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ヴァレオが日本の一大自動車生産地である九州に新設したサーマルシステム部品生産工場「苅田工場」

2022年6月1日 実施

工場内全景。広々とした組み立てフロアが広がる

日本の一大自動車生産地に新設された「苅田工場」

 世界的な自動車部品サプライヤーであるヴァレオの日本法人であるヴァレオジャパンは6月1日、九州に新たに設立したサーマルシステムの新工場「苅田工場」の事前内覧会を行なった。苅田工場はヴァレオジャパンにとって7カ所目、九州において2カ所目となる工場で、カーエアコンユニット、アクティブグリルシャッター、樹脂成型部品の製造を行なっていく。

 工場は福岡県京都郡苅田町大字与原2101-1に位置し、名前からも分かるように日産自動車九州、日産車体九州に近い。部品の供給も8割が日産向けということだが、九州にはレクサスなどを生産するトヨタ自動車九州、ダイハツ九州などがあり、2019年の日本の自動車生産台数920万台のうち140万台(15%)を担う自動車生産拠点となっている。近隣となる山口県や広島県の自動車生産工場の230万台(25%)ともサプライチェーンを構築しやすい土地として選定したという。

ヴァレオジャパン苅田工場外観。最大高さは3階建ての事務所部分

 ヴァレオジャパン苅田工場の概要は、敷地面積1万5312m2、延べ床面積(建物面積)8527m2。工場は吹き抜けのワンフロアで3階建て事務所の部分などもある。

 生産ラインは、HVAC(Heating,Ventilation, and Air Conditioning)と呼ばれるカーエアコンユニットが5ライン。走行中にエンジンルームに入る風量を制御するアクティブグリルシャッターが1ラインの計6ラインになる。

 生産の特徴としては、射出成形機を工場内に備えるため、HVACの外装やアクティブグリルシャッターのフレームなどを工場内で生産していること。これらのプラスチック製品は、以前は外部から運ぶなどして生産を行なっていたが、かさが大きい部品となるため輸送体積が大きすぎるため、工場内生産に移行したとのこと。大容量部品の輸送工程をなくすことでロジスティクスのカーボンニュートラル化も図ることができ、それも目標の一つだと語ってくれた。

苅田工場内に設置された射出成形機。かさばる部品を工場内で内製することで、輸送の際のエネルギーロスなどを低減していく

HVAC、アクティブグリルシャッターの生産ライン

完成したHVAC

 HVACの生産ラインは、U字型に組まれており、組み立てスタッフはU字型のレール上に沿って組み立て台車を押しながら、部品を組み付けていく。基本は一人の作業者が部品をピックアップし組み付けるが、精度や手間の必要なところは自動化を実施。グリスの塗布や、ネジ締めなどがこれにあたる。また、部品のピックアップではポカヨケ(ミスを防ぐための工夫)のために、必要な部品ボックスがLEDで光るなどの仕組みも取り入れられている。

 完全自動化を行なっていないのは、生産のフレシキビリティに応えるため。多品種生産を行なっており、また生産台数も現状は振れ幅が大きい。そのため、機械で自動化ラインを組んでしまうと、融通が利かなくなり、結果コストが上がってしまう。そうならないよう、シンプルなレールでラインが設計されており、ブロックごとに柔軟なピックアップ部品配置が可能なよう屋台が組まれていた。

HVACのU字型生産ライン。屋台方式のラインが組まれている

 一方、アクティブグリルシャッターはHVACより自動化度が高かった。アクティブグリルシャッターには4ブロックでフラップが取り付けてあるのだが、そのフラップの組み立ては4基のロボットで自動化。フラップの両脇に取り付けるキャップも自動で圧入されている。

 ただ、このアクティブグリルシャッターもあえて人の手で行なう工程、自動化しない工程を用意。製品組み立てを専用化しないことで、ラインに汎用性を持たしているのだという。アクティブグリルシャッターでは、7工程のうち2工程を自動化、残りの5工程は人が作業を行なうようになっている。今回組み立てられていたアクティブグリルシャッターはSUV向けのフラップが22枚あるものだが、フラップ工程の自動化のみとなっていれば、フラップ枚数の異なるアクティブグリルシャッター生産にも対応できるという設計なのだろう。

アクティブグリルシャッターの自動化工程部分。フラップのピックアップが画像センサーなどを用いて自動化されていた

 ヴァレオの新工場を見て感じたのは、広い工場でありながらラインがコンパクトに、そして汎用性高く作られていること。工場内に射出成形機を備えるなど、ものの移動を極力減らしてエネルギーロスを低減し、カーボンニュートラル化や無駄なコストの低減を図ろうとしていることだ。日本の一大自動車生産地となった北九州に位置する苅田町の新工場は、自動車生産そのもののエネルギーロスも図っていくことができるのは間違いないだろう。