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ホンダ、バッテリシェアリングでカーボンニュートラル実現に向けて加速する「モバイルパワーパックで拡がる移動と暮らし」説明会

2021年10月29日 開催

ジャイロキャノピー e:(左)やベンリィ e:(右)でも利用されるモバイルパワーパックを活用する取り組みなどを紹介する「モバイルパワーパックで拡がる移動と暮らし」説明会が開催された

 本田技研工業は10月29日、新たに発売した着脱式可搬バッテリ「Honda Mobile Power Pack e:(モバイルパワーパック イー)」の活用を広げ、再生可能エネルギーの利用を拡大していく取り組みなどについて紹介する「モバイルパワーパックで拡がる移動と暮らし」説明会を東京 青山のホンダウエルカムプラザ青山で開催した。

 新しいモバイルパワーパック e:は、10月28日に屋根付きビジネス用電動3輪スクーター「GYRO CANOPY e:(ジャイロキャノピー イー)」と合わせて発表された新製品。従来品で第1世代となる「モバイルパワーパック」から電池容量を増やし、従来の1052Whから1314Whに高容量化。新旧で互換性を維持しつつ、これまで行なってきた実証実験でユーザーから寄せられた声を反映して、使い勝手を高めるためハンドル形状などを改良したほか、モビリティ以外の領域でも利用できるよう、今回からPSEマークを取得したことも大きな変更点になっている。

従来品で第1世代となる「モバイルパワーパック」(左)と、新たに登場した第2世代の「モバイルパワーパック e:」(右)
本体背面。モビリティ以外の領域でも利用できるよう、PSEマークを取得したことが第2世代の大きな変更点
互換性を維持するため、基本的な本体サイズや底面の端子類などは変更していない
外観で大きく変わっているのは本体上部。第1世代はH形状のハンドルで暗い場所などでは前後が分かりにくかったが、第2世代ではT型に変更し、グリップも太めにして扱いやすくした。しかし、ロックに利用する両サイドは高さや形状を維持して互換性を保っている

 また、ホンダでは同日、電動3輪タクシー「E-AUTOリキシャ」向けにモバイルパワーパック e:を貸し出すバッテリシェアリングサービス事業を2022年前半にインドで開始することも発表している。

 インドに現地法人を設立して行なう新しいバッテリシェアリングサービス事業の概要については、関連記事「ホンダ、インドで電動三輪タクシー向けバッテリシェアサービス事業を2022年前半開始」を参照していただきたい。

ホンダとインドのトルクモータースで共同開発した電動3輪タクシー「E-AUTOリキシャ」

モバイルパワーパック e:を使うことで航続距離が約1.2倍に向上

本田技研工業株式会社 ライフクリエーション事業本部 本部長 加藤稔氏

 説明会の冒頭では、本田技研工業 ライフクリエーション事業本部 本部長 加藤稔氏によるあいさつが行なわれた。

 加藤氏は「電力を小分けにすることで、小型モビリディを含むさまざまな機器の電動化と、再生可能エネルギーの活用拡大に貢献することを目指して開発した着脱式可搬バッテリのホンダモバイルパワーパックは、2018年に電動2輪車で採用されるとともに、さまざまな実証実験などを通じてその有効性を確認してきました。そしていよいよ本日、第2世代とも言えるホンダモバイルパワーパック e:を発売いたします」と、着脱式可搬バッテリを開発した理由などについて説明。

「まずは電動2輪車を保有する法人さまへのリース販売となりますが、来年からはモバイルパワーパック搭載機器を開発するさまざまな企業さまへの供給を順次開始する予定です。また、このあとにご紹介いたしますが、インドでのバッテリシェアリング事業も来年開始いたします。モバイルパワーパックはさまざまな用途に活用可能なバッテリであり、今後、除雪機や船外機といったホンダのパワープロダクツ製品にも搭載していきたいと考えております」と語り、今後の展開予定について紹介した。

モバイルパワーパックは2018年に登場し、3年間に行なわれてきた実証実験などで得られたデータを反映して第2世代であるモバイルパワーパック e:に進化を遂げた
“電力を小分けにする”モバイルパワーパックによって移動や暮らしの可能性を広げていく
本田技研工業株式会社 ライフクリエーション事業本部 新事業推進部 シニアチーフエンジニア 中島芳浩氏

 続いて、本田技研工業 ライフクリエーション事業本部 新事業推進部 シニアチーフエンジニア 中島芳浩氏から、車両の電動化を取り巻く環境やホンダがこれまでに行なってきたモバイルパワーパックの取り組み、今後の事業展開などについて説明された。

 中島氏は世界情勢の潮流として、2015年9月に国連で「SDGs」(持続可能な開発目標)に向けた目標が採択され、まもなく「COP26」(国連気候変動枠組条約第26回締約国会議)も開催されるなど、気候変動やCO2削減は自動車メーカーにとって非常に重要な課題になっていると説明。カーボンニュートラルの実現に向け、車両の電動化では「再生可能エネルギーの利用」「電力需要が旺盛な新興国での展開」を中心に考える必要があるとした。

 再生可能エネルギーの供給予測は投資額の増加という要因もあって上方修正が続いており、変動しやすいという最大の弱点を蓄電池との組み合わせで補うことができれば、潤沢な再生可能エネルギーの供給をカーボンニュートラルの実現に直結させられるとの考えを示した。

 また、新興国では温暖化や大気汚染への対策という以外にも、自国の産業振興、石油などの輸入削減によるエネルギー安全保障という視点から再生可能エネルギーに取り組む政策的な目的もあり、車両の電動化に積極的な国が多いと解説。新興国における展開では、現地の交通事情や政策などに合致した取り組みが重要だとした。

2015年9月に国連で採択された「SDGs」に続き、まもなく開催される「COP26」がターニングポイントになるだろうと中島氏
再生可能エネルギーの供給予測は上方修正が続いている
車両の電動化は、新興国では「エネルギー安全保障」「自国の産業振興」といった狙いも取り組みの背景となる

 こうした背景から、ホンダでは2輪やパワープロダクツといった製品でクリーンエネルギーを活用してもらうため、着脱式で持ち運べるモバイルパワーパックをさまざまな用途で共通利用するビジョンを策定。再生可能エネルギーとして発電された電力を、モバイルパワーパックによって2輪車や小型のコミューターの電動化に利用するアイデアが生み出されたものの、そのままでは充電時間や航続距離、コストといった面が課題となるため、さらにモバイルパワーパックの交換機、モバイルパワーパックの管理システムを開発してバッテリシェアリングサービスの実現を目指すことになった。

 バッテリシェアリングサービスの利用イメージでは、走行で電力を消費したら都市の各所に設定された交換ステーションに立ち寄り、電力が減ったモバイルパワーパックをライダーやドライバーが自分で充電済みのものと交換するスタイルを想定。これにより、ユーザーはバッテリの充電を待つ時間が不要になり、交換し続けることで“電欠”を恐れることなく走り続けられるようになって、既存のエンジン搭載車と比較した場合のデメリットを払拭できるという。

モバイルパワーパックを中心とした再生可能エネルギーの利用ビジョン
電動モビリティが持つ「長い充電時間」「短い航続距離」「高いコスト」という3つの課題
バッテリシェアリングサービスのコンセプト図
残量の減ったバッテリを充電済みのものと交換することで、充電の待ち時間を解消
1セットでの航続距離が短くても、手軽に交換できれば遠くまで移動できるようになる

 そんなイメージを現実のものとするべく、ホンダではフィリピン、インドネシア、インドの3か国で実証事業を展開。環境省の補助事業となったフィリピンでの実証実験では、1周が50kmに満たないというロンブロン島を舞台として、駒井ハルテックの風力発電システムと電動2輪100台を組み合わせて実施。NEDOの助成事業となったインドネシアではパナソニックと協力して、バンドン市、デンパサール市などで電動2輪、超小型モビリティ300台規模の実証実験を行なったことに加え、タングシジャヤという山村で小水力発電と可搬式電源のマッチング実験も合わせて実施しているという。

 インドではトルクモータース製の電動3輪車を使ってムンバイ郊外にあるターネー市で4か月に渡って実証を行ない、実際の様子を動画で紹介。実証実験では30台の電動3輪車が対象となり、トータルで20万kmを走行している。

 3か国で2輪、3輪の電動車で延べ100km以上を走行して、バッテリパックの性能や耐久性、交換機のユーザビリティ、管理システムの信頼性といった技術的側面を確認し、さらに交換機の配置やサービスの利便性、経済性といった事業面でもさまざまな知見を得たという。また、実際に運営するなかで、電動車の充電による走行距離の制約をなくしたことにより、ユーザーにストレスなく生活や仕事を続けてもらえたことは大きな収穫だったと中島氏は語った。

インド・ターネー市で行なわれた実証実験の様子(1分30秒)
フィリピンで行なわれた実証実験の概要
インドネシアで行なわれた実証実験の概要
インドで行なわれた実証実験の概要

 実証事業で得た成果を反映するものとして、まずはモバイルパワーパック e:について解説。第1世代のモバイルパワーパックと比較して25%大容量化しており、これは内部に円筒型電池セルがノートPCなどでも広く利用されている規格品を使っていることが大きな理由。2018年からの技術進歩が性能向上につながっていて、これからもさらなる進化が期待できる部分だとした。

 この結果、モバイルパワーパックでは外形を変えることなく互換性を保ったまま進化を享受でき、次々と上位互換を目指せる製品となっている。実際に第2世代となるモバイルパワーパック e:を既存の電動2輪車に使った場合、車両はそのままでも航続距離が約1.2倍に向上するという。

 2つ目となる成果物は、2022年の市場投入に向けて開発を進めているという「Mobile Power Pack Exchanger e:」で、実証実験で知見をフルに投入して設計を行ない、ユーザーの使い勝手を高めたほか、冷却性能などを大きく高めている。

 3つ目は、世界最大の3輪市場であるインドで電動3輪車向けのバッテリシェアリングサービスを2022年からスタート。インドで製造されるモバイルパワーパック e:やMobile Power Pack Exchanger e:に加え、ホンダが自社開発しているクラウドシステムを利用する予定になっている。

 最後に中島氏は「モバイルパワーパック事業は、バッテリの共通利用という理念に賛同していただけるパートナーと築いていく、先の長い、幅の広い事業です」と説明してプレゼンテーションを締めくくった。

モバイルパワーパックの第1世代と第2世代の性能比較。容量は25%増えているが、重量は600g軽量化されている
幅広く利用されている規格サイズの円筒型電池セルを使っており、今後も性能が向上していくことを期待できる
「Mobile Power Pack Exchanger e:」も実証実験で得た知見で改良を進め、2022年に市場投入する予定
インドで日常的に利用されている3輪車の電動化を推し進めることで、カーボンニュートラルの実現に向けた動きを加速させる
インドにおけるバッテリシェアリングサービスの利用イメージ(1分4秒)

クラウドでのデータ管理をさまざまな分野に活用

株式会社本田技術研究所 先進パワーユニット・エネルギー研究所 エグゼクティブチーフエンジニア 岩田和之氏

 モバイルパワーパックの技術解説や将来的な活用の広がりについては、本田技術研究所 先進パワーユニット・エネルギー研究所 エグゼクティブチーフエンジニア 岩田和之氏から説明が行なわれた。

 岩田氏は4月に三部社長が「2050年にカーボンニュートラル/事故ゼロを目指す」「2040年までに4輪車はグローバルでZEV(Zero Emission Vehicle)化する」「2輪車の電動車ラインアップを拡充する」と宣言したことを取り上げ、これまでホンダはエンジンで名を馳せており、岩田氏自身もエンジン設計を担当するエンジニアだったことを紹介。しかし、研究所で働いているスタッフも三部社長の宣言は「第2の創業」であると認識して、「これからは日々新しい技術開発に取り組んでいかなければならないと考えている」と述べた。

 カーボンニュートラルの実現に向けた活動として、ホンダでは2019年のホンダミーティングで「Honda eMaaS」のコンセプトを発表しており、これに沿って4輪、2輪、ライフクリエーションとさまざまな分野で電動化した製品を市場投入。さらに発動機で培ってきた技術を使ったさまざまなエネルギー関連商品もラインアップしている。これらの活動は「モバイルパワーパック」「4輪」「燃料電池」という3つのレイヤー別に推進されていて、この中から今回はモバイルパワーパックの面について解説が行なわれた。

4月に三部社長からカーボンニュートラルや交通事故死者ゼロを目指すといった新しいロードマップが発表された
真に「環境負荷ゼロ」の循環型社会を目指すにはカーボンニュートラルの実現だけでは不十分であり、クリーンエネルギーの活用、リソースサーキュレーションと合わせた3点を同時に進める必要がある
2019年に発表された「Honda eMaaS」コンセプト

 第1世代で得た経験や知見を反映して新たに開発されたモバイルパワーパック e:では、最新のバッテリセルを採用して約25%の容量アップを実現したほか、放熱特性を見直して耐久性を高めている。また、容量を高めた一方で内部で使われている部品を見直して部品点数を削減し、コストはほぼ同等を維持し、重量は6%ほど軽量化している。このほか、第1世代との互換性を維持しつつ、多くの人に使ってもらって得た意見を反映してグリップの握りやすさも改善している。

 特にインドでの事業化が決定したことで熱対策は重要な項目となっており、電熱シミュレーションを実施して高温対策を施した。耐久性の面では防水・防塵性能としてIP65規格に適合し、UNR135の振動試験や落下試験をクリア。電波暗室におけるEMCテスト(電磁波によって電気機器や電子機器が誤動作しないか確認する試験)のほか、今後の5G普及も見据えた携帯電話試験もクリアしている。

 さらにモバイルパワーパック e:は頭脳となる「BMU(バッテリマネジメントユニット)」を搭載。自身が置かれた状況やステータスを把握して情報として記録。充電でMobile Power Pack Exchanger e:などに接続されたときに蓄積したデータをクラウドに転送する仕組みが用意されている。

モバイルパワーパック e:の特徴
第1世代からの技術進化
さまざまな悪条件に耐える耐久性に加え、頭脳となる「BMU(バッテリマネジメントユニット)」を搭載

 データを管理できる能力については、バッテリを二次利用する段階でのトレーサビリティに加え、将来的には走行ログとして利用して、自動車保険のランク付けやコンサルテーションといったサービスに紐付けることもできると解説。

 バッテリとしての基本情報であるSOC(充電率、充電状態)については、世界的に利用の拡大が予想される再生可能エネルギーを有効活用するため、モバイルパワーパック e:がバッファとしてどれだけのポテンシャルを持っているかを示す情報を得ることができるとした。

 再生可能エネルギーでも太陽光を利用する太陽光発電では、日中の発電量増加と電力系統の需要がバランスを崩す「ダックカーブ現象」が発生。また、不安定な再生可能エネルギーの電気を電力系統に戻すと周波数や電圧といった品質面に影響を及ぼすことが懸念されるようになっている。この問題を解消するため、BEV(電気自動車)を機器を介して接続し、再生可能エネルギーのタイムシフトを行なうことを「V1G」「V2G」と呼んでいるが、これと同様の効果をモバイルパワーパックでも発揮できると岩田氏は説明する。

 実際にフィリピンで行なった実証実験では、通勤や通学などによる利用増で、交換ステーションで行なわれるバッテリ交換は朝と夕方に集中する。これが仮に固定式のバッテリを充電する場合、電力需要のピークとなる夕方の帰宅後に充電が開始され、ダックカーブ現象が助長される原因になってしまう。

 しかし、バッテリシェアリングの場合は日中に増える太陽光発電の電気であらかじめバッテリに充電しておけるので、夕方の負荷を抑制できると分析。また、モバイルパワーパックは1個の容量はそれほど多くないが、充電ステーションに集まればBEV同様のオペレーションが可能になるとした。将来的には充電ステーションで蓄積した再生可能エネルギーを電力系統に放電し、V2Gと同様の「B2G」としても活用したいと述べた。

 別の視点から実証実験のデータを検証した一例としては、課金方法の違いによるバッテリ負荷の変化についても紹介。充電を利用するたびに料金が発生するフィリピンではほとんどのユーザーがバッテリ残量がゼロに近い状態まで使い切って充電を行なうが、サブスクリプションを採用したインドネシアでは充電時のバッテリ残量はさまざまな数値に分かれている。このデータにより、バッテリの充電状況を課金方法によってコントロールできる可能性があると岩田氏は分析。

 また、車両ID別(ユーザー別)に見るとバッテリの充電回数には大きな差があるものの、バッテリID別の充電回数はほぼ平均値の近くに集まっており、シェアリングで利用されるバッテリは二次利用される場合の品質が安定することを示しているという。

データの蓄積はバッテリを二次利用する場合のトレーサビリティに加え、将来的にさまざまなサービスでの利用を想定している
BEVで再生可能エネルギーを蓄積するように、充電ステーションのバッテリ充電に再生可能エネルギーを利用。将来的にはV2Gのような「B2G」への展開も目指す
実証実験で得られたバッテリ充電のデータ。充電の課金方法によってバッテリの使い方をコントロールできる可能性があるという

 このような分析から、将来的にバッテリシェアリングサービスでモビリティの駆動用に利用されたバッテリを、利用方法を変えた「リパーパス」として負荷が低めなライフクリエーション製品などに二次利用。モビリティ利用での製品寿命を終えたあとも家庭用の定置電池などにリパーパスして、最終的なリサイクルまで資源を有効活用する一連の流れを構築する。実際に実証実験で使われたモバイルパワーパックは回収後にリパーパスされ、現在は本田技術研究所の社内でさまざまなテストに利用されているという。

 また、バッテリの稼働率向上は事業性向上のキーになっており、例として挙げられたホンダの多彩な電動製品をすべて内蔵バッテリにした場合、当然ながらそれぞれにバッテリの費用が発生する。家庭用の定置電池などは使用頻度が高いが、例えば降雪地帯では冬期に電動スクーターで走る機会は大きく減り、逆に電動除雪機は夏期に使われることなくしまい込まれていると想像できる。その視点では、脱着式のモバイルパワーパックなら必要なときにシェアしてトータルコストを抑えられるとした。

データを活用してモバイルパワーパックの品質を安定させ、電池として持っている性能を製品寿命までフル活用していく
モバイルパワーパックを中古バッテリとしてリパーパスしていくイメージ
多彩なホンダ製品でモバイルパワーパックを共有し、バッテリでの出費を抑える
モバイルパワーパックを通じてHonda eMaaSを他社製品に広げ、社会全体で再生可能エネルギーの利用拡大につなげていく
6月からコマツと、7月から楽天とモバイルパワーパックを使った取り組みを行なっている
幅広く使ってもらうため、日本国内では電動2輪車用の交換式バッテリのコンソーシアムを川崎重工業、スズキ、ヤマハ発動機と4社で設立。共通規格としてモバイルパワーパックが採用されている。また、採用規格についての決定事項はないが、欧州でもKTM、ピアッジオ、ヤマハの4社で交換式バッテリコンソーシアムの創設で合意

質疑応答

説明会の後半には質疑応答を実施

 プレゼンテーション後に行なわれた質疑応答では、世界で幅広く普及させて使ってもらうために必要なポイントを問われ、岩田氏は「他社さんを含めて使っていただくためには標準化や規格化が大切です。まずはサイズと電圧を合わせ、通信のプロトコルも合わせる必要があります。われわれが相手先になるOEMさんにいろいろな情報を提供していかなかければなりません」。

「日本では標準化はなかなか難しいと言われていて、欧州では内燃機関のコモンレールシステムに代表されるように、メガサプライヤーが標準システムを使って作ったものをOEMに配るといったやり方が得意ですが、われわれがこのバッテリで標準化を得るにはかなりのタイムスパンが必要です。仲間に入っていただいて、プロポーザルを聞いて、先方の意見も採り入れた上で何度もフィードバックした結果が標準化になります。なので、このバッテリですぐに標準化が獲れるとは思っておりません」と回答した。

質疑応答で回答する岩田氏

 また、世界中でバッテリの需要が高まっていることで生産に必要な希少金属は確保が難しくなっていくことも懸念されているが、これについて岩田氏は「これから先、弊社だけではなく各社が電動化を進めていきます。バッテリではリチウム、コバルト、ニッケルなどの貴金属が大量に使われており、このままでは間違いなく枯渇という懸念が出てきますが、ここで必要なのが私の説明で取り上げた『リソースサーキュレーション』ですね」。

「通常販売ではバッテリはお客さまの資産になります。資産になったバッテリはどこかでリサイクルされて、またわれわれがどこかで買うというのがこれまでの事業スキームですが、バッテリシェアリングサービスではバッテリが生まれてから死ぬまでホンダの管理下に置かれます。ということで、非常にリソースサーキュレーションをしやすい商材だと言えます。バッテリだけでなく、中に入っている材料を地金を戻すところまで含めて考えていくのが今後の企業姿勢として絶対的に求められることだと考えています」と答えている。