トーヨータイヤと富山大学、二酸化炭素からブタジエンに変換する触媒を開発 タイヤ主原料のブタジエンゴム合成に成功

CO2を炭素資源として製品原材料に用いる技術によって成立する循環経済のイメージ

　TOYO TIREは、国立大学法人富山大学との共同研究において、二酸化炭素から高収率でブタジエンへ変換する触媒を開発し、タイヤの主原料であるブタジエンゴムの合成に成功したと発表した。

　自動車タイヤの原材料はタイヤの品種によって割合は異なるものの、天然ゴム以外の約4割を占める合成ゴムのうち、約3割を石油由来原料であるブタジエン系ゴム（SBR、BR）が占めているという。こうした背景から、タイヤ業界では石油以外の天然由来の代替原料（資源）によってブタジエンゴムの実現と活用を模索する動きが活発化している。

　トーヨータイヤは2016年から、タイヤ材料の主成分として多用するブタジエンゴムの生成に二酸化炭素そのものを石油由来の原料から代替適用できないかという課題をテーマに、富山大学学術研究部工学系・椿範立教授と検討と研究を重ね、共同で開発を進めてきた。

　今回、地球環境に多大な影響を与える気候変動の主因の1つとされる二酸化炭素からブタジエンを合成する道筋をつけることに成功したことにより、従来の石油由来原料を用いた場合に比べ、生成過程での環境負荷（二酸化炭素排出量）の極小化に大きな成果が得られると考えられるとのこと。

　また、ブタジエンゴムへ重合するための出発原料として二酸化炭素を採用することによって、将来的に実際のタイヤLCA（Life Cycle Assessment）の観点で直接的に有効、かつ有力な素材として活用可能性が大いに期待される。

　富山大学では、温室効果ガスの1つである二酸化炭素の再資源化を目的とした高性能触媒の開発を通じて、積極的かつ革新的に脱炭素社会づくりへの貢献に取り組んでおり、持続可能な社会を目指して次世代の物質変換技術を開発する学術的基礎研究および、その社会実装を目指す応用研究を行なうことを目的とし、カーボンニュートラル物質変換研究センターを設置している。

　今回の両社による技術開発もその活動の一環として、高価な貴金属を使わない安価な固体触媒の開発において十分な触媒性能が得られたもので、その収率は世界最高レベルになるという。今後、量産化に向けた触媒システムの開発を進め、2020年代末までにその実用化を目指すほか、寄与率の大きなゴムや補強剤のサステナブル素材へ置き換えるための研究開発を進めている。

　トーヨータイヤは、タイヤの主原料であるゴムをはじめ、その他構成する諸材料においても天然由来などのサステナブル素材を使用することで、商品の社会循環促進へ生かす検討を進めており、サステナブル素材を積極的に採用したプロトタイプのタイヤを装着し、ダカールラリーのようなオフロードレースへ参戦。今後、ニュルブルクリンク24時間耐久レースなどのモータースポーツへの参戦に際しても同様に取り組み、固有の走行条件下で得た知見を量産技術にフィードバックして高性能かつ、独自性豊かなトーヨータイヤらしい製品の開発を加速していくとしている。

　また、同社では「2030年時点で製品開発におけるサステナブル素材使用率を40％とする」目標を掲げており、今回の新技術を応用推進していくことで、発生する温室効果ガスの低減を図り、持続可能なモビリティ社会の実現に貢献していきたいとした。