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ジェイテクト、2025年3月期本決算説明会 近藤禎人社長が中期経営計画の進捗を「計画通り推進」と説明

2025年5月14日 発表
株式会社ジェイテクト 取締役社長 近藤禎人氏

2025年3月期は前年同期比マイナスの売上収益1兆8843億円、営業利益384億円

 ジェイテクトは5月14日、2025年3月期の本決算説明会を開催。同社 取締役社長の近藤禎人氏が中期経営計画の進捗を説明するとともに、新しいMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)を紹介した。

 まず、ジェイテクト 経営管理本部 経営企画部 経理部 副本部長 CFO 神谷和幸氏が2024年度の決算の実績を説明。実績は、売上収益は前年同期の1兆8915億円から0.4%減の1兆8843億円、営業利益は前年同期の621億円から38.2%減の384億円、税引前利益は前年同期の725億円から57.4%減の308億円、当期利益は前年同期の402億円から65.9%減の137億円となった。

 具体的には、売上収益は欧州・中国を中心に販売が低調であったことから前年比減収、営業利益は中期経営計画に沿って推進した欧米構造改革にともなって発生した費用などの計上により減益となったとした。

決算のポイント
2024年度連結損益
株式会社ジェイテクト 経営管理本部 経営企画部 経理部 副本部長 CFO 神谷和幸氏

 なお、売上収益から売上原価と販売費および一般管理費を控除したジェイテクト独自の管理利益となる事業利益は前年同期比の728億円から10.9%減の649億円となり、円安・原価改善活動による増益効果があるも、減収影響に加えて北米で生産性起因のロスコスト発生が継続していることなどによって前年比減益となったとした。

 北米でのロスコストの原因はすでに分かっているといい、現在は「内製費改善/生産安定化」「体質改善/中期戦略策定」「業務プロセス最適化/販管費削減」の3つのチームに分かれてタスクフォースチームの活動を行ない、2025年度末の正常化を目指しているとのこと。

事業利益増減分析
事業別実績
所在地別実績
北米ロスコストの削減・ゼロ化に向けた取り組み

 2026年3月期の通期業務予測は、売上収益は円高設定による為替影響が大きく6.1%減の1兆7700億円、営業利益は前年に欧米構造改革にともなう費用を大きく計上していることなどにより30.0%増の500億円、税引前利益は45.7%増の450億円を見込んでいる。

 事業利益は7.6%減の600億円とし、円高に設定していることによる為替影響はあるものの、中期経営計画の施策に沿った原価改善活動の推進・北米ロスコスト削減・構造改革などの内部努力により、前年比減益も利益率は維持するとした。

連結損益予想
事業利益増減分析予想
所在地別業績予想
事業別業績予想

中期経営計画は順調に進捗

 続けて、ジェイテクト 取締役社長 近藤禎人氏が第二中計の進捗を説明。「ソリューションの創出力強化」「競争力の強化」「グローバル体制の再構築」の3点を成長戦略・重点施策として掲げており、おおむね計画通り推進するも、中国の環境変化にともなって新たに対応が必要になっているものもあるとした。

株式会社ジェイテクト 取締役社長 近藤禎人氏
第二期中計で掲げた成長戦略・重点施策

 また、工作機械受注はアジア向けを中心に回復に転じているものの、自動車生産台数は頭打ちの傾向が見られ、特に日系メーカーが苦戦しているほか、産機領域の市場は農建機を中心に想定以上の冷え込みが継続しているという。さらに、トランプ政策など、中計策定時に想定していなかった影響が出始めているとのこと。

 それを踏まえ、自動車事業については次世代/新製品の市場投入はおおむね予定通りの進捗があることから、さらなる収益力向上を図り、変化の激しい世界情勢・市場環境にも対応した構造改革・リソーセスシフトの推進・加速を行なっていく。

 産機・軸受事業では、収益力向上に向けて産機・市販領域へのシフトを継続。工作機械・システム事業では、グループ内連携の強化によりデジタルものづくりで受注からアフターまでを効率化するなど、合理性を推進して収益力を向上するとともに、“ターンキーソリューション”の提案と、“ラインアップの見直し”による販売機会を創出していく。

事業環境の変化
自動車事業
産機・軸受事業
工作機器・システム事業

 グローバル体制は、欧州、中国、ASEANが収益化体質改善の重要な地域という位置付け。欧州は事業の売却や移管などを計画通りに進め、2027年度には黒字化を見込む。日系完成車メーカー向けの需要が大きく減少するとともに、消費低迷が続き売上が大きく減少している中国では、寄せ止めによる稼働率向上や、適正な規模と役割を再検討。ASEANへも波及が想定されるため、先手を打って対策を検討・推進していくとした。

グローバル環境の変化
欧米構造改革の状況
中国試乗の見通しと対応

 また、成長地域と位置付けているインドでは積極的な投資を実行。コラムタイプ電動パワーステアリング(C-EPS)、マニュアルステアリングギヤ、等速ジョイント、ハブユニットベアリングを生産するグシャラート新工場を設立し、2027年の生産開始を予定している。

成長地域:インドへの投資

 資本効率向上に関しては、中計策定時のキャッシュアロケーションとしており、市場環境は悪化しているため売上減にともなう利益減が予測されるものの、運転資本の改善などを計画以上に推進し、予定通りのキャッシュイン・キャッシュアウトを見込む。

キャッシュアロケーション
投下資本スリム化の取り組み
株主還元

 ソリューション創出力/デジタル基盤の強化では、ソリューション共創センター(ソリセン)を開設し、コアコンピタンスプラットフォーム(ココプラ)と組み合わせることでソリューションとして提案。立ち上がってまだ数か月でありながら、200件以上の要望に応え、半数以上が解決済みであると紹介した。

 今後は、効率化や価値を上げるだけでなく、ソリセンで起きる新しいビジネスに関してもスピーディに事業を立ち上げるため、デジタルプラットフォームを重要と考え、事業ごとの壁を取り払い、最適な統合パッケージシステムへの集約により、全社の業務プロセス・データの刷新・標準化を図り、データ経営の実現を目指していく。

ソリューション創出力強化
デジタル化への投資

 最後に、ジェイテクトが目指す姿として、企業の方向性や文化を示すために「ミッション」「ビジョン」「バリュー」の3つの要素で構成する、企業経営の核となる考え方「MVV」を策定。

MVV(Mission Vision Value)の策定

 各事業の個別最適化を狙う中で、方向性を全員で共有し、目指す指針を作り上げるため、「モノづくりとモノづくり設備でモビリティ社会の未来を創るソリューションプロバイダー」というビジョンを設定。一方で、より包括的ないわゆる使命であるミッションの「技術をつなぎ地球と働くすべての人を笑顔にする」というミッションを定めた。また、エンゲージメントを高め、全員が仕事を楽しく思えるような風土をつくり、同じ方向を向いて仕事ができるよう、「Yes for All, by All!」をバリューとした。

 これについて近藤氏は「単なる額に飾ってあるMVVではなく、常に仕事の中で伝えています。そういった中で、順次、着実なソリューションを作り出していくということで、(2024年)12月から社内でスタートし、着実に浸透を図っています」と紹介。「引き続き、こういった思いを持って、厳しい局面ではございますが、しっかりコミットメントしたことを実行しながら、より皆さんに喜んでいただけるような会社になっていきたいと思います」と述べた。

近藤社長が大切にしている言葉「Yes for All, by All!」には「みんなでなんでもやろうよ」という思いが込められている