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ホンダ、2025年までに二輪EV10モデル超展開 二輪事業のカーボンニュートラル実現に向けた説明会

2022年9月13日 発表

電動二輪車のグローバル戦略について説明した本田技研工業株式会社 常務執行役員の野村欣滋氏

 本田技研工業は9月13日、二輪事業に関する説明会を開催し、2025年までにグローバルで10車種以上の電動二輪車を投入していくことを明らかにした。日本においてはビジネス向けのコミューターモデルを5車種、一般向けのコミューターモデルを2車種、「FUN EV」と呼ぶファンモデルについては中排気量相当の3車種とキッズ向け1車種を投入する。

 また、小型・高性能な全固体電池搭載モデルの将来的な登場を予告するとともに、電動化と合わせてICE(内燃機関搭載)車についても燃費の向上やカーボンニュートラルフューエルの採用などを継続的に推し進め、2050年までにカーボンニュートラルの実現を目指すとした。

2025年までにファンモデルを含む電動二輪車10車種が登場

2022年~2025年にかけ、電動二輪10モデル以上が登場へ

 ホンダは現在のところ、日本およびグローバルにおいて主に移動距離の少ない用途向けのコミューターモデルを投入してきている。世界市場規模が5000万台とされるなかで、たとえば同社として販売台数の大半を占める中国市場においては、速度25km/hまでの「コミューターEB」、もしくは速度25~50km/hの「コミューターEM」と呼ぶタイプのニーズが高まっており、4車種を展開しているところ。

 速度50km/h以上のビジネス領域の「コミューターEV」については、ビジネスバイクの「Honda e:」シリーズを国内の日本郵便のほか、国外ではベトナムポストが採用しており、最近ではタイランドポストとの共同実証実験も開始。2022年9月からは同じくタイで「BENLY e:」の生産・販売も始まっている。

EB、EM、EVという3タイプの電動二輪車をこれまでグローバルに投入してきている
日本、ベトナムではビジネス向けEV「Honda e:」シリーズなどを展開
コミューターEM/EBは中国市場で普及が進んでいる
インドではEM、EVの普及が急速に拡大

 しかしながら、同社常務執行役員の野村氏は、「2050年のカーボンニュートラル実現に向けては、これまでの延長線上の取り組みでは不十分なため、違う次元のアプローチが必要」とし、電動化を中心に、インフラの拡充、サービスの変革、ICEの進化など、多面的な取り組みを一段と進めていくことを明らかにした。

 まず電動化の領域では、2022年~2024年にかけ、すでに中国に投入しているコミューターEM/EBを他のアジア・欧州・日本にも計5モデル投入する。また、2024年~2025年には、一般向けのコミューターEV 2モデルをアジア・欧州・日本に展開し、さらに現在のICE基準で400cc前後の中排気量に相当する「大型FUN EV」3モデル、小型のキッズ向け1モデル、計4モデルを日本・米国・欧州に投入する計画。これら10を超える車種展開により、グローバルにおけるICE搭載車との販売構成比で5%となる100万台を2026年までに、同15%となる350万台を2030年までに、それぞれ達成していきたいとした。

2024年までにコミューターEM/EB 計5モデルを日本でも販売
一般向けのコミューターEV 2モデルも同時期に投入する
「大型FUN EV」3モデルとキッズ向け1モデルは2025年までに登場
「大型FUN EV」3モデルのシルエット。あくまでもイメージとのこと
電動車の販売台数は、2026年までに100万台、2030年までに350万台を目指す

 電源となるバッテリについては、小型化が可能な次世代バッテリである全固体電池が二輪との相性の面から最適だとし、四輪EVでの採用が見込まれる2020年代後半以降に二輪EVへの搭載も見込む。それと同時に、交換式バッテリの普及、充電インフラの拡充を図るための取り組みも進める。インドネシアでは、交換式バッテリである「Honda Mobile Power Pack」搭載車を活用する合弁会社を設立し、バリ島でバッテリシェアリングサービスを展開中。インドでも同様のサービスを2022年中に開始予定としている。

 日本では2022年4月、ENEOSとホンダ他国内二輪4メーカーとで株式会社Gachaco(ガチャコ)を設立し、2022年秋にバッテリシェアリングサービスを開始する計画。それ以外にも、国内の二輪メーカーからなる電動二輪車用交換式バッテリコンソーシアムに参加し、相互利用を可能にする交換式バッテリおよびバッテリシステムの標準化を進め、欧州やインドでも交換式バッテリの規格共通化に向けた取り組みを行なっている。

交換式バッテリやバッテリシェアリングサービスの普及拡大に向けた各国での取り組みが進む

 ソフトウェア領域では、「従来のハード売り切り型から、ハードウェアとソフトウェアを融合したサービスソリューション指向のモビリティカンパニーへの変革に取り組んでいく」と野村氏。これまで、一部の大型バイクに搭載してきたコネクテッドサービス「Honda RoadSync」を進化させ、EVの航続距離をもとにした最適なルートや充電スポットの案内、安全運転やアフターサービスの支援などを、サブスクリプション型サービスなどの形で提供する。新たなコネクテッドサービスは2024年発売予定のコミューターEVから順次適用していくとしている。

コネクテッドサービス「Honda RoadSync」を電動車向けに進化させていく

 なお、既存のICEについては、継続的な燃費改善とともに、バイオ燃料、あるいはエタノールを混合した燃料など、世界各地域特有の事情に応じたカーボンニュートラルフューエルの開発を行なうことで、二酸化炭素排出量の削減を図っていくとしている。

 代表執行役副社長の竹内氏は、既存の固定型バッテリの進化、「Honda Mobile Power Pack」のような交換式バッテリの普及、水素燃料電池、バイオ燃料などのカーボンニュートラルフューエル、モビリティサービスによる移動効率向上といった、「多面的、多元的なアプローチで、2050年のカーボンニュートラルの実現を目指す」とし、野村氏は「ICE搭載車と同様に、電動車でも、操る喜びをお届けするとともに、電動車ならではの新価値をもつ商品を提供していく」と語った。

「多面的、多元的なアプローチで、2050年のカーボンニュートラルの実現を目指す」とした本田技研工業株式会社 取締役 代表執行役副社長の竹内弘平氏