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ホンダ、「Honda E-Clutch」搭載の「CB650R」公開 「E-クラッチ」技術説明会

2023年12月20日 発表

Honda E-Clutch搭載車の「CB650R」を公開

 本田技研工業は12月20日、伊ミラノで開催されたモーターサイクルショー「EICMA 2023」で世界初公開した「Honda E-Clutch(ホンダ イークラッチ)」の技術説明会を開催。会場でHonda E-Clutch搭載車の「CB650R」が公開された。

 ホンダが世界で初めて開発した「Honda E-Clutch」の特徴は、二輪車用有段式マニュアルトランスミッションのクラッチコントロールを自動制御することで、ライダーの手動によるクラッチレバー操作を不要としたこと。これにより、ライダーの体験としては、スーパーカブと同様にクラッチレバーを操作せずに、シフトペダルだけで変速操作ができるようになる。

 発進、変速、停止などのシーンにおけるクラッチコントロールは電子制御技術によって行なわれ、最適なクラッチコントロールを自動制御することで違和感のないスムーズなライディングを実現するとともに、電子制御によるクラッチコントロール中でも、ライダーがクラッチレバー操作を行なえば、通常のマニュアルトランスミッション車と同様、手動によるクラッチコントロールも行なえるようにしている。

「Honda E-Clutch」のシステム構成は、従来のマニュアルトランスミッションエンジンの構造を大幅に変更することなく、クラッチ機構部にクラッチアクチュエーターを搭載したもので、クラッチ機構やミッション機構は従来のマニュアルシングルクラッチ、マニュアルトランスミッションと同じ構造。会場に展示されたEクラッチ搭載車「CB650R」を確認すると、クラッチカバーに少し張り出すカタチで「Honda E-Clutch」が装着されていた。

Honda E-Clutch搭載車の「CB650R」

 エンジンとクラッチは協調制御されており、クラッチ制御についてはモーターによって行なわれ、MCU(モーターコントロールユニット)からモーターへ送られる電流値によってコントロール。その電流値は、前後輪回転差やスロットル開度、エンジン回転数、ギヤポジション、シフトペダル荷重、クラッチモーターリダクションギヤのアングル信号、エンジンカウンターシャフト回転数などから算出される。

 また、手動操作とモーターによるクラッチ制御の両立を実現させるため、3分割構造のエンジン側クラッチレバーを採用。ハンドル側クラッチレバーによる手動操作とモーターによるクラッチ制御が独立して作動できる構成を実現させるとともに、手動操作によるオーバーライド(強制介入)を可能とした。

Honda E-Clutch開発責任者の小野惇也氏
Honda E-Clutch開発のコアメンバー。左から制御設計PLの竜﨑達也氏、開発責任者の小野惇也氏、駆動系研究PLの伊東飛鳥氏

 技術説明会には、Honda E-Clutch開発責任者の小野惇也氏、制御設計PLの竜﨑達也氏、駆動系研究PLの伊東飛鳥氏が出席。プレゼンテーションに登壇した小野氏からは、長年の駆動系技術の研究の知見やホンダのロボティクス技術のエッセンスをE-Clutch開発に統合したことなどが紹介された。

本田技研工業 二輪・パワープロダクツ事業本部 二輪事業統括部 大型モーターサイクルカテゴリーゼネラルマネージャーの坂本順一氏

 ホンダの二輪ラインアップにおける「Honda E-Clutch」と「DCT」の棲み分けについては、「Honda E-Clutch」はマニュアルトランスミッションの進化版、「DCT」はギヤセレクトまで機械任せのオートマチックとして共存していく関係性という。

 本田技研工業 二輪・パワープロダクツ事業本部 二輪事業統括部 大型モーターサイクルカテゴリーゼネラルマネージャーの坂本順一氏は、「走るランナーに例えて言うと、100m走もしくは200m走を全力で走るようなランナーは、マニュアルトランスミッションかな思います。一方で、42.195kmや、それよりもかなりの長距離を体力負担を軽減させながら走りきるという長距離ランナーはDCTがふさわしいのかなと思っておりまして、本日のE-Clutchについては、5000m、1万m、比較的全力に近い速度で走りながら、体力も温暖温存しつつ駆け引きをして勝ちに行くみたいな、中距離ランナーにおいては E-Clutchがまさにふさわしい技術」といったイメージが語られた。

エンジンカットモデル
クラッチをコントロールする「Honda E-Clutch」ユニット
Honda E-Clutchの技術プレゼンテーション