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シェルがサポートする日産フォーミュラEチームについて、パワートレーン開発に携わる西川直志氏に話を聞いた
2024年3月29日 23:08
- 2024年3月29日 開催
シェルモータースポーツは3月29日、日産フォーミュラEチームでチーフパワートレインエンジニアを務める西川直志氏によるメディアラウンドテーブルを開催した。
日産自動車は、2018年から日本メーカーとして唯一ABB フォーミュラE チャンピオンシップに参戦。シェルモータースポーツは同年から日産フォーミュラEチームとパートナーシップを組んでいる。3月30日には東京ビッグサイト周辺の市街地コースで 第5戦 2024 TOKYO E-PRIXが行なわれる。
開幕前日に行なわれたメディアラウンドテーブルでは、西川氏が日産がフォーミュラEに参戦する理由を説明。「大きく3つありまして、1つは日産自動車としても電動化を進めている中で、フォーミュラEとシンパシーを感じているということ。2つ目は、電気自動車ならではの走りがエキサイティングであるということをレースを通じて伝えられたらと思っており、特にわが社の場合はハイブリッドシステムのe-POWERがモーター駆動で走るということもあって、ハイブリッドであろうがバッテリEVであろうが、モーター駆動ならではの楽しさを伝えていきたいと思っていること。3つ目は、技術としてのイノベーションにつながっていけばいいと思っており、FIAも“電気自動車の頂点”という表現をしているように、技術的に非常に高いレベルの部品が使われていることから、量販車に活かしていける新しい技術がインスパイアされて生まれてきたらいいなと思っていること」と述べた。
フォーミュラEの勝負の決め手については「いかに効率よくパワートレーンができているかというところや、エネルギーの回収と挙動、レース中の戦略など、いろいろなことが効いていると思います。(フォーミュラEマシンの)バッテリのエネルギー設計は全開走行でずっと走りきることは必ず不可能な設計になっています。なので、アクセルを離して惰性で走る部分と、ブレーキを早めに踏んでエネルギーを回収するのか、ギリギリまでいって速く走るのか、というところのバランスの話もあります。そういうのをどこでやるかっていうのがすごく難しいです。エネルギーを使えば使うほど速く走れますが、それをやってしまうと完走できなくなるので、どこでエネルギーを使って抜きにいくのかっていうところも勝負になります」と語った。
フォーミュラEのどんな技術を量販車に落とし込めるのか、ということに関しては「いろいろな部分があると思いますが、パワートレーンで言えば効率や、あとは制御面のモーターコントロールなどはかなり親和性が高いと思っています。量販車とレースは全然要求が違うので、いかにブレークダウンして性能をなるべく落とさずに、量販車の要求にミートするようなものを作るのかっていうのは、エンジニアの腕の見せ所になります」とエンジニアならではの視点を話してくれた。
また、シェルとのパートナーシップについては「ギヤボックスのオイルとモーターインバーターの冷却オイルを使用しています。メインパートナーでもありますし、クルマの競争力を上げるところにも貢献していただいています」と関係性を語るとともに、「定期的にやりとりをしている中でどんな可能性があるかというところを常に両社で探して、ポテンシャルがありそうであればトライしてみようというようなことをした結果、今のギヤボックスオイルと冷却オイルができました」と、共同開発のプロセスを説明した。
加えて、「ギヤボックスオイルについては効率を上げながら耐久性は落とさない。ギヤボックスを痛めないようにしながら、摩擦抵抗などを減らしていく。そういった性能を上げて伝達効率を改善していきたいと思っています。冷却用のオイルに関しては、モーターやインバーターですと、冷えていれば冷えているほど効率が上がります。エネルギーマネジメントが大事なフォーミュラEの中で、パワートレーンの効率全体を変えるためには、その2つのオイルが重要になります」と、シェルと共同開発したオイルの重要性を語った。
最後に西川氏はレースに関して「日産として初のホームカントリーでレースができるということで、みんな非常にモチベーションが高いです。もちろん勝利に向けてやっているところはありますが、日本でのフォーミュラEの知名度が低いので、今回実際にやって、音も実際に聞いたら結構迫力ありますし、そういったところでフォーミュラEの人気が日本の中で少しでも高まってもらえるとすごくいいなって思っています」と期待を述べた。
なお、ガレージツアーも行なわれ、調整中の22号車と23号車を見ることができた。日産のガレージは、ピットとピットの間にレースエンジニアが指示を出す場所が設けられているという。また、データ解析などを行なうオペレーションルームや、スペア部品を保管したり、壊れてしまった部品を修理したりするスペースもあるとのこと。