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アストンマーティン、SUPER GTに参戦する新型「ヴァンテージ GT3」を東京・青山のブランドセンターで特別展示

2024年5月29日 実施

SUPER GTに参戦する新型「ヴァンテージ GT3」の実車を東京・青山のブランドセンター「The House of Aston Martin Aoyama」で1日限りの特別展示。参戦ドライバーも訪れた

D'station RacingのSUPER GT GT300参戦車両を1日限定で展示

 アストンマーティン ジャパンは5月29日、東京・青山のブランドセンター「The House of Aston Martin Aoyama」で新型「ヴァンテージ GT3」の特別展示を実施した。また、新型ヴァンテージ GT3でSUPER GTに参戦しているドライバーの藤井誠暢選手とチャーリー・ファグ選手のインタビューも行なわれた。

 今回展示された車両は、実際にSUPER GTのGT300クラスに参戦しているD'station Racingの777号車。

アストンマーティンの新型「ヴァンテージ GT3」

 新型ヴァンテージ GT3は、アストンマーティン・レーシング(AMR)とアストンマーティン・パフォーマンス・テクノロジーズ(AMPT)の初めてのコラボレーションから誕生。2018年にデビューした「ヴァンテージ GTE/GT3」の総合的な進化版となるモデルとなり、これらのモデルや新型ロードカー「ヴァンテージ」と同じ機械的アーキテクチャを採用し、接着アルミシャシーを中心に組み立てられ、V型8気筒4.0リッターツインターボエンジンを搭載。ノーズからテールまで一新されたエアロダイナミクスパッケージ、全面的に見直されたサスペンション、最先端のエレクトロニクスによって、ポテンシャルを生み出しているという。

 新型ヴァンテージ GT3は2024年に新設されるLMGT3カテゴリーを含め、FIA GT3クラスの全レギュレーションに適合するグローバルで戦えるGTカーとなり、FIA世界耐久選手権(WEC)、IMSAウェザーテック・スポーツカー選手権(IMSA)、ファナテックGTワールド チャレンジ、ヨーロピアン・ル・マン・シリーズ(ELMS)、ニュルブルクリンク耐久シリーズ(NLS)などに参戦可能となっている。

 新型ヴァンテージ GT3の開発は、AMPTが厳密な目標群を設定し、AMRがそれらを実現するというかたちで改良が進められ、従来モデルで課題となっていたハンドリング特性を中心に、プロ・アマ両方のドライバーにとって可能な限り運転しやすい車両にすることが目指された。

 2023年にはアストンマーティンの契約プロドライバーとよりすぐりのアマチュアレーサーの参加を得て、30時間におよぶ過酷なテストを含む大規模な開発プログラムを実施。どのドライバーも、新型ヴァンテージ GT3が超高速かつ寛容なマシンで、GTレースのトップレベルに独特の要件や激烈な競争環境に完璧なセットアップの幅広さもあるという意見を口にしたとのこと。

 加えて、新世代のGT3カーはかつてないほどダウンフォースに頼っていることから、ブレーキ時の安定性を高めるためにリアサスペンションのセットアップでピッチの制御を試みたものの、サスペンションが硬くなりゴツゴツした動きになるうえ、タイヤにも過度な負担がかかってしまったという。そこでダンパーのチューニングに集中的に取り組むことで、新型ヴァンテージ GT3では優れたバランスを見つけることができ、サスペンションのセットアップを悪化させることなくダウンフォースを発生できるようになったとした。その結果、あらゆるコンディションでプログレッションを大幅に向上し、安定性を大きく高めることができたとともに、タイヤにも均等に負荷をかけるため、チームにとって戦略の選択肢も増えたとしている。

 外観では、新型バンテージのデザインに、ダウンフォースを発生させるためのエアロダイナミクスを組み合わせ、数値流体力学(CFD)の広範な活用によってFIAのダウンフォース規制の枠内でエアロダイナミクスの性能・効率性目標を達成する一方、アストンマーティンのデザイン部門の貢献により、純粋に機能的な要件に合ったフォルムを実現。中でも新しいノーズは新型ヴァンテージで広くなったグリルは、AMRによってダクトでブレーキに流す冷却用空気の量を増やし、より安定したパフォーマンスを確保可能とした。

 また、ノーズそのものはカーボンファイバー製の大型の一体型クラムシェルでクイックリリース設計となり、レース中のアクシデントで損傷した際にすばやく取り外し・交換が可能。幅全体に広がるレーザーライトのほか、スプリッターを短くすることで圧力の中心を後方にずらし、ピッチ感度を下げて安定性を向上させた。フロントホイールアーチの上の大きなルーバーは高圧の空気を逃してリフトを低減し、さらに多く用意されたリアアーチのルーバーで高圧を逃してドラッグを低減する。

 なお、新型ヴァンテージ GT3の価格は非公表となっているが、条件が合えば購入は可能とのこと。詳細は販売店まで問い合わせてほしい。

SUPER GTに参戦するD'station Racingの777号車の実車が特別展示された
実車ということで、よく見ると細かい傷が見受けられた

SUPER GTドライバーにとって、新型ヴァンテージ GT3の印象は?

 特別展示と同時に、新型ヴァンテージ GT3でSUPER GTに参戦しているドライバーの藤井選手とファグ選手のインタビューが行なわれた。

レーシングドライバー/D'station Racing マネージングディレクターの藤井誠暢選手(左)と、D'station Racing 第3ドライバーのチャーリー・ファグ選手(右)

 藤井選手はSUPER GTやスーパー耐久を活動の軸に、ル・マン24時間、ニュルブルクリンク24時間、デイトナ24時間、ドバイ24時間など海外のメジャー耐久レースにも参戦すると同時に、2017年からはD'station Racingのマネージングディレクターも兼任。2021年からはFIA世界耐久選手権シリーズやル・マン24時間レースなど世界最高峰の舞台にD'station Racingとともに挑戦し、3度の表彰台とル・マン24時間では6位入賞を獲得している。

 ファグ選手は1999年生まれのイギリス人ドライバーで、D'station Racingの第3ドライバーとしてSUPER GTに参戦。2022年FIA世界耐久選手権シリーズ(WEC)でD'station RacingのドライバーとしてAston Martin Vantage GTEをドライブし、富士戦で表彰台獲得に貢献した。2023年はインターナショナルGTオープンのシリーズチャンピオン獲得とスパ24時間でクラス優勝を果たしている。

──D'Stationレーシングとして2024シーズンでSUPER GT復帰というかたちになりますが、晴れて参戦が叶っていかがでしょうか。

藤井誠暢選手:われわれは新型ヴァンテージ GT3の前のモデルのヴァンテージが投入された2019年にアストンマーティンでSUPER GTに参戦していました。その後、新型コロナの時期だったんですけど、長年のチームの目標であったFIA世界耐久選手権、WECですね。それとル・マン24時間に参戦するっていうのが長年の目標だったので、それがアストンマーティンとのパートナーで実現しました。そして、3年間戦いました。

 今年(2024年)もWECのシリーズで戦ってるんですけれども、そういう中で今年久々に日本のSUPER GTにアストンマーティン、そして今回車両が変わりまして、新型のヴァンテージ GT3になって参戦することになりました。クルマのデザインもそうですし、クルマの足まわりの構造もエアロダイナミクスも全て一新されて、非常にポテンシャルがあるクルマなので、まだ結果は出せてないんですけれども、前回の富士で言えばレースのファステストラップが出たり、予選でもいいタイムが出せたりっていうことで、非常にクルマのポテンシャルが高いので、そういう意味で今週の鈴鹿を含めて、この先のチャンピオンシップで必ずいい結果が出せると思っているので、楽しみにしてます。

──チャーリー・ファグ選手に。今回、富士でのレースがSUPER GTでは初めてのレースになったと思いますが、日本のレースはいかがでしたか。

チャーリー・ファグ選手:日本でレースすることは幼いころから目標でした。よくSUEPR GTを見るなどをしていたので、このとても貴重な機会でチャンスをもらえて感謝しています。

2024年SUPER GT 第2戦 富士3時間レースではマルコ・ソーレンセン選手にかわって第2ドライバーとして参戦し、ファステストラップも記録する活躍を見せたファグ選手

──ヴァンテージ GT3が新型になっての1番の強みはどのように感じていますか。

藤井選手:元々アストマーティンのヴァンテージは50:50のバランスで、代表的なクーペを象徴するようなモデルなんですが、クルマが高剛性で非常に軽量なアルミボディでシャシーがすごくいいので、ロードカーも一緒なんですけど、レーシングカーで非常にまずバランスがいいっていうのがこのクルマの長所です。今回新型になって、レーシングカーで言うと、さらに足まわりの設計やエアロダイナミクスが大幅に変わったので、今まで以上にスタビリティが上がって、コーナリングのパフォーマンスが前モデルに対して飛躍的に向上しました。なので、今までのそのヴァンテージのよさを残したまま、さらに1歩というか2歩ぐらい前進したイメージなので、非常にクルマには満足してます。

ファグ選手:以前、アジアン ル・マンで新型になる前のヴァンテージ GT3にD'Stationで乗らせていただいて比較できるので、新型に乗った感覚はエアロダイナミクスが変わるなどしていて、世界中のさまざまな選手権でとてもいい結果が出るような車両になっていると思います。

──ファグ選手はSUPER GT第2戦の富士で予選も決勝も最速でしたが、その1番の要因はなんだったでしょうか。

ファグ選手:キーになったのはダンロップさんのタイヤだと思っています。ヨーロッパではミシュランだったり、ピレリだったり、ワンメイクのタイヤを使っていて、そういうのに比べると、国内でのダンロップさんの研究や開発によって、いろいろなコンパウンドがあることで、それがクルマとの相性がよくていい結果につながったと思います。

──新型ヴァンテージ GT3のここが好きっていう部分はありますか。

藤井選手:くると思ってました(笑)。まずやっぱり顔ですよね。アストンマーティンのこのイメージっていうか、クーペの象徴的なロングノーズショートデッキじゃないですけど、そういうクーペであることによるかっこよさっていうのはもちろんあるんですけど、今回ロードカーもそうですが、新型になってフロントフェイスが大きく変わって、アストンマーティンの伝統的な雰囲気はあるんですけれども、新しいニュージェネレーションな感じがぱっと見て、顔から伝わるんで。さらに、それに結構アグレッシブなエアロがついているので、結構この新型ヴァンテージ GT3はみんなかっこいいって言うんですけど、僕はもう見た目がすごい好きですね。

2024年のSUPER GT、GTワールドチャレンジ・アジア&ジャパンカップ、アジアン・ル・マン・シリーズにはドライバーとして、FIA世界耐久選手権(WEC)シリーズにはマネージングディレクターとして参戦する藤井選手

ファグ選手:アップデートされて、アストンマーティンの今までの伝統的なシルエットに付け加えて、もっとモダンな感じになって、とてもかっこよくなったと思います。レーシンググリーンを使っているのもとても似合っています。見た目も本当にクールで、アストンマーティンはとても素晴らしいアップデートをしてくれたと思っています。

──最後に、今シーズンの目標を一言ずつお願いします。

藤井選手:そうですね。まずはSUPER GTで、この新しいヴァンテージ GT3で1勝するというのが今年の1番の目標です。前半2戦はまだちょっと噛み合ってないんですけれども、クルマのポテンシャルは感じてるんで、噛み合えばどっかでそれが達成できるんじゃないかなと思っているので、まずはそれに集中したいという感じです。

ファグ選手:藤井さんと目標は一緒です。もちろん優勝することです。いい試合をいいタイヤで走っているので、そういった結果につなげられるように頑張りたいです。