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フェラーリ、初の4ドア4シーターモデル「プロサングエ」 V12エンジン搭載で前後重量配分49:51を実現

2022年9月13日(現地時間) 公開

フェラーリ初の4ドア4シーターモデル「プロサングエ」

 伊フェラーリは9月13日(現地時間)、同社初の4ドア4シーターモデル「Purosangue(プロサングエ)」を発表した。

 フェラーリとしてはこれまで2+2モデル(前2席、後部に小ぶりな2席)が戦略上の重要な役割を果たしてきたが、イタリア語で「サラブレッド」を意味する今回のプロサングエでは4シーターを採用する。

 フェラーリいわく、一般的なクロスオーバーやSUVではエンジンが車両前方に搭載され、これと直接つながるギヤボックスと共にフロントアクスルにほとんどまたがる形となるが、その結果として「最適とはいえない重量配分となり、ドライビング・ダイナミクスやドライビング・プレジャーは、跳ね馬のお客さまやエンスージアストが慣れ親しんだ卓越した水準にはとうてい届きません」という。それに対し、プロサングエではミッドフロントにエンジンを、リアにギヤボックスを搭載するスポーティなトランスアクスル・レイアウトを採用。これによって前後重量配分は49:51を実現している。

プロサングエのボディサイズは4973×2028×1589mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは3018mm

 プロサングエのV型12気筒6.5リッターエンジン(コードネーム:F140IA)はシリンダーバンク角 65°、ドライサンプ、高圧の直噴式を採用し、最高出力725CV/7750rpm、最大トルク716Nm/6250rpmを発生。吸排気システムとタイミングシステムは完全に再設計されたもので、シリンダーヘッドは「812 Competizione」の派生形。特に機械効率と燃焼効率に惜しみなく力を注いだといい、F1をインスピレーションとするキャリブレーション・コンセプトを採用した結果、フェラーリが4シーター用に開発したエンジンの中でも、同セグメント全体でも最もパワフルなエンジンに仕上がったという。

 エンジンの直噴システムは2個の高圧燃料ポンプ(350バール)を備え、ここから燃焼室内部のインジェクターに燃料が送られる。イグニッションシステムは12個のコイルとスパークプラグから成り、これを常時モニターするECUはイオン電流を測定して点火タイミングを制御するイオン感応システムを備える。シングルスパークとマルチスパークの機能を兼ね備え、全回転域で燃焼効率を最大限に高めるという。ECUは燃焼室内の燃焼も管理して、エンジンが常に最高の熱効率で稼働するようにしており、これにはタンク内の燃料のオクタン価(RON)を判別し、それに合わせて調整するストラテジーが貢献する。エンジン制御ストラテジーでは、F1に参戦するフェラーリの専門性から生まれた特許取得の新機能を採用して、低・中回転域での過渡加速のトルクを最適化しているという。

 また、搭載する8速オイルバス式デュアルクラッチ・トランスミッションは、ドライサンプの採用とクラッチ・アッセンブリーの大幅な小型化でレイアウトが最適化された。これによって搭載位置が15mm下がり、車両全体の重心も15mm下げることに成功。新クラッチのパフォーマンスは35%向上し、変速時には最大1200Nmの動トルクを伝達する。新世代の油圧式アクチュエーターによってクラッチ・フィル時間が短縮され、トータルの変速所要時間も以前の7速DCTより短縮された。新たなギヤレシオはギヤ比の差が縮まって緩やかになり、トップのギヤ比は高速道路を走行する際の燃費が向上するよう高めの設定とした。

 そのほか、プロサングエではGTC4Lussoに向けて開発された4RM-Sシステムの進化版を採用し、そこにSF90 Stradaleの4WDシステムで制御ロジックに採用された技術革新と、812 Competizioneの新たな独立4WSが加わった。これにより、加速中のコーナリングではフロントアクスルのトルクベクタリングと、E-Diffによるリアタイヤへのトルク配分、4WSによって生み出される横力とを組み合わせて、最適なヨー・マネージメントを行なえるようになっている。

V型12気筒6.5リッターエンジンは最高出力725CV/7750rpm、最大トルク716Nm/6250rpmを発生

 一方、完全な新設計とするシャシーでは妥協のない剛性を実現する構造を目指し、下部シャシー構造はすべて高強度のアルミニウム合金製とした。下部シャシーの構造は、アッパーボディの構造エレメントと共に閉断面の押し出し材を鋳造材で接合したスペースフレーム・シャシーを形成し、そこに荷重を受けるアルミニウム製シートメタルが接合される。そのため、フェラーリの従来の4シーターより大きいにもかかわらずシャシーは軽くなり、ねじり剛性は30%、ビーム剛性は25%アップし、この2つが基盤となってNVH特性が向上し、快適性も高まったという。

 防音材を内蔵するシングルシェルのカーボンファイバー製ルーフはまったく新しいもので、剛性はガラスルーフと同レベルでありながら、防音材入りアルミニウム製ルーフより20%軽くなった。人間工学の観点から、ホイールベースをコンパクトに押さえつつ、乗り降りのスペースをできる限り確保することに力を注いだといい、このために伝統的な開き方をするフロントドアは開放角度が63°で、他のフェラーリモデルより5°広く、後部ドアはまったく新しい電動のリアヒンジ式で79°開く。ボンネットは、Ferrari Monza SP1/SP2などと同様のフロントヒンジで、これによってAピラー周辺に特殊なフォルムを作り出すことが可能となった。加えてアルミニウム製のリアハッチは電動とし、スタビラスの電動テールゲート・リフターを2個備え、73°まで開くのでラゲッジエリアにアクセスしやすく、大きな荷物の積み降ろしも容易にしている。

完全新設計のシャシー

 インテリアデザインはエレガンスとモダンさを感じさせるものとし、コクピットはSF90 Stradaleをインスピレーションとしており、パッセンジャー側はほぼ対称を成す。ドライビング・エクスペリエンスへの関与に必要なあらゆる情報を提供するという10.2インチのディスプレイなども採用する。また、フェラーリ史上初めて個々に調節可能な独立した4個のシートを搭載。快適性にフォーカスしたコンポーネントを装備し、さまざまな密度のフォームを活用しており、新サスペンション・システムの効果も相まって前例のない快適性を実現するという。

 また、フロアのトリムに強靱性と耐久性を求める向きには伝統的なカーペットやレザーではなく、軍服に使われる防弾性能のあるファブリックを選ぶことも可能。エレガントで現代的なダークブラウンのセミアニリン・レザーも新たに導入された。

4シーターレイアウトのプロサングエのインテリア

 そのほかプロサングエではアダプティブ・クルーズ・コントロール(ACC)、自動緊急ブレーキ・システム(AEB)、オート・ハイビーム(HBA/HBAM)、レーン・デパーチャー・ウォーニング(LDW)、レーン・キープ・アシスト(LKA)、ブラインドスポット・ディテクション(BSD)、リア・クロス・トラフィック・アラート(RCTA)、トラフィックサイン・レコグニション(TSR)、眠気や脇見を検知するドライバー・ドラウジネス&アテンション(DDA)、リアビュー・パーキングカメラ(NSW)といった、ボッシュと共同開発した先進運転支援システムを標準装備。また、急な下り坂で車速の維持とコントロールを助けるヒル・ディセント・コントロール(HDC)をフェラーリのモデルとして初めて搭載された。

フェラーリ「プロサングエ」(7分2秒)