRRUS by Panasonicは、通行車両や道路に設置されたセンサーを介して、交通事故や渋滞、悪天候などのさまざまな情報をリアルタイムに収集。ドライバーに対して迂回ルートや遅延想定時間などの有用な情報を提供することで、安全性の向上と道路交通状況の改善を図ることができる。すでにユタ州運輸局などが導入。これまでインシデントが発生してから運輸省に通知して、対応するまでの時間が10~15分かかっていたものが、数秒にまで短縮できるという。
キルヒナー社長は、「CIRRUS by Panasonicは、交通管理と安全を実現するためのVX2オープンプラットフォームである。運輸局と車両、道路、そして、道路に触れるすべてのものがコミュニケーションを取り、コネクテッドビーグルを標準化することができる。今後も改善を進めることで、広く活用してもらえるように展開していく」と述べた。
一方、自動車向けバッテリー事業については、パナソニック ノースアメリカのマイケル・モスコウィッツCEOが言及。「パナソニックは、世界最大の電池工場を持つリチウムイオンのサプライヤーであり、2020年8月までに30億個以上のセルを出荷している。また、米ネバダ州のギガファクトリーではテスラ向けのEVバッテリーを生産。テスラの需要を満たすために、2021年には14番目のセル組立ラインを追加し、生産能力を10%増加させる。また、テスラ向けの新たな電池である4680は、エネルギー密度を高めた新たなセルモデルであり、導入時には世界最高のエネルギー密度を持つ車載用バッテリーになる」と説明。さらに、エネルギー企業であるEquinorと産業グループであるHydroとの戦略的パートナーシップにより、欧州市場において持続的でコスト競争力のある電池事業の可能性を探っていることや、レッドウッド・マテリアルズとのパートナーシップにより、リチウムイオンのサプライチェーンの持続可能性を高める取り組みにも触れた。
「パナソニックは、コバルトの使用を削減することに取り組んでおり、電池あたりのコバルト含有量は、現在、5%以下になっている」などとした。
なお、パナソニックのCES 2021のオンライン展示では、暮らしをアップデートしていく姿を「Entertainment」「Smart Mobility / Automotive」「Sustainability」「Lifestyle」「Wellness」「Food Retail」の6つのカテゴリで紹介。「Smart Mobility / Automotive」のカテゴリーでは、CIRRUS by Panasonicのほか、二輪車や電動モビリティ向けに開発したテレマティクス制御ユニット(TCU)搭載車両管理ソリューション「OneConnect」や、eCockpit、HUDなどの車載ソリューションを紹介する。