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ホンダ、V型3気筒エンジンの量産化に向け開発継続 2030年世界シェア5割に向けた二輪事業の取り組み発表

2025年1月28日 発表

「EICMA 2024」で発表された、二輪車として世界初の「電動過給機」を搭載したV型3気筒エンジン

 本田技研工業は1月28日、同社二輪事業の取り組みに関する説明会を開催。南西アジア、アセアン、中南米に向けたコミューターモデルの拡販施策、欧州に向けた大型FUNモデルのラインアップ・商品力強化、電動二輪車普及に向けた取り組みなどを通じて、2030年に世界シェア5割を目指す目標に向けた取り組みを説明した。

 説明会には、同社執行役 二輪・パワープロダクツ事業本部長 兼 二輪事業統括部長 加藤稔氏、同社 執行職 電動事業開発本部 二輪・パワープロダクツ電動事業統括部長 三原大樹氏が出席して説明を行なった。

 ホンダの2024年度の販売台数は、世界シェア約4割となる2020万台の見通しで、今後、二輪車の全体市場は現状の5000万台規模から、2030年には電動車を含め6000万台規模に成長する見通しで、ホンダは長期的に電動二輪車も含め世界シェア5割を目指して取り組んでいくとしている。

 製品面でのトピックは、大型FUNモデルの領域では「EICMA 2024」で発表された二輪車として世界初の「電動過給機」を搭載したV型3気筒エンジンで、今後FUNモデルへの適用を予定しており、量産化に向け引き続き開発を行なっていくことを明らかにした。

 加藤氏は「昨年11月にイタリア ミラノで開催されました『EICMA 2024』で発表いたしました。このエンジンは、内燃機関領域での新たなチャレンジと位置付け、モーターサイクルを操る楽しさ、所有する喜びをより一層体感いただくことを目指しております。この新しいエンジンは、走りだけではなく、燃費、そして排ガスにおける高い環境性能も実現しております。今後、量産化に向け引き続き開発を進めてまいりますのでご期待ください」と話した。

 また、質疑応答の中でテスト車両に試乗したことを明かした加藤氏は「これ、あんまり具体的に言うと怒られちゃうんですけど、先々週熊本で乗りました、テスト車に。いい出来です、ご期待ください。コンパクトなエンジンとコンパクトなボディで、軽量でありながら全領域で電子制御による過給ということで、とてもパワフルな仕上がりになってます。まだテスト車なんですけれども、これからの目標に向かって引き続き本気で開発してまいりますので期待してください」との感想を話した。

本田技研工業株式会社 執行役 二輪・パワープロダクツ事業本部長 兼 二輪事業統括部長 加藤稔氏

ホンダ二輪事業の足下の事業環境

二輪事業の事業環境

 説明会では、ホンダの二輪事業の事業環境については、2024年度の販売台数は世界シェア約4割となる2020万台の見通しで、このうちインド、インドネシア、タイ、ベトナムなどアジアでの販売台数が全体の85%(1717万台)、日本、欧州、米国は6%(120万台)をそれぞれ占めることを紹介。また、2024年暦年の販売台数は、37の国と地域で過去最高を記録した。

 グローバルでカテゴリーごとに統一されたプラットフォームや、最適な供給体制によって世界最大規模の生産量が支えられており、ホンダらしい魅力ある多様な商品の提供と高効率な事業体質を構築するという。

二輪事業の今後の展開

今後の見通し

 今後の二輪事業の展開については、グローバルでの二輪車の需要は、最大市場であるインドを含めた南西アジア、インドネシア、フィリピン、ブラジルを始めとする中南米などのグローバルサウスと呼ばれる地域を中心に、人口増や所得向上を背景にさらなる伸長を見込む。

 それに伴い二輪車の全体市場は現状の5000万台規模から、2030年には電動車を含め6000万台規模に成長する見通しとした。この市場成長、需要拡大に確実に対応するため、より競争力の高い商品の継続的な投入に加え、電動化を含めたカーボンニュートラルへの対応、二輪事業のさらなる盤石化を進め、長期的には電動二輪車も含め世界シェア5割を目指して取り組みを加速させるとしている。

コミューターモデルの拡販施策 ~南西アジア、アセアン、中南米~

南西アジア、アセアン、中南米に向けた取り組み

 二輪車において最大市場となるインドでは、通勤・街乗りに使用される最量販スクーター「ACTIVA(アクティバ)」をはじめ、若者向けスクーター「Dio(ディオ)」や、地方を中心に幅広い用途で使われるライトモーターサイクル「Shine(シャイン)」、また高付加価値ライトモーターサイクル「SP(エスピー)」など、顧客のさまざまなニーズに合わせて魅力ある商品ラインアップを拡充。また、販売ネットワーク・サービスの充実などの販売施策も強化し、インドでのシェアNo.1に手が届くところまで着実に販売台数を伸ばしているという。

 また、さらなる拡販に向けては、生産工場の自動化や、現地サプライヤーの積極的な開拓・活用など、インド事業強化の取り組みを進めるほか、インドで培った商品力、競争力の高い商品は、インド国内だけでなく、顧客のニーズが近い中南米へ輸出するなど、グローバルで効率的な商品展開を行なうことでさらなる事業拡大を図っていく。

 また、アセアン各国や、パキスタン、バングラデシュ、ブラジルにおいても、二輪車ユーザーとなる労働人口の増加によりさらなる需要の拡大を見込む。この機を確実に捉え、グローバルでの商品力、販売・サービス、調達・生産力の強さを最大活用し、さらなる事業盤石化を進めていくとしている。

大型FUNモデルのラインアップ・商品力強化 ~欧州~

大型・欧州事業の状況

 大型FUNモデルの需要が高い欧州では、「CB(シービー)」「CBR(シービーアール)」「Africa Twin(アフリカツイン)」「Rebel(レブル)」シリーズなど、各商品の魅力向上に継続的に取り組むほか、「HORNET(ホーネット)」「TRANSALP(トランザルプ)」といった、欧州において歴史のある商品ブランドを復活。さらに、ライディング体験の質の向上につながる技術「デュアル・クラッチ・トランスミッション(DCT)」「Honda E-Clutch(ホンダ イークラッチ)」の提供など、「操る楽しさ」を求めるライダーの嗜好に応える商品ラインアップや技術を拡充。その結果、欧州主要5か国(イタリア、ドイツ、フランス、スペイン、英国)において、2024年暦年でシェアNo.1を獲得した。

 また、これらの大型モデルは多品種・少量生産となるが、プラットフォームの共通化を進め、開発・調達、生産効率の向上を図っていくとしている。

 さらに、顧客の期待を超える魅力的な商品の提供に向けて、二輪車として世界で初めて「電動過給機」を搭載したV型3気筒エンジンを新たに開発。今後FUNモデルへの適用を予定しており、量産化に向け引き続き開発を行なっていく。

 これらの取り組みにより、2018年度では大半がアジアに偏っていた二輪事業の収益は、2023年度には欧州を含めた先進国、南米など、グローバルでバランスよく収益を獲得できるようになり、収益額の増大はもちろん、事業体質の向上にも大きく貢献させる。

電動二輪車普及に向けた取り組みで、商品ラインアップの拡充など

 ホンダでは、2030年のグローバルでの電動二輪車の年間販売台数目標を400万台、2030年までにグローバルで30機種の電動モデルを投入することを目指し、戦略的に電動二輪車の市場投入を進めている。

 この達成に向けて、2024年を電動二輪車のグローバル展開元年と位置付け、電動二輪市場への参入を本格化。10月には、インドネシアで交換式バッテリ「Honda Mobile Power Pack e:(モバイルパワーパック イー)」を搭載した「CUV e:(シーユーヴィー イー)」、固定式バッテリを搭載した「ICON e:(アイコン イー)」の2つの電動グローバルモデルを発表。CUV e:は、欧州・日本を含む20か国での販売予定。

 また、11月にはインドでもHonda Mobile Power Pack e:を搭載した「ACTIVA e:(アクティバ イー)」、固定式バッテリの「QC1(キューシーワン)」をインド専用モデルとして発表。目標となる30機種中、13機種を投入し、計画を着実に進めていく。

 また、EICMA 2024 では、ホンダ初のスポーツモデルの電動二輪車「EV Fun Concept(イーヴィー ファン コンセプト)」、ホンダが考える近未来の都市型モビリティを具現化した「EV Urban Concept(イーヴィー アーバン コンセプト)」を公開。多様化する顧客のニーズに応える多彩なバリエーション展開により、電動二輪車においてもリーディングカンパニーを目指す。

 そのほか、「充電・利用環境の整備」「電動二輪車 保有コストの低減」「バッテリーの利活用・リソースサーキュレーション」に取り組んでいくという。

電動二輪車普及に向けた取り組みに付いて説明する、本田技研工業株式会社 執行職 電動事業開発本部 二輪・パワープロダクツ電動事業統括部長 三原大樹氏