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ジェイテクト、近藤禎人新社長による第二期中期経営計画説明 2030年に向けてビジネスを変革し「ソリューションプロバイダー」を目指す

2024年8月27日 開催

第二期中期経営計画について説明する株式会社ジェイテクト 取締役社長 近藤禎人氏

「ソリューションプロバイダー」は「試験に出ますよっていうぐらい重要なキーワード」

  ジェイテクトは8月27日、2025年3月期〜2027年3月期の第二期中期経営計画を発表。6月に新しく取締役社長に就任した近藤禎人氏の説明による第二期中期経営計画説明会を開催した。

 ジェイテクトの中期経営計画では、2021年から2030年までの10か年を、3年、3年、4年の三期に分けて取り組みを推進。

 2022年3月期〜2024年3月期の第一期中期経営計画期間は「体質強化の3年」と位置付けて取り組みを進めてきた。2025年3月期〜2027年3月期の第二期中期経営計画の3年は「既存事業の成長と新規事業の育成」と位置づけ、顧客との共創を通じてソリューションを提供していくという。

 そして、今後策定される2028年3月期〜2021年3月期の第三期中期経営計画によって目指す姿「JTEKT Group 2030 Vision」も策定して公開された。

 第二期中計の数値目標としては、2026年度に売上収益2兆円、事業利益率5-6%、ROE7-8%、PBR1倍を掲げ、その先の2030 Visionの数値目標で、売上収益2兆円超、事業利益率8%以上、ROE10%、PBR1.5倍を目指すという。

 近藤社長は冒頭で「中期経営計画というのは次の3年の計画を立てる発表資料でございますが、一方でジェイテクトは生まれて18年、人で言えば成人になったということでございます。大人としていかに社会貢献をしていくかという大きな転換期でもあるというふうにも言えると思います。成人したジェイテクトが今後どこに向かっていくのか、何を実現していくかということで、中期経営計画に加えて、将来向かっていきたい方向も少し言及させていただければと思います」と語った。

 ジェイテクトでは、第二期中期経営計画と合わせて、2030年に向けたビジョン「JTEKT Group 2030 Vision」も策定、「モノづくりとモノづくり設備でモビリティ社会の未来を創るソリューションプロバイダー」を掲げ、2030年に向けてコア技術・コンピタンスをかけ合わせた現状の製品群の高付加価値化・投資効率向上とともに、さらなる新領域へのソリューション提案を行ない、現在の受動型ビジネスからソリューション型ビジネスへの変革を目指すと示された。

ジェイテクトの2030年に向けたグループビジョン

 このビジョンについて近藤社長は「まず、ものづくりとものづくり設備、部品あるいは工作機の両方を手がけることは、ジェイテクトのオリジナリティであり、強みの源泉であると思います。また、この言葉の裏には多くのコアコンピタンスが存在しているとも言えます。自動車の枠にとどまらず、全ての動くもの、すなわちモビリティと、その協調する社会を対象にしたいという思いを表現しております。で、最後に、ソリューションプロバイダー。先ほど申し上げましたように、ジェイテクトとは大変多くのコアコンピタンスを持っております。それを融合して、お客さま、あるいは社会の困りごとにソリューションを提供していく会社、そういう意味がこのソリューションプロバイダーという言葉に込められています。実は、この言葉はわれわれジェイテクトにとっては大きなパラダイムチェンジだと思っております。もし学校の授業で例えるなら、この言葉、試験に出ますよっていうぐらい今日の中計の中で大変重要なキーワードでございます」と説明した。

株式会社ジェイテクト 取締役社長 近藤禎人氏

 また、「体質強化の3年」として取り組んできた第一期中期経営計画の振り返りでは、「体質強化は確実に推進した」とし、黒字化の定着、年輪成長を実現したものの、事業利益目標は未達となったと報告。第一期中期経営計画の期間には、急速なBEVの普及やソフトウェア需要の高まりにともなう産業構造の変化や製品の付加価値を上げるチャンスを「残念ながら十分生かしきれなかった」と反省すると同時に、新型コロナウイルスの影響で北米の工場で従業員の転職が激しくなり、生産性の低下につながってしまったと分析。今後は外部環境変化に対応し、付加価値を高め続ける経営へと変革していくことが課題であるとした。

第一期中期経営計画の振り返り
第一期中期経営計画におけるKPI振り返り
第一期中期経営計画における振り返り 環境変化

2030年に向けて従業員全員で取り組み

「JTEKT Group 2030 Vision」においてはソリューションプロバイダーへの変革とされたが、具体的には「遊星原則キャリア一体 JUCD」「軸受一体歯車」「SiC研削機」といった既存商品を高付加価値化し、そこで生み出した原資を元手に「自動操舵制御システム Pairdriver」「ステアバイワイヤシステム J-EPICS」「リチウムイオンキャパシタ Libuddy」「アシストスーツ J-PAS fleairy」といった新領域へ課題・ニーズ起点でソリューション提案をしていくという。

ソリューションプロバイダーへの変革における基本思想

 さらに、これまでは顧客からジョブリクエストを受領してからユニットを提供するという受動型ビジネスを行なってきたが、今後は顧客と議論をすることでニーズを共創するとともに、ソリューションを適切なビジネスモデルで提供するというソリューション型ビジネスへと転換を行なっていくとのこと。これにともない、これまでは各事業にひもづく要素技術・要素部品を顧客の要望に合わせて提供してきたが、各事業の壁を取り払うことで異なる技術をかけ合わせ、多様な顧客・社会のニーズに応えられるような取り組みを進めていくとした。

ソリューションとは
ソリューションプロバイダーへの変革ロードマップ

 これを実現するために、現在は事業ごとにひもづいてしまっている技術の枠組みを外し、1つのプラットフォーム化することで、既存の事業のみならず新しい事業においても多くのコンピタンスを融合し、付加価値を高めてソリューションを提供するとして、「ソリューション型のビジネスになるために、このテクノロジープラットフォームをいかに実現するかが重要なキーになる」とした。

これまでのジェイテクト
ジェイテクトの目指す姿
数値目標。ソリューションプロバイダーへの変革と業務比率向上に全員で着実に取り組むために、あえて売り上げ拡大の目標は定めていないとした
なぜ数値目標にeNPSを定めているのか。近藤社長は実際にトヨタのものづくり開発センター時代に使っていたといい、エンゲージメントが高くなるとそれにつれて組織のパフォーマンスが上がったことを体感したという

 ビジョン達成に向けた戦略と施策については、ROE・利益率の改善と将来のソリューション拡充に向けて「ソリューションの創出力強化」「競争力の強化」「グローバル体制の再構築」の3つに重点を置くという。

成長戦略・重点施策の全体像

 その中で、ソリューションの創出力強化については、営業から生産まで各機能をコンパクトに集合させ、顧客ニーズや事業部の困りごとをアジャイルに検討・推進するソリューション共創センターを立ち上げ、テクノロジープラットフォームを活用してスピーディかつ一気通貫に対応できる仕組みをつくるとした。

 また、競争力の強化については、自動車、産機・軸受、工作機械・システム、アフターマーケットそれぞれの分野においての戦略を立てるとともに、第一期中計期間に進めた事業開発アイテムを事業化ステージに移行するといった新規事業開発についても取り組んでいくとのこと。

 さらに、全従業員のデジタルリテラシーを上げるべく、デジタル祭と称した活動をスタート。一気通貫のデジタル流通基盤を構築し、スピード、コスト、完成度を向上させるとした。

ソリューションの創出力強化に関する仕掛け
ソリューション創出事例
競争力の強化で各事業の目指す姿
自動車事業
産機・軸受事業
工作機械・システム事業
アフターマーケット事業
新規事業開発
デジタルモノづくり
グローバル体制の再構築
経営基盤強化の全体像
人と現場中心の経営
カーボンニュートラルの推進におけるグローバルCO2排出量の実績・目標
グローバルCO2排出量削減に向けた取り組み
Scope3への対応状況
企業価値向上に向けたプロセスKPIへの分解と具体的なアクション
キャッシュアロケーション・株主還元

 近藤社長は「私自身が大切にしていることは、人と現場を中心にした経営でございます。チャレンジが人を育て、人がまた新たなソリューションを生み出す。人中心の経営を進めるにあたり、私が最も大切にしている考え方です。このサイクルを回せる環境を整えることが大変重要であるということを経験いたしました。そのためには1人ひとりの“WILL”を大切にし、全員が活躍できる環境を整えることが会社の目標達成につながると考えています。それができる仕組み、風土づくりをしっかり私自身リードしてまいりたいと思います」と自身の経営に関する考えを述べた。

 加えて「最も付加価値を生んでいるのは現場であるという考え方に基づき、メンバーが自ら判断し行動できる環境を整える。それが私の現場中心の経営です。そのためにはなにより元気な職場づくりが不可欠です。私は常々“Yes for All, by All! みんなのためにみんなでやろう”というメッセージをさまざまな場面で発信しております。この考えのもと、仲間を思い、仲間を助け合う人づくり、職場づくり、これを推進してまいりたいと思います」と、全従業員一丸となっての取り組みを進めていくと強調した。

 最後に近藤社長は「今日お話したところは、実は私がジェイテクトに来る前、トヨタ自動車のものづくりセンターでセンター長を4年間務めたときに実際に実行して、実現してきたことでございます。新たにこのジェイテクトで覚悟と信念を持ってメンバーとやりきる思いで取り組めば、必ずこの第二期中期経営計画は実現できると確信しております。今回の第二期中期経営計画は、私自身の思いが詰まったものになっています。この7か月間、仲間と一緒に悩みながら、考えながら、まわりが苦渋の決断をしなければいけないこともございました。しかしながら、思いを持ってこの中計をつくってまいりました。ですから、これをしっかりこれから基軸に置いて、もっと言うと社全体がここに向かって動き出すということをしていきます。全社グローバルで4万5000人おります。この仲間で中計を議論して、どんどんローリングして、ブレずにやってまいりたいと思います。ジェイテクトの名前の由来はまさにジョイントテクノロジー。社名の語源のとおり、ジェイテクトグループの有するさまざまな技術やコンピタンスをかけ合わせ、『全ての答えはジェイテクトの中にある』。そのようにお客さまに言っていただけるようなソリューションプロバイダーを目指します」と熱く思いを語った。

6月にnoteを開設したという近藤社長。「これから月に2回ぐらい、私の考え、大切にしているもの、あるいは中計の中の具体的な何かを、もちろんお話できる範囲ではあるのですが、この中で発信してまいります」と紹介した