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スバルとSTI、「WRX S4」ベースの全日本ラリー参戦車「SUBARU WRX RALLY CHALLENGE 2023」公開 新井敏弘&鎌田卓麻選手が手ごたえを語る

2023年5月25日 公開

デビュー戦のラリー丹後に向け開発が進む「SUBARU WRX RALLY CHALLENGE 2023」

 5月25日、スバルとSTI(スバルテクニカインターナショナル)は2023年の東京オートサロンで発表した全日本ラリー選手権に向けたWRX S4ベースの新型車両「SUBARU WRX RALLY CHALLENGE 2023」を公開した。

 今シーズンの全日本ラリー選手権は、これまでスバルの運営サポートを受け別チームで参戦してきた新井敏弘/鎌田卓麻の両選手が「SUBARU RALLY CHALLENGE」のドライバーとして参戦する。新体制では近年JN-1クラスに登場したR5マシンやラリー2マシンなどに対抗すべく、JAFの定めるJP4規定に則ったマシンの開発サポートもスバル/STIが行ない量産車の開発スタッフも参加する。

SUBARU WRX RALLY CHALLENGE 2023(フロント)
SUBARU WRX RALLY CHALLENGE 2023(リア)
SUBARU WRX RALLY CHALLENGE 2023(サイド)
SUBARU WRX RALLY CHALLENGE 2023
鎌田選手、新井敏弘選手のほか量産車の開発メンバーも集まった

 これまでスバルの国内ラリー活動を牽引してきた両ドライバーが、ワンチームとして戦う新体制が目指すものは4つあるという。その1つは、これまで悪天候などあらゆる状況下においてもチャレンジし続けてきたスバルモータースポーツのDNAを継承すること。NBR24 CHALLENGEとともにSUBARU RALLY CHALLENGEもこの一翼を担うこととなる。

 2つ目はこれまで築き上げてきたWRXというブランドの価値を高め、次世代にバトンタッチすること。そのため必要なのがラリーで速く強いWRXを見せることだという。3つ目はこれまでそれぞれに戦ってきた新井、鎌田両選手とスバル/STI、そしてディーラー、ファンの関係をより強固なものとしてワンチームとして盛り上げていくこと。

 そして4つ目はこれからのエンジニアの育成だ。スバルがWRCから撤退して15年近くが経つ。WRC参戦時のエンジニアが社内にも少なくなってきている今、次期WRXも含めたスポーツ車両を開発できるエンジニアの育成が急務だという。チームを統括するSUBARU RALLY CHALLENGE監督 嶋村誠氏はこの点を最重要課題に挙げた。

SUBARU RALLY CHALLENGE監督 嶋村誠氏
新井敏弘選手
鎌田卓麻選手

 現在SUPER GTを筆頭にサーキットを中心にモータースポーツ活動を行なっているスバル/STIだが、スバルファンの中にラリーへの参戦を期待する声が根強いことを常々感じていたという。その1つの答えが今回のチーム体制であり、2023年より採用された全日本ラリー選手権におけるJP4規程が、新型マシン投入の背中を押す形となったようだ。

 公開された新型マシンの外観は、1月の東京オートサロンで発表されたプロトタイプとほぼ一緒。新井選手、鎌田選手それぞれのマシンに大きな違いは見られない。エンジンは長年使用してきたEJ20からFA24となり、レスポンスアップと出力向上のために制御系を一新する。またSGP(スバルグローバルプラットフォーム)を基に高剛性、ストロークアップを目指し、サスペンションや駆動系も新たに設計する。また、ベース車両に対し200kg以上の軽量化を果たしているが、JP4規程に定められた最低車両重量の1300kgにはまだ届かずさらなる軽量化を目指すとのこと。

エンジンはFA24
ボンネットフードには大きな開口部をもつ
エンジンルーム内

 マシンはデータ収集用のケーブル類が室内を這い、ヘッドライトもまだ点かないような状態だった。個々の走りに合わせたセッティングはまだ手付かずだという。それでも「現在参戦中のVAB型WRXと同等の走りをする」という鎌田選手。その速さは想定以上だそうだ。

 新井選手もSGPプラットフォームを採用したVBH型のシャシーの剛性の高さに触れ、「足がしっかり動き回頭性が高い」と、こちらも好感触のようだ。ただし長年乗ってきた左ハンドルから右ハンドルへの変更は車両感覚こそ問題はないものの、これまで右手で操作してきたところを左手で操作することになるので、アタック中のとっさの対応などに少々不安を感じているようでもあった。いずれにしても、両者ともに新型車両への評価はかなり高いようだ。

SUBARU RALLY CHALLENGEのコクピットまわり
シンプルなコックピットまわり。6速シーケンシャルシフトを採用している
ラリー丹後に向け走行を重ねるSUBARU WRX RALLY CHALLENGE 2023
走行を重ねるSUBARU WRX RALLY CHALLENGE 2023。まだ個々のドライバーに合わせたセッティングはなされていないが、そのポテンシャルは高そうだと両ドライバーは語る

 ちなみに採用されているパーツは、別のチームで戦っていたこれまで通りなのでそれぞれ違う。足下を支えるタイヤは新井選手が横浜ゴム、鎌田選手はダンロップ。同様にエンドレスのブレーキシステム、KYBの足まわり、レカロシートを採用する新井選手に対し、鎌田選手はADVICS、TEIN、BRIDEだ。

新井選手のマシンのタイヤはADVAN。WORKホイールと組み合わされ足まわりはKYB。ブレーキシステムはエンドレスが採用されている
鎌田選手のマシンのタイヤはダンロップ。WORKホイールと組み合わされ足まわりはTEIN、ブレーキシステムはADVICSが採用される

 新型マシンのデビュー戦は6月9日~11日に開催されるラリー丹後(京都府)だ。当初既存のVAB型でエントリーしていたものの、車両変更期限ギリギリで変更したとのこと。現在7割程度の完成度とのことなので、2週間後の本番に向けこれからの作業が続く。R5やラリー2マシンの相次ぐ参戦で苦戦を強いられてきたスバルWRXだが、メーカーも開発に関与した新型マシン「SUBARU WRX RALLY CHALLENGE 2023」の登場は新井敏弘選手、鎌田卓麻選手はもちろんスバルファンにとっても朗報だ。