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SUPER GT最終戦もてぎ、逆転総合優勝を狙うホンダは決勝レースをどう戦うのか
2022年11月6日 10:22
逆転優勝を狙うホンダ
大詰めを迎えた2022年のSUPER GT。GT500クラスに参戦するホンダチームは、前戦第7戦終了時点で17号車Astemo NSX-GT(塚越広大/松下信治、BS)がトップから4ポイント差の3位につけ、100号車STANLEY NSX-GT(山本尚貴/牧野任祐、BS)はトップから17ポイント差の4位。11月6日の決勝レースの結果次第ではどちらもシリーズチャンピオンに手が届く位置にいる。
5日の予選では17号車が10位となったため、少なくともライバルを追い上げ、追い越すことが必須だが、十分にチャンピオンの可能性がある。一方の100号車はポールポジションを獲得したことで1ポイントを加算し、決勝レースで優勝できれば劇的な逆転総合優勝も夢ではない。
くしくも前年の2021年、当時1号車だった山本尚貴選手は16ポイント差でチャンピオンシップをリードしながら最終戦を迎えたものの、36号車のTGR TEAM au TOM'Sに逆転を許し総合優勝を目の前でさらわれている。予選を終えた今回のタイミングでは、1年前とその立場が逆転し、同じ16ポイント差で追いかける立場となっており、100号車が「リベンジ」できるかどうかにも注目が集まる。
こうした状況下で、17号車と100号車の2チームや、もてぎというサーキットについてどう分析し、決勝レースではどのようなレース展開を期待しているのか、本田技術研究所でSUPER GTのプロジェクトリーダーを務める佐伯昌浩氏と、ホンダ・レーシング(HRC)のチーフエンジニア往西友宏氏による予選後のコメントをお伝えする。
寒いもてぎ、どのタイヤが正解かは未知数
──まずは予選の振り返りを。
佐伯氏:サクセスウェイトのない最終戦の予選で、どのポジションにいられるかは、今年の車両の進化度合いを含めて総合的に見られるところ。今日は路面温度の変化や選択したタイヤの振る舞いもあって、ウォームアップに苦戦するクルマが出てきた。(100号車が)ポールポジションを獲れたのは我々のクルマのポテンシャルが高かったとも言えるが、判断が少し難しかったというのが今日1日の感想。
そんななかでチャンピオン争いの中心にいた17号車が、僅差ではあるがQ1で敗退して10位。ほかのNSX 4台はQ2に進出し、100号車はQ1、Q2ともトップタイムでポールポジションを獲得できた。ということで、NSX 5台がトップ10でスタートすることになる。明日は路面温度の変化や選択したタイヤの振る舞いなどによって展開が動くと思うので、当然ポールポジションからの優勝も狙っているし、まだまだチャンピオンの可能性は高いと考えている。
往西氏:2018年に当時のNSXでコースレコードを記録したときから誰もそのタイムをブレイクしていなかった。レースの開催時期が違ったり、最終戦がノーウェイトじゃなかったり、といった違いはあるが、久々にタイム更新できるかも、というタイミングで我々のクルマがレコードをブレイクしてくれたのは、開発してきた人間としてはすごく励みになったし、進化も実感できたので、今日の結果は非常にうれしい。
そこまで(ハイペースの)タイムを刻めなかったほかのクルマも、(100号車と)同じポテンシャルは持っているので、明日に向けて修正できるところは修正して、力強くレースを走れるように準備していきたい。
──ポールポジションスタートの100号車と、10位スタートの17号車、明日の決勝ではそれぞれどのような戦略が考えられそうか。
佐伯氏:各チームがそのときのレースポジションによって、ミニマム(スティント)でピットインさせてセーフティカーを回避するとか、そういう戦術は出てくるとは思う。最終的には、17号車に関しては少なくとも3号車と12号車より前でチェッカーを受けなければいけないので、そういった勝負はしていくことになるだろう。
──同じNSXでも車体によって速さにばらつきがある状況のようだが、特に17号車についてはどういう状況にあるのか。
佐伯氏:今朝の走行から流れをつかみきれなかったかな、という部分はある。それが影響したのか、Q1はもう少しのところで通過できなかった。同じブリヂストンタイヤ勢でも、すべてのクルマが同じタイヤを装着しているわけではない。今日の予選はこういう結果でも、明日のレースにそれ(経験)がどう活かされるのか、という部分もあると思う。
──ブリヂストンタイヤ勢3台のタイム差が大きいのは、タイヤチョイスの違いが大きい?
佐伯氏:そうとも言い切れない。
往西氏:(10月12日にもてぎで行なわれたタイヤテストで)17号車が代表でテストした結果から、新しく見つけられた要素が100号車などほかの車両のタイヤチョイスのなかに部分的には含まれている。その(17号車のテストの)データを参考にして選んでもらっている。
3台とも重視したい(パフォーマンスを上げたい)ところが異なるので、3台それぞれがその時々のコンディションでパフォーマンスが違うのもある程度は受け入れなければいけない。佐伯が今言ったように、明日のコンディションでどのタイヤが一番マッチするかはまだはっきりわからないところもある。とにかくNSXとBSタイヤの組み合わせというところでは幅広い選択肢をもっている、と思っていただければ。
──ノーウェイトの今回、タイヤチョイスだけでなくクルマのセットアップもそれぞれで変えている?
往西氏:走らせているクルマの姿としてはそれほど変わらない。たとえば全然違う車高で走っている、という感じではない。
佐伯氏:たとえばこれが夏のもてぎであれば、今までに何回もやってきているので、同じようなタイヤ選択に集約していくはずだけれども、久しぶりの寒いもてぎなので、エンジニアのいろいろな経験値やドライバーの好みなどで、(セッティングに)ばらつきはけっこう出ている。
もてぎはブレーキング、回頭性、ストレートスピードのバランスが大事
──そもそも、もてぎというコースを車両として速く走るのに求められるものとは。
往西氏:一般的に言われているように、フルブレーキングする場所が多いので、かなり高いレベルの安定したブレーキングが必要になる。その後はタイトコーナーを回るのに回頭性の高さも必要。また、フルブレーキングする箇所が直線でつながっているところが多いので、ストレートスピードをロスしたままだと全体的にタイムを落としてしまう。主にそのあたりの3つの要素をうまくバランスさせることが重要。
レースになるとストレートスピードがあれば抜きづらかったりもするので、ブレーキの安定性と、ストレートスピードのバランスをうまく取りながら、というところになる。
そのなかでNSXは、ブレーキはかなり重視して開発してきているので、そのあたりがアドバンテージになっていると思う。半面、ストレートスピードで他車を凌駕するところはまだないので、ストレートで迫られても奥までしっかりブレーキを使って攻められるようなクルマにしている。
──エンジンについてはどうか。
佐伯氏:エンジンは、もてぎはストップ・アンド・ゴーだから、加速性能が大事。あとは、運転しやすくするためにアンチラグシステム(過給器の動作レスポンスのラグを防止する仕組み)がほしいと言われるようなサーキットなので、たとえば(レース中は実際にはオフにすることが多いため)アンチラグを切ってもトルクが出るようなエンジンがよろこばれる。減速の後にずっと回り込んで、その後向きを変えてじわっと踏み込んでいくところで、もうちょっと(トルクが)ほしいと。
燃費については、(決勝レースでは、1スティントあたり)21周までにピットインさせることは、かなりリスクがあるのでやらないと思う。21周プラスアルファからになるのではないか。燃料リストリクターの制限量によって燃費が変わることはあまりない。どちらかというとドライバーの努力代(しろ)の方が大きい。
GT500 予選公式結果
順位 | ゼッケン | チーム/車両 | ドライバー | Q1タイム | Q2タイム | タイヤ | サクセスウェイト |
---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 100 | STANLEY NSX-GT/Honda NSX-GT | 山本尚貴/牧野任祐 | 1'35.615 | 1'35.194 R | BS | 0 |
2 | 19 | WedsSport ADVAN GR Supra/TOYOTA GR Supra GT500 | 国本雄資/阪口晴南 | 1'35.924 | 1'35.306 R | YH | 0 |
3 | 12 | カルソニック IMPUL Z/Nissan Z GT500 | 平峰一貴/ベルトラン・バゲット | 1'36.244 | 1'35.752 | BS | 0 |
4 | 3 | CRAFTSPORTS MOTUL Z/Nissan Z GT500 | 千代勝正/高星明誠 | 1'36.129 | 1'35.916 | MI | 0 |
5 | 24 | リアライズコーポレーション ADVAN Z/Nissan Z GT500 | 佐々木大樹/平手晃平 | 1'35.736 | 1'36.000 | YH | 0 |
6 | 8 | ARTA NSX-GT/Honda NSX-GT | 野尻智紀/福住仁嶺 | 1'36.028 | 1'36.039 | BS | 0 |
7 | 64 | Modulo NSX-GT/Honda NSX-GT | 伊沢拓也/大津弘樹 | 1'35.971 | 1'36.523 | DL | 0 |
8 | 16 | Red Bull MOTUL MUGEN NSX-GT/Honda NSX-GT | 笹原右京/大湯都史樹 | 1'35.951 | 1'40.059 | DL | 0 |
9 | 23 | MOTUL AUTECH Z/Nissan Z GT500 | 松田次生/ロニー・クインタレッリ | 1'36.390 | - | MI | 0 |
10 | 17 | Astemo NSX-GT/Honda NSX-GT | 塚越広大/松下信治 | 1'36.440 | - | BS | 0 |
11 | 14 | ENEOS X PRIME GR Supra/TOYOTA GR Supra GT500 | 大嶋和也/山下健太 | 1'36.441 | - | BS | 0 |
12 | 39 | DENSO KOBELCO SARD GR Supra/TOYOTA GR Supra GT500 | 関口雄飛/中山雄一 | 1'36.590 | - | BS | 0 |
13 | 38 | ZENT CERUMO GR Supra/TOYOTA GR Supra GT500 | 立川祐路/石浦宏明 | 1'36.754 | - | BS | 0 |
14 | 37 | KeePer TOM'S GR Supra/TOYOTA GR Supra GT500 | サッシャ・フェネストラズ/宮田莉朋 | 1'36.886 | - | BS | 0 |
15 | 36 | au TOM'S GR Supra/TOYOTA GR Supra GT500 | 坪井翔/ジュリアーノ・アレジ | 1'37.006 | - | BS | 0 |
※R:コースレコード