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ホンダにとって今も昔もF1は「走る実験室」 HRC渡辺社長がF1への挑戦意義を語ったF1開幕前説明会
2025年3月4日 20:52
- 2025年3月4日 発表
本田技研工業、HRC(ホンダ・レーシング)、「鈴鹿サーキット」を運営するホンダモビリティランドは3月4日、 2025年シーズンのF1(FIAフォーミュラ・ワン世界選手権)開幕にあたり、F1開幕前説明会を開催した。
説明会には、HRC代表取締役社長の渡辺康治氏、 HRC F1パワーユニット開発総責任者の角田哲史氏、ホンダモビリティランド代表取締役社長の斎藤毅氏が出席し、レッドブルとのF1活動についての振り返りや、2025年シーズンへの意気込み、その先のシーズンへの展望などが話された。
ホンダとレッドブルとのパートナーシップは、F1の歴史に残る大いなる成功
2025年は、2018年に始まったF1でのレッドブルグループとのコラボレーションが最終年となる。HRCの渡辺社長からは、ラストシーズンとなる2025年もチャンピオン獲得を目指し、最後まで全力で戦っていくとの意気込みとともに、あらためてホンダがF1に挑戦する意義について語られた。
渡辺社長は「2018年にスクーデリア・トロロッソと始まったレッドブルグループとのコラボレーションは8年目を迎え、今シーズンが最終年、締めくくりの年となります。思い起こせば、2019年のオーストリアGPでのホンダの第4期の初勝利、ブラジルGPでの1-2フィニッシュ、2020年モンツァでのスクーデリア・アルファタウリの優勝、そして2023年には22戦中21勝というF1史上最高の勝率。そのいずれも、レッドブルとともに成し遂げてきました。2021年からの4年連続のドライバーズチャンピオンを獲得しているマックス・フェルスタッペン選手。彼のチャンピオン獲得時には、いつもホンダの技術の入ったパワーユニットがその原動力として貢献をしてきました」と振り返った。
渡辺社長は「このホンダとレッドブルとのパートナーシップは、F1の歴史に残る大いなる成功であったという自負をしています。最後のシーズンとなる2025年も、チャンピオン獲得、有終の美を飾るべく、最後まで2チームとともに全力で戦っていきます」との意気込みが語られた。
そして、2026年以降も新たにAston Martin Formula One Teamとタッグを組んでF1活動を継続していく。
ホンダがF1に挑戦する意義について、渡辺社長は「F1はハードだけでなく、ソフトも含めた世界最先端のデジタルの戦いでもあり、この極限の環境で世界一になりたいと、社内外から集まったホンダのエンジニアたちが日々戦っています。F1は2週間ごと、ときには毎週レースがあります。F1の開発では、限られた時間の中で目標を設定して1馬力を積み上げ、現場では1000分の1秒を争う、圧倒的な速さと精度が求められます。この日常を超えた世界に身を置くことでしか得られない体験は、ホンダの技術者を強くしていきます」と話した。
渡辺社長は「F1は最先端であるが故に、同じ技術そのものが市販の製品にそのまま適用されるものではありません。しかし、F1を経験したエンジニアが量産のハイブリッド技術e:HEVの開発を担い、次世代モビリティであるeVTOLの開発に携わるなど、ホンダ全体で世界にまだ見ないものを生み出す原動力になっていると思います。また、現時点で不可能と言われるような将来に向けた技術開発にもきっと役立つというふうに思います。こうやって今も昔もその形を変えながら、F1は走る実験室であり続けると思います。これがホンダがF1に挑戦する意義です」と説明した。
F1の2025年シーズンは、世界中で24戦が行なわれる予定であり、その3分の1を欧州が占める。オペレーションの体制としては、1シーズンを戦うには複雑なオペレーションが要求されるため、2023年に米国のHPDをHRC USに改編したことに続き、2024年には英国ミルトンキーンズにHRC UKを設立し、活動を開始。HRC UKは、新たに Aston Martin Formula One Teamとタッグを組む2026年以降も、Honda F1の活動拠点として重要な位置付けになるという。
そして、2026年シーズンは車体もPUも新しいレギュレーションとなる。現在、エンジンとモーターの最高出力の比率はおよそ8対2となるが、2026年にはほぼ5対5となり、単位時間に使用できる燃料の量も減少する。また、燃料は100%カーボンニュートラル燃料が義務付けられる。さらに、こうした技術開発を一定のコスト制限の下で行なう規則が適用される。
こうした3点の新レギュレーションは、F1のサステナブルな未来への志向に基づくものであり、ホンダのカーボンニュートラルの方向性に合致するという。HRC F1パワーユニット開発総責任者の角田氏からは、新レギュレーションは高いハードルではあるが、2026年シーズンに向けて、引き続き全力で開発に取り組んでいくとの意気込みが示された。
また、ホンダモビリティランド 斎藤社長からは、「鈴鹿サーキット」で開催するF1日本グランプリの継続開催に向けて、BtoC・BtoBでタッチポイントを拡大していく考えが示された。
2023年のF1の総収入は32億USドルに達し、F1は世界有数のスポーツビジネスへ成長していることに注目。F1日本グランプリ期間中の4月4日に鈴鹿サーキットにおいて、日本国内企業向けに初めて「F1日本グランプリビジネスカンファレンス」を開催。ビジネス視点での魅力や活用事例を紹介することで、F1日本グランプリをビジネスフィールドとして捉えてもらう働きかけを行なっていくことが明かされた。




