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ケータハム、バッテリEVコンセプト「EVセブン」発表 レイシュリーCEO「1tのセブンを発売することは決してない」

2023年5月23日(現地時間) 発表

EVセブン

 英国ケータハムは5月23日(現地時間)、バッテリEVのコンセプトカー「EVセブン」を発表した。EVセブンは将来の完全電気自動車セブンのための技術開発コンセプトモデルとして、7月に英国で開催されるグッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードで一般公開される。

 また、ケータハムでは、EVセブンとは別に完全電気自動車のスポーツカー・コンセプトも開発しており、2023年に発表する計画。このプロジェクトのデザインは、ブランドの新しいチーフデザイナーであるアンソニー・ジャナレリ氏が主導しており、今後数か月のうちにさらなる詳細を公表予定としている。

EVセブン

 EVセブンは、公道用およびモータースポーツ用の先進的で頑強なパワートレーン開発のリーダーであるスウィンドン・パワートレインと共同で開発。EVセブンは、大型のセブンシャシーをベースに、スウィンドン・パワートレインによる専用E Axleを採用し、液浸冷却式バッテリパックを組み合わせた。

 バッテリ液浸冷却は、ケータハムの長年の技術パートナーであるMOTULが供給する誘電性流体を使用し、バッテリセルに直接接触させることで、最適な熱管理により充電速度の向上とバッテリ寿命の延長を実現。これまで膨大な熱量を発生するスーパーコンピューター等の冷却に使われることが一般的であった技術を、バッテリEVに導入した。

 このコンセプトは、軽量な電気自動車の実現可能性を検証するもので、ケータハムは、ガソリン車と同様にドライバーに焦点を当てたバッテリ電気自動車を市場に投入することに一歩近づくことができるとしている。

 ケータハム CEOのボブ・レイシュリー氏は「私たちが将来生産するEVモデルは、ケータハムのDNA である、軽量で、fun-to-drive、ドライバーに焦点を当てたものでなければなりません。このプロジェクトの主な目的は、従来のセブンに比べて乗客一人分の重量差しかない車両を開発することです。1tのセブンを発売することは決してありませんし、むしろやりたくありません」とコメントしている。

総重量700kg弱、0-60mphのタイムはおよそ4.0秒

 EVセブンのスペックでは、ベースとなる市販のセブンから70kgの重量増(総重量700kg弱)。51kWhの液浸冷却式バッテリは、エンジンルームとトランスミッショントンネルに収納され、最大152kWのDC急速充電が可能。実用可能な容量は約40kWhで、サーキットでの過酷な使用や急速充電にも劣化することなく、安全に使用することができるとしている。

 このコンセプトには、HPDE シリーズをベースにしたスウィンドン・パワートレインのE Axle の専用バージョンが採用され、最高出力240bhp/9000rpmと瞬間最大トルク250Nmを発生。これにより、0-60mphのタイムはおよそ4.0秒が見込まれる。

 パワートレーンは、Seven 485/480 の性能特性に対応するように設計されており、EVセブンがICEモデルと同様のドライバビリティを共有。また、EVセブンには、リミテッド・スリップ・デファレンシャル、セブン420 カップのビルシュタイン製アジャスタブルダンパー、回生ブレーキ、4 ピストンブレーキキャリパーも装備する。

 レイシュリー氏は「現段階では、EVセブンをこのままの形で生産する計画はありません。このプロジェクトは、EVパワートレインがお客さまの個々の使用ケースに対してどの程度有効なのかを確認するためのテストベッドです。軽量でシンプル、そしてfun-to-drive という、セブンに必要なケータハム車特有の車両特性を実現する方法を学ぶために、私たちは大きく目を見開いてこのプロジェクトを進めています。私たちは、次世代のバッテリ技術が可能にする将来の適切なタイミングで、この車両を市場に投入するつもりです。だからこそ、今がこのコンセプトを試す時なのです。」と話している。

 スウィンドン・パワートレインのマネージング・ディレクターであるラファエル・カイレ氏は「1990年代初期にJPE(ジョナサン・パーマー・エボリューション)エディションのセブンに搭載されたボクスホール製エンジンを開発して以来ケータハムとのパートナーシップは30年以上続いています。そしてこのエキサイティングなプロジェクトを通じて、今後もパートナーシップを継続できることにワクワクしています。車体の軽量化や充電速度の目標は、間違いなく野心的なものでした。しかし、最先端の液浸冷却式バッテリ技術と独自のパワートレーン部品を使用することで、独自のコアバリューを維持した電気自動車セブンを開発することができたのです」とコメントしている。

 なお、EVセブンは、サーキットでは、20-15-20 サーキット走行のサイクルが繰り返し可能な事、つまり、20分間サーキットを走行、15分間で十分なエネルギーを充電し、さらに20分間走行できる能力を持つという。レイシュリー氏は「日曜の朝のドライブを楽しむことができるEVセブンの実現は、現在のバッテリ技術でも十分可能です。しかし、課題はエネルギー消費量が大幅に増加するサーキットでの使用です。現時点では、サーキット走行時に求められる急速な充放電に対応するためには、バッテリ液浸冷却が最適なソリューションの一つです」と付け加えている。

EVセブン仕様

車両:ケータハムEVセブン
モーター:専用スウィンドン HPDE E Axle
トランスミッション:シングルスピード、専用レシオ2ステージリダクション
ファイナルドライブ:リミテッド・スリップ・デファレンシャル
バッテリ:51kWh(40kWh 実用可能)ー 液浸冷却式バッテリ
チャージング:最大152Kw DC急速充電
シャシー:大型シャシー
ディメンション:3350×1685×1115mm(全長×全幅×全高)
最高出力(bhp/rpm):240bhp@9000rpm
最大トルク(Nm/rpm) :250Nm@0rpm
重量:700kg未満
パフォーマンス:0-60mph加速4.0秒(見込み)
パワーウェイトレシオ:340bhp/トン
最高速:209km/h(見込み)
サスペンション:ビルシュタイン製アジャスタブル(420カップより)
ホイール:13インチ Apollo ブラックアロイ(フロント6”、リア8”)
タイヤ:AvonZZR
ブレーキ:4ピストンキャリパー付ベンチレーテッドディスク
ステアリング:ラック&ピニオン、ロックトゥロック1.93回転