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日産、「S13 シルビア」「ケンメリ」「ダットサン フェアレディ」のバーチャルカーと合わせて交通安全を学べるVRChat新スタジオ開設

2024年3月7日 発表

日産自動車がメタバース内に新撮影スタジオ「NISSAN Heritage Cars&Safe Driving Studio」を開設

 日産自動車は3月7日、インターネット上のソーシャルVRプラットフォーム「VRChat」内に、メタバースによる撮影スタジオ「NISSAN Heritage Cars&Safe Driving Studio」を開設し、一般公開した。

 日産は「Meta Quest」などのVRヘッドセットを使って没入感の高いVR体験が味わえるVRChatをPR領域に活用。メタバース空間での体験をつうじてドライブやクルマの楽しさを提供し、合わせて日産車や日産ブランドに対する親近感を持ってもらうため、2021年11月からVRChat内でバーチャルギャラリー「NISSAN CROSSING」を一般公開。それ以降、「日産アリアとめぐる環境ツアー」「NISSAN SAKURA Driving Island」「NISSAN EV&Clean Energy World」といった常設コンテンツを展開しており、新たに公開されたNISSAN Heritage Cars&Safe Driving Studioは5番目の常設コンテンツとなる。

NISSAN Heritage Cars&Safe Driving StudioはVRChat内にある日産で5番目の常設コンテンツ
NISSAN Heritage Cars&Safe Driving Studioの概要

 新コンテンツのNISSAN Heritage Cars&Safe Driving Studioは、日産が産学連携のバーチャル研究所として2021年3月に設立した「交通安全未来創造ラボ」で活動する相模女子大学、北里大学、新潟大学の特別研究員3人が開発に協力。各研究員の得意分野に合わせた3種類のスタジオが用意され、スタジオごとのテーマに沿った歴代日産車3台と合わせて交通安全をテーマとした体感コンテンツやゲーム、写真や動画の撮影が楽しめるようになっている。

3種類のスタジオにそれぞれ交通安全をテーマとした体感コンテンツを用意

 公開先はVRChatのログイン後、ワールド検索の機能に「NISSAN Heritage Cars&Safe Driving Studio」の名称を入力するか、「NISSAN」の検索一覧から選択して移動する。なお、VRChatはVRヘッドセットを使わない通常のデスクトップ版でも利用できるが、NISSAN Heritage Cars&Safe Driving Studioでは各スタジオのコンテンツをしっかりと体験してもらうため、「Meta Quest」シリーズなどのVRヘッドセットの利用を推奨している。

NISSAN Heritage Cars&Safe Driving Studio概要

公開日時 2024年3月7日10時
対応 Meta Quest
料金 無料

NISSAN Heritage Cars&Safe Driving Studioのエントランス

スタジオ1 80年代:まるでトレンディドラマの世界のような美しい夜景を再現

着ている服の色によって夜間の被視認性が変わることを体験できるスタジオ1

 相模女子大学 学芸学部 生活デザイン学科 角田千枝教授が制作に協力したスタジオ1では、1988年に発売された「シルビア Q's」(S13型)が展示され、1980年代に流行したトレンディドラマのワンシーンを思わせる美しい夜景をスタジオ内に再現。シルビアの前方に置かれたマネキンが着用する服の色や立ち位置を変更して、着用する服の色によって夜間の被視認性が大きく変化することが体験できる。

 また、暗所で見えにくくなる色の濃い服装でも、色の薄いバッグやベルト、スカーフなどをアクセントとして加えることで被視認性を高めることができることも合わせて紹介している。

マネキンが着ている服やバッグの色を変更して、見え方の違いを体験できる
スタジオ1は「トレンディドラマを撮影中」という場面設定で構成されており、カメラ機材を使ってアバター仲間と撮影の雰囲気を楽しむこともできる
スタジオ1に展示される「シルビア Q's」(S13型)

スタジオ2 70年代:ケンとメリーのスカイラインとともに楽しむドライブ体験

疑似ドライブ中に有効視野について学べるスタジオ2

 北里大学 医療衛生学部 リハビリテーション学科 視覚機能療法学 川守田拓志准教授が制作に協力したスタジオ2では、1972年に発売された「スカイライン ハードトップ 2000GTX-E」(KGC110型)を展示。参加者はスカイラインの運転席に座り、スクリーンに投影される風景が動く疑似ドライブを楽しめることに加え、不定期で前方を動物たちが横断して、運転中に重要となる有効視野についてクイズ形式で学べるようになっている。

「スカイライン ハードトップ 2000GTX-E」(KGC110型)の運転席に座り、走行中の有効視野を体験できる
ワイドスクリーンが周囲を取り囲むスタジオで、疑似ドライブをリアルに楽しめる
スタジオ2に展示されるスカイライン ハードトップ 2000GTX-E(KGC110型)

スタジオ3 50~60年代:ダイナーとドライブインシアターのあるアメリカンな雰囲気

1960年当時のアメリカの雰囲気を再現したスタジオ3

 1960年に発売された「ダットサン フェアレディ」(SPL213型)が展示されるスタジオ3は、ダットサン フェアレディがアメリカで走りまわっていた当時のダイナーとドライブインシアターの雰囲気を再現。

 新潟大学 人文社会科学系 教育学系列 村山敏夫准教授と日産が共同創案した「ハンドルぐるぐる体操」の動画をドライブインシアターの大画面に映し出し、参加者同士のアバターで集まってハンドルぐるぐる体操を実践できる場としている。

ドライブインシアターの大画面で「ハンドルぐるぐる体操」などの動画を楽しめる
スタジオ3に展示される「ダットサン フェアレディ」(SPL213型)

目的は「ドライブは楽しい」「クルマって楽しい」と体験してもらう場の提供

日産自動車株式会社 日本事業広報渉外部 鵜飼春菜氏

 発表に先駆けて実施された報道関係者向けの事前説明会では、日産自動車 日本事業広報渉外部 鵜飼春菜氏が常設コンテンツとして開設した新ワールドについて説明。

 日産がメタバースでの活動に注力している理由として、VRメタバースでの「交流」や「体験」は、リアルワールド同様、またはそれ以上に親しみを感じてもらえる場合があることがあるとこれまでの活動によって判明しており、メタバースでのPR活動は新車購入を訴求するプロモーションというより、「ドライブするのは楽しい」「クルマって楽しい」と体験してもらう場を提供することを目的に設定。

VRメタバースで日産車について「認知」「理解・興味」を訴求していく

「クルマっていいねと思ってもらう、そして日産っていいねと思ってもらえたらうれしい」との考えで取り組み、実際の車両購入までは距離があったとしても、クルマに対する認知や理解、興味を持ってもらい、クルマを好きになってもらって身近なものに感じてもらうことを大切にして開発を進めたという。

相模女子大学 学芸学部 生活デザイン学科 角田千枝教授

 また、スタジオ1の監修を担当した相模女子大学 学芸学部 生活デザイン学科 角田千枝教授は、日本ではダーク系の服装となっており、クルマを運転するドライバーから歩行者だと見分けにくい服で生活しているケースが多くなっているが、一方で「安全性が高いから」という理由で明るい服を身につけ続けることも難しいと説明。

 しかし、自身のゼミで学生たちを対象に行なったテストで、実際の暗がりで遠くにいる人物が身につけている服の色によって被視認性が大きく異なることを実感してもらうと、服選びの意識に変化が生じて気をつけるようになることから、スタジオ1の内容でも、VRメタバースでの体験をつうじて日常生活の服選びに気付きを持ってもらうことを目指していると述べた。

北里大学 医療衛生学部 リハビリテーション学科 視覚機能療法学 川守田拓志准教授

 スタジオ2を監修した北里大学 医療衛生学部 リハビリテーション学科 視覚機能療法学 川守田拓志准教授は、人間の視野は左右180度前後まで見ることができるようになっているが、視界に情報が入っている状況でも交通事故が起きる場合も多く、日常でも歩行中の“ながらスマホ”などが原因で人にぶつかってしまうこともあり、これは有効視野が原因になっていると説明。有効視野は加齢に加え、雑多な状況で狭くなることもある。

 スタジオ2では状況によって有効視野が変化することをゲーム感覚で体験できる内容となっており、「ぜひ見落とさないぞ!という気持ちで体験していただいて、それでも見落とすような内容になっていますので、お楽しみいただければと思います」と語った。

事前説明会に参加した報道関係者もVRデモを体験した
VRデモで使用された「Meta Quest 3」
NISSAN Heritage Cars&Safe Driving Studioを紹介するイメージムービー(1分35秒)