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日産「アリア」、ジェイテクトの「MCU搭載電動パワステ」「EV駆動モーター冷却&潤滑用電動オイルポンプ」採用

2022年3月29日 発表

日産のバッテリEV「アリア」にJTEKTが開発した「MCU搭載電動パワステ」と「EV駆動モーター冷却&潤滑用電動オイルポンプ」を採用した

安全性の向上や車体の軽量化、製造コストダウンを実現

 ジェイテクトは3月29日、日産のバッテリEV(電気自動車)モデル「アリア」に、独自の安全コンセプト“JFOPS4”を採用した第2世代内製MCU(Motor Control Unit)を搭載した「EPS(電動パワーステアリング)」と、「EV駆動モーター冷却・潤滑用EOP(電動オイルポンプ)」が採用されたと発表した。

JFOPS4を採用し、第2世代内製MCUを搭載するEPSの特徴

 ジェイテクトは、ADAS(先進運転支援システム)レベルに応じた安全性を備えるEPSを目指し、独自のEPS安全コンセプト「JFOPS(JTEKT Fail-OPerational System)」を定義。JFOPSはレベル0~4まで定義され、現在はレベル4が最上位となっている。

 今回アリアに搭載されたEPSは、操舵感向上のためトルクフィードバック機能を取り入れた新世代ステアリング制御“JWill”により、緻密なチューニングで幅広いユーザーの操舵感へのこだわりに応えることが可能となる第2世代内製MCUを搭載。さらに、ジェイテクトのEPS安全コンセプトの最上位であるJFOPS4も採用した。

 MCUを自社開発することで、自動車メーカーのニーズにスピーディでフレキシブルな対応を可能としたことに加え、JFOPS4の採用により、万が一ステアリングMCUに故障が発生した場合でもアシスト継続が可能となり、高い安全性を確保したとしている。

JFOPS4採用第2世代内製MCU搭載EPSのイメージ
回路構成概略図(JFOPS4)
独自の安全基準JFOPS(JTEKT Fail-OPerational System)のコンセプト

EV駆動モーター冷却・潤滑用EOPの特徴

 自動車の電費向上に直結する駆動モーターの小型・高出力化が進む中、高出力のモーターは発熱量が大きくなるため、さらなる冷却効率の向上が求められている。また、EVでは駆動力の供給源が駆動モーターのみであることから、駆動モーターに連続作動が必要とされ、効率的な発熱の抑制と高い放熱性が課題となっている。

 そこでジェイテクトは、駆動モーターを直接冷却し、なおかつ駆動モーターの回転軸に使用される軸受の潤滑用途をあわせ持つ「油冷方式EOP」を開発。モーターの冷却方式は一般的に使用する冷媒の種類によって「空冷」「水冷」「油冷」に分類されるが、油冷方式は水冷と異なり、駆動モーターの発熱部位に直接通油して冷却できるため、効率よく高い冷却効果が得られるという。

EV駆動モーター冷却・潤滑用EOP

 また、EOPの構造には「モーター」「ポンプ」に「ECU(Electronic Control Unit)」が一体になったタイプと、ECUが別体のものがあるが、今回ジェイテクトは一体構造を採用したことで、小型化・省スペース化による車両への搭載性の向上および部品点数削減によるコストダウン、軽量化を実現している。

 オイル低粘度から高粘度まで大きく変化する性質を持つため、あらゆる温度状態でも安定したオイル供給を可能とする技術が必要となり、今回採用となったEOPは車両の油温情報からEOP内部の制御パラメータを変化させ、EOPのモーター回転数を適切にコントロールすることで、消費電力を抑えながらオイルをポンプで汲み上げる最適制御を実現。

 車両駆動モーターの高温時は、主に冷却用途として多くのオイル供給が必要となるが、気温が低い極寒冷地では駆動モーターの軸受潤滑用途としても使用。駆動モーターの冷却回路と潤滑回路の両方にオイルを供給することで軸受の摩耗を低減し、駆動モーターの高回転を支えてくれる。