日産、スポーツランド菅生で「日産GT-R」2012年モデル発表&試乗会開催
0-100km/h加速はついに3秒切り

スポーツランド菅生で「日産GT-R」の2012年モデル発表会&試乗会を開催

2011年11月7日開催



「Pure edition(ピュアエディション)」にのみ設定されるカスタマイズオプション「For TRACK PACK」装着車

 日産自動車は、「NISSAN GT-R」の2012年モデルを11月24日に発売する。それに先立ち、11月7日にスポーツランド菅生において報道陣向けの2012年モデルの発表会・試乗会を開催した。その模様をお伝えする。

 2012年モデルでは、現行GT-Rが発売されてから初となるエンジン内部のチューニングが行われた。これは中~高回転域のトルク向上と、燃費・CO2排出量の低下の両立を狙ったもので、数値的には2011年モデルから最高出力が14kW(20PS)、最大トルクが20Nm(2.0kgm)アップの404kW(550PS)/6400rpm、632Nm(64.5kgm)/3200-5800rpmとなった。

 具体的なチューニングポイントとしては、排気量アップやブーストアップではなく、混合比を薄く(リーン)しつつ、カムシャフトタイミングの変更、インテークの吸入効率、エキゾーストの排気効率を改善したことにより得られたもの。インテークマニホールドとシリンダーヘッドの合わせの高精度化、インタークーラーのインテークダクトをアルミから樹脂に変更するとともに断面積の拡大、床下キャタライザーをコンパクト化によって、通気抵抗を低減した。さらにエキゾースト側では金属ナトリウム封入エキゾーストバルブを採用し、エキゾーストバルブの冷却性を高めてノッキングを抑制するとともに、点火時期の制御を改良した。

2012年モデルのエンジンスペックは最高出力404kW(550PS)/6400rpm、最大トルク632Nm(64.5kgm)/3200-5800rpmまで引き上げられた

 これによりパワー&トルクアップとともに、JC08モード燃費を2011年モデルの8.6km/Lから8.7km/Lに向上し、あわせてCO2排出量を279g/kmから275g/kmに低減させた。

 トランスミッションはシフトフォークのアーム設計とフライホイールハウジングのベアリング固定をより強固なものとし、シフトフィールと静粛性を高めた。さらにデフオイルを従来のカストロール製からMOTUL製にすることで、オイル低温時のLSDロックの低減と、スポーツ走行時のLSDロック力の向上を図ったと言う。

 一方、エンジン出力の向上にあわせ、エンジンルーム後部、ダッシュパネル周辺の強化をすることで、ハンドル操作に対するハンドリングレスポンスと限界域での踏ん張り感を高めた。

 さらに今回の改良では、右ハンドル車のサスペンションのセッティングを左右非対称とした。これは右ハンドル車ではドライバーの重量分、前輪を駆動するプロペラシャフトが中心より右側に位置することに起因するもので、具体的にはフロントスプリングの左側のバネレートを高く設定し、リアではサスペンションアームを左側は上半角、右側には下半角をもたせて装着することで、停車時にアンバランスとなる輪荷重を走行中に均等化させ、コーナリングの安定感や乗り心地に加え、ステアリング操作時の反力感や滑らかさを高めている。

 なお、これまで世界各国で販売されるGT-Rは統一馬力だったが、今回高速域での混合比をリーン化したことで、ガソリンのオクタン価によって馬力差が生じることとなる。例えば日本および欧州仕様は100オクタンのガソリンがスタンダードなため今回発表された出力・トルクとなるが、北米仕様ではガソリンにアルコールが混ざるため若干の出力&トルクダウンとなるほか、中国など96オクタンがスタンダードな国ではさらに出力が下がることになる。

For TRACK PACKを装着したピュアエディションのエクステリア&インテリア。通常モデルでは4名乗車が基本だが、For TRACK PACK装着車は2名乗車仕様となる
Black edition(ブラックエディション)のインテリア

 2012年モデルの発表会場となったスポーツランド菅生では、GT-R開発責任者であるチーフビークルエンジニア&チーフプロダクトスペシャリスト&プログラムダイレクター 水野和敏氏が車両解説を行った。水野氏は今回のGT-Rについて、「(GT-Rがデビューしてから)この4年間、性能開発をやり続けてきたが、我々開発陣が磨かれない限り、クルマも磨かれるわけがない。そうやって磨かれてきたクルマは人に感動を与える」と、開発陣の成長がGT-Rの成熟につながり、その成熟こそがユーザーに感動を与えるとした。

チーフビークルエンジニア&チーフプロダクトスペシャリスト&プログラムダイレクター 水野和敏氏

 2011年モデルから2012年モデルへの進化点は上記のとおりだが、水野氏はその進化点に加え、2012年モデルのピュアエディションにのみ設定されるカスタマイズオプション「For TRACK PACK」について紹介した。

 通常モデルとFor TRACK PACKでの大きな相異点は、軽量化を目的として2シーター化されることだが、そのほかにもGT-Rの開発ドライバーを務める鈴木利男氏の主宰するノルドリンクと共同開発を行ったスポーツサスペンション、すでに生産終了したSpecV向けに開発されたブレーキ冷却用エアガイド、レイズ製アルミ鍛造ホイール、専用クロスを採用したハイグリップタイプの専用バケットシートなどをパッケージ化している。

 水野氏は、「これまでシートはバケットという“形状”で身体を支えてきたが、新たに採用したシート素材はレーシングスーツにへばりつく。乗った人はレーシングスーツと身体の間がすべると言う」と述べ、従来シートよりも圧倒的にシート自体のグリップ力が高まったことを紹介するとともに、For TRACK PACKで使われるシートクロスが、かつて水野氏がF3000に参戦していた際に開発したものであることを紹介。

 また、アルミホイールはSpecVの剛性を高めたものであること、スポーツサスペンションはSpecVのスプリングを使用した可変ダンパーを採用したこと、SpecVで使用した内装を採用していることに触れ、For TRACK PACKがSpecVのDNAを継承したパッケージであることを強調した。

 こうしたオプションパッケージの開発は今後も継続して行っていくと言い、「お客様からもどのようなオプションが欲しいか、どんどん要望を上げて欲しい」と述べるとともに、2013年モデル以降で第2弾、第3弾のオプションパッケージの製品化を示唆した。

2012年モデルでの主な変更点と変更目的2012年モデルではエンジン出力・トルクともに向上した
右ハンドル車では左右非対称サスペンションが採用された2011年モデルからの主な性能変更点
11月3日に仙台ハイランドレースウェイで2012年モデルの0-100km/h加速テストを行った今後、メーカー・販社が一体となった商談会を行うと発表。2012年1月18日にはプロゴルファーの中島常幸氏をゲストに迎えるゴルフイベントを開催。会場となる武蔵丘ゴルフコースには車両展示や試乗車が用意されるほか、ゴルフレッスンも行われる

モータージャーナリスト・岡本幸一郎氏による2012年モデルのインプレッションは近々掲載予定

 当日は2012年モデルでの0-100km/h加速のタイム計測が行われる予定だったが、スポーツランド菅生のコースを水準器で測ったところ、どの個所も傾斜が0.5度以上あったため中止となったが、先週仙台ハイランドレースウェイで計測したところ、ついに3秒切りの2.84秒だったと言う。計測時はVDC(横滑り防止機構)をRモード、サスペンションをノーマルモードにセットアップしている。外気温度は19.5度。

 ちなみにそのほかの数値については、「0-400mタイムは2011年モデルの11.2秒から10秒台に入ると思う」「ニュルブルクリンクのタイム計測は来年行う。7分20秒は簡単に切れると思う」との予測が水野氏から発表されており、しばらくGT-Rから目を離せそうにない。

 なお、当日は2012年モデルの試乗会が行われており、2010年/2011年モデルなどとの比較をサーキット内外でできた。その模様については、弊誌でおなじみのモータージャーナリスト・岡本幸一郎氏がリポートする。

(編集部:小林 隆)
2011年 11月 8日