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アイシン、「電動化・知能化」技術試乗体験会で新型高効率ハイブリッドや軽EV搭載の新型小型高回転パワートレーン公開

アイシンの第3世代EV用パワートレーンを搭載した実験車。軽EV「SAKURA」をベースに使用していた

アイシンが豊頃試験場で開催した「電動化・知能化」技術試乗体験会

 EV用電動ユニットやハイブリッドトランミッションなどで知られるアイシンは、北海道 豊頃試験場において「電動化・知能化」技術試乗体験会を実施した。この技術体験会は、アイシンが今後市場に投入予定の新型トランスミッションやEV向けパワーユニットを、アイシングループであるブレーキシステムメーカーのアドヴィックスが将来の電動ブレーキなどを公開した。

 さまざまなパワートレーンユニットなどが公開されたが、今回初公開となったのはPHEV/HEV向けの新型ハイブリッドトランスミッション。アイシンと言えば、歴代プリウスシリースに搭載されているTHS用2モーターハイブリッドシステムや、新型クラウンRSに搭載されている1モーターハイブリッドなど、世界トップレベルのハイブリッドシステムを手がけている。そのアイシンが、さらに高効率なPHEV/HEV向け新型ハイブリッドシステムを公開した。

アイシンのPHEV/HEV向け新型ハイブリッドトランスミッション。電費に加え燃費も改善
新型ハイブリッドトランスミッションの技術的ハイライトとなるクラッチ部。クラッチコントロール用のアクチュエータが収まっている

 公開したのは大容量トルク向けの2モーターハイブリッドユニットで、その特徴はTHSとして知られる2モーターハイブリッドシステムに動力を伝達・切断できる新しいクラッチ機構を組み込んだこと。

 THSは現在、新型ノア・ヴォクシーから搭載が始まった第5世代のTHS IIへ進化。名称も一般名称のシリーズパラレルハイブリッドシステムに変更されている。ただ、一般名称となったことで非常に分かりにくくなったので、本記事では以降は「第5世代THS」と記していく。

 この第5世代THSに限らず、これまでのTHSでは動力分割機構として遊星歯車を組み込み、駆動・回生用のMG2モーターと、エンジンと発電用のMG1モーターを遊星歯車を介して接続。そこから駆動用のトルクを取り出していた。

 この遊星歯車があることで、とてもスムーズにエンジンとMG1モーター、MG2モーターの出力を取り出すことができ、アトキンソンサイクルを採用したエンジンと相まってクルマとしてトップクラスの燃費を実現していた。

 今回、展示された新型PHEV/HEV向けハイブリッドトランスミッションでは、この駆動伝達を改良。MG1モーターとエンジンの動力分割機構によるは変わらないが、MG1モーター+エンジンとの間にクラッチを追加。これまでは遊星歯車を介してつながっていたMG2モーターと、MG1モーター+エンジンを完全に切り離すことが可能になった。

 これにより、MG2モーターのみで走行しているEVモード時の電費がクルマとして従来品と比較して2%改善、エンジン側の燃費は競合品に対し3%程度低減が見込めるという。これまでもシステムとしては、シリーズパラレルハイブリッドだったが、エンジンが発電のみに徹し、MG2モーターが走行のみに徹する完全なシリーズハイブリッドを実現した。

 もちろん、それでありながらクラッチをつなげば従来どおりの動力分割機構を持ったスプリットタイプのシリーズパラレルハイブリッドとして走行でき、エンジンのほうが効率よい領域であれば、エンジンを活かしての走行も可能となっている。

 このような改良を新型トランスミッションに行なったのは、今後PHEVが普及する流れがあり、よりEVモード走行が長くなり、より電費をよくする必要があるため。とくにバッテリ搭載スペースのあるSUVタイプでは、そのような流れにあるだろうとのことで、大容量タイプのハイブリッドトランスミッションが展示された次第だ。

軽自動車「SAKURA」に搭載された、容積半分以下の第3世代EVパワーユニット

容積半分以下の第3世代EVパワーユニット

 アイシンは2年前に藤岡試験場で、将来的なEVパワートレーンユニットを公開。そこで、これまでのEV用モーターの容積を圧倒的にコンパクトにしたモーターを開発中であることをアナウンスした。

 ちなみにアイシンの第1世代EVパワーユニットは、現在bz4Xやソルテラに搭載されている150kW級のもので、将来的にはそれを小型化したものを2025年以降で予定している。この第3世代は、その次となるもので小型の高回転モーターを採用することで圧倒的なコンパクトさを実現する。

第1世代、第2世代、第3世代の比較
9in1の機能を持つ第3代eアクスル

 その仕様は、9in1の機能を持つEV用パワーユニットで容積マイナス60%、質量マイナス40%、熱損失マイナス50%を実現するという圧倒的なもの。その秘密は小型高回転モーターにあり、2万rpm以上の高回転モーターと遊星歯車の組み合わせによって実現していく。モーターを小さくするだけ高回転として、トルクを出すためのギヤセットとして遊星歯車を用いるわけだ。

 今回は、この第3世代EV用パワーユニットの47kW版を日産の軽EV「SAKURA」に搭載した実験車をアイシンが作製。まずボンネット内を見せていただいたが、通常の市販車はそれなりにユニットが詰まっているのに対して、およそ半分ほどの容積に仕上がっているのに驚く。小型高回転モーター+遊星歯車というパワートレーンそのものの小型化も効いているが、熱マネジメントを効率化していることによる部分も大きい。その小ささは、軽自動車のようなクルマにとってもメリットだし、普通車サイズとなっても低いフロントボンネットを実現できるなど、デザインの自由度を上げていく可能性を持っている。

 この第3世代EVパワートレーンを搭載したSAKURAは、実際に試乗することができ、豊頃試験場を最高120km/hで走ることが可能だった。小型コンパクトなユニットだけあって、前輪まわりの荷重は市販車より軽い。パワーユニットに関しては、パワーモードの設定ができるようになっており、ノーマルモード以外にスポーツモードが用意されていた。このモードの違いは、アクセル開度に対するパワーの出方が異なっており、スポーツモードではよりアクセルに対する反応が優れるようにセッティングされていた。

 最初はノーマルモードでアクセルを踏んでいくが、47kWというパワー感が素直に立ち上がっていく。驚くべきはモーターの回転数で、100km/h以上の領域になると2万5000rpmほどと、高回転領域に突入する。2万rpm以上になると「キーン」という高周波音が出そうだが、そのような音はしっかりとは言わないが、気にならないレベルとはなっていた。ただ、仮設タブレットメーターに表示された巨大な回転計が2万rpmを超えていく様子はとても感動的。オートバイであれば2万rpm近くの世界に突入するものもあるが、クルマでは1万rpmを超えるものも珍しく、ましてや2万5000rpmの領域を使って走ることができることにただただ感動した。

 個人的には試作段階であれば、そんなに音を抑えずに2万5000rpmのモーター音を堪能させてほしかったが、そんなニーズはレアだよなと思いつつ、2万5000rpmの世界を楽しんだ。

 2万5000rpmの第3世代EVパワートレーンだが、しっかり遊星歯車で減速されているので、扱いにくさはとくにない。異常な数値を刻む仮設デジタルメーターを見つつ、スポーツモードとノーマルモードで0km/hの領域から120km/hの領域まで走ることができた。

 コンパクトさも衝撃だったが、「小型高回転とは2万rpm超えの領域だったのか」と、よい意味でのインパクトがあった軽EV「SAKURA」の試乗だった。

【お詫びと訂正】記事初出時、動力分割機構の説明に誤りがありました。お詫びして訂正させていただきます。