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7年ぶりの日本人F1ドライバー角田裕毅、ゲーム「Apex Legends」でメンタルトレーニング 「鈴鹿の日本GPは本当に楽しみにしている」

2021年3月17日 実施

角田裕毅選手

 3月12日~15日の3日間にわたり、バーレーン国際サーキットにおいてFIA Formula 1世界選手権(以下、F1)の公式テストが行なわれた。最終日の午後には、7年ぶりに日本人F1レギュラードライバーとなるアルファタウリ・ホンダの角田裕毅選手が、レッドブル・レーシング・ホンダのマックス・フェルスタッペン選手につぐ2位のタイムをマーク。日本からだけでなく世界中のF1ファンから大きな注目を集めた。

 バーレーンテストを終了し、レッドブルのファクトリーがあるイギリス ミルトンキーンズにある自宅に戻った角田選手がオンラインでの記者会見に応じ、日本の記者の質問に答えた。その模様をお伝えする。

オフにはゲーム、「Apex Legends」でメンタルトレーニング

バーレーンでテストに挑む角田裕毅選手 (C)Getty Images / Red Bull Content Pool

──現在はミルトンキーンズに住まれているということだが、それはなぜか?

角田選手:去年(F2時代)からここに住んでいる。レッドブルF1のファクトリーがあるからだ。1年目なのでシミュレータにどんどん乗らないといけないが、シミュレータはレッドブルにあり、そこに多く通わないといけないということで、ミルトンキーンズに住んでいる。

──バーレーンでのテストを終えて分析や得たもの、課題などを教えてほしい。

角田選手:テストで3日間走り、3日目が順調に走れた。3日目はセットアップに集中できてスムーズな1日。1日目と2日目は新しいクルマに慣れることを目指していたが、1日目は燃料タンク系の問題が出て37周しか走れなかった。

 2日目は毎スティント問題が出ていて満足できる走り込みはできなかった。それに対して3日目はレースと予選シミュレーションを行なえた。

 バーレーンの特徴の1つとして風が強いということがある。イモラだったりは風が強くない。風はF1の空力に影響を与える。風の向きで走り方も変わってくる。

 コーナーによっては向かい風でグリップが増えるが、逆に追い風だと使えない、滑り気味になってしまう。このため、コーナーごとに走り方を変えていく必要がある。コーナーによっては進入から中間は向かい風、中間から出口は追い風とかもある。アクセルワークに気をつけないといけない、そういうところが課題だ。

 クルマの感触はわるくない、レースではがんばりたい。

──2位というタイムだったが、その感想は?

角田選手:もちろんテストだが、トップ3に入れたのは嬉しいし、自信にもつながる。テストではどの燃料を使うかなど、チームによってやってることが違うので一概にいいとはいない。

 自分のドラビングは毎スティント上げていくことができて、走りに集中できた。トップ3に入れたことはは自信につながった。

──自身の強み、長所は?

角田選手:長所はブレーキングとオーバーテイクだと思っている。ブレーキングはF1でも重要。コーナーの入りもブレーキから始まるので、ブレーキがよくないと変化がつかみにくい。

 オーバーテイク、1回だけ、レースシミュレーションでやることができた。DRSの効き方やブレーキングも(F2とは)違う。(テストでできたことで)自信持ってオーバーテイクできるようになっている。

──トレーニングについて、フィジカル、メンタルはどんなことをしているか?

角田選手:身体系のトレーニング、特に首をやっている、F1ではGが大きいF2とは比べものにならない。初めてF1に乗ったときは負荷がかかって、20周とかで疲れを感じるほどだった。そこで体幹と首を鍛えたので、バーレーンのテストではそこまで疲れなかった。

 54周シミュレーションしたが、体力面での問題は感じなかった。ただ、バーレーンは首にもそんなに負荷がないコースなので、(今後を考えると)これからもトレーニングは必要である。

──オフのときはどんな過ごし方をしているか?

角田選手:オフのときは友達とゲームをやっている。ウェイクボードとかゴルフとか好きだけど、ロックダウンなので外に行けないので、日本の友達とゲームしかしていない。あとはずっとトレーニング。

──どんなゲームをやっているのか?

角田選手:FPSのApex Legends(エーペックスレジェンズ)を友人達としている。チームを組んで戦い生き残ったチームが優勝する。よくレースでも予選で自分がプッシュしてアタックしている周にミスしたり、前にじゃまなクルマが出てまとめられなかったときに熱くなりやすく無線で叫んだりするが、ゲームでも同じでやはり上手くいかないと叫んでしまったりする。そこで、自分をコントロールすることを心がけながらゲームをしている。それにより集中力を高めることを目指している。

 もちろんずっとセルフコントロールのことばかりを考えているのではなくて、実際にはリラックスもしている。何せ日本語を話せるのはそういうときぐらいなので(笑)。

角田選手がメンタルトレーニングで参戦しているApex Legends(エーペックスレジェンズ) (c)2021 Electronic Arts Inc.

路面からのフィードバックを感じられるようにパワステの修正を提案。今年のマシンで採用に

(C)Getty Images / Red Bull Content Pool

──マシンについて、従来のマシンと比べてどうか?

角田選手:去年のクルマと比較するのは難しい。去年のクルマに乗ったのはアブダビの最終戦後のテストのときだけで、コースのコンディションも風も違う。

 今年のクルマに乗ってすぐ感じたのはステアリングがパワステだと。パワステがないクルマに比べてタイヤのグリップやダウンフォースなどが伝わりにくくて、ハンドル曲げすぎてしまう。そこをアルファタウリに改善するようにお願いして、イモラでのシェイクダウン、そこでステアリングの変化はポジティブだった。

 レギュレーションでは21年、フロアが削られてダウンフォースが減っているハズだが、そこをアップデートでカバーできているので、乗りやすいと思う。ただ、まだバーレーンでしか走っていないので、大きな変化は分からない。

──先日のテストで、何か勉強になったドライバーはいるか?

角田選手:勉強になったドライバーは、チームメイトのガスリー選手。ほかのドライバーはデータを見ることができないので比較できないけど、ガスリー選手と比較して、向かい風を利用して進入で稼いだり、時々のコンディションで走り方を変えることは学べた。

 午前と午後で変わってくるので比較はしにくいというのはあったが、タイヤマネジメントでどのくらいタイムを落とさないといけないのか、縁石の使い方でここは乗っていいとか、乗ってよくないはガスリー選手のオンボードで勉強できた。

──開幕戦の目標、今後の目標は?

角田選手:開幕戦の目標は特にないけど、ポイントを取れるようにがんばる。まだF1でのレース経験がないので、今持っているパフォーマンスを出し切って、ミスを恐れず攻めていきたい。そこでミスをするとは思うけど、それを第2戦以降で改善していく。今持ってるパフォーマンスを出し切れるようにしてプッシュして走って行きたい。

 今年の目標はポイントをできるだけ取る、表彰台や優勝ももちろん狙っていくが、現段階では何が起こるか分からないので、序盤から中盤まではプッシュしていく、ミスを恐れず走る。中盤から後半は、そこから学んだことを活かしてよりよいレースをしていく。

──よい成績を出したいサーキットは?

角田選手:圧倒的に鈴鹿だ。鈴鹿を最後に走ったのは、FIA F4時代(2018年まで)。F4のラップタイムは2分6秒、F1ではそれが1分27秒とかになる。40秒もの差がある。そこも楽しみだ。何よりも日本のファンの前で走れることが楽しみで、鈴鹿を一番楽しみにしている。

──鈴鹿で難しいコーナーはどこか?

角田選手:鈴鹿はホンダ系のドライバーは死ぬほど走っているので、苦手なコーナーはない。F1になって走り方は変わってくるけど、好きなのはデグナーとスプーン、そこは自信持って走って行きたい。

──往年の選手で憧れや理想は?

角田選手:理想のドライバー、ハミルトン選手、フェルスタッペン選手だと思う。特にハミルトン選手は7回もチャンピオンを取っている、誰からも認められて、ああいうポジションにいる。自分もチームからバックアップされるドライバーになりたい。

鈴鹿を本当に楽しみにしている

──最後にファンに一言。

角田選手:7年ぶりの日本人ドライバーとしてレースに参戦するけど、アグレッシブに攻めていくので、応援をお願いしたい。

 DAZNでアンバサダーになっている。DAZNでレースを見れると思うので、ぜひご覧いただきたい。鈴鹿で会えるのを楽しみにしている。日本人として誇れるようなドライビングしていきたいので、応援よろしくお願いいたします。

 バーレーンは去年のF2ですでに走っているコース、当初はオーストラリアが開幕戦で(走っていないコースということで)不安があったけど、バーレーンでは去年レイアウトは違うけど勝っているし、自信あるのですべてを出し切りながら走って行きたい。

 そういうアグレッシブなところを見ていただきたい。鈴鹿の日本GPは本当に楽しみにしていて、日本のファンのみなさんの前で走るのを楽しみしている。

(C)Getty Images / Red Bull Content Pool