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ジェイテクト、「ペアドライバー」や「ステアbyワイヤー」などステアリングまわりの新技術を多数公開

2024年5月22日~24日開催

入場無料(事前登録制)

SbWやEPSといったステアリングまわりの技術展示が目立ったジェイテクトブース

 自動車技術会が主催する自動車技術展「人とくるまのテクノロジー展2024 YOKOHAMA」が5月22日、神奈川県のパシフィコ横浜・展示ホールで開幕した。会期は5月24日まで。入場に際して公式サイトおよび会場での事前登録が必要だが入場は無料。

 ジェイテクトブースでは「明るい未来へ続く道」というコンセプトを掲げて、3つの提案を出展。

 1つ目は自動運転におけるシステムとドライバーでのハンドル操作の調和を取る「ペアドライバー」という技術。

 運転支援機能(自動運転)を使用中にドライバーが自らの意志でステアリング操作をすることもあるが、従来では自動運転の操舵にドライバーの操舵が加わったときはステアリングの手応えが急に抜けるなど違和感を感じることがある。

 それに対して、ペアドライバーの制御ではその点の感覚がごく自然にシームレスにつながるようにしてくれるのだが、単純に主導権を渡すだけでなく、自動運転側が行きたい方向をステアリングの反発力で伝えてくる。そのためドライバーはシステムがどこに行きたがっているかを理解しながら、意志による操作を付け足せるものとなる。こうなることで自動運転とドライバーによる運転とのつながりができ、安心感が生まれるという。

 そのような機能を持つペアドライバーだが、これはハードではなくてソフトウエアなので反力の設定は自在だし、多くのクルマに採用されている車線逸脱防止機能やレーンチェンジアシストなどのフィーリング向上にも応用することも可能。それだけに市販車の機能としてペアドライバーを体験できる日はそう遠くないと感じた。

ペアドライバーの紹介パネル
ペアドライバーの映像展示。システムは右車線を選んでいるところをドライバーは直進させる操作をしている。こうした操作ではシステムの操舵が急に切れることが多いが、ペアドライバーは適度な反力を残すことで、ドライバーに行くべき方向を伝え続ける。これが安心感となる

 続いてレベル4の自動運転用に開発している格納式の「ステア・バイ・ワイヤ(SbW)」だ。自動運転時にはハンドルがインパネ内に完全に格納されることで運転席前のスペースを広く取ることができる。レベル4の自動運転では前方を見る必要はないので、走行中に読書やゲームなどもやれるため、運転席まわりが広くなるメリットは大きい。

 自動運転エリアの終わりが近づくと、クルマからその旨の案内が流れて、格納されていたステアリングが操作できる状態になるのだ。

 格納のためのステアリングコラムはレールに沿ってスライドをするが、与圧式スタライドレールを使うことで従来のステアリングコラムと同等のハンドル支持剛性を確保している。

ステアリング格納状態。インパネ内にスッポリ収まっている(試験車両による実録映像)
自動運転のエリアが終わる前にステアリングが出てくる。SbWだから実現する機能
格納式SbWの解説資料

 いまは一般化した装備である電動パワーステアリング(EPS)は、1988年にスズキの軽自動車に搭載されたのが初であり、そのEPSを開発したのがジェイテクトである。

 今回トラックドライバーの負荷を軽減することを目的にした商用車用のEPSを展示。現在はトラックにもADASや自動運転の波が来ているので、その流れに乗るためのEPS化は必要なものだ。ただし、これまでトラックのように重量があるクルマをEPS化するとなると、かなり大きなモーターを必要としていたが、今回出展されたトラック用EPSは比較的小型ながら大きなトルクが出せるモーターという。

 これにより運転席まわりのスペース占有を抑えつつトラックのEPS化を実現するのだが、このEPSが対応できるのは中型トラックまで。大型トラックになるとさらに重量があるため、それに対応するモーターを積むとと取り付けスペースの確保が難しくなる。また、モーターが大きくなれば電気の消費もふえるためそれが燃費に響いてきたりする。そうした問題点のあるため現在は中型用までとなっている。

左は大型トラック向けのコラム同軸操舵アクチュエーターで、右がトラック用EPS。トラックにADASを搭載することはドライバーの安全性向上や負担の軽減となる。また、油圧パワステからEPSにすることでエネルギーの効率化や構造をシンプルにすることもできる
トラック用EPSの解説パネル
小型車用EPS。ステアリングシャフト付近にサイズダウンしたモーターが付く。モーターの出力は大きくないが、ギヤの構造を入力に対して出す力が大きくなる高減速比化することでカバー。こうした構造とすることでユニットを小型化している。また、ハウジングのアルミ材も軽量化と剛性を両立させるよう最適化される
ミニバンやSUVなど中型車以上には下のようなラックパラレル式のEPSを使用する。こちらはモーターの取り付けスペースが確保しやすいので大きなモーターが使える。なお、サイズは大きくなるが材質などを工夫することで軽量であることも追求している

 EPSを動かすには電気が必要。ただ、クルマのトラブルには電源の消失といったものもあったりする。そうなるとEPSは作動しなくなるため運転状況は非常に厳しく危険になったりする。そこで予備電源として使用するのが「Libuddy」という高耐熱リチウムイオンキャパシタだ。

 キャパシタは コンデンサのようなものなので、多くの電気を一気に流すことができる。そのため非常用の電源としても使用できるが、反面、蓄電量が多くないためそのまま走り続ける事はできない。ゆえに何かあった場合は緊急で路肩に止まるまでの操舵に使う電源という存在だ。

 このキャパシタは冷却構造を廃止したことで小型化されているので、車載性に優れたもので、積み重ねて使用する場合も従来より積み厚を約2割削減できる。また、Libuddyのリチウムイオンキャパシは-40℃~85℃という業界トップの幅広い温度範囲で使用できる。

ジェイテクトが開発した高耐熱リチウムイオンキャパシタの「Libuddy」は、EPS用の非常電源だけなく、その小型軽量をいかして産業用ドローンの非常電源としての使用法も検討されている
「Libuddy」リチウムイオンキャパシタの解説ボード

 ジェイテクトブースでは、「高圧水素タンク用バルブ」も展示。FCEV(燃料電池車)用やH2エンジン(水素エンジン)用などがあるほか、FCEV用減圧弁、水素エンジン用減圧弁も展示していた。

 このうち、高圧水素タンク用バルブとFCEV用減圧弁は、トヨタ自動車の「ミライ(MIRAI)」に採用されていて、水素エンジン用減圧弁は開発を進めている最中だと言うことだった。

左からFCEV(燃料電池車)やH2エンジン(水素エンジン)用の高圧水素タンク用バルブ、真ん中がFCEV用減圧弁。そして水素エンジン用減圧弁。水素は金属を腐食させるので、そう言ったことに対応できる素材で作られいる
ボードによる解説。それぞれがどこに付くかわかるように書いてある
その他の展示物。これは耐水素環境用の軸受け。水素ポンプの使用する
電動車の電費向上のための低トルクハブユニット。転がり抵抗を極小化している
同軸式e-Axleの幅が狭いモデル。e-Axleを幅狭化することでサイズ、重量とも従来の同スペックのものより軽量化になっている。ほかにもトルク感応式変動制限機能を採用することで、安全で快適な走りが実現できる