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新型フェアレディZも走ったNAPAC走行会 NAPACの活動について高瀬嶺生会長に聞く

2022年5月18日 開催

富士SUPER TECH24時間レースには日産の新型フェアレディZも出場する。日産はNAPAC走行会にも新型フェアレディZを持ち込んだ。当初は展示のみの予定だったが、慣熟走行時の先導車としてレーシングコースを走行した

 5月18日に富士スピードウェイで開催された「第34回 NAPAC走行会」。ナンバー付き車両を対象としたサーキット走行会だ。

 主催であるNAPAC(ナパック)は、日本自動車用品・部品アフターマーケット振興会というパーツ業界の企業で構成される組織で、内部にはASEA(オートパーツアンドスペシャルイクイップメントアソシエーション)とJAWA(ジャパンライトアロイホイールアソシエーション)の2つの事業部がある。

 NAPACの主な活動は、加盟する事業者が扱うアフターパーツに対してユーザーが安心、安全に使用できるよう製品の品質基準を定めることである。また、世界市場の調査やほかの団体との交流、行政への働きかけなども行なっている。

富士スピードウェイで開催された「第34回 NAPAC走行会」。継続して開催されるイベントで毎回募集締め切り日を待たずに定員一杯になるほど人気だ
旧車から輸入車まで幅広い車種が参加。ハイパワーなクルマが性能をフルに発揮できるコースだけにリピーターも多いという
こちらのスープラはNAPAC会員企業 小倉クラッチの車両。ドライバーは小倉クラッチ代表取締役の小倉康宏氏。小倉氏はルーキーレーシングから24時間レースに参戦する。車両はORC ROOKIE GR Corolla H2 Concept
佐々木雅弘選手をはじめとしたプロドライバーがゲスト参加。ドライバーズミーティングでは初心者にも分かりやすくサーキット走行の注意点などを解説
会員メーカーがブースを出展。パーツ販売だけでなくパーツやカスタマイズの質問などにも対応していた
RB26DETTに東名パワードのタービンと排気系を組んだ仕様のディスプレイ。アフターマーケットのメーカーならではのパーツ展示方法
NAPAC加盟企業が展示したデモカー。こちらはマフラーメーカーであるFUJITSUBO(藤壺技研工業)のGR86
ロールバーやタワーバーなどを手掛けるオクヤマのGRヤリス。オクヤマはラリーやダートトライアルなどのJAF競技での有名ブランド
セントラル20が展示したZ34型のフェアレディZ

 NAPACは2020年より「富士SUPER TEC24時間レース」の冠スポンサーとなっている。Car Watchでも紹介しているように、今シーズンのスーパー耐久シリーズはトヨタ自動車、スバル、マツダ、そして日産自動車などが参加するST-Qクラスの注目度がとても高いので、スーパー耐久シリーズの中でもビッグレースとなる24時間レースは大いに盛り上がることが期待される。

 また、2022年7月より開幕する「TOYOTA GAZOO Racing GR86&BRZカップ」では、「T.R.A(トヨタカーズ・レース・アソシエーション)認定パーツ」としてNAPAC加盟企業のパーツが使用されることになるなどレースの世界での活動にも力を入れており、とても気になる存在だ。そこで今回は、NAPACの会長である高瀬嶺生氏(ブリッド 代表取締役)にNAPACという組織の概要や活動について伺った。

NAPACは6月3日~5日に富士スピードウェイで開催される「スーパー耐久シリーズ NAPAC 富士24時間レース」の冠スポンサーとなっている
第34回 NAPAC走行会で新型「フェアレディZ」が慣熟走行の先導車を務めた
当日、富士スピードウェイに来ていた人はいち早く新型フェアレディZの走行シーンを見ることができた
新型フェアレディZの統括責任者を務めた日産自動車 田村宏志氏(右)と話をしているのは、セントラル20代表取締役の柳田春人氏(左)。伝説の「Z遣いの柳田」と呼ばれた人物だ
新型フェアレディZのピットアウト
新型フェアレディZの慣熟走行では田村氏が自らステアリングを握った

安心、安全、車検合格、そしてプレミアム。これがNAPACのアフターパーツ

NAPAC代表の高瀬嶺生氏。NAPAC会員企業、スポーツシートメーカーのブリッド株式会社代表取締役だ

 NAPACとはどのような団体なのか、まずはこの点を質問してみた。高瀬会長によると「NAPACの正式名称は一般社団法人 日本自動車用品・部品アフターマーケット振興会という業界団体で、加盟企業は約6割がアルミホイールの会社、4割がスポーツパーツ、カスタマイズパーツを扱う会社です。主要な活動内容は安心して使用できる安全性の高いアルミホイール、同様のスポーツパーツを市場に提供するため、品質基準の設定や加盟企業への働きかけなどです」と説明した。

 さらにこうした取り組みの中で販売される製品については、「安心、安全であることに加えて車検に合格する製品であることを前提にしつつ、素材をよくする、アイデアを盛りこむ、クルマを格好よくする、スポーツ性を高めるなどプレミアム度を高めることで、クルマに個性を追加したいと考えるユーザーが満足できるものになっています」という方針であることを教えてくれた。

 また、関連したこととしてTOYOTA GAZOO Racingの活動についても触れた。「TOYOTA GAZOO Racingの活動ではワンメイクレースやTOYOTA GAZOOラリーチャレンジなど、身近なモータースポーツを通じてクルマの楽しさをユーザーに伝えています。これらは私どもにとっても追い風になることなので、NAPACとしてTOYOTA GAZOO Racingの活動に賛同しています。それに日本ではカスタマイズを筆頭にクルマで楽しむ文化が定着しています。これはクルマを速くするということだけでなく“いかに楽しんで乗るか”ということも含みます。スポーツ走行、ドライブ、キャンプ、車中泊など、クルマを使って行なう楽しみが広がっているのがいまの時代です。このことは近年の東京オートサロンを振り返れば分かることですが、そうしたニーズをしっかりと捉えた製品開発を進めることと、NAPAC走行会のようにパーツの効果を体験していただく機会を設けるなどによって、NAPACとしてユーザーさんの個性豊かなカーライフを後押ししていきます」と語った。

 続いて、今後増えていく電動車など新しい時代のクルマについても「電気自動車に乗る人が増えてきても“もっと速く走れないか”と思う方は必ずいます。それにクルマに個性をもたらしたいと考える人もいます。新しい時代のクルマはカスタマイズも難しくなってくるでしょうが、私たちは知恵を出して自動車メーカーではやれないようなものを生み出していきます。また、現在の世の中には約5000万台のガソリン車が走っています。新車販売の方向が電気自動車に切り替わってきても、これらが一気にいなくなるわけではありませんので、そうしたユーザーに向けての新しい製品も当然考えていきます」と語ってくれた。

NAPAC加盟メーカーではカスタマイズに使用できるだけでなく、修理に使える純正互換品も扱っている
電動車のへの切り替わりだけでなく、クルマ趣味の世界も以前とはまるで違う多様性が生まれている。こうしたところへの対応も簡単ではないが、「時代に即したアイデアを生み出していけば将来は明るい。クルマに夢を持ち続けて楽しさを伝えていくことがなにより大切」という考えを高瀬会長は語ってくれた
NAPACでは8月2日をオートパーツの日と定めている。それに伴い有名ブランドの人気パーツやグッズを抽選で200名にプレゼントする企画を開催中。応募フォームは6月4日に開設予定。詳細はNAPAC公式サイトを確認いただきたい

富士SUPER TECH24時間レースへの協賛の意味とは

 続いて、アフターマーケット業界の協会であるNAPACがなぜ富士SUPER TECH24時間レースに協賛するのかという点についても聞いてみた。

 高瀬会長は「NAPACはものを多く売ることを求める協会ではなく、安全であり安心して使用できる製品を提供していくことが原点です。今回の走行会もそうですが、“富士スピードウェイを全力で走っても安心して使える製品だよ”と言えるメーカーの集まりです。そしてその品質を証明するものとしてNAPACではスポーツパーツの品質基準としてASEA基準やJAWA基準を設けています。このうちASEA基準を例に取りますと、ASEA基準には2つの種類があり、1つは登録制度によるものです。これは法令の遵守とユーザーの安全確保、ボルトオン取り付け、交換、保安基準適合の条件を満たしている製品について、製造メーカー、販売会社が条件に相違ないことを前提に申請するものです。そしてもう1つは走行機能、安全性に特に大きく関わるアイテムを対象とした“認定制度”です。これは登録制度の条件に加えてASEAが独自に設定した厳しい試験、評価をクリアしたものにだけ与えられます。それぞれの制度は登録証シールや認定書シールといったかたちで製品、もしくは製品保証書に添付されていますので探してみてください。これらは私どもが長年積み重ねてきた“信用”を表しているものです」と、まずは品質基準について説明した。

 続けて「こうした取り組みをしていてもNAPACの知名度が低かったら、クルマで楽しみたいというユーザーに対して私どもが貢献できる範囲も限られてきます。そこでNAPACという名前と、安全安心なアフターパーツの存在を知っていただくために市販車ベースのクルマで競い合う富士SUPER TECH24時間レースの冠スポンサーをやらせていただいています。また、このレースは多様性のあるもので、レースも見るけどサーキットでキャンプをしたい人もきます。前に話したクルマの楽しみ方が増えていることそのものですので、私どもにとっても勉強になる場です。それになにより、もともとはスポーツパーツが主体だった集まりなので、日本のモータースポーツを応援したいという気持ちも強く持っています。このようなことから富士SUPER TECH24時間レースへの協賛を3年計画で進めてきたのです。今年がその3年目になります」と説明した。

 TOYOTA GAZOO RacingのGR86&BRZレースのT.R.A認定パーツについては、そもそも86&BRZレースの時代から使用できるパーツを増やしてほしいという要望がエントラントから出ていたそう。そこでTOYOTA GAZOO Racingからエントラントの声への対応として使用できるパーツを増やすことにしたのだが、レースで使うものだけに信頼性が大事だ。そこでNAPACの品質基準と認定制度が活用され、レベルに達しているものをT.R.A認定パーツとしたということだ。なお、認定制度に通ったパーツであっても加盟企業の方針としてT.R.A認定パーツへの申請をしていないものもある。

NAPACでは品質基準を独自に設定していて、その基準に合わせて加盟企業はパーツを製造、販売している。こうした姿勢は自動車メーカーにも認知されている。新型フェアレディZが走行会に現れたのも、TOYOTA GAZOO RacingのGR86&BRZレースの認定パーツとなったのもその証明と言える

 アフターマーケットの製品はクルマにプラスアルファの魅力や個性を求めたときに初めて触れるものだけに、どのようなものか知らない人も多かったと思うが、NAPACに属するメーカー、発売元の製品に関してはこのような考え方、決まりのうえで製造販売されているということ。現在は1台のクルマに長く乗るケースも増えているだけに整備の機会も増える。また、イメージチェンジしたくなることもあるかもしれない。そんなときにNAPACのロゴが入るパーツを選んでみると愛車に新しい魅力が追加されるかもしれない。