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KDDIが富士スピードウェイで実施した、次世代型サーキット走行撮影サービス「4DREPLAY」の実証実験に参加してみた
2022年3月29日 14:49
KDDIが富士スピードウェイで行なった、「4DREPLAY」を用いた次世代型サーキット走行撮影サービス実証実験
auの携帯電話サービスで知られるKDDIが、次世代型のサーキット走行撮影サービスによる実証実験を行なっているという。動画が誰にでも撮れてしまう時代にあって、いったいどうのようなものなのか? という疑問は、私もそうだったが誰しも頭に浮かぶことなのではないだろうか。
その実証実験の場は、富士スピードウェイだったが本コースではなくマルチパーパスドライビングコースだった。ここは以前はドリフトコースと呼ばれいたところ。ドリキンこと土屋圭市さんがコース設計、監修をしたものだが、2021年秋にコースレイアウトはそのままに全面再舗装やミーティングルームなど施設を一新して名称も変更された。
小規模なコースながらも使い勝手のよいレイアウトで、ドリフト走行はもちろん走行会、ドラテクのレッスンや試乗イベントなど、さまざまな用途に使えるようになっている。
富士スピードウェイに到着すると、本格的なドリ車がずらり並んでおり、ドライバーやメカニックが走行前のチェックに余念がない。あらま、ちょっと場違いだったかも、とスバル「BRZ」でうかがった私は一瞬たじろいだのだが、まわりを見ればドリ車以外にも、ちょっと手を入れたようなスポーツモデルも入り混じっていた。今回はドリフト走行クラスとグリップ走行クラスありの、いわゆる走行会の中で次世代型サーキット走行撮影サービス「4DREPLAY」の実証実験を行なうというものであった。
オリンピックでも使われたという「4DREPLAY」の撮影サービスを実現するために、コース上の特定のコーナーに入り口から出口先までカメラがズラリと60台並べられていた。サーキットにはそれなりに出向く機会のある私にしても見たことのない風景である。ちなみにこのカメラ、1台約20万円とのことだが、それが60台もとなるとそれだけでも精悍な眺めである。これだけでどれほどの映像が撮れるのか、期待度が高まるというものだ。
その一方で、万が一コースアウトでもしてしまって、カメラをなぎ倒すようなことにでもなればタイヘンなことになりそうと、余計な心配までもが頭をよぎるのだった。
走りをすぐに確認可能な「4DREPLAY」
簡単なドライバーズミーティングの後、私はドリフトクラスでコースイン。ドリ車たちに混じると、それこそボディカラーもシルバーで大人しいどノーマルBRZは、なんだかカオスな雰囲気すら漂わして「すいません、おじゃまします」の心持ちで走ることになった。本来の目的が果たしてどんな映像がもたらされるのか、さらに、それを使って何かいろいろな用途にも繋がりそうか、といったところなので、激しいタイヤスモークに包まれるドリ車たちに比べるとかな~り地味な感じながらも、それなりに姿勢および挙動変化が分かりやすいように走らせてみた。
ちなみにこの新型BRZ、基本を同じくするGR86に比べると操舵初期のヨー応答のシャープさをあえて少し抑えているのと、切り返しなどの際のロール追従に少し遅れを感じさせたりするのだが、旋回時に重要なトラクションはしっかり出てくれる。スロットルレスポンスも過剰感なくコントロール性が高く、狙いのラインに持っていくことにも神経質さがない。FRならではのハンドリングを楽しめるものだった。
街中を含めた日常域の快適性と、天候や路面変化に対する感度を抑えた安定性の高さを携えながら、走る楽しさ、スポーツ性をしっかり備えた高バランスは、まさにBRZの美点なのだと、改めて確認することができた。
「4DREPLAY」システムによって撮影された映像はすぐにパドックサイドの別室に置かれたPCに送られており、60台のカメラ映像を合成することで、さまざまな角度からの姿を取り込むめるものとなっている。さすがに走行を終えた直後というわけにはいかないものの、軽い休憩後には先ほど走行した映像を、専用Wi-Fiを通じて自分のスマホで確認できるようになる。
さらに、専用アプリをダウンロードしておけば、画面をタッチすることで車両の向きを360度見たい向きに変えながらの確認も可能だそうだ。
「4DREPLAY」の映像を見ると、なるほどコーナリングへのアプローチやその後のラインなどの確認はもとより、その際の車両姿勢変化なども、見たい箇所を角度を変えながらじっくり確認もできる。これは単に自分が運転するカッコいいコーナリングを映像で見たい、残したい、という人にはもちろんだが、今の走りがどうだったのかを確認しながら、その後のドライビングに反映させるといったことにも大いに役に立ちそうだ。
実際、今回のドライビングにおいても、カメラが接置されたコーナーへのターンインから、ノーズをイン側に向けて切り込んでいくタイミング、そこからリアを降り出していくためのアクセルオンのタイミングなども、車両の姿勢変化を見ながら、ここはちょっと遅れてしまっているな、など視覚的に認識することもできる。
今回でいえばBRZが、ステアリングの切り返しでロールの揺り戻しを感じさせたところが映像上の動きからも見てとれた。さらに挙動を見ながら、アクセルオンのタイミングが遅れているなと、ドライビングにも責任があることも同時に見てとれた。
サーキット走行の分析に「4DREPLAY」の利用価値は高い
自由に視点を変更できる「4DREPLAY」なら、ドライビングレッスンなどにおいても使えそうだ。たとえ映像があっても単一方向からだけのものでは、ここが、とかここで、とかが的確には伝わりにくい。「4DREPLAY」であれば映像の視点を変更できるので、挙動とその変化を角度を変えつつ見ることで、アドバイスする側も、アドバイスを受ける側も、双方とても理解しやすくなるのではと思う。
「4DREPLAY」の映像に加え、車両の走行データを取り込んだロガーを組み合わせるとか、室内の車載ビデオとシンクロさせるとか、いろいろ発展も考えられるところだろう。
もちろんシンプルに自分の走りを、愛車のコーナリングをその場で見ることができたり、自由視点の映像で残すことができたりするサービスだけでも興味を示す人はいるだろう。走行会での走りがうまくいけば、自分たちではなかなか撮れないような映像をSNSに公開して多くの人に見てもらいたいという人も少なくないだろう。
富士スピードウェイ近辺では新たな施設など開発が進んでおり、今秋敷地内にオープン予定のホテルの宿泊者などに向けた、サーキット体験走行+次世代型の「4DREPLAY」走行シーン撮影といったプランなど、無責任ながらもそんな利用があってもいいかもしれない、とふと思ったりした。
もっとも、このサービスがいったいどういう形で実現するのかは未定とのこと。その際には有料ならどれくらいのお値段になりそうなのか、といったことも、この実証実験を通じて参加者からヒアリングしていたようだ。「4DREPLAY」はなかなか面白く、利用価値も十分にありそうなサービスなので、実現を願いつつ、今後の展開を見守っていきたい。