ホンダと東レ、使用済み自動車から回収したナイロン樹脂の水平リサイクルに関する共同実証を開始

2027年ごろの実用化を目指す

　本田技術研究所は9月19日、東レと共同で、使用済み自動車（End-of-Life Vehicle：ELV）から回収したナイロン6樹脂の水平リサイクルに関する実証を開始した。

　この実証は環境省の脱炭素型循環経済システム構築促進事業の認定を受けており、樹脂処理量500t/年規模のパイロット設備の導入と実証を2026年3月ごろまで行ない、2027年ごろの実用化を目指している。

　ナイロン6樹脂とは、強度や耐熱性、耐薬品性に優れることから、熱にさらされ、ガソリンやオイルなどに接することが多い自動車部品向けに適しているナイロン樹脂の一種。

　近年、日本でも「プラスチック資源循環法」が施行されるなど、飲料容器や衣料品にとどまらず、廃棄プラスチックの再資源化への社会要請は高まっているという。一方、これまで自動車のナイロン樹脂廃材の処理においては、分別回収やリサイクルの技術的難度の高さから、焼却の際に発生する熱エネルギーを回収・利用するにとどまっていた。

　こうした中、ホンダは東レと共同で、水の臨界点（374℃、22MPa）よりもやや低い領域の高温・高圧状態の水となる亜臨界水を用いて、回収したナイロン樹脂を分子状態に戻すモノマー化に成功。この技術を活用し、今回の共同実証では、日本国内でELVから回収したインテークマニホールドを再生原料とする水平リサイクルに取り組んでいく。溶媒に亜臨界水を用いることで、従来の酸触媒と比べて環境負荷を低減しながら、短時間に高い収率でバージン材と同等の性能・品質のリサイクル材に転換できる水平リサイクルのスキーム構築を目指すとした。

　ホンダと東レによるナイロン樹脂の水平リサイクル技術の主な特徴は、エンジニアリングプラスチック（機械・自動車・電子機器などの部品に多用される、機械的強度・耐熱性・耐摩耗性に優れたプラスチック）原料となるモノマーを再生材料から直接作り出せるということ。さらに、モノマー製法は溶媒に水を用いることで、従来の酸触媒に比べて環境にやさしく、約5分の1の時間で高効率な製造が可能となる。

　また、この技術はナイロン樹脂以外のエンジニアリングプラスチック原料におけるモノマー化へも応用することが期待できるとのこと。今回の共同実証では衣料やフィルムなど自動車以外の用途も含め、広くサーキュラーエコノミーへの貢献効果についても検証していく。