ニュース

フェルスタッペンとマルケスがコンビでカートバトル! もてぎで3年ぶりの「Honda Racing THANKS DAY 2022」

2022年11月27日 開催

「Honda Racing THANKS DAY 2022」が3年ぶりにモビリティリゾートもてぎで開催

 11月27日、モビリティリゾートもてぎで3年ぶりにファン感謝祭「Honda Racing THANKS DAY 2022」が開催された。ホンダ関連のレースチームに所属するドライバーやライダーがカテゴリーの枠を越えて集結するメーカー単独イベントで、選手らがいつものレースとは違った多彩なプログラムにチャレンジし、詰めかけた約2万人のファンと盛り上がった。

 今回のイベントに参加した選手は40名近く。カーレースのカテゴリーからは、2021年と2022年の2年連続で王者に輝いたF1ドライバーのマックス・フェルスタッペン選手に、同じオラクル・レッドブル・レーシングのチームメイトであるセルジオ・ペレス選手、スクーデリア・アルファタウリの角田裕毅選手とピエール・ガスリー選手、インディカーシリーズの佐藤琢磨選手に加え、SUPER GTやスーパーフォーミュラの多数のドライバーが登場。オートバイレースからは、MotoGPのマルク・マルケス選手や長島哲太選手ほか、モトクロスおよびトライアルの世界選手権などに参戦するトップライダーらが揃い踏みとなった。

 通常のレースならまず見ることのできない、異なるカテゴリーかつ四輪ドライバーと二輪ライダーの組み合わせ。しかもレースファンなら誰もが知る有名選手の、レース本番のような緊張感を漂わせていないリラックスした表情を目の当たりにできるのは、同イベントだからこそだろう。感染対策のためパドックへの入場は制限されていたものの、来場者のサインに応じられるほどの近い距離感で接することが可能なタイミングもあり、その意味でも選手とファンの貴重な交流の場となったようだ。ここでは、イベントの中身をざっくりお届けしたい。

40名近くのホンダのトップ選手らが参加した

フェルスタッペン&マルケスの最強コンビが誕生

 わずか1日きりのイベントということで、プログラムは朝から夕方までぎっしり詰め込まれている。午前中は主にモビリティリゾートもてぎのアトラクションを使う内容で、午後はサーキットでレースマシンを使う内容が中心。選手は「Team Red」と「Team Blue」に分かれ、各プログラムでの対決に勝利してチームポイントを稼ぎ、ファンはどちらが勝利するかを予想する、といったファン参加型の要素も組み込まれている。各プログラムの合間は選手と観客の移動時間を考えるとギリギリに設定されていたため、最終的には30分ほどスケジュールが押す形になった。が、そんな緩さもこのイベントの醍醐味だろう。

グランドスタンド裏では、通常のレースと同じようにブース展示もされていた。これはアルファタウリの2021年型AT02
2020年のインディ500、佐藤琢磨選手の優勝マシン
同日に鈴鹿でデビューしたスーパー耐久仕様のシビック TYPE R

 数あるプログラムのなかで、ひときわ大きな盛り上がりを見せたのは、午前中に行なわれた「Honda Racing Kart Cup」の2レース目。四輪ドライバーと二輪ライダーの2人でチームを組み、7チームがドライバー交代しながらレーシングカートで争うというものだが、なんとF1王者マックス・フェルスタッペン選手とMotoGPで6度チャンピオンを獲得しているマルク・マルケス選手の“四輪・二輪最強コンビ”チームが結成された。

レーシングカート対決ではフェルスタッペン選手とマルケス選手がコンビでチームを結成
マルク・マルケス選手はいつものレプソルカラーの革ツナギかと思いきや、似たデザインのレーシングスーツをまとっていた

 予選こそモトクロス世界選手権のティム・ガイザー選手がポールポジションを獲得したものの、決勝レースではマルケス選手がガチ走りでドリフトを決めながらトップに躍り出る。フェルスタッペン選手に交代した後は王者の風格を感じさせる走りで他を寄せ付けずチェッカー。一方、角田裕毅選手はゴール間際の土壇場で佐藤琢磨選手をかわして3位表彰台を獲得し、F1ドライバー対インディレーサーの見せ場もしっかり作っていた。

決勝レース、スタート直後からガイザー選手に襲いかかるマルケス選手
マルケス選手から交代したフェルスタッペン選手がF1王者の貫禄を見せつけるトップフィニッシュ
ゴール間際に追い込み、僅差で3着に入った角田選手(左)と、佐藤琢磨選手(右)

 レーシングカート対決の終了後は、ホンダが開発した新しい電動レーシングカートにF1ドライバー4人が乗ってデモ走行。電源にはホンダが推進する着脱式バッテリー「Honda Mobile Power Pack」を採用しているが、見た目には従来のガソリンエンジンカートに近いフォルムとなっていた。フェルスタッペン選手は「とても静かで、トルクもいい。ガソリン車とはドライビングフィールが違うけど、すごく面白い体験」と話し、角田選手も「加速が速い。バランスもよかった。(走り出してすぐでも)右と左のグリップが変わらず、(ガソリン車のカートと比べても)グリップが多く感じた」と感想を語っていた。

ホンダが新開発した電動レーシングカート
世界に1台ずつしかないというF1カーラッピング仕様の電動レーシングカート。それぞれの選手のサインが入っていた
4人のF1ドライバーが横一線でデモ走行スタート
スタート直後の1コーナーでさっそく接触!
軽快に走るフェルスタッペン選手と角田選手
電動レーシングカートは「Honda Mobile Power Pack」を電源に採用

 一方、SUPER GTの伊沢拓也選手や山本尚貴選手のほか、中上貴晶選手の代役としてMotoGPにスポット参戦した長島哲太選手、2022年のMoto2クラスで惜しくもチャンピオンを逃した小椋藍選手らが参加したのは、電動ミニバイクのアトラクション「MOTO RACER」による対決プログラム。こちらも2名1組のコンビでライダー交代してミニコースを走る内容だった。最大15km/hとのんびりしたマシンということもあり、押し合いへし合いで転倒、コースアウトも続出しながらの和気藹々としたレース。ここで勝利したのは「中免(普通二輪免許)持ってるんで」とコメントしていたSUPER GT牧野任祐選手と、足をステップに載せない独特のフォームで走ったスーパーバイク世界選手権のチャビ・ビエルゲ選手のコンビだった。

SUPER GTやMotoGP、Moto2のレーサーらが電動ミニバイクのアトラクション「MOTO RACER」で対戦
独特のライディングスタイルで勝利したチャビ・ビエルゲ選手(左)

 それらカートやミニバイクのコースから少し離れた、アスレチックと森の広がるエリア「ハローウッズ」では、トライアルバイクによるデモンストレーションが行なわれた。2021年シーズンで引退し、2022年は監督となってトライアル世界選手権に参戦するRepsol Hondaチームを率いた藤波貴久氏が、久しぶりにライダーとしての姿を見せ、トニー・ボウ選手らとともに現役時代さながらの熱い走りを披露していた。

まったく練習していなかったそうだが、現役さながらのジャンプを見せた藤波貴久監督
トライアル世界選手権や全日本トライアル選手権に参戦する5選手が大勢の観客の前でパフォーマンスした

ガスリー選手が思い出のF1マシンで走行。角田選手2023年の決意

 午後は本コースにて、四輪ドライバーと二輪ライダーが「本職」で魅せるプログラムが目白押し。まずはフェルスタッペン選手が登場し、2年連続となるF1タイトル獲得について報告。「最高の気分、2年連続のチャンピオン獲得はホンダの協力のおかげで達成できたものだと思う」と述べた後、ホンダからのチャンピオン達成のお祝いとして、NSX Type Sが贈呈された。

フェルスタッペン選手にNSX Type Sが贈呈された
贈呈されたその場でいきなりサーキットへ走り出していく

 続いて行なわれた「SUPER FORMULA 頂点バトル」は、スーパーフォーミュラのマシンSF19を用いて、メインストレートでのシグナルスタートから1コーナー手前までの速さと、タイヤ交換の速さを争う対決。しかし、なぜかドライバーとして走ってきた牧野選手が自らタイヤ交換したり、スーパーフォーミュラで2年連続チャンピオンの野尻智紀選手がドーナツターンをしたり、エキシビションマッチとしてSF19とシビック TYPE Rが加速対決したりと、ファンサービス重視の“勝負”が展開された。

SUPER FORMULAのSF19がF1マシンにも勝るとも劣らない迫力の走り

 また、四輪と二輪それぞれのレースカテゴリーをリレー形式でつないでいきながら争う「SUPER GT×市販車 混合レース」と「モーターサイクル 混合バトル」にもたくさんの声援が飛んだ。

 SUPER GT×市販車 混合レースは、GT500マシンのNSX-GT、シビック TYPE R、N-ONEの3車種をバトンを渡していく形で1台ずつ走らせ、先にゴールした方が勝ちとなる対決プログラム。車両の走行順は任意のため、最初にレースマシンでリードを作るか、遅い市販車からスタートして後で挽回を狙うか、といった戦略の違いも勝敗を分ける可能性がある……といった内容。ここでは角田選手がシビック TYPE Rを駆り、FF車ながらもドリフトしながら走るテクニックを見せ、会場を沸かしていた。

角田選手がシビック TYPE Rで参戦
バトンを次のドライバーに渡すため走る角田選手
GT500マシンとN-ONEも使う異種混合のバトル
差を付けられていたTeam Redが、Team Blueを妨害する一幕も
しかし最後は双方のチームがほとんど並んでゴールした

 モーターサイクル 混合バトルはモトクロスによるオフロード対決から始まり、仮設のヴィクトリースタンドのすぐ目の前で繰り広げられたトライアルバイクによる障害物競走、そこからマルケス選手と長島哲太選手の2人によるMotoGPマシンを使った本コース上での走行と、場所を変えながらの戦い。最後のMotoGPマシンでは周回数を誤ったのか、あいまいな結末に終わってしまったものの、バイクのカテゴリーごとの違った魅力が感じられるものだった。

地下に続く階段からトライアルライダーたちが飛び出てくる
ヴィクトリースタンドの目の前でトライアルバイクによる障害物競走
本コースでは2台のMotoGPマシンが走行。路面が冷えていたこともあり、全開走行というわけにはいかなかったようだ
中上貴晶選手は怪我のため応援のみ、代わりに長島哲太選手がゼッケン30のマシンをライドした

 終盤、選手らがオープンタイプのバスに乗車し、グランドスタンドの観客の前であいさつ。今シーズンを最後にスクーデリア・アルファタウリを離れ、2023年はアルピーヌF1に移籍するガスリー選手が、アルファタウリの2020年型のF1マシンAT01を走らせ、「本当に特別な1日になった。今日ドライブしたAT01は2020年に(イタリアグランプリの)モンツァで優勝したときのマシンで、もてぎはスーパーフォーミュラで初勝利したサーキットでもあるから、感動的だった。6年間応援してくれたファンの皆さん、ホンダの皆さんには感謝したい」とコメント。来年2023年シーズンに向けて角田選手は「さらに強くなり、チームとしてコンストラクターズ5位、自分としてもドライバーズチャンピオンシップでトップ10に残れるように頑張ります」と決意を新たにしていた。

AT01でもてぎを走るガスリー選手
F1日本グランプリは鈴鹿サーキットでの開催となるため、本来、もてぎでF1マシンの走る姿を見ることは極めてまれ。こんなイレギュラーな景色が見られるのもこのイベントならでは
バスからファンに向けて手を振る選手ら
最後はホームストレートにレーシングマシンを並べ、全選手が笑顔で手を振った