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ホンダ、二輪の電動化に10年間で約5000億円投資へ

2023年11月29日 発表

 本田技研工業は11月29日、二輪事業の電動化に向けて、2021年〜2025年の5年間で1000億円、2026年〜2030年の5年間で4000億円、10年間で計約5000億円の投資を計画していることを明らかにした。

 ホンダでは2030年までにグローバルで電動モデルを30機種を投入することを計画。2030年のグローバルでの電動二輪車の年間販売台数目標を、2022年に公表した350万台に対して50万台増となる400万台とした。

 また、コストダウンの取り組みを加速させ、現行の車体コストから50%削減。2030年に二輪事業全体では営業利益率10%以上、電動二輪事業単独では5%以上、2030年以降には二輪事業全体、電動二輪事業ともに10%以上を目指すとしている。

2030年の電動二輪車年間販売台数目標400万台に

 同日、同社執行役専務 電動事業開発本部長 井上勝史氏、電動事業開発本部 二輪・パワープロダクツ電動事業開発統括部 統括部長 三原大樹氏が出席して説明会が行なわれた。

 2030年におけるホンダのグローバルでの電動二輪車の年間販売台数目標については、2022年9月に公表した数値から50万台引き上げた400万台とし、さらに電動車の普及を加速させるという。2023年は、中国で「Honda Cub e:」などEB(Electric Bicycle:電動自転車)と呼ばれる3機種を、日本、欧州では「EM1 e:」をそれぞれ発売した。

 さらに2024年には「JAPAN MOBILITY SHOW 2023」に出展した「SC e: Concept」をベースとしたモデルを、2025年にはFUN用途に使えるモデルや、プラグイン充電式の電動二輪車をそれぞれ世界各国に投入。これらのモデルに加えスーパースポーツ、オフロード、Kids向けバイク、ATV(All Terrain Vehicle=全地形対応型乗り物)など2030年までに計30機種以上を積極的に投入し、電動二輪車のフルラインアップ化への取り組みを加速させる。

電動車フルラインアップ展開

モジュールプラットフォームやコネクティビティ技術、電動化でものづくりも進化

 ものづくりの面では、電動二輪車においては、モジュールプラットフォームという形で、バッテリ、パワーユニット、車体をそれぞれモジュール化し、これらを組み合わせることで、多様なバリエーション展開を可能にする。これによりグローバルのさまざまな顧客ニーズに対応できる商品を、スピーディかつ効率よく市場に投入。このモジュール化はコスト面でもメリットを生むことができるとしている。

 また、電動二輪車で大きく進化する装備の一つに、コネクティビティがあり、2020年から展開しているコネクティビティを使ったサービス「Honda RoadSync(ホンダロードシンク)」をさらに進化させ、収集された情報を活用し、ユーザーに充電ステーションの情報を提供するといった提案型ナビ機能を付加したIVI(インビークル・インフォテインメント)を、2024年上市予定のモデルに搭載させる。

 さらに2026年上市モデルには、テレマティクス通信ユニット(TCU)を搭載し、さらなるサービスの進化を図り、将来的には、ICE搭載車と電動二輪車の双方から得られるデータを活用し、車両の利用状況から顧客のニーズを理解することで、新しい発見や安全性を高める機能など、ホンダならではの体験を提供していくとしている。

モジュールプラットフォーム活用
コネクティビティの進化

 また、ホンダが投入しているモデルのバッテリでは、三元系リチウムイオン電池を採用しているが、これに加えて、リン酸鉄リチウムイオン電池を用いたバッテリの開発も行なっており、2025年に投入を予定。それぞれ得意とする出力帯、コストに違いがあるバッテリのバリエーションを持つことで、より多くの用途に対応することができ、商品の幅が広がるとしている。

 中長期的には、現在開発中の全固体電池の活用を視野に入れ、エネルギー密度の高いバッテリの採用も検討していく。

オンライン販売など新しい顧客接点を

 電動二輪事業では、店舗に行くことなく二輪車を購入できるオンライン販売を行ない、ユーザーの利便性を向上させていくとともに、グローバルで3万店を超える既存販売網のサービスも提供。さらに新しい試みとして、電動二輪車の価値観を体感してもらう場として、エクスペリエンスセンターをインド、ASEAN他の主要都市に設置。既存の販売店の強みに加え、オンラインサービスの強化で、これまで以上にユーザーに対してより便利で安心感のあるオンオフ融合の顧客接点を提供していくとしている。

電動二輪車の完成車のコストを50%削減へ

完成車のコスト50%削減を目指す

 電動二輪車の完成車のコストに関しては、2030年には現在の交換式バッテリ仕様の電動二輪車よりも50%の削減を目指す。そのために、プラグイン充電式のバッテリの採用、バッテリセルの最適化、共通するモジュール採用による調達、生産の効率アップ、専用工場などによる効率化によって実現を目指す。

 電動二輪車の生産は、まずは既存のICE用インフラを活用するが、2030年の販売台数400万台の実現に向けた盤石な体制構築と一層の競争力を確保すべく、2027年以降をめどに、電動二輪車専用生産工場をグローバルで順次稼働させる。この工場ではモジュール化技術などの採用により、組み立てラインの長さを従来に対し約40%削減し、高効率な生産体制を目指す。なお、専用工場は1工場当たり、投資金額は約500億円、生産能力は年間100万台規模を想定している。

 調達については、これまで完成部品で調達していたものを、材料、加工、組み立て、物流などの各工程を見直すことで、より競争力のある体制にする。

電動二輪の生産調達領域

電動車販売の最大化に向け10年間で約5000億円投資

 二輪の電動化に向けて今後10年間で約5000億円を投資する計画については、2021年~2025年の5年間で1000億円の投資を現在進めており、2026年~2030年の5年間で4000億円を計画している。2031年以降は、さらなる競争力強化のために、グローバルでの生産体制の構築、ソフトウェアの進化に資金を投じ、電動車の販売の最大化につなげていく。

電動二輪への投資金額

2030年以降電動二輪事業で営業利益率10%以上

 収益目標としては、2030年に電動二輪事業として営業利益率を5%以上、二輪事業全体としても10%以上の実現を目指す。そして2030年以降には、電動二輪事業として営業利益率10%以上を達成し、利益総額としてもさらなる増加を目指す。ホンダは、電動二輪事業においても、現行のICE事業と同様、高収益な体質を構築し、二輪事業全体としても、利益を拡大させていくという。

二輪事業の収益目標
電動二輪戦略