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ダイハツの新型「ムーヴ キャンバス」開発話 女性の声を重視したら運転に不安を持つ人にとって優しいクルマになった
2022年7月11日 12:38
- 2022年7月13日 発売
- 149万6000円~191万9500円
ダイハツ工業が発売する「ムーヴ キャンバス」は、女性を中心に人気の高いクルマである。そのムーヴ キャンバスが7月5日にフルモデルチェンジを発表。従来のイメージを強く残しつつも走行性能や安全性能を向上させるDNGAプラットフォームの採用や、最新の予防安全装備「スマートアシスト」の機能を充実させることで商品性を大幅に向上。さらに多くの要望があったというターボエンジン搭載グレードが追加され、幅広いユーザー層にマッチするクルマになった。
新型ムーヴ キャンバスの情報は別記事の「ダイハツ、『ムーヴ キャンバス』フルモデルチェンジ DNGAを採用しターボモデル新設定」「写真で見る ダイハツ『ムーヴ キャンバス』」で紹介をしている。
初代のムーヴ キャンバスはユーザーの9割が女性という驚きのデータを持つクルマだった。そしてクルマの購入に関しても、Webや雑誌といった自動車メディアなどで調べるのでなく、街を走るムーヴ キャンバスを見かけてひと目ぼれしたことから購入に至る流れが多いそうだ。中には「名前は分からないけど欲しいクルマがある」と販売店に来店するケースもあったという。
そんな特別な魅力を持つムーヴ キャンバスをフルモデルチェンジすることは、ダイハツにとってさらに人気を得るチャンスであると同時に、初代を好きでいてくれるユーザーやファンが引き続き支持してくれるような展開に持っていくことも開発段階での重要な部分だった。
そこで、今回のフルモデルチェンジで大きなテーマとなったのが「継承と進化」ということ。多くの人に気に入ってもらえたデザインの部分は「継承」として、進化については「かわいいの時代進化」と表現された。これはどういうことかというと、かわいいデザインであると同時に「スッキリ」した印象を加えるというもの。そうした視点から生まれたのが新型ムーヴ キャンバスのデザインだが、ここで難しかったというのは「スッキリの度合い」だ。スッキリさせすぎるとシャープさが出てきてしまうのだがそれだとムーヴ キャンバスらしくないので、スッキリさせつつ、シャープすぎないところを狙ってデザインを進めた。
デザインについてはもう1つ。初代ムーヴ キャンバスはルーフ両端をラウンドさせることでホイールベースを長く見せるデザインを取っていた。軽ワゴン車は車室内空間の広さを重視する傾向があるが、ムーヴ キャンバスではデザインを優先させたカタチだ。しかし、それが特徴であり人気を得た要素の1つでもあった。
そのため、新型ムーヴ キャンバスでも横から見たシルエットを「残そう(継承)」となったという。ただ、サイドパネルにプレスラインを入れたりドア下部にメッキ加飾を盛りこんだサイドモールを設けたりと手を加えている。なお、サイドパットをボディ色としているのは、色使いに敏感な女性に向けての「細かなこだわり」という意味があるそうだ。
そうした過程を経て生まれた新型ムーヴ キャンバスのスタイリング。新旧の画像を並べてみたのでじっくり見比べていただきたい。
ダイハツは現行タントから、電動化などCASEへの対応や商品性での優位性などを目的としたDNGA(ダイハツ ニューグローバル アーキテクチャ)というプラットフォームを新型車に順次採用。当然、新型ムーヴ キャンバスにもDNGAは使用されている。
DNGAを使うダイハツの軽自動車というと、最近のモデルではタフトがそう。同じメーカーの軽自動車でエンジンも自然吸気エンジンとターボエンジン搭載モデルがあるだけに、新型ムーヴ キャンバスの走りも「タフトの試乗記事が参考になるのでは?」と思ったりもしたがそうではないようだ。
タフトはクロスオーバー車であるため、ムーヴ キャンバスとは求めている乗り味がそもそも違っている。そのため、同じDNGAといってもクルマのキャラクターにあわせたチューニングが施される。特に女性が中心となっているムーヴ キャンバスであれば専用のチューニングに落とし込まないといけないという考えがあったという。
そこで新型ムーヴ キャンバスの開発陣は、女性を中心に「どんなクルマに乗りたいか」という調査を行なった。しかも「いつも以上に徹底したヒアリングをした」とのことだ。そうした取り組みから得られたのが女性が感じている「運転に対するさまざまな不安や悩み」だった。しかも質問をした男性の技術者では思いつかなかったような意見が多々あったという。
そんな意義のあったヒアリングを経て新型ムーヴ キャンバスに必要な要素が見えてきた。その1つがステアリングの操作感だった。
男性と比べて腕力が弱い女性ドライバーというと、ステアリングの操作感は軽いほうがいいと考えがちだが、実際の声はそうではなかった。軽いことはいいのだけど女性なりに適切な操舵感を求めていた。また、切るときだけでなく戻す際の操舵感にも違和感を持つ声があったので、そこを含めてステアリングの操舵感を女性向きに最適化している。
2つ目はアクセルのレスポンス。信号待ちなどからの発進時「スタートでもたつくと後のクルマに迷惑がかかる」と気を使うことが多いそう。そんな声に対してはアクセル踏み込み時の初期応答を改善しているということだった。
さらに乗り味に関しても手が入れられていた。初代ムーヴ キャンバスは自然吸気エンジン車のみの設定であり、女性ユーザーが9割という環境だったのでクルマは主に近距離の移動で乗られることが多かった。
そのため、乗り味については道路が荒れたところでのクルマの揺れを気にする声が多かったという。これはサスペンションが硬いとか柔らかいとかではなく「乗っていて気持ちわるくなる感じ」という表現だったそうだ。そこで、サスペンションの設定を見直すことで新型ムーヴ キャンバスならではの乗り味を作りあげているという。
以上の点が、ダイハツの軽自動車の中でも、新型ムーヴ キャンバスだけに与えられた特性。この仕上がりに対してダイハツ側からは「女性の声を多く聞いていったのですが、その想いに応えようと作った結果、男性を含めて多くの方にとって快適に乗っていただけるクルマになっていると思います」という言葉が聞けた。
今後、ジャーナリストによる試乗記も紹介できると思うので、徹底したヒアリングをもとに専用チューニングを施した新型ムーヴ キャンバスの走りをどうインプレッションするか、楽しみにしていてほしい。
ここまでの紹介で「女性」というワードが多く出てきただけに、男性陣にとって新型ムーヴ キャンバスがちょっと縁遠く感じてしまったかもしれない。確かに初代は女性ユーザーを強く意識していて、コンセプトにも「母と娘」が共用で乗ることを盛りこんでいた。
結果、市場では女性オーナーの比率がとても高くなったのだが、100%ではないし、中古車購入層を含めると男性ユーザーもそれなりにいる。また、親子共用でも「母と娘」ではなく「父と娘」の共用というパターンもあった。
そうしたことから新型ムーヴ キャンバスでは男性ユーザーの存在も意識して「セオリー」というグレードを設定。こちらのグレードはボディカラーの設定をモノトーンのみとし、さらにピンストライプ状にメッキ加飾を追加。ホイールカバーの色もトーンを落とす。
インテリアもブラウン基調の内装色にネイビー色のシート表皮、メーターパネル色もブラック系に。ステアリングホイールとシフトノブを革巻きにするなど「上質感」を高める作りとしている。これにより大人っぽい雰囲気を好む女性はもちろん、男性にも選びやすいクルマとしている。
なお、新型ムーヴ キャンバスにはストライプス、セオリーともに初代のときには採用しなかったターボエンジン搭載グレードが設定されているが、これも男性ユーザーの存在を意識してとのことだ。
もう少しするとダイハツ車の販売店に新型ムーヴ キャンバスの試乗車が用意されると思うので、チャンスがあればダイハツの特別なこだわりが詰まった新型ムーヴ キャンバスを体験してみてはいがかだろうか。