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SUPER GT 坂東正明代表会見、カーボンニュートラル燃料の導入テストは8月の鈴鹿戦後に実施 月曜日にエンジンを載せ替え、火曜日に走行

株式会社GTアソシエイション 代表取締役 坂東正明氏

 SUPER GTの開幕戦となる「2022 AUTOBACS SUPER GT Round1 OKAYAMA GT 300km RACE」が岡山国際サーキット(岡山県美作市)で4月16日~17日の2日間にわたって開催された。17日の午前中には、SUPER GTのプロモーターであるGTA(GTアソシエイション) 代表取締役 坂東正明氏による定例会見が行なわれた。通常は坂東代表のみが出席する定例会見だが、シーズン開幕戦ということもあり、複数のゲストを迎え華やかなものとなった。

 ゲストとして登壇したのは、1998年からSUPER GT(当時は全日本GT選手権)のタイトルスポンサーを開始し、2022年で25年目を迎えるオートバックスセブン代表取締役(執行役員兼務) 小林喜夫巳氏と、2023年からSUPER GTが利用するカーボンニュートラル燃料を供給するハルターマン・カーレスの日本法人ハルターマン・カーレス・ジャパン合同会社 川本社長。

 GTAの坂東代表は「10年後にも音が出るモータースポーツをやるためにカーボンニュートラルフューエルを導入する」と強調し、環境に配慮したレースイベントを作り上げながらも、今の魅力を失わないモータースポーツを実現するために導入すると強調した。

オートバックスがタイトルスポンサーになって25年目のシーズン、タイトル獲得チームに1000万円の賞金を

株式会社オートバックスセブン 代表取締役(執行役員兼務) 小林喜夫巳氏

 会見冒頭、オートバックスセブン 小林喜夫巳代表取締役からGTAとオートバックスセブンが共同で行なうキャンペーンに関して説明が行なわれた。

 小林代表取締役は「SUPER GTのシリーズスポンサーを務めさせていただくのも25年ということで、提携を強化していきたい。特にSUPER GTが開催されるサーキット近くのオートバックス店舗を訪れていただくお客さまにサーキットに足を運んでいただきたいという思いからそうしたイベントを企画させていただいた。また、これまでチームとして一緒に参加していただきシリーズを盛り上げていただいたみなさまへの恩返しではないが、GT500、GT300それぞれのシリーズチャンピオンに1000万円の賞金をお出しすることをつい先ほどGTAさまと合意した」と述べ、SUPER GTが開催されるサーキット近くのオートバックス店舗でプロモーションを行なうこと、GT500/GT300それぞれのシリーズチャンピオンのチームに1000万円の賞金を出すことを明らかにした。

会見後、岡山国際サーキットを訪れたファンに向けてあいさつするオートバックスセブン 小林代表取締役

 それを受けてGTA坂東代表は「25年のオートバックスセブンさまの取り組みに感謝したい。今後SUPER GTのスポンサーに25年お付き合いいただいてよかったと思えるような恩返しができるようにしていきたい。そしてシリーズスポンサーとは別にGT500/300それぞれのチャンピオンに1000万円の賞金を出すのは先ほど5分で決まった(ここで小林代表取締役から「5分はないでしょう(笑)のツッコミが入る)。チームにもよい形で伝えることができ、みんなで恩返しができるように務めていきたい」と述べ、長年の貢献に坂東代表らしい言い方で、感謝の言葉が伝えられた。

10年後にも音を出せるレースをするために、カーボンニュートラルの取り組みを進める

ハルターマン・カーレス・ジャパン合同会社 川本社長

 SUPER GTは2021年から、トヨタ・日産・ホンダなどの自動車メーカーやJRP(日本レースプロモーション、スーパーフォーミュラのプロモーター)と一緒に、カーボンニュートラル燃料(CNF、カーボンニュートラルフューエル)の導入に向けた取り組みを行なってきた。今回、GTAはそのカーボンニュートラル燃料を製造するベンダーがドイツのハルターマン・カーレスであることを明らかにし、その日本法人となるハルターマン・カーレス・ジャパン合同会社の川本社長がゲストに呼ばれ、スピーチを行なった。

 GTA 坂東代表は「環境問題に関しては、自分は10年後も音があるレースを考えており、それを社会に認めてもらうために環境対応を推進していく」と述べ、内燃機関によるレースを10年後も行なうためにカーボンニュートラル燃料が重要であり、社会的受容性を高めるために取り組んでいると強調した。

 坂東代表は、SUPER GTは環境に配慮したモータースポーツを実現するために大きく3つの取り組みを行なっていると説明した。それが「レギュレーションの見直し」「カーボンニュートラル燃料の導入」「開催サーキットにおけるパドック、観客双方で排出するゴミを削減するために、リサイクル率の向上を目指すこと」になる。

「レギュレーションの見直しという観点では、燃費の向上やタイヤのロングライフを目指す。今年450kmのレースを3つ導入したのは、その前段階になる。3回ピット作業を行なうとすると、そのうち2回のピットでしかタイヤ交換を行なわないとか、2人のドライバーで1人が1/3を超えないというルールを超えない範囲でドライバー交代をなくすとかさまざまなことが考えられる。今年の450kmのレースでは7セット、300kmのレースでは6セットのタイヤを持ち込めるようにするが、来季はそれを削減する」(坂東代表)と述べ、燃費の向上やタイヤのロングライフ化を競争の軸にしていく方針だと説明した。

 そしてカーボンニュートラル燃料に関しては、「ハルターマン・カーチス社からパートナーを組む。シリーズ全体で約30万L必要になるが、それを船で運んで輸入する。今はテストに向けて飛行機で輸入する形になり、トヨタ、日産、ホンダに200Lずつ渡しており、昨日トヨタでベンチテストが終わり、月曜日にはホンダで行なわれる予定となる。すでにJIS規格の燃料とほとんど変わらない性能が出ており、燃料タンクの影響やシールやゴムなどへの影響を調べている段階。8月の鈴鹿の終わりにチームに居残ってもらい、月曜日にエンジンをテスト用に載せ替えてもらって火曜日にテストをしてもらう予定。各チームには20Lの燃料を渡してテストしてもらう予定だ。また、アウディのような欧州のGT3マニファクチャラーにも話をしており、今後テストをしてもらう予定」と述べ、8月の鈴鹿戦終了後にテストを行なっていきたいと説明した。

 そして3つ目の取り組みとしては、パドックや観客席などで出るゴミの削減とリサイクルの促進を挙げた。坂東代表は「すでに昨年鈴鹿でゴミの分別を行ない、リサイクルをよりやりやすいような取り組みを行なっている。お客さまにも1か月に1kgのゴミを減らすことができれば、1年で12kgになる。それをレースに関わっている全員でやれば最低でも年間で6000万kgの削減ができる」と述べ、サーキットでのリサイクルの促進などにより排出するゴミを減らす取り組みを行なっていくと説明した。

 続いてハルターマン・カーレス・ジャパン合同会社の川本社長が同社の概要などを説明し、日本に持ってくるカーボンニュートラル燃料は同社がフランスに所有している工場で製造されることなどを説明した。同社のカーボンニュートラル燃料はSUPER GTだけでなく、イギリスのBTCCなどでも採用予定であることなどを語った。

 質疑応答ではこのカーボンニュートラル燃料のコスト増は誰が負担するのかということに対しての質問があった。坂東代表は「チームが40、自動車メーカーのトヨタ・日産・ホンダが10ずつ、タイヤメーカーが10、オーガナイザーが10、GTAが10という形になる。GT500に参戦している3メーカーの負担となると、GT300を走っているほかのマニファクチャラーの面倒も見るのかという議論になってしまう。そこで、日本の自動車産業のためという見地に立っていただくために、自工会(日本自動車工業会)に支援をお願いしている最中だ」と述べ、自工会の理解を得て、トヨタ・日産・ホンダの3メーカーにも応分の負担を求めたいと説明した。

 また、ハルターマン・カーレスとの契約期間に関しては「3年計画だ。契約を今まさに行なう段階で、国産をとは今なかなか言いにくいが……」といつもの坂東節で、3年間はハルターマン・カーレスと行ない、その後は可能であれば国産のカーボンニュートラル燃料に切り替えたいという意向を表明し、国や燃料メーカーなどに働きかけをしていきたいと強調した。

ピットウォークは開幕戦から再開、感染対策を続けながら段階的に緩和に取り組んで行く

 その後、通常のGTA定例会見となり質疑応答が行なわれた。

──それでは坂東会長から冒頭の挨拶を

坂東代表:天気もよく開幕戦を迎えられて安心している。今年は通常よりも一週間遅かったからか長く感じた。withコロナも3年目になり、ある程度導線を徹底してきた結果、少しずつ線引きの中で新しいものを作り上げられるようになっている。

 今回の開幕戦でも、昨日の数字だと2019年比で9割ぐらいのお客さまになっている。コロナ禍だった昨年比では110%増になっているなど復調傾向になっている。

──自民党モータースポーツ議連にさまざまな関係者が集まって発表をしている。その会合に出席された主旨などを教えてほしい。

坂東代表:元々は公道レースをやろういうことから始まって、2輪、4輪それぞれ官民一体になってイベント行事をできるようにということで取り組まれている。われわれとしては自民党だけでなく野党の先生方も一緒になってやってほしいと思っているが、各部それぞれ年1回総会をしている。今回は特に昨年の衆議院議員選挙で(元F1ドライバーの)山本左近先生が当選されて、自民党のモータースポーツ議連で事務局長をやられており、その延長線上の中で多くのモータースポーツ関係者が参加していた。

 SUPER GTからも山内選手、スーパーフォーミュラからは平川選手などが参加して、自動車メーカー、事務方の官僚のみなさまなど合計で100名を超える関係者が参加して行なわれた。その中でスポーツ庁に対して、外国人ドライバーが来日できるような仕組み、そしてF1やラリージャパンやWECなどで関係者が来日できる仕組み作りが大事だという話をさせていただいた。今多くの関係団体が参加したモータースポーツ連絡会というのを作り、自民党モータースポーツ議連にもご協力いただき省庁に出そうという話をしている。そうしたお話しをすることができたのはよかったと思っている。

──SUPER GTの地上派ネット局での番組が終了になり、YouTubeなどのコンテンツ充実などの新しいメディア戦略が発表された。それに関して説明してほしい。

坂東代表:地上派ネット局での番組提供に関しては、2008年に自分が(代表に)なったときにもどうするかという議論があった。話としては費用対効果の問題で、60万人規模にアピールするにはどの方法が最適かを考えた結果だ。今の枠から抜け出し、DXでコンテンツを提供するには新しい計画が必要ということだ。

 今回のレースから新しいサービスとしてYouTubeをベースにした「SUPER GTビデオオンライン」というサービスを立ち上げているほか、Grooview Multiという新しいアプリの提供を開始している。

 Grooview Multiではサーキット周辺という地域限定だが、J SPORTSの映像を、ピエール(ピエール北川氏、レースアナウンサー)の声で楽しめるようになっている。これはサーキットに来ていただいたお客さまへのサービスとして始まっているが、今シーズンに関してはテストということで、無償で見ていただける。というのもすでに昨日の予選で、通信回線の不調(筆者注:携帯電話回線に多くのユーザーが集中することで、通信速度が遅くなり十分な性能で見ることができないこと)が発生している。通信キャリアも、移動基地局を出すとか対策を考えていくことになると思うが、費用対効果の問題もある。ともかく今年しっかり環境作りをやっていきたいと思っている。

──今回はピットウォークが復活するなど、お客さま向けのサービスも復活しつつある。今後もこれまでの対策の延長線上で徐々に緩めていく形になると考えてよいか?

坂東代表:そのとおりだ。例えばパドックの関係者に義務づけている抗体検査に関しては少なくとも第2戦富士まではやる予定で動いている。その後は状況を見て判断していきたい。