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三菱自動車、新中期経営計画「Challenge 2025」説明会 電動化時代に向けた研究開発費と設備投資を大幅に増額

2023年3月10日 実施

新中期経営計画を説明する三菱自動車工業株式会社 代表執行役社長 兼 最高経営責任者 加藤隆雄氏

 三菱自動車工業は3月10日、2023年~2025年にかけての新中期経営計画「Challenge 2025」の説明会を実施した。登壇したのは、三菱自動車工業 代表執行役社長 兼 最高経営責任者 加藤隆雄氏、代表執行役副社長(CFO)池谷光司氏、代表執行役副社長(ものづくり担当)長岡宏氏、上席執行役員副社長補佐(営業戦略・改革担当)中村達夫氏、執行役 経営戦略本部長 平形紀明氏の5名。

 まず加藤社長は、新たな中期経営計画の名称を「Challenge 2025」としたことについて、自動車業界の100年に1度の大変革期、地球温暖化対策としての電動化、AIやIoTなどテクノロジの発展により、人の移動と物を運ぶための手段であった自動車の概念そのものが変わってきたと前置きし、「次の3年間(2023年~2025年)が三菱自動車にとって大きな転換点になると考え、新時代に対応してくために経営基盤を一層強化しなければならないという想いを込めて名付けた」と説明した。

現中期経営計画「Small but Beautiful」についてはおおむね前倒しで推進できたとしている

 また、2020年7月に掲げた2020年~2022年にかけての現在(2023年3月末まで)の中期経営計画「Small but Beautiful」については、計画していた内容はおおむね前倒しで推進することができたと振り返った。そして新たな中期経営計画については、2020年~2035年という15年の長期ロードマップを踏まえ、「技術」「地域」「モビリティビジネス」の3つの領域で、2035年の世界観について複数のシナリオを構築し、バックキャストしながら次の3年間に推進するべき計画を策定したと解説。

 大変革期の社会変化については、カーボンニュートラルの実現に向けた取り組みが進み、自動車業界ではバッテリとバイオ燃料の進化に注目。ユーザー層については、Z世代が購買利用者層の中心となることから、販売方法などが大きく変わると予想。最後にデジタル技術の進化についても触れ、5Gや6G、ロボティクス、メタバースなど多種多様に進化することで、新たな事業機会がうまれるだろうと話した。

2020年~2035年にかけての長期ロードマップ

新中期経営計画「Challenge 2025」概要

 新たな中期経営計画における経営KPI(重要業績評価指標)については、販売面では1台あたりの売上高を2022年度(見込み)の230万円から250万円へ、販売台数はASEAN向けに新商品を導入することで、3年間で20万台ほど増やし110万台を目指すとし、財務面でも幅広い尺度での体質強化を狙い、2025年度の営業利益目標を2200億円、利益率7%を目標に掲げたほか、初めて企業の価値を客観的に評価するEBITDAを指標に加えた。

 また、新中期経営計画最終年度の研究開発費は、今期実績から年間500億円程度、設備投資増額による減価償却負担が260億円程度増加するほか、広告宣伝費など、その他経費増加も吸収した上で、収益とフリーキャッシュフローを確保する計画だと説明。

Challenge 2025における3つの指標
現在の中期経営計画から新たな中期経営計画への推移

 研究開発費と設備投資については、今後の大変革時代に対応するため、新中期経営計画以降は安定的かつ従来よりも高い水準の研究開発費と設備投資を行なうと強調。特に研究開発費に関しては、新中期経営計画と次期中期経営計画(2023年~2028年)の6年は、前中期経営計画と現中期経営計画(2017年~2022年)の6年間よりも、約3割増額すると説明した。加えて、2026年度以降は電動化関連の支出割合が7割近くに達する見込みだと解説。設備投資についても同様に今後の6年間は約3割ほど増額する予定で、その7割程度を電動化やIT関連、新事業にあてる計画だという。

研究開発費と設備投資について

 続けて加藤社長は、Challenge 2025における主要な3つの挑戦「絶対的安定収益基盤の確立・強化」「カーボンニュートラル対応促進」「デジタル化推進・新ビジネス領域への進出」について解説を行なった。

 安定収益基盤確立に向けた挑戦は、地域戦略では世界市場を3つに分類し、各地域の役割を明確化した上で収益基盤の確立強化を図ると説明。カーボンニュートラル対応の促進では、新中期経営計画以降の電動化加速フェーズに向けた電動車開発と、アライアンスとの連携力強化に取り組むと解説した。デジタル化推進と新事業への取り組みについては、社内ITインフラの刷新、デジタル人材育成など社内基盤整備を進めつつ、エネルギーマネジメントや廃バッテリの利活用、車両データ外販といった自動車メーカーならではの新ビジネス基盤を整備するという。

 ただし、「ユーザーに三菱自動車の商品を選んでもらうためには『三菱自動車らしさ』を徹底的に磨きあげ、マーケットに適切な形で訴求し、ユーザーに理解と共感をしてもらう必要がある」といい、そこで三菱自動車らしさを「環境×安全安心、快適を実現する技術に裏付けられた信頼感により冒険心を呼び覚ます。心豊かなモビリティライフを提供すること」と定義付けたと紹介。今後の導入する商品は、この「三菱自動車らしさ」を具現化し、ユーザーの期待に応えるべく開発を進めていくと説明した。

三菱自動車らしさの役割とは
三菱自動車らしい商品像
三菱自動車らしさを構成する技術

「Challenge 2025」重点戦略

 重点戦略について加藤社長は、三菱自動車の事業の中核を担うアセアン・オセアニアを「成長ドライバー」、アセアン向け商品を横展開する中南米・中東・アフリカを「レバレッジ地域」、電動化に代表される環境技術、ADASなどの安全技術、そして車両データ活用などを必要とする先進国(日本・北米・欧州・中国)を「先進技術推進地域」と定義し、特に「成長ドライバー」は42%増、「レバレッジ地域」は40%増と、大きな成長の余地があると見込んでいるという。

地域戦略のまとめ
市場ごとの成長見通し
地域カテゴリー別の販売台数見通し

 三菱自動車の事業の柱で「成長ドライバー」のアセアン地域については、新中期経営計画期間中に多くの新型モデルを投入すると明かし、同時にイベントなどを行ないユーザーとの体験機会を増やし、ブランド価値向上も図ると説明。同じく「成長ドライバー」であるオセアニアについても、新商品を通じてブランド価値向上を図り、バリューチェーン強化と合わせ、さらに強固な収益基盤として成長させるとした。特にアウトランダーPHEVモデルは、オセアニア市場のゲームチェンジャーになる商品だと強調した。

 また、ホームマーケットである日本については、次の3年間も徹底的に強化を図ると前置きし、現在ラインアップしているSUVモデルのPHEV2車種、軽自動車のBEV2車種に、東京オートサロンで発表した軽SUV「デリカミニ」を皮切りに、「三菱自動車らしさを体現する商品ラインアップをさらに充実させる」と述べている。

地域ごとの主な施策

 ブランド価値向上を目指すための販売ネットワーク強化の基本方針については、ユーザーとの長期的な信頼関係を構築するべく、購入検討段階から保有にいたるまでのさまざまなタッチポイントでの改善を図り、接客の向上、快適な購入体験や購入後の安心感、信頼感を提供。さらに、コネクティッドサービスやアフターサービスにおけるカスタマーエクスペリエンスの充実を図るとした。

ユーザーへのブランド価値の提供について

今後の商品戦略と持続的成長について

 さらに加藤社長は、中期的な成長を支える商品戦略について、今後5年間で9つの電動車を含む16車種の新型車を展開すると発表。既存のセグメントについては、主力商品であるフレーム車の新型化。アジアだけでなく多くの地域で好評の「エクスパンダー」の新型化と電動化を進め、さらなる拡販と収益アップを図ると説明。また、先日ベトナムで発表した2列シートSUVに続き、新型3列シートSUVなどコア地域向け商品のリリースも予告。

商品投入スケジュール

 先進技術推進地域向けには、アライアンスパートナーであるルノーと日産自動車の協力も得ながら、充実した電動車の展開を加速させると説明。成長ドライバー、レバレッジ地域での商品展開としては、今後5年間で7つの電動車を含む12車種の新型車を展開すると発表した。また、アセアン向け2列シートSUVモデルの「XFCコンセプト」は、アセアン諸国での使い方を織り込み、短水路でも安心して走行できる、三菱自動車初となる「ウェットモード」を備え、十分な最低地上高を確保した三菱自動車らしい商品だとアピール。

 さらに主力商品であるピックアップトラックは早々に新型車を投入し、将来的にはBEVの追加も企画していると明かし、アセアンにおけるフラッグシップモデル「PPV」の商品強化についても言及した。

今後5年にわたりグローバルで投入する予定の商品
今後5年にわたり成長ドライバー、レバレッジ地域に投入する予定の商品

 最後に企業としての持続的成長については、カーボンニュートラルの実現のほか、人権を尊重するとともに多様な人材が活躍できる職場の確立や、全てのステークホルダーに対する透明性の高い経営を目指すと紹介。また、ルノーと日産自動車とのアライアンスについては、これまでにOEM商品相互補完、車両の共同開発、生産事業協業、共同購買など、さまざまな局面でシナジーが発揮され、持続的成長には不可欠だと話し、今後は三菱自動車からのアライアンスへの貢献拡大を図ると説明した。さらにモビリティビジネスについては、デジタル技術を活用し、自動車メーカーが有する車両データ、車両のリモート操作、中古車から取り出せるバッテリのリユースなどを活用し、モビリティビジネスの構築を図ると締めくくった。

アライアンスについて
モビリティビジネスの取り組み