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沖縄でラリチャレ初開催、沖縄市 桑江市長・うるま市 中村市長があいさつ ラリーによる現場での交流や観光・産業振興に期待

沖縄で初開催されたTOYOTA GAZOO Racing ラリーチャレンジ。ラリーをきっかけにクルマの新しい経済圏が広がっている

ラリチャレで約9000人、GRフェスティバルで約1万1000人を集客し、沖縄のモータースポーツ文化を盛り上げる

 TOYOTA GAZOO Racing ラリーチャレンジ 第1戦 沖縄が3月17日、沖縄市やうるま市を舞台に開催された。ラリーチャレンジが沖縄で開催されるのは初めてのこととなり、沖縄県中南部を舞台にスペシャルステージやリエゾンといったラリー特有の競技が行なわれた。

 ラリーのHQ(ヘッドクォーター)となったのはコザ運動公園(沖縄県沖縄市諸見里)。広島東洋カープが春キャンプを行なうコザしんきんスタジアムのある場所として全国的に知られている。

 その運動公園にはサービスパークが設置されていたほか、燃料電池車「MIRAI(ミライ)」からの水素による給電、トヨタとリンナイが開発する水素燃焼グリルによる水素焼きの試食など、ラリーだけにとどまらない展示も行なわれていた。

 トヨタはラリチャレを町おこしのイベントとして位置付けており、自治体と協力してモータースポーツ文化を日本に根付かせようとしている。サーキット場など大規模施設がなくてもイベントを実施でき、地元の文化を世界へ発信できるなど、自治体にとってもメリットは大きい。そのラリチャレを沖縄で初めて行ない、頭出しとなる開幕戦を日本最南端の県の沖縄で行なうということで、日本を縦断していくという象徴的な意味合いも出てきている。

 この沖縄でのラリチャレ開催は3年がかりのイベントであり、昨年も同時期に実施直前までこぎつけていた。しかしながら、コロナ禍の影響もあり見送りに。イベントの開催をさまざまな形で阻んできたコロナ禍は2023年5月に終わり、満を持しての開催となった。

 ラリチャレの前日には、豊見城市の豊崎 美らSUNビーチを舞台にモータースポーツプロモーションイベント「GR FESTIVAL OKINAWA」を開催。こちらでは豊田章男会長自身が「モリゾウコーナー」を作り上げるなど存分に話題を盛り上げ、ラリチャレをプロモーションしていた。GRフェスティバルは約1万1000人の集客、ラリチャレは約9000人の集客となり、2日間合計で2万人の集客。ほかの大型モータースポーツイベントに匹敵するほどの集客を実現していた。

沖縄市 桑江朝千夫市長、うるま市 中村正人市長があいさつ

あいさつを行なう沖縄市 桑江朝千夫市長

 ラリチャレ第1戦沖縄の開会式では、沖縄市 桑江朝千夫市長、うるま市 中村正人市長があいさつ。両名とも大会名誉会長として、イベント参加者や協力者にお礼を述べるとともに、ラリチャレ開催への期待を述べた。

 桑江市長は、沖縄市では滞在型観光の推進と自動車産業による地域活性化を目指し「沖縄サーキット(仮称)」の実現を図っているとモータースポーツ振興への取り組みを紹介。イベント開催にあたって訪れた県内外の関係者に、そのモータースポーツ振興の取り組みに注目してほしいとの思いを述べた。

 沖縄市は、広島カープの春キャンプ球場を持つなど、スポーツによる経済振興を古くから進めている自治体でもある。その自治体が、モータースポーツマルチフィールド沖縄を市内に持つほか、沖縄サーキット(仮称)の実現に動いている。その1つとして、今回ラリチャレ沖縄が初めて行なわれたことに、強い意義を見いだしていた。

うるま市 中村正人市長のあいさつ

 中村市長も、あいさつでうるま市のモータースポーツ振興について言及。1月には伊計島でモータースポーツイベントを開催するなど、モータースポーツツーリズムに注目しているという。うるま市は、クルマ好きには海中道路で知られ、沖縄をドライブする際にはニライ橋・カナイ橋と並んで、目的地の1つに必ず上がるほどの地域。伊計島も海中道路経由でのアクセスとなっており、そこでイベントを開いたということは、うるま市の観光資源をモータースポーツによってもっと知ってほしいということになる。

 日本では一部地域でオーバーツーリズムの弊害などが言われ始めているが、世界的に見た場合は、インバウンドの観光客数は少ないレベル。インバウンドは外貨を稼ぐという意味で輸出産業として見ることができ、電機産業が失速した日本においては、自動車産業に次ぐ産業に育ってきている。地方自治体にとっては、どのようにツーリズム振興を図るかというのが税収を増やす上で大きな命題となっており、海外への発信もできるスポーツイベント、自然を活かせるラリーイベントが魅力的に映っている。

 もちろん、世界最大レベルの自動車企業であるトヨタと一緒に仕事ができ、さらになぜか選手として普通に参加している会長や副会長(世界的に見ても異例)と人的交流もできるとあれば、ラリチャレが何を目指しているのか、何を作り上げようとしているのかは興味深いところだ。

 そんなラリチャレに参加している豊田章男会長は、エントラント代表としてあいさつを行なった。

モリゾウ選手こと豊田章男会長あいさつ

エントラントを代表してトヨタ自動車 代表取締役会長 豊田章男氏があいさつ

 おはようございます! 沖縄で初めてのラリー、今年のラリチャレ初戦が沖縄で行なわれます。多くのみなさんにご参加いただきありがとうございました。

 今日を迎えるために福岡モータースポーツクラブが主催、沖縄モータースポーツクラブMABUIが共催。FMSC(福岡モータースポーツクラブ)の星野代表には沖縄で初めてのJAF公認ラリー競技会開催の実現に向けて、地元自治体、警察、SSとなる自動車学校など、各所と調整で多大なご協力いただきました。そのおかげでわれわれ走れます、ありがとうございます!

 星野代表、最初のごあいさつから3年間、本当にご苦労あったと思います。ありがとうございます。MABUIの當間さま、ありがとうございました。

 ラリーをやったことがない地元のモータースポーツクラブに声をかけて、オフィシャルを集めたり、参加の声がけやラリー車両の製作、クルマファンイベントでラリチャレ沖縄の告知活動するなど、多大なご協力をいただきました。改めてありがとうございます。

 今回、39台が出走。沖縄ナンバーが8台です。借りている車両を入れたら9台です。沖縄ナンバー対本土(笑)という対立を産まず(笑)、ぜひとも沖縄の公共の道を安全に楽しくやりましょう。

 そして、3年かけて今日にたどり着きました。

 ただ、われわれはこれをゴールと思っていません。今日からスタートですので、沖縄におられるモータースポーツファン、クルマファンが、ラリチャレがあることが年初の楽しみになるようなスタートにできる1年目をみなさんと作っていきたいです。

 ぜひとも最後まで安全で、笑顔で終われるようなラリチャレ2024年を始めたいと思います。

 最後になりますが私自身、ラリチャレは今回で10年目、40回目の出場になります。自分自身、40回目の記念になるよう、笑顔で終われるようにしたいと思います。ありがとうございました!

自治体との連携、そして町おこし

レースの合間に、沖縄市 桑江市長と話すモリゾウ選手。自治体の首長と現場で積極的にコミュニケーションを図る姿をよく見かけた

 最終的に2台のキャンセルがあり、出走は37台になったようだが、沖縄ナンバーのクルマは7台が出走(さらに1台、TGRからのレンタル車両があるため8チームが出場)。地元沖縄出身のレーサーでもある翁長実希選手も出走し、観客も地元選手ということで声援を送っていた。

 初回ということを考えると、非常に大きな注目を集めた大会になっていたのではないだろうか。逆に大きな注目が集まっただけに、いくつか問題点を見かけることがあった。

 その1つが渋滞で、多くの人が集まったからこそ、ヘッドクォーターまわりでは渋滞が発生していた。もともと、沖縄はクルマ社会であり、渋滞も発生しがち。沖縄中部はモノレールも走っていないため、大量のクルマ客が訪れる。その結果が渋滞となり、といった感じ。主催者側の予想外の盛り上がりとなっており、来年以降の開催へ向けてはコース設定なども含めてカイゼンが必要だろう。

 もちろん、そういった問題点を洗い出しつつ、街とともに進化していけるのもラリーの魅力。トヨタは、ラリーチャレンジによってクルマとともに暮らす街を一緒に育てていこうとしているように見える。それはトヨタのためだけではなく、自動車産業全体を大きくしていこうという取り組みで、自治体を巻き込む必要がある。ラリーチャレンジは、自治体との連携を図るには最適なアプリケーションで、沖縄でラリーを軸にした緊密なコミュニケーションが生まれているように見えた。