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バッテリEVのクルマ作りを圧倒的に進化させる、アイシンの150kW第3世代モーター 2025年のトレンドに対して容積半分

第3世代モーター一体型のイーアクスル。出力は150kW

圧倒的なコンパクトさを目指した第3世代モーター一体型イーアクスル

 電動車両に欠かせないeAxle(イーアクスル)やATなどで知られるアイシンは、同社の電動化への取り組み説明会を開催した。ここでは、現在アイシンが供給するモーター一体型のイーアクスルなどが展示したほか、開発中の第2世代モーター、第3世代モーターを展示。一部、それらのユニットを組み込んだ試作車の試乗会も同社テストコースで行なわれた。

 その中でも、バッテリEVなど電動化車両のクルマ作りを根本から変えそうなものが、第3世代モーター一体型のイーアクスル。150kWのモーターを内蔵するその筐体はコンパクトそのもので、円柱形の外観からは未来の掃除機を思わせる。

撮影可能な左45度から
右45度から、下面などの撮影は禁止となっていた

 どの程度のコンパクトさを実現しようとしているのか開発スタッフに確認したところ、2025年の電動モーター一体型のイーアクスルにおけるトレンドラインに対して、およそ半分を目指しているという。生産開始は2027年をターゲットとしており、量産車への搭載はOEMメーカー次第になるが2028年以降になると思われる。

 圧倒的なコンパクトさを実現するにあたっての工夫は、外観からも分かるように円柱形であること。円柱形に納められた150kWの新世代モーターを、回転を高める形で使っているという。おそらく、コンパクトなモーターを回転数の高い領域で使用、その回転数を外観から分かるようにプラネタリギヤで減速して所定のトルクを得ているものと想像される。この点に関して開発スタッフに聞いてみると、「AT開発の知見を活かした」以外は答えられないとのこと。数々のATを作ってきた知見にはさまざまなものがあると予想できるが、トルクコンバータやプラネタリギヤセットがすぐに思い浮かぶ。円柱形の外観からは、それらしか思い浮かばないのだが……、といったところか。

 この第3世代モーター一体型のイーアクスルをフロントに搭載するC-HRへの試乗機会も用意されていた。まずはモーターを確かめるためにボンネットを開けてみたところ、ボンネット内はスカスカの状態。フロントデフの親玉みたいな形でモーターが搭載されているような感じで、ムダに広い空間が広がっていた。

 実際に試乗してみたところ、150kWのモーターらしくなかなかの加速。開発中のため上限は100km/hと指示されたが、十分な加速力を発生していた。

第3世代モーター一体型のイーアクスルをフロントに搭載するC-HR。動きが激変していた

 何よりも素晴らしかったのは、フロント部が圧倒的に軽いこと。右に左にとイナーシャが小さく、ステアリング操作に対する遅れが小さい。軽すぎるが故の接地不足感もあるが、それだけ大きな変化をクルマに与えられるということだろう。

 試乗で強烈に感じたのは、この第3世代モーター一体型のイーアクスルにはクルマ作りを変える力があるということ。近年のクルマは歩行者保護の観点からボンネット空間を設ける必要があり、ボンネット内の機器類との関係からボンネットが高くなりがち。しかし、このモーターであればボンネット内の機器容積を激減できることから、デザインの自由度が圧倒的に増す。その自由度を、バッテリEVに要求される空気抵抗低減に使うのもよいし、かっこよさに振るのもありだろう。

 解決すべき課題としては、コンパクトで高回転となったことから冷却問題があり、システム全体の効率を考えると、どのように除熱して、どのように熱を活かしていくかがポイントになる。

 いずれにしろ、クルマの新たな可能性を広げる画期的な製品であるのは間違いなく、第3世代モーター一体型のイーアクスル搭載車の登場を楽しみに待ちたい。