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トヨタ、トリプル・ワンツーフィニッシュ 世界ラリー選手権・世界耐久選手権・全日本ラリー選手権で1位と2位を獲得

ラリー北海道でのデモラン終了後、ラトバラ代表らの走りを見るために観客席に訪れたドヨタ自動車 代表取締役会長 豊田章男氏。トリプル・ワンツーフィニッシュは、社長時代から掲げる「モータースポーツを起点としたもっといいクルマづくり」の1つの成果でもある

トヨタが達成したトリプル・ワンツーフィニッシュ

 トヨタ自動車は9月10日、WRC(世界ラリー選手権)・WEC(世界耐久選手権)・JRC(全日本ラリー選手権)において、1位と2位を獲得。同日に、2つの世界選手権、1つの全日本選手権でワンツーフィニッシュを成し遂げた。

 この日、最も先にワンツーフィニッシュを獲得したのは全日本ラリー選手権のラリー北海道。ラリー北海道には、トヨタ自動車 代表取締役会長 豊田章男氏がラリー活性化のためにWRC車両である「GRヤリス ラリー1」を持ち込み、WRCを4度獲得したユハ・カンクネン選手とデモランを実施。TOYOTA GAZOO Racing World Rally Team(以下、TGR-WRT)のチーム代表であるヤリ-マティ・ラトバラ代表がトヨタが開発中のWRC2車両「GRヤリス ラリー2」で参戦するなど大きな話題となった。このラリー北海道では、ヤリ-マティ・ラトバラ/ユホ・ハンニネン選手が優勝。2位は同じくGRヤリス ラリー2で全日本参戦中の勝田範彦/木村裕介選手(TOYOTA GAZOO Racing WRJ)で、GRヤリス ラリー2は前戦に続き2連勝となった。

決勝直前、小林可夢偉TOYOTA GAZOO Racing WECチーム代表兼選手(左)と話す、トヨタ自動車 代表取締役社長 佐藤恒治氏。「モータースポーツを起点としたもっといいクルマづくり」を先頭に立って引っ張ってきた一人

 次にワンツーフィニッシュを達成したのは小林可夢偉選手がチーム代表を務めるTOYOTA GAZOO Racing WECチーム。富士スピードウェイで開催された富士6時間レースで、TOYOTA GAZOO Racing 7号車 GR010 HYBIRD(マイク・コンウェイ/小林可夢偉/ホセ・マリア・ロペス)が優勝。8号車 GR010 HYBIRD(セバスチャン・ブエミ/ブレンドン・ハートレー/平川亮)が2位を獲得した。これによりトヨタは、マニファクチャラー選手権のチャンピオンを獲得。同日、富士スピードウェイを訪れていたトヨタ自動車 代表取締役社長 佐藤恒治氏とともに表彰台に上がった。こちらも、前戦のモンツァに続き2連勝。

 そして、トリプル・ワンツーフィニッシュを完成させたのは、 WRC 第10戦 アクロポリス・ラリー・ギリシャを優勝したTGR-WRTの69号車 GRヤリス ラリー1ハイブリッド(カッレ・ロバンペラ/ヨンネ・ハルットゥネン)と、2位になった33号車 GRヤリス ラリー1ハイブリッド(エルフィン・エバンス/スコット・マーティン)。代表がラリー北海道で不在ながら、大逆転のワンツーフィニッシュを飾るなど、チームとしての完成度を見せるとともに、前戦ラリーフィンランドに続き2連勝。

 この大逆転の優勝に、ラリー北海道でデモランを行ない、当時社長としてWRCへの復帰を決断した豊田章男会長はコメントを発表。北海道とあわせての優勝となったことを祝福している。また、富士でワンツーフィニッシュを成し遂げ、マニファクチャラー選手権のチャンピオンを獲得したWECチームへは、佐藤恒治社長がコメントを発表している。

トヨタ自動車会長およびTGR-WRT会長 豊田章男氏のコメント

先にラリー北海道のことから言わせてください。ヤリ-マティ、ユホ、ラリー北海道優勝おめでとう! デモではないコンペティションの道で世界レベルの走りを見せてくれたこと感謝しています。ヤリ-マティの走りにファンは魅了され、ドライバーたちは奮起していました。日本のラリーが世界に近づく手助けをしてくれたと思います。本当にありがとう。

走っているヤリ-マティはずっと笑顔でした。ただ裏では少し不安げな表情も見せていたと思います。なぜならギリシャで彼のチームが戦っていたからでした。しかし、私は一切そのことを心配していませんでした。TOYOTA GAZOO Racing WRTは“現場を中心としたチーム”だと知っていたからです。先月、フィンランドで代表代行を務めた時、チームメンバーの仕事を間近で見ることができました。なにかあれば、現場に近い人が判断をし、上はそれをサポートする...。TGR-WRTは、そういう仕事のやり方が根付いてるチームです。ヤリ-マティがつくった“そんなチーム”であれば、チーム代表に北海道に来てもらっても大丈夫とわかっていたのです。

チームは思っていたとおりの力を発揮してくれました。カッレ、ヨンネ、フィンランドの悔しさを取り戻す“嬉しい勝利”おめでとう!

そしてエルフィン、スコット、大逆転のワンツーフィニッシュをありがとう! 君たちの活躍が、チーム代表の不安げな表情をきれいに吹き飛ばしてくれました。チーム全員が11月の日本でまた最高の笑顔になれるよう、それぞれの現場で努力を積み重ねていきましょう!

ギリシャでがんばったみんなに感謝!

トヨタ自動車社長およびTOYOTA GAZOO Racing Europe会長 佐藤恒治氏コメント

WEC第6戦富士6時間レースでは、日本のファンの皆様、WECの挑戦を支えてくださっているパートナーの皆様と一緒に、7号車のポールトゥウィン、8号車との1-2フィニッシュ、マニュファクチャラーズチャンピオンの獲得という素晴らしい形で勝利を飾ることができました。応援してくださった皆様に感謝いたします。

今日は、たくさんのファンの皆様がTGRの旗を振りながら観戦されていました。私自身、ピットでレースを見守っていましたが、厳しいレース展開の中、目の前に見えるスタンドの皆様の熱い応援や笑顔がとても心強かったです。チームの挑戦を後押しする大きな力にもなったと思います。本当にありがとうございました。

そして、今回のWEC富士で実感したのは、可夢偉代表のもとでつくりあげてきたチーム力です。日頃のコミュニケーションができているからこそ、自ら考え、チームのために自律的に動く。一人ひとりのそんな行動の積み重ねが、僅差の闘いを最後に勝ち切る強さにもなりました。

トヨタWECチームの転機になったのは、ル・マンでの悔しさであり、豊田会長の「マイチームにはスポーツをさせてあげたい」という言葉です。そこに込められた豊田会長の想いがチーム全員の魂に火をつけました。そこからみんなで目指してきた「真のワンチームの強さ」を、今回はホームで示すことができたと思います。

この週末は、WECチームだけではなく、全日本ラリーチームは北海道でモリゾウとともに、WRCチームはギリシャで、それぞれの耐久レースに挑みました。闘うフィールドは違っても共通しているのは、「モータースポーツで笑顔を増やしていきたい」という想いです。五感を使ってクルマの魅力を伝えたい。モータースポーツでクルマを鍛え、多くのお客様に喜んでいただきたい。この想いを原点に、WECを通じてもっと多くの笑顔を生み出せるよう、今後とも挑戦を続けてまいります。

次のバーレーンでの最終戦も、ワンチームで、全力で闘ってまいります。

追伸
ケッセル・レーシングから急遽参戦した宮田莉朋選手は、初挑戦ながらWECの舞台で素晴らしい走りを見せてくれました。見事3位表彰台の獲得、おめでとう!莉朋選手に貴重な挑戦の機会をいただいたケッセル・レーシングの皆様、お声がけいただいた木村武史選手、ありがとうございました。

トヨタが見せたモータースポーツを通じてのクルマづくり

 9月10日は、世界ラリー選手権・世界耐久選手権・全日本ラリー選手権が同日に開催されるという特異な日だったが、トヨタはいずれの選手権においても、上位を獲得し、1つの世界選手権ではメーカーチャンピオンを獲得した。いずれも連勝となる形でのトリプル・ワンツーフィニッシュであり、トヨタとしての強さを見せた。

 そして、会長は北海道でデモランも実施し、社長は富士のピットで6時間戦況を見守るというチームへのフルコミット。この強さを達成できたのは、豊田章男氏が社長時代から掲げる「モータースポーツを起点としたもっといいクルマづくり」にあるのは間違いない。モータースポーツを単なるマーケティング手段と捉えず、クルマを鍛え、人を鍛える場としてクルマの開発過程に組み入れる。9月10日は、その本気のかかわりが、成果として現われた特別な日であった。