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2年目を迎えるF1ドライバー角田裕毅選手、日本GPで日本のファンのために走りたいと抱負を表明

2022年1月7日 開催

アルファタウリ・ホンダの写真を前に説明する角田裕毅選手

 2021年、アルファタウリ・ホンダからF1デビューして1年を戦った角田裕毅選手だが、終盤戦は予選でコンスタントにQ3まで残れるようになり、最終戦のアブダビGPでは決勝で4位入賞とF1デビュー以来最高の成績を記録してよい形でシーズンを終えることができた。

 2022年シーズンもアルファタウリから出場する角田裕毅選手がどのような戦いをしていくのか、ホンダ主催によるオンライン会見が行なわれたので、ここにお届けする。

2021年シーズンは学びのシーズンだった。途中で変えたアプローチは、自分のやり方に戻したら終盤戦に向けて改善していった

──それでは冒頭に角田選手に昨シーズンを振り返っていただきたい。

角田選手:去年は一言でいうと学びのシーズンだった。4歳からレースをやってきて、初めてこんなに苦戦するレースが続いたシーズンだった。そうした中で葛藤しながらも学ぶことが多かった。

 開幕前からいい感触を得ていた開幕戦でポイントを取ることができた。しかし、その結果として開幕戦の後はF1をやや甘く見るようになっていた。レッドブルのアドバイザーであるヘルムート・マルコ氏にも表彰台を狙えと言われた。そうしたこともあって自信を持ちすぎた結果、第2戦の予選でクラッシュしてしまった。

 その結果、自信がどんどん失われていき、負のスパイラルにどんどん陥っていった。クラッシュしないように言われて、クラッシュしないことを心がけた。その結果クラッシュしなくなったけど、速さが失われていった。

 何かを変えないといけないと言われて、シャシーを変えることになった。トルコGPでシャシーを交換した結果、だんだんと負のスパイラルから抜け出すようになっていった。その後、レッドブルのリザーブドライバーだったアレックス・アルボン選手がコーチ役になってくれて、そこから少しずつアプローチも、考え方も変えて、どんどん結果がよくなっていった。

 終盤戦のブラジルGPでは、練習走行の後すぐ行なわれた予選でQ3には行けなかったがいい流れで週末を進められた。負のスパイラルは消えていって、サウジアラビアGPとアブダビGPではよい結果を残す事ができた。昨年はホンダF1の最終年ということで、よい結果を出したいと思っていたので、終盤戦はホンダへの感謝の気持ちを胸に走ることができた。

 シーズンを振り返ると、アップダウンもあってかなり厳しいシーズンだったが、いろいろな状況を経験できたのはいいことだと思っている。

──シーズン前に比べて首が太くなったように見えるなどフィジカル面でも大きく進化したシーズンだったのでは?

角田選手:フィジカル面ではイギリスにいたときよりはイタリアに移ってからが向上できた。イギリスに住んでたときには、今から振り返ればだらしない生活を送っていた。食生活もUber Eatsだったし、あいてる時間は友達とゲーム。今考えると、ありえない生活だ。イタリアに移ってそこで変われた。チームのエンジニアとレース後に話すというのもそうだし、チームがトレーナーを用意してくれていたのでほぼ毎日通っていた。

 チーム代表のフランツ・トスト氏からもこういうスケジュールで行けという指令が送られてきて、そこにはトレーニングセッションが1日2回あってフィジカルトレーニングを増やしていった。その結果、レース中の首への負荷も少し軽くなって、最終戦アブダビGPもよい状態で迎えることができた。シーズンを通して見ると、足りないモノばかりだし、フィジカルを向上させれば自分のパフォーマンスも上がると実感しているのでトレーニングを増やしている状況だ。

──開幕前には表彰台を狙いたいという目標があったが?

角田選手:最終戦はよい流れで終えることができた。今年に関しては、表彰台を狙うと言いたいところだが、クルマが大きく変わるので、そう言うと開幕戦と同じ過信になる。アブダビGPで終えられた状態で開幕戦を迎えることができればと思っている。

 レース間だったりをベストな状態で迎えるように準備していき、開幕戦はポイントを狙いたい。まだチームの勢力図は分からないが、まずは身近なライバルであるチームメイトを倒せるようにしていきたい。それが今シーズンの大きな目標だ。

──アプローチはどこをどう変えたか、終盤戦に自信を持てるようになったのはなぜか?

角田選手:シーズン中にいろいろアプローチを変えていったが、いろいろやってみてこれがよかったということではなく、結局開幕戦のアプローチという元に戻った。セッションの前に、5分間だけ自分の時間を作って自分が理想としているラップをシミュレーションする、それをやっていた。それを第3戦からは、それをやめてとにかくクラッシュしないように、コース図を書いて、ここでクラッシュしないようにとしていった。それで確かにクラッシュはしなくなったがペースが遅くなってしまった。それだとチームにとっては意味がない。

 それが変わる契機になったのは、トルコGPでシャシーを変えてからだ。最初のシャシーでは後ろがナーバスになっていたが、シャシーを変えてからはコントロールすることが可能になり、感覚が少しずつ戻っていった。そのようにシャシーを変えたことが大きかったが、元々やっていたルーティンに戻ったことも大きかった。

──チームメイトのピエール・ガスリー選手については?

角田選手:ピエール・ガスリー選手はよいお手本だ。彼は昨シーズンで4シーズン目を迎えていて、経験があるドライバーだ。開幕戦からレースウィークの過ごし方が違っていた。周りの人やチーム全員を巻き込んで競争力を向上させていた。

 自分は序盤に分かっていなかったということもあるが、サーキットにいる時間は彼よりも短かった。そうしたこともあり、何かを変えないといけないと感じたときに彼をまねてみようとなった。彼と自分のドライビングの違いもロガーで見ることができるし、彼がレースウィークをどう過ごしているのかなどを参考にした。

 自分自身としては負けず嫌いでガンコな所もあって他人をまねようとか思わなかったけど、結果を見ればそうせざるを得ない部分があった。ガスリー選手は自分をレベルアップしてくれた存在だ。

日本GPで日本のファンの前で走ることが夢、今年状況がよくなって開催されることを願っている

角田裕毅選手

──鈴鹿での日本GPは残念ながら中止になってしまったが?

角田選手:鈴鹿での日本GPは一番楽しみにしていたので本当に残念だった。日本のファンの前で走ることが夢だったし、2012年に小林可夢偉選手が日本GPで表彰台を取ったときには自分もそこにいて憧れた。そういうことをいつか自分も鈴鹿でしたいと思っていた。

 また、鈴鹿サーキットは一番走ったコースだ。鈴鹿のレーシングスクールに入ったときも一年間ずっと走っていた。自分の性格的には飽きやすいが、鈴鹿に関してはまったく飽きない。今年開催できればうれしいと思っているが、お客さまの安全も大事なので、いろいろ状況がよくなって今年は鈴鹿で走れることを願っている。

──無線ではFワードを使ったりというのが中継などで流されていた。ファイティングスピリッツは必要だと思うが冷静さも大事だ。今度どのようにバランスを取っていきたいか?

角田選手:SNSなどを見ていると賛否両論だったと思う。賛同していただいて面白いと捉える方もいらっしゃったし、そうではない方もいらっしゃった。しかし、自分として正直あまり気にしていなかった。

 確かに自分のスタイルはアグレッシブ過ぎるかもしれないが、それが自分のスタイルだ。ただ、F1はチーム全体で戦うスポーツであり、シーズン序盤にはやり過ぎた面があった。F1を戦うにはチームやスポンサーさまの協力が不可欠で、それを続けているとチームの雰囲気もわるくなってしまうのでやり過ぎを反省している。

 ただ、意外に思われるかもしれないがチーム代表のトスト氏からは「まったく気にしないでいい、素のままの裕毅でいいんだ」と言われている。それぞれのやり方で、ドライビングが速くなるなら気にしないでいいと言われていた。今後もそうしたことはあるかもしれないが、チームのために速く走ることに集中したい。

──角田選手は自身が速さで未来を切り開いてきたと思うが、日本のドライバーの選手のレベルや今後続くドライバーはどうやってF1への道を切り開いていけばいいか?

角田選手:自分も先輩方を見てここまで成長できたし、日本人ドライバーはドライビング面では十分通用すると思う。海外で感じた差はレースウィークの過ごし方の差だ。海外のドライバーは一戦一戦にかける思いみたいなものが全然違う。

 自分などはセッションが終わって、データの分析などが終わると6~7時ごろには帰っていた。それに対して2度の世界チャンピオンであるフェルナンド・アロンソ選手は最後までサーキットに残っていて、10時とかまで残って自分がどこを改善すればよいかとチームと話し合っていると聞いている。あのフェルナンドでもそういうしたことをするのだと衝撃を受けた。それはガスリー選手も同様で、それらを見て自分も変わらないといけないと思い、チームとのコミュニケーションを増やすようになった。それがシーズンの中盤から後半への改善につながっていた。そういう所に差があるのだと感じた。

──今季のマシンについて、昨シーズン末のアブダビテストでは18インチタイヤをつけたミュールカー(開発用に昔の車両を今風に仕立てた車両のこと)を試していたと思う。また、シミュレータでは新車に乗っていると思うが感触はどうか?

角田選手:新車に関してはまったく分からない。18インチタイヤになって大きく変わったところは動きがシャープになってクルマが動きやすくなってことだ。今シーズンの車両はオーバーテイクを増やすためのアプローチという車両なのでダウンフォースは低い。高速コースなどでは滑りやすくなり。タイムは全体的に遅くなるが、コントロールしやすくなると思う。

 新車に関しては今まさにイタリアのチームファクトリーにおいて24時間体制で作っていると思う。クルマ作りはチームに任せて、自分は自分自身のパフォーマンスを上げていくことに集中していきたい。

──最後に今シーズンの抱負をお願いしたい。

角田選手:2022年はチャレンジの年になる、それは自分だけでなくチーム全体もだ。今シーズンはルーキーイヤーではなく、言い訳も通じないので、結果を求めて毎戦、毎戦死に物狂いで戦っていきたい。

 クルマのパフォーマンスを最大限引き出してポイントを取っていきたい。そして今シーズンは日本GPで日本の皆さまの前で戦えることを祈っている。ぜひ応援をお願いしたい。