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ホンダ、富士24時間にカーボンニュートラル燃料の新型シビック タイプRでワークス参戦 タイプRへの思いを4人のドライバーに聞く
2023年5月27日 08:08
ホンダの2輪、4輪のモータースポーツを統括するHRC(ホンダ・レーシング)は5月26日、Team HRCとしてスーパー耐久第2戦富士24時間に参戦するにあたり会見を行なった。登壇者はHRC取締役 長井昌也氏、S耐プロジェクトリーダー 岡義友氏に加え、参戦ドライバーである武藤英紀選手、伊沢拓也選手、大津弘樹選手、小出峻選手。
長井氏は会見冒頭、2輪、4輪のモータースポーツを統括するHRCの成り立ちについて紹介。現在のHRCは、F1をはじめとした4輪のモータースポーツを行なってきたHRDさくら、ホンダ本社のモータースポーツ部門を統合した会社で、2022年4月に新たなスタートを切った。
そのスタートをする際に、4つの方針を策定したという。1つ目は「レースに勝つことで、ホンダのブランドを高めていく、モータースポーツ活動を通じたHondaブランドの更なる高揚」、2つ目は「4輪、2輪の事業に具体的な貢献をしていく」、3つ目は「サステナブルなモータースポーツのためのカーボンニュートラルへの対応」、最後の4つ目は「モータースポーツのすそ野を広げる活動への注力」になる。
カーボンニュートラルへの対応やモータースポーツのすそ野を広げていくのが、カーボンニュートラル燃料を用いたシビック タイプR「CIVIC TYPE R CNF-R」によるワークス参戦。将来のカスタマーレーシングカーの市販化を視野に入れ、武藤英紀選手、伊沢拓也選手、大津弘樹選手、小出峻選手といったホンダワークスドライバーとともにスーパー耐久のST-Qクラスで戦っていく。
HRCはすでに2024年からSUPER GTに「CIVIC TYPE R-GT CONCEPT」で参戦することを発表しているが、遅れて発表したスーパー耐久での参戦が新型シビック タイプR(FL5)でのレース参戦という意味では先行した形になった。
武藤英紀選手、伊沢拓也選手、大津弘樹選手、小出峻選手は、カーボンニュートラルの未来を切り開く役割を担うとともに、新型シビック タイプRユーザーやこれから新型シビック タイプRを購入しようとする(現在は、注文一時停止)ユーザーの夢を乗せて戦っていくことになる。富士24時間の参戦発表会において、その辺りの気持ちをワークスドライバーの4人にうかがった。
小出峻選手は、「ボクはまだ若手、若手と言ってよいのか分からないのですが、シビック タイプRに乗るのは本当に今回が初です。でも、本当にシビック タイプRで走っていて楽しくて。FFを感じさせないような戦闘力があって、自分としてはシビック タイプRを買っていただけるお客さまに、このクルマの楽しさを伝えていきたい。と同時に、ボクはボクでシビック タイプRを買えるようにがんばりたいと思います」と回答。新型シビック タイプRの戦闘力の高さを実感しているようだった。
一方、すでに第1戦で通常燃料のHRDCシビック タイプRで参戦していた武藤英紀選手は、「がんばったんでシビック タイプRを買えた武藤さんです」と、ベテランだけに一発で記者会見場を爆笑の渦に包む。武藤選手はこのつかみが抜群にうまく、まわりの空気を支配する技に長けていると感じる。
「オーナーとしてもそうですし、実際タイプRはメインは伊沢選手で開発していたのですが、自分はタイヤの方の開発だけ少しだけ携わるなど、すごく思い入れのあるクルマです。オーナー目線からもそうですが、やはりかっこいいところを見せたいですね。かっこいいのはスピードも大事だと思いますし、見た目も当然そうですね。ユーザーの方が買ってよかったなと思えるような、そういうレースをしたいと思っています」(武藤選手)と、タイプRオーナーが満足するようなレースを見せていきたいと語ってくれた。
大津弘樹選手は、「ボクもシビック タイプRに乗るのは、このレース車両が初めてなのですが、一般車ででも欲しいなと思うくらい性能がいいし、あとで買いたいなと思っています。この性能のよさや楽しさとか、24時間走りきって丈夫だとか。信頼性がいいところを見せていけたらなと思っています」と、タイプRならではの信頼性について言及する。24時間走る中ではなんらかのトラブルもあるかもしれないが、そのトラブルをどう克服していくかにも期待したい。
そして最後は伊沢拓也選手。伊沢選手は新型シビック タイプRの開発ドライバーでもあり、最も深くタイプRを理解している選手。「開発して、買って、それでレースに出るのは多分最高かな」と、今の気持ちを語る。「せっかくタイプRのワールドデビューレースなので、今回自分のシビック タイプRでサーキットに来たんですけど、なにかトラブルがあるたびにみんながボクのクルマがあるんじゃないか的な感じで、パーツ取りにされそうな、ちょっとその危険を感じている。そろそろどっか隠そうかなと。一応なんかパーツを使ったら新品で返してくれると言うのですけど、ちょっと本気なんですよね」と、自分の愛車がレース車両と同じ車種ゆえの不安を語る。
これは暗に自分のクルマをパーツ取りにしないでねのアピールかもしれない。それだけカーボンニュートラル燃料を用いたシビック タイプR「CIVIC TYPE R CNF-R」と、市販車の互換性が高いということにほかならない。レースを見ると、シビック タイプRのポテンシャルが見えてくるのかもしれない。
新型シビック タイプRを深く理解する伊沢選手ゆえに、気になるコメントも飛び出した。「個人的には今すごく楽しくやっているのですが、今開発したボクが乗っているクルマというかレース車両は、ちょっと武藤さんとも話をしたのですが、開発車に比べ、普通のタイプRを鈴鹿でテストしたときの市販車のほうがスピード感があるし、結構操っている感がある。今のクルマ(レース車両)は,比較的マイルドで乗りやすいのですが、なんかもうちょっと楽しさを出せてもいいかなと思う。そういうところもすり合わせながら、今のレース車両のタイプRを誰が乗っても楽しんでもらえるような味付けをしたい。その辺りはこれからどんどんやりたいことが、走れば走るほど出てくるかなと」と、燃料の違いから来るセッティングの違いからか、現時点では市販車のほうが楽しいクルマになっているようで、レース車両はこれからレベルアップしていきたいとのことだった。
では、4人のワークスドライバーの知見が込められたカスタマーレーシング車両はいつ登場するのだろうか。HRC取締役 長井昌也氏によると、まずは1年戦ってからだという。その上で、レーシングパーツの市販化なども視野に入れて、カスタマーレーシング車両を考えていきたいと語った。
いずれにしろ、1年活動してその成果を検討、その後必要なものから市販化をということだろう。シビック タイプR購入者にとって、すぐに戦闘力を上げるパーツが出るわけではないが、4人のワークスドライバーの戦いや、1戦ごとのクルマの進化に着目していただきたい。