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つくば市、土浦市、下妻市、牛久市の4市、新開発の「ドライバーバンク」で運転手不足を解消する「地域連携公共ライドシェア」2025年1月から実施
2024年10月1日 10:16
- 2024年9月30日 発表
つくば市、土浦市、下妻市、牛久市の4市は9月30日、共通の課題となっている地域交通のドライバー不足解消に向け、政府の「デジタル田園都市国家構想交付金」を活用して地域交通の維持・拡大を目指す「地域連携公共ライドシェア」を2025年1月から共同実施すると発表し、4市合同記者発表会を開催した。
地域連携公共ライドシェアでは、Community Mobilityが運営するAIオンデマンド配車アプリ「mobi」を活用。同じくCommunity Mobilityが新たに開発したドライバーの募集、育成、管理などをワンストップで行なうドライバーバンクプラットフォーム「Community Crew」を組み合わせることにより、通常は旅客運送はできない一般的な第一種運転免許を持つドライバーに地域公共交通の担い手として働いてもらうことを実現。ドライバー不足をはじめとする地域公共交通が抱える課題の解決を目標としている。
2025年1月のサービス開始にさきがけ、Community Crewに登録してマイカーで乗客の配送を行なうドライバーの募集を10月1日からスタート。4市に設定された「つくば・土浦エリア」(桜ニュータウン及び天川団地を含む周辺地区)、「筑波山エリア」、「下妻エリア」(下妻市南部エリア)、「牛久エリア」(牛久市内)が地域連携公共ライドシェアの活動範囲となり、各エリアでオンデマンド配送に対応できることに加え、「応募時点で21歳以上~70歳未満であること」「普通自動車運転免許取得後3年以上経過していること」「過去2年以内に免許停止履歴がないこと」といった募集条件として設定されている。
また、配送に利用できる車両は「定員4人以上10人以下の車両であること」「後部座席に容易に乗車できるドアが設置されていること」「ドライブレコーダー(前・後・車内)を搭載していること」(搭載していない場合、無償で貸し出し予定[条件あり])などが条件となる。
ユーザーの利用料金は、つくば・土浦エリアでは事前予約(マルチライド)の大人が600円/人、子供(小学生)が300円、直前予約(シングルライド)の大人が800円/人、子供(小学生)が400円、筑波山エリアでは大人が1000円/人、子供(小学生)が500円、下妻エリアでは事前予約の大人が700円/人、子供(小学生)が350円、直前予約の大人が1000円/人、子供(小学生)が500円、牛久エリアは大人が700円/人、高齢者(65歳以上)・障害者・子供(小学生)が600円、乗合(2人以上乗車)が500円/人。全エリア共通で未就学児は無料となる。
ドライバーの報酬は各エリア共通で、利用者1人あたりの歩合給が1200円となり、ドライバー登録して1回以上の配送を行なうと「登録インセンティブ」として1万円を支給。さらに「運行インセンティブ」も用意され、1か月で3回以上配送すると3000円、5回以上配送すると5000円、10回以上配送すると1万円が報酬に上乗せされる。なお、走行時に使った燃料費などは報酬に含まれる。
Community Crewの登録は専用の募集ページで受付が行なわれ、全体で80人程度の採用を見込んでいる。登録後にはオンラインでの面談と必要書類の提出を経て、Community Mobilityとの業務委託契約を締結。公共ライドシェアで必要となる大臣認定講習に加え、Community Mobilityの親会社であるウィラー(WILLER)が高速バス事業で培ってきたノウハウを活用する独自のマナー講習、安全運転講習などの研修を受けてから実際の配送業務に就くことになる。
このほか、地域連携公共ライドシェアでは一種免許ドライバーがCommunity Crewとして活動する経験を経て、地域交通を担う新たなプロドライバーとして二種免許ドライバーにステップアップすることも目的の1つとして掲げており、希望者に対して二種免許の取得支援を行なうことも予定しているという。
「4市と連携してサステナブルな地域公共交通の実現にチャレンジしたい」とCommunity Mobility 村瀨社長
つくば市役所で行なわれた発表会では、つくば市の五十嵐立青市長、土浦市の安藤真理子市長、下妻市の菊池博市長、牛久市の沼田和利市長の4人に加え、サービスのキーとなるAIオンデマンド配車アプリやドライバーバンクプラットフォームを運営するCommunity Mobility 代表取締役社長 村瀨茂高氏も出席して、事業内容やサービス概要などについて解説した。
最初にマイクを握ったつくば市の五十嵐市長は全国の市区町村で共通の課題となっている地域公共交通の問題がつくば市でも例外ではなく、コミュニティバスとして運行している「つくバス」は運転士不足や“2024年問題”と受けて大幅減便を強いられ、乗り合いタクシーの「つくタク」も17時以降の時間帯は運行時間外になって利用できなくなり、つくば市内に「交通空白地帯」が発生して市民生活に悪影響を与えていると現状を紹介。誰もが自由に、ストレスなく移動できる地域公共交通の実現を目指して4市共同で取り組みを行なうことになったと経緯を説明した。
つくば市で地域連携公共ライドシェアの対象となる筑波山エリアについては、筑波山は年間200万人以上の観光客が足を運ぶ県内有数の観光名所となっているが、下山に利用できる路線バスは17時台で最終便となってしまい、これを知らなかった観光客が山中に取り残されて大変な思いをすることもあるという。
この問題を解消するため、筑波山ロープウェイ山麓駅から筑波山口に続く県道42号に沿った東西の一帯をエリアに設定。17時以降の移動手段を提供することで下山の移動から不安を取り除き、ゆっくりと筑波山を楽しんでもらえるような環境作りによって地域活性化を図っていくと述べた。
土浦市の安藤市長は、土浦市でもドライバー不足によって路線バスの廃線や減便が続いており、地域住民の移動手段確保が課題となっていると説明。
地域連携公共ライドシェアの対象となるつくば・土浦エリアは、隣接するつくば市にある桜ニュータウンと土浦市の天川団地で生活圏が市域を跨いで一体となっていることから、自宅のあるエリアとTXの駅や基幹病院、大規模商業施設などを公共ライドシェアで接続する特殊なエリア設定を採用している。
将来的にはドライバー不足と交通空白を公共ライドシェアによって埋める持続可能な新しい公共交通網になって欲しいと期待を語った。
下妻市の菊池市長は、下妻市を横断する国道125号の北側には関東鉄道が運営する路線バスや下妻市のコミュニティバス「シモンちゃんバス」、筑西市と共同運行している「筑西・下妻広域連携バス」のほか、タクシー会社2社も所在して一定の需要を満たしていることをアピール。
一方で国道125号の南側はバス路線から離れ、南北をつなぐ関東鉄道 常総線の駅からの移動がタクシーかマイカーに限られ、病院利用が集中する朝夕の時間帯にはタクシー配車が間に合わなくなって移動に制約ができてしまうという。
また、10月からはつくば市のコミュニティバスであるつくバスが下妻市にも乗り入れる予定となっており、市内の工業団地に誘致した企業の移動需要の高まりによって交通結節点へのアクセス手段が課題となってきたことから、下妻エリアでは通勤や通学、通院、買い物などで需要の高まる朝夕の時間帯にはエリア内を横断する定時運行・定路線のバス型公共ライドシェアを用意。
需要が安定しない日中の移動について地域連携公共ライドシェアのAIオンデマンド配車を併用するスタイルを採用して、地域住民の持続可能な移動手段を確保するほか、Community Crewとして地域公共交通に参加した一種免許取得者が二種免許を取得して、地域公共交通が活性化していくことを期待しているとコメントした。
牛久市の沼田市長は、牛久市は高齢化が進み、ベッドタウンとなっていることで日中は市外に出ている人も多いという地域特性に合わせ、民間会社の路線バスやタクシーのほか、日中の市民生活に主眼を置いた公共交通事業として牛久市の運営するコミュニティバス「かっぱ号」やオンデマンド乗合タクシー「うしタク」を実施してきた。しかし、ここでもドライバー不足からかっぱ号を減便することになり、うしタクの台数を増やす計画も実現には至らなかったと説明。
地域連携公共ライドシェアを導入することで、現在不足している乗合タクシーの需要に対応し、市民ニーズを的確に把握して、より地域に合った地域公共交通を柔軟に進めて持続的な市民の移動手段確保につなげていきたいとの考えを示した。
また、Community Mobility 代表取締役社長 村瀨茂高氏は地域連携公共ライドシェアのサービス概要について解説したほか、ドライバーバンクプラットフォームにCommunity Crewというブランド名を与えた理由について、クルーという言葉には「乗組員」というほかに「仲間」という意味もあり、同じ地域に住む人が仲間となって、その地域を支えていく、地域を活性化させていくという願いを込めていると説明。AIオンデマンド配車アプリのmobiとCommunity Crewを両輪として、4市と連携してサステナブルな地域公共交通の実現にチャレンジしていきたいと意気込みを語った。