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トヨタ、ニュル24時間水素プロジェクト開始へ 豊田章男社長は水素エンジン搭載車でニュルブルクリンクを「せめて7周くらい、8周できれば」と

2019年のニュルブルクリンク24時間レース挑戦時におけるモリゾウ選手ことトヨタ自動車 豊田章男社長

豊田章男社長は、ニュルブルクリンク24時間レース参戦への思いを語る

 トヨタ自動車は6月23日、2023年以降を見据えニュルブルクリンク耐久シリーズに参戦することを発表した。これは2023年5月18日~21日に行なわれるニュルブルクリンク24時間レースへの参戦を念頭においた活動になる。

 ニュルブルクリンク24時間レースは、モリゾウ選手として知られるトヨタ自動車 代表取締役社長 豊田章男氏が情熱を持って取り組んでいたレースであり、「TGRのもっといいクルマづくりの原点」と位置づけられているレースでもある。

 スーパー耐久第3戦SUGOに参戦中の豊田章男社長に、2023年のモリゾウ選手によるニュルブルクリンク参戦の可能性について聞いてみた。

 豊田章男社長は、「この間のスープラでボクは(ニュルブルクリンク24時間の)卒業宣言をしているらしいんですよ。だけどニュルをともに戦ってきたみなさんから次はいつ乗るんですかと言われる。期待がある。ではボクはどうなのというと、ここで(スーパー耐久の場)でずいぶん乗ってきた。(一緒に戦っているトップドライバーから)いろいろ指導も受けて。ずっとね。自分にとってニュルとは、こわごわと走ってきた部分もあった。楽しく走ってきたかというと、そういうレベルではなかった。 そうすると、あの厳しい道を本当に、今ちょっと上がった技能で楽しく、速くではなく楽しくね走ってみたいという気持ちもあります」と語る。

 2019年以降、豊田章男社長はニュルブルクリンク24時間レースに挑戦していないが、2020年、2021年、2022年と国内ラリー、国内サーキットレースに参戦。とくに2021年以降に開始した水素カローラによる本格参戦は、脱炭素のために目指すカーボンニュートラル社会の多様性を広げるものとして大きなインパクトを社会に与えている。

 豊田章男社長から驚くべき発言が飛び出たのはその後だ。

 豊田章男社長は、「本当は、一番は、水素のクルマで走ることができたらいいが、あそこは(ニュルブルクリンク24時間のコース)は約25kmだから。2周に1回(給水素のピットイン)だと……。せめて、せめて7周くらい、8周できれば」と、同席していたTOYOTA GAZOO Racing プレジデント 佐藤恒治氏をチラ見する。

 佐藤氏は、「みなさん、冗談だと思っているでしょうが、このノリでこのような状況(水素エンジン車によるスーパー耐久参戦)になってますから」と語る。スーパー耐久への水素エンジン車の参戦も、そもそものきっかけは豊田社長が水素エンジン車のプロトタイプを見た後に「S耐行くか!!」と意思を表明したことで流れが決まったという。

 ニュルの約7周というと、25km×7回。ピットインの余裕を見積もると水素燃焼エンジン車において約200kmの航続距離は必要になるだろう。現状が富士を10周から12周なので約50kmくらいのため、約4倍の性能向上が必要になる。

航続距離200kmを目指す水素燃焼エンジン車

 非常に厳しい開発目標だが、佐藤プレジデントはまんざらでもないという状況に。佐藤プレジデントは「ちょっと最近刺激が足りなかった」と、ニュルブルクリンク24時間へ水素エンジン搭載車を走らせる、しかもモリゾウ選手らによって走らせるという挑戦が始まった模様だ。

 ヨーロッパにおいて水素エンジン搭載車は、GRカローラではなく本来の水素エンジン先行搭載車であるGRヤリスのパッケージで発表されている。ただ、GRヤリスのパッケージでは航続距離の問題の解決が厳しくなるため、ほかのパッケージが投入されるかもしれないし、なにより基本性能のさらなるアップが必要になるだろう。

 いずれにしろ、豊田章男社長自身がモリゾウ選手として水素エンジン搭載車をルーキーレーシングの仲間とともにヨーロッパでデビューさせることになれば、脱炭素の解決策として大きな一石を投じることになるのは間違いない。

2023年のニュルブルクリンク24時間レースの日程
スーパー耐久第3戦SUGOを走る32号車 水素カローラ