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NEXCO中日本、7月20日15時に全線開通する舞鶴若狭道の開通直前現場を公開

琵琶湖を挟むダブルネットワークで、宝塚渋滞の減少や災害避難路確保を見込む

7月20日の開通を間近にひかえた舞鶴若狭道
2014年7月8日実施

 NEXCO中日本(中日本高速道路)は7月8日、20日15時に開通をひかえた舞鶴若狭自動車道(以下、舞若道)小浜IC(インターチェンジ)~敦賀JCT(ジャンクション)間約39kmの全線を報道陣向けに公開した。この区間の開通により中国自動車道 吉川JCT~北陸自動車道 敦賀JCT間を結ぶ舞若道 約162kmが全線開通となる。

開通まで2週間を切った敦賀JCT。舞若道方面から北陸道方面へ向かっての風景
舞若道の全線開通によって、名神高速 宝塚エリアの渋滞緩和や災害時の避難路確保などの効果が見込まれる

 これにより近畿エリアと日本海側に位置する敦賀を結ぶルートは琵琶湖の北側を通る既存の名神高速~北陸自動車道と今回開通する日本海側を通る舞若道の2つの選択が可能となり地域経済発展の効果はもとより交通量の多い名神高速 宝塚エリアの渋滞緩和や災害時の避難路確保など様々な面でメリットが期待できる。

 今回は開通を間近にひかえた舞若道を敦賀JCT(ジャンクション)から小浜IC(インターチェンジ)までの全線をバスで移動しながら見学した。この舞若道に関しては、5月1日に建設途中の事前公開が行われており、ロードヒーティングの敷設状況などを取材している。そちらの取材記事とあわせて読んでいただければ幸いだ。

●NEXCO中日本、7月に全線開通する舞鶴若狭道 小浜IC~敦賀JCT間の事前見学会を実施
http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/20140502_646891.html

舞若道と北陸道との接点、敦賀JCT

小浜ICから北陸道方面へ向かう下り線から敦賀JCTを見たところ。左が北陸道福井方面、右が北陸道米原方面
右に見える接続路が北陸道から舞若道 上り線へ流入するレーン
敦賀JCTの盛土部には松が植樹される

 今回は敦賀JCTから小浜ICへ向かう上り線を見学した。この敦賀JCTの建設では、接続する北陸道を通行止めにすることなく舞若道は開通を迎える。敦賀JCTの敷地内には、福井県の県の木であり敦賀市の市の木でもある松が植えられていた。

39kmの区間に14ものトンネルが連なる舞若道

 今回の開通区間だけで14ものトンネルがある舞若道だが、そのすべてに1/14~14/14の番号が付けられている。番号は上り側となる小浜ICから敦賀JCTの順に付けられているので今回は14/14~1/14の順に途中の橋やトンネル、PA(パーキングエリア)を挟みながら紹介していく。

北陸道からの合流部。トンネルが連続することを伝える標識が見える
トンネル番号14/14、中郷トンネル(1040m)。左手前に舞若道の標識がある

重要インフラをまたぐ敦賀衣掛大橋

 最初の中郷トンネルを抜けるとまもなく敦賀衣掛大橋に差し掛かる。ここにはJR北陸本線の上下線、同ループ線、国道8号、国道8号バイパス、北陸電力の高圧送電線という重要インフラがあり、橋はそれらをまたぐ形で架けられている。しかも地下水位が高いので、インフラへの影響を避けるニューマチックケイソンという本四連絡橋など海への設置時に使う特殊な工法で造られた橋だ。積雪地かつ4%もの勾配があるためロードヒーティングも施されている。

敦賀衣掛大橋
最大地上高は70m以上あり、風も強い。中央部に設けられた金属製の壁の効果は高く、横風を防いでくれる
眼下にはJR北陸本線や笙の川が見えた

トンネルのさまざまな安全対策

 トンネル番号13/14、12/14、11/14を通過し10/14 矢筈山トンネルで舞若道におけるトンネルの安全対策を見学した。

トンネル番号13/14 岩籠トンネル(1750m)
トンネル番号12/14 野坂岳トンネル (2270m)
野坂岳トンネルを越えると美浜町

 美浜町の標識には町のシンボルキャラクターにしてゆるキャラアワード2009でグランプリを獲得した「へしこちゃん」が描かれている。高速道路の行政境標識にゆるきゃらが描かれているのは非常に珍しいとのこと。なお下の茶色の標識にある「若狭さとなみハイウェイ」は舞若道のうち福井県内区間の愛称。

美浜町に入るとすぐに現れるのが若狭美浜IC
トンネル番号11/14 御獄山トンネル(1340m)
トンネル番号10/14 矢筈山トンネル(2420m)
トンネルに設置された内径1250mmのジェットファンは1機につき中央部4本、前後に2本の計6本の金具で支えられている。万が一中央部4本が外れても前後の2本だけで支えられる構造となっている
ジェットファンはトンネル内壁の中心線から微妙にずれた位置にあるのでアンカーボルトが接する壁面の勾配の違いにより4本で止められている場所と6本で止められている場所がある
トンネル内部壁面に設置された火災検知器は炎の光の波長を検知するタイプなので入り口や出口付近の外光を受ける場所では片方が覆われている。またここで異常が検知されるとすぐさま金沢にある道路管制センターに伝えられる
トンネル内に設置された消火設備
左側には消火器
右側には消火栓が収納されている
水の出方は任意に調整できる
操作はレバー1本と簡単

 トンネル内に設置された消火栓は消防隊専用ではなく誰でも使用が可能だ。トンネル火災において初期消火は大変有効だが、まずは何より自分自身の安全の確保が最優先。その上で余裕があれば臆せず使用してほしいとのことだ。

ジェットファン以外は安全確保のため、すべての看板が壁面に設置されている
緊急時の車線確保のため中央線上のポールも取り外すことができる
若狭町に入るとすぐに若狭三方ICが見えてくる

観光客に配慮した三方五湖PA

トンネル番号9/14 気山トンネル(280m)を過ぎるとすぐに三方五湖PA(パーキングエリア)だ

 三方五湖PAは上下線共用のパーキングエリアで、一般道からも施設が利用できる「ぷらっとパーク」だ。夏の海水浴客が多いことを想定し、女性用といれにはパウダーコーナーを設置し、子供用トイレや着替えの出来るスペースも設けてある。

案内看板
上り線駐車場
下り線駐車場
三方湖を眺めながら食事や休憩ができるエリアはファミリーマートが運営
三方湖を見渡せる展望台にはベンチも設置してある
女性用トイレ
中央に洗面台を設置した特長的な女性トイレ
パウダーコーナーも設置している
車椅子も展開可能な広々とした多目的トイレ
子供用トイレの脇には着替えもできるスペースもある
男性用トイレ
大型交通情報ディスプレイも備えており撮影時にも稼動していた。ただ、現在地こそ示されているもののまだ舞若道は地図上にない。開通と同時に更新されるとのことだ

積雪地ならではの装備を有するインターチェンジ

トンネル番号8/14 鳥浜トンネル(150m)は今回の開通区間唯一の双設トンネル
トンネル番号7/14 佐古トンネル(920m)
トンネル番号6/14 田上トンネル(1270m)
トンネル番号5/14 鈴ヶ獄トンネル(720m)の次は若狭上中ICだ
配置図
氷雪詰所棟(左)と冬季の融雪等に使う薬剤の倉庫(右)
特大・大型車庫

 除雪車や散水車などの車庫を持ち冬季の雪氷対策の要となる若狭上中ICの基地は小浜ICから若狭三方ICまでの約20kmを担当。若狭三方ICから敦賀JCTまでの約19kmは、同様の設備を持つ若狭三方Iの基地が受け持つ。

説明をしていただいたNEXCO中日本 名古屋支社 敦賀工事事務所 宇野所長が触れているのがクルマの高さや通行の有無を検知するセンサーを雪から守るためのパネルヒーター。両脇には下を向いた遠赤外線ヒーターが設置されていて雪による誤検知を防いでいる
現金通行車に対しても無人化がなされている
天井にETCの無線システム
左側の白い道路が高速道路、右のグレーの道路が県道

 ETCでの通行におけるトラブルのほとんどがカードの差し忘れによるものだという。何らかの理由でバーが開かなかったときには路面に記されたグリーンの部分に車を停めてインターホンで係員と通話し、カードの差し忘れならば挿し直した後に係員を待たずに遠隔操作で再通信すれば通行が可能とのこと。これらのシステムは今回開通した区間の3つのインターチェンジすべてが同機能を備えている。

車線逸脱時に振動でドライバーに危険を知らせる仕掛けは積雪のない地域では通常道路上に凸型のものを設置しているが、ここでは凹型に道路を削って同様の効果を得ている。凸型のものを設置すると除雪車による除雪に問題がでる

連続したトンネルを抜けると小浜IC。既開通区間に接続

トンネル番号4/14 鳥羽トンネル(2110m)
トンネル番号3/14 大谷トンネル(430m)
トンネル番号2/14 本保トンネル(730m)
トンネル番号1/14 国富トンネル(開通区間最長の2900m)
小浜IC。ここで既開通区間とつながる

 今回はトンネルと施設を中心に舞若道の新規開通部を紹介してきたが、トンネルを除く多くの区間は見晴らしのよい高架道路でその両側に見える自然や町並みはとても美しい。周辺には海水浴場をはじめさまざまな観光スポットも多い。全線開通する7月20日~11月30日(お盆時期を除く)はETC限定の乗り放題プランなどが用意されているので、お得なプランを利用して真新しいアスファルトの高速道路をのんびりドライブしてみるのもよいだろう。

(高橋 学)