ニュース

アカザーの「Lenovo All Players Challenge」で、手動運転装置付きシミュレータを体験してみました

2023年9月14日 開催

手動運転装置付きシミュレータで「EA SPORTS F1 23」をプレイする車いすユーザーの長屋宏和さん

 どうもアカザーっす! 2000年にけがで脊髄を損傷して以来、車いすユーザー歴23年になります。

 普段の移動には手動運転装置でクルマを運転し、取材や遊びに飛び回っているクルマ好きなオレです。そしてクルマ好きなら誰しも一度は憧れるのがフォーミュラ1、F1の世界!

 そんな憧れの「2023 F1 日本グランプリ」が、今年も9月22日~24日に鈴鹿サーキットで開催されます。それに先駆け、2023 F1日本GPのタイトルスポンサーでもあるレノボが「Lenovo All Players Challenge」というイベントを渋谷で開催するというので取材してきました。

9月15日~18日の4日間、「ZeroBase 渋谷」で開催された「Lenovo All Players Challenge」

 Lenovo All Players Challengeは9月15~18日に「ZeroBase 渋谷」で開催された、レーシングシミュレータを使用したタイムアタックイベント。ちなみに「タイムアタックチャレンジ」の上位3名はF1日本GP(9月22日)のパドッククラブへ招待されるなど、10位まで豪華賞品がもらえたとのこと。

 さらには会場に用意されたレーシングシミュレータの1つには、手動運転装置が付いており、なんと足が不自由なオレのような車いすユーザーでも、気軽に参加が可能という多様性にあふれたナイスイベントなのです!

会場には手動運転装置が付いたレーシングシミュレータも設置

 これはレノボの社是である「Smarter technology for all」(すべての人の生活を、テクノロジーでより豊かにする)に基づいたもので、年齢・性別・障害の有無などにかかわらず、“すべての人にテクノロジーの力でF1を身近に感じ楽しんでもらえるように”との思いからとのこと。

世界的ギタリストと車いすレーサーが対決!

 そんなイベントを象徴するように、イベントオープン前日のメディア向け発表会&体験会では、世界で活躍するギタリストのMIYAVIさんと元F3ドライバーで車いすユーザーの長屋宏和さんという、多様性があふれまくりな2人がレーシングシミュレータを使ってのレースを披露。

メディア向け発表会では、ギタリストのMIYAVIさんと元F3ドライバーで車いすユーザーの長屋宏和さんがレーシングシミュレータで対決!

 MIYAVIさんは通常のレーシングシミュレータを使い、足が使えない長屋さんは手動運転装置を付けたレーシングシミュレータでそれぞれのマシンをドライブ。シミュレータで体験するゲームはF1公式の「EA SPORTS F1 23」で、MIYAVIさんは赤いフェラーリ、長屋さんは青いレッドブルのマシンを駆って、3周のバトルを披露し会場を沸かせていました。

 2人のレースはMIYAVIさんの勝利に終わったのですが、レース中にMIYAVIさんが「スゲェ踊らされている気がする(笑)」と、笑っていたように、コースアウトしたMIYAVIさんを長屋氏がペースを落としつつ待つというシーンが何回か見られました。

 しかしその後に、きれいにスパッと長屋氏のマシンをパスするMIYAVIさんのドライビングもなかなかのもので、「この日のために練習してきました」とおっしゃるとおり、何事にも努力を怠らないMIYAVIさんらしい走りでした。

「Lenovo All Players Challenge」デモレースMIYAVIさんVS長屋さん

 EA SPORTS F1 23や、その過去作をプレイしたことがある人なら分かると思うのですが、このゲームはかなりガチなレースゲーム(というよりはシミュレータに近い)に仕上がっており、他車に当てないできれいにパスするのにもかなりの技術が必要なんですよ。

 クリーンなドライビングを披露したMIYAVIさん、ギャラリーを盛り上げつつ、MIYAVIさんに花を持たせる長屋さんのドライビング、そのどちらもLenovo All Players Challengeにふさわしいすがすがしい走りでした。

 長屋さんとのレースを終えたMIYAVIさんはインタビューで、「負けたくねえって血が騒ぐというか、ちょっとこっそり練習してみたいです。またLenovoさんが 2020年から全世界でF1をスポンサードされているのは規模の大きい取り組みですし、そのなかでF1のワクワクをたくさんの人に届けていく。これは僕がロックギターで(音楽を)おじいちゃんもおばあちゃんも難民キャンプの子供たちにも届けたいという思いと一緒だと思うので、そういう意味では今回鈴鹿に世界一流のドライバーとチームが来ます。存分に楽しんで、本物を感じてほしいなと思います。またこの渋谷のど真ん中で非日常的体験もできるので、ぜひぜひ遊びに来て、カッ飛ばしてほしいなと思います」と感想を語ってくれました。

レーシングシミュレータでのバトルを終えてインタビューに答えるMIYAVIさんと長屋さん

障害をものともしない工夫で実現した神業ドライビング

 発表会終了後の体験会では、車いすユーザーながら見事なドライビングを披露した長屋さんにいろいろとお聞きしました。

 F3のレーシングドライバーだった長屋さんは、2002年10月に鈴鹿サーキットで行なわれたF3レースでクラッシュ。車いす生活となるもリハビリに励み、手動運手装置を積んだカートのレースに出場するまでに! さらに2022年からはeモータースポーツにも出場している、現役のeモータースポーツドライバー。

手動運転装置のシミュレータを使って、eモータースポーツにも出場している長屋さん

 そんな長屋さんが、この日シミュレータに装着していた手動運転装置は、実車の手動運転装置を作っているフジオート製のもので、シミュレータ本体はゼンカイレーシング製のものだそう。

 この手動運転装置付きのシミュレータは長屋さんが参戦しているeモータースポーツでも使用しているもので、「今日はATモードでの走行でしたが、エンジンブレーキを併用しての減速などが必要となるeモータースポーツなどの場面では、左肘でシフトアップ、口にくわえたマウスタブをかむことでシフトダウンのMT操作をしています」とのこと。

手動運転装置付きシミュレータでの長屋さんのデモラン

 実際に操作しているところを見ると、長屋さんは左手でステアリングを回し、右手レバーを前に押し出すことでブレーキ、引くことでアクセルを操作しています。

 これは長屋さんの持つ障害では、右手で思うような素早いステアリング操作ができないが故とのこと。また、うまく指の力も使えない長屋さんは、ステアリングとアクセルレバーには腕を固定するアタッチメントを使用してドライブする。

指でステアリングや操作レバーをうまくつかめない長屋さんは、アダプターを使用し、腕をそれぞれに固定して操作

 オレ自身も普段から手動運転装置を使ってクルマを運転しているんですが、少し聞いただけでも長屋さんはオレよりも数段難しいことにトライしてるな~と感じました。そして、オレもそこそこ前向きに生きてきたつもりなんですが、彼の前向きな生きざまは段違い!

 そんな長屋さんのチャレンジングスピリットあふれる生き方に興味を持ったオレは、長屋流の前向きに生きる秘訣を聞いてみました。

「みなさんと一緒に、何かをやり遂げるということが自分のやりがいになっていて、常に楽しいことを考え続けています。もちろん落ち込むこともありますけど、まわりの人と一緒に何かできないかな? 一緒に楽しくやれないかな? ということを常に考えています」

 おお~!この“まわりの人と一緒に何か楽しいことをやりたい!”という気持ち、めちゃめちゃ分かります!

楽しみながら開発したこだわりのレーシングシミュレータ

 そんな前向きな長屋さんと共に“楽しく”このシミュレータを開発してきたのは、レーシングシミュレータ開発・販売を行なうゼンカイレーシングのエンジニア兒島弘訓さん。

 実は兒島さん自身も元レーシングドライバー。同じレーシングドライバー出身同士ならではの感覚的言語のやりとりで、開発を進めてきたとのこと。

もう1人の立役者は、ゼンカイレーシングのエンジニア兒島弘訓さん

 この手動装置付きシミュレータのベースとなったのはゼンカイレーシング製のレーシングシミュレータで、ハンドルやペダルはほぼそのまま流用。アクセルペダルのみを逆方向に配置し、そこにフジオート製の手動運転装置を取り付けたもの。最小限の改造で、長屋さんが使いやすいようにアジャストしているのが印象的。

 この手動運転装置付きシミュレータの開発で2人がいちばんこだわった点は、ブレーキレバーのフィーリング! 実車のレーシングマシンのブレーキは踏めば踏むほど踏力を必要とするつくりなんですが、それをシミュレータで再現するために、2枚のブッシュと2種類のバネを使用しているとのこと。

ブレーキペダルの裏にはタッチをよくするためのさまざまな工夫が凝らされる

 仕組み的にはブレーキの踏み始めには柔らかいブッシュが効き、その後に柔らかいレートのスプリング、硬いレートのスプリング、最後にペダルを奥まで踏み込んだところでいちばん硬いブッシュが効くという4段階で踏力が変わる仕組み。

 それらを長屋さんの腕力などに合わせて、コンマ1秒を削るべく二人三脚で調整し、操作感が実車のレーシングカーに近いよう仕上げてきたとのこと。

 お話を聞いたあとに、オレも3周ほどドライブしてこの手動運転装置付きのシミュレータを体験させてもらったのですが、明らかにブレーキのタッチが、ゲームセンターや家庭用ゲーム機のそれとは異なっており、実車カートとかに近いように感じました。

 とは言え、あくまでそう感じただけで、走りは長屋さんの足下にも及ばない感じでした(笑)。ていうか、たった3周走っただけなのに背中が汗びっしょりだった件。いや~このレーシングシミュレータ、リアル過ぎんだろ~!

 そんな、めっちゃめちゃリアルなレーシングシミュレータを体験できるイベント「Lenovo All Players Challenge」でした。

リアルな操作感のせいか、たった3周ドライブしただけでめちゃめちゃ汗をかいてました