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ブリヂストン、「救急車・指揮車用パンク対応タイヤ」を共同研究開発 最新のサイド補強ゴム技術や冷却技術を採用

2022年10月24日 発表

「救急車・指揮車用パンク対応タイヤ」を研究開発

 ブリヂストンと総務省消防庁消防大学校消防研究センターは10月24日、パンクしても走行を続けることができる「救急車・指揮車用パンク対応タイヤ」を共同で研究開発し、実証実験を踏まえ社会実装可能な技術であることが確認できたと発表した。

 これまでの救急車や指揮車(災害現場において指揮を行なうための車両)のタイヤは、災害時などの荒れた路面を走行してパンクした場合、タイヤがつぶれて走行を続けることができなかった。しかし、今回研究開発を行なったパンク対応タイヤは、ブリヂストンが保有するタイヤのサイド部分を補強することなどにより、空気圧がゼロになっても所定のスピードで一定距離を走行可能とする技術(以下、ランフラットテクノロジ)を救急車など用に応用することで、パンク後でも一定程度の走行が続けることができるというもの。

 ランフラットテクノロジを採用したタイヤは、これまで主に乗用車向けの偏平率が低いタイヤ(偏平率40、50など)で実用化されていたが、車両重量が重い救急車などに使用される偏平率が高いタイヤ(偏平率80)に既存のランフラットテクノロジをそのまま採用するだけではタイヤがパンクした状態のたわみが大きく、走行時のタイヤの温度が高温となってタイヤが破壊されて走行が困難となる。

 そこで、救急車などがパンクした場合は傷病者を病院搬送することやタイヤ交換を行なえる場所まで走行可能とすることを考慮し、40km/h、走行距離50kmを必要性能として設定。そのうえで、最新のサイド補強ゴム技術やタイヤサイド部の冷却技術を採用するとともに、タイヤ形状、パターン、部材配置などの最適化を図ることでパンクしても走行を続けることができるパンク対応タイヤを開発した。

 今回採用した最新のサイド補強ゴムはパンク走行時の発熱を抑え、高温でも壊れにくい特性を持つ。そのため、従来の補強ゴムと比較してパンク走行時の耐久性を維持したまま、補強ゴムを薄くすることを可能にした。パンク走行時に荷重を支えるために硬い特性を有する補強ゴムを薄くできることに加え、通常走行時の温度域では柔らかい特性を有していることから、通常走行時の乗り心地も向上しているという。

 また、タイヤのサイド部の冷却技術として、表面に特殊な形状の突起を設けることで空気の乱流を促進してタイヤを冷却する技術「クーリングフィン」を採用。突起の形状を最適化した最新のクーリングフィンを搭載することでより効率的にタイヤを冷却することが可能となり、パンク走行時のサイド部の温度上昇をおさえ、耐久性の向上を実現した。

表面に特殊な形状の突起を設けることで、空気の乱流を促進してタイヤを冷却する技術「クーリングフィン」

 このタイヤをテストコースでの走行実験において性能を確認するとともに、北は北海道から南は沖縄まで計5か所の消防本部において、積雪、凍結、台風時などのさまざまな路面状況や、都市部と山間部での異なる運行状況における実際の救急活動で実証実験を行なうなど、パンク対応タイヤへの評価を実施し、十分に社会実装が可能な技術であることを確認。今後、同技術は災害現場対応の救急車などのタイヤに活用されることが期待される。

積雪、凍結、台風時等のさまざまな路面状況や、都市部と山間部での異なる運行状況における実際の救急活動で実証実験を実施。全国5か所の消防本部の救急車・指揮車、計21台で実施したという(総走行距離25万km)

 なお、今回のパンク対応タイヤはバンタイプ車両向けのもので、トヨタ「ハイエース」や日産「キャラバン」といった195/80R15 107/105Lサイズを対象にしている。また、パンク対応タイヤはタイヤ本体(スタッドレスタイヤ)、専用ホイール、タイヤ空気圧監視システム(TPMS)をセットで装着することを必須とした。

救急車・指揮車用パンク対応タイヤ開発(2分52秒)