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坪井翔がスーパーフォーミュラ「第1回瑶子女王杯」を優勝 KYOJO CUPで2連勝した斎藤愛未と合わせ夫婦で週末3連勝
2024年7月21日 17:30
夫婦で週末3連勝かつ同日優勝を実現した坪井翔選手、瑶子女王杯を獲得
スーパーフォーミュラ第4戦富士「第1回瑶子女王杯」が7月20日~21日の2日間にわたって富士スピードウェイで開催された。21日の午後には決勝レースが行なわれ坪井翔選手(36号車 VANTELIN TOM'S SF23)が優勝。表彰台において瑶子女王自ら坪井選手に瑶子女王杯を下賜なさった。
坪井選手は、スーパーフォーミュラのサポートレースとして開催されたKYOJO CUPに参戦している斎藤愛未選手が2連勝したのと合わせて、夫婦で週末3連勝、かつ夫婦で同日優勝という日本のレース界で初めての「慶事」を実現した。
21日の富士スピードウェイは、晴れ。レースがスタートする段階で気温が34℃、路面温度44℃と例年よりもやや高めという中で行なわれた。
前日の予選では福住仁嶺選手(8号車 Kids com KCMG Elyse SF23)、岩佐歩夢選手(15号車 Red Bull MOTUL MUGEN SF23)、大湯都史樹選手(39号車 VERTEX CERUMO・INGING SF23)、坪井翔選手、太田格之進選手(6号車 DOCOMO DANDELION M6Y SF23)というトップ5だったが、予選5位の太田格之進選手はスタート前にガレージにクルマが入れられてしまった。このため、レースは太田格之進選手を除く20台で争われることになった。
決勝レースは、ポールポジションからスタートした福住仁嶺選手が抜群のスタートで飛び出したのに対して、2番手だった岩佐歩夢選手はスタートに完全に失敗し、10位以下まで大きく順位を下げる結果になった。
これで2位には大湯都史樹選手、3位には予選6番手だった牧野任祐選手(5号車 DOCOMO DANDELION M6Y SF23)。その後には、坪井翔選手がつけ、この4台でトップ4が形成されることになった。
坪井選手は7周目の1コーナーで牧野選手を抜き3位に上がり、さらに前を走る大湯都史樹選手に迫っていった。
レースが大きく動いたのはタイヤ交換ができるようになった10周目から。5位を走っていた野尻智紀選手(16号車 Red Bull MOTUL MUGEN SF23)が上位陣では先頭を切ってタイヤ交換を行なう。
さらに2位を走っていた大湯都史樹選手が13周目に、トップを走っていた福住仁嶺選手が14周目に相次いでピットに入ったが、大湯選手は野尻選手のすぐ後ろに戻り、数周で野尻選手を抜いてタイヤ交換を終えた中ではトップに戻った。
トップを走っていた福住選手は、ピット作業で左フロントタイヤがなかなか入らず大きく順位を落とすことになってしまった。
後半にタイヤ交換をする作戦を採った坪井選手、タイヤ交換後の猛烈な追い上げで優勝
レースはタイヤ交換を終えていない坪井選手と、すでにタイヤ交換を終えている大湯選手の見えない戦いに移っていった。1分26秒中盤のタイムをコンスタントにマークしている坪井選手に対して、タイヤが新しい大湯選手は、タイヤ交換直後は1分25秒台で走ることができていたが、じょじょに坪井選手と同じようなタイムになっていき、約35秒前後という差は大きく詰まらない状況になっていった。坪井選手としては、タイヤ交換をしてもトップで戻れる40秒以上の差をつけてからピットに入りたいところだ。
28周目に坪井選手がピットに入り、タイヤ交換をした組では大湯選手、野尻選手、牧野選手の後ろの4番目でレースに復帰する。そこから坪井選手のオーバーテイクショウが始まった。
牧野選手、野尻選手を瞬く間に抜いていくと、トップを走る大湯選手に1周1秒以上速いペースで追いかけていく。数周のうちに追いつくと、残り8周のコカ・コーラコーナーでトップの大湯選手をオーバーテイクし、実質トップに立った。
結局レースはそのままゴールし、坪井選手は今シーズン初優勝。栄えある「第1回瑶子女王杯」を獲得し、表彰台で瑶子女王殿下からトロフィーを下賜された。
2位は大湯都史樹選手、3位はポイントリーダーでその座を維持した野尻智紀選手、4位は最後に野尻選手を追い詰めた福住仁嶺選手。
5位 牧野任祐選手、6位 国本雄資選手(20号車 ITOCHU ENEX TEAM IMPUL SF23)、7位 佐藤連選手(65号車 PONOS NAKAJIMA RACING SF23)、8位 小林可夢偉選手(7号車 Kids com KCMG Cayman SF23)、9位 平良響選手(19号車 ITOCHU ENEX TEAM IMPUL SF23)、10位 山本尚貴選手(64号車 PONOS NAKAJIMA RACING SF23)とここまでがポイント獲得となった。
トップ3会見、夫婦で優勝を実現するためには自分の方が難しいと強いプレッシャーを感じていた坪井選手
レース終了後にはトップ3に入ったドライバー、優勝チーム監督による記者会見が行なわれた。優勝した坪井翔選手、2位になった大湯都史樹選手、3位になった野尻智紀選手、そして優勝チームのトムスの館信秀監督が参加した。
──優勝した坪井選手、ご夫婦で優勝というすごい記録を達成されたが今の感想を。
坪井選手:めちゃくちゃうれしい。今シーズンは開幕戦ノーポイントからのスタートで、徐々に調子が上がってきていた。昨日は予選で4位になり、十分チャンスがあると考えていた。彼女(筆者注:斎藤愛未選手)が2連勝してしまったので、いろいろな人から「分かっているよね」とプレッシャーをかけられている状況だったけど、夫婦で優勝と有言実行することができたのはよかった。
──レースを振り返ってどうか?
坪井選手:どちらかというとロングランの方に自信があった。予選をどれだけしのげるかということが課題だったが、それは実現できていたので、レースに臨んでいた。前の岩佐選手が失速して、その影響で2台に抜かれたけど、10周目までには順位を取り戻したいとタイヤマネジメントしながら走っていた。みんなが早い段階で動くことを選択したので、こちらは引っぱろうということになり、その作戦が成功した。
──館監督、レースを振り返ってどうか?
館監督:作戦がうまくいった。ロングランがよかったので引っぱろうということを決めていた。タイムが落ちることなくよいペースで走り、作戦どおりに実行してくれた。それもこれも坪井選手がよい走りだったからだ。彼が我々のチームに移ってきて4戦目で優勝してくれた。これからポンポン勝ってもらいたい、そういう力は十分にある。
──2位になった大湯選手、どういうレースだったか?
大湯選手:土曜日のフリー走行や日曜日のウォームアップで、とてもペースがよさそうに見えなかったと思うが、自分たちとしてもそこの課題を感じている。エンジニアやチームががんばってくれて急ピッチで改善してきたことで、今回のレースでは上位で争えた。よいペースを持っていたので優勝できなかったのが悔しいが、ここまで来られたのは大きな進歩で、次のレースに向けてもがんばっていきたい。
──レース直後のテレビインタビューで、表彰台に乗ったときに野尻さんよりも前に行けたことがうれしいといっていたが……。
大湯選手:そうですね、それはうれしかった。自分が表彰台に登るときにはだいたい野尻さんが優勝していたので……。ただ、今回トヨタのドライバーになってから初めての表彰台なので、それはうれしかった。
──3位になった野尻選手、悔しいといっていた予選7位から表彰台まで来ることができたが……。
野尻選手:予選では非常に悔しい思いをした。差は小さかったのでもう少しうまくやれば、3~4位ぐらいにはなれると感じていた。レースではスタートから集中していき、スタートで順位を上げ、今日のレースを動かすことができた一人になったと思う。
(10周目以降とレギュレーションで規定されているタイヤ交換義務ピットストップの)ミニマムでピットインすることは、朝から決めていた。そこから(タイヤ交換した中で)トップに来たが、大湯選手と坪井選手が強くて敗北した。悔しさはあるけども、(瑶子女王杯という)価値あるレースで面白いレースを作ることに貢献できたことには充実感がある。
──この3位でランキングトップを維持することができた。その一方、開幕前から警戒しているといっていた坪井選手が優勝するなど選手権にも動きが出てきた。
野尻選手:開幕前から坪井選手は来るだろうと予想していたので、ついに来たという印象。一瞬でランキングが変わってしまうような状況なので、次のモビリティリゾートもてぎ戦ではやり返していきたい。今回、太田格之進選手はスタートできず、福住仁嶺選手もピット作業で悔しい思いをしたと思うので、彼らも次こそかつぞと思っているだろう。
(ピットアウトしてきた大湯選手と接近戦になったことを聞かれ)当たらなくてよかったというのが正直な感想(笑)。ただ、自分はそこでニュータイヤでプッシュしてしまったので無理はできなかった。次は負けないぞという思い。
大湯選手:(昨年の鈴鹿戦でクラッシュしたことが)めちゃくちゃ頭をよぎりました、不思議と野尻選手とはそういうバトルになることが多くて……。
──瑶子女王杯のトロフィーを受け取るときに、瑶子女王とはどういうお話しをされたか?
坪井選手:記念すべき女王杯をいただけたのは本当にうれしい、表彰台ではいつもとはちょっと違った緊張感があった。その時話していたことは、お話ししていいか分からないので、言えない(笑)。
──スーパーフォーミュラの決勝前に、KYOJO CUPで連勝した斎藤愛未さんに対してコメントを。
坪井選手:ここに来る前に夫婦で優勝できたらいいなと思っていた。ただ、どちらかというと、自分の方に不安要素があり、自分が勝たないと実現できないのでプレッシャーは大きかった。お互いにドライバーだからこそ、準備でも支えてくれていてここに来ているので、二人にとってとてもよい日になったと喜んでいる。
──スーパーフォーミュラでは4年ぶりの優勝ということだが、フォーミュラで勝つことはやはり特別か?
坪井選手:SUPER GTでもスーパーフォーミュラでも1勝の重みは変わらなくて、どちらもすごく価値がある。ただ、ご指摘のとおりスーパーフォーミュラでは長らく勝つことができていなかったため、そろそろ勝ちたいと切実に思っていた。また、ドライバーとしては、スーパーフォーミュラはハンデもなく、一人で戦っているので自分の実力を示すことができることで意味があると感じている。
──次戦はモビリティリゾートもてぎで第5戦になるが、それに向けての意気込みなどを教えてほしい。
野尻選手:モビリティリゾートもてぎは出身地である茨城に近いホームコースになるので、なんとしても勝ちたい。今日の借りはもてぎで返したい。
大湯選手:トムスも、無限もポテンシャルが高いが、セルモインギングとしてもそこになんとか食らいついて行けるところまで来ている。今回決勝で2位という結果を実現できたのはポジティブで、ポテンシャルを上げていきたい。
館監督:去年は宮田莉朋選手がドライバータイトルを獲ったが、チームとしてはやはりチームタイトルが欲しい。チームタイトルを獲るには2台で点を取らないといけないので、もう一人の笹原右京選手の奮起に期待したい。笹原選手は今回のレースではスタート直後はよかったので、いけるとか思ったのだが……。ただ、いい兆しは見えてきているので、次戦以降は2台で優勝争いをしてほしい。
坪井選手:この前2戦で、3位、3位と来て今回ここで勝つことができた。チームとして塵も積もれば山となる式で少しずつ改善してきたことが効果として現われている。しかし、スーパーフォーミュラでは(競争が激しいので)あぐらをかいた瞬間にやられる。これからも少しずつ改善していって、チャンピオンシップ争いで野尻さんに食らいついていきたい。